もうすぐ2018年が終わろうとしていますね。私は来年、20代最後の年を迎えます。 憧れの30代を目前にワクワクする気持ちの一方で、結婚や出産などについて意識せざるを得ず、目には見えない圧を感じている今日この頃。様々な選択肢がある中で、自分はこれからどんな風に年を重ねて行くのだろう。恋人? パートナー? いや、もうこの際独身貴族……? そんなことを考えているからなのか、気がつけば主人公が30代女性の物語ばかりを好んで読んでいました。今回は私と同世代の“お年頃”な女性のための、心に纏う雲を払う“勇気”という名の風を吹き込んでくれるような3冊を紹介します。
- 著者
- 飛鳥井 千砂
- 出版日
- 2017-06-17
仕事と恋愛の両側面から、主人公・紗耶加の25歳から35歳までの10年間の成長を描いた物語です。
地元の携帯ショップで正社員として働く主人公が、上京してプロのフォトグラファーになるまでのスムーズさと言ったら、まさにシンデレラストーリー!なのですが、その間に関わる人々との繋がりや細かな心情の変化がじっくりと書かれていて、「そうだ。日常って、人の心って、こんなにも入り乱れているんだよなぁ。」とあらためて思い知らされる場面が多くありました。
自分の気持ちと会社の方針との違いに自分なりの妥協点を見つけていく場面と、異性との出会いと別れを繰り返す度に頭を切り替えていこうとする場面は感情の浮き沈みが激しく、主人公と一緒に私の気持ちも波打つことがしばしばありました。
やりたいことを見つけられないまま地元を飛び出して上京した主人公でしたが、日々踠きながらも様々な“出会い”というチャンスを逃さず、自ら選択をし、道を切り開いて行きます。与えられたものを最大限に活かし、一人の女性として、大人として成長し続ける逞しい主人公の姿は、35歳からの10年もきっと変化し、成長し続けるのだろうなと、私たちにも未来へ向かう勇気をくれます。
- 著者
- 角田 光代
- 出版日
- 2007-10-10
専業主婦で子持ちの小夜子は、アルバイトの面接を受けたベンチャー企業の女社長で未婚の葵と出会います。二人は同い年の35歳。同じ大学を卒業した共通点もあり、すぐに意気投合し、その後小夜子は葵の会社で働き始めます。
普段は楽観的ですが誰にも言わない過去を抱えている葵と、未婚女性に主婦の大変さはわからないと一線を引いてしまいそうになる小夜子は、立場や責任の形がそれぞれにあるがゆえに“仲が良い”だけではやり過ごせない言動があることにお互いが気づかされていきます。
それでも誤解や思い違いで作り上げてしまった壁を取り払おうと互いに踏み込み、手を取り合っていこうとする二人の姿は、きっと同じ悩みを持つ世の中の女性にとって希望を持たせてくれるのではないかと思います。とは言え、物語のように現実はそんなに甘くはありません。二人のように少しでも肩の力を抜いて、怖がらずに人と関わっていけたら素敵だなと思いました。
また、葵のバックボーンが章を挟んで書かれているのですが、私は特に12章の父親の優しさと高校生時代の葵の心の叫びが描かれたエピソードに強く胸を打たれました。ピンポイントなエピソードですが、どうしてもここはお伝えしたかった。気になる方はぜひ、読んでみてください!
解説は以前紹介した『カラフル』の著者・森絵都さんなので、そちらもぜひご一読ください。
- 著者
- 益田ミリ
- 出版日
- 2013-11-22
短編小説だと思って開いてみると、片方のページには川柳とイラスト、もう片方にはそれにまつわる恋のお話が書かれている構成でした。
恋は盲目と言いますが、健気な女性の切ない気持ちや男性との駆け引き、淡い恋心が溢れていて、「もし私が男だったら、この本に出てくる女性全員を愛してあげたい!!!」なんて思ってしまうほど、キュンッと胸を打つお話ばかりでした。
でも、中には冷酷さが滲み出ている現実主義の川柳もあり、「ああ、オンナってワカラナイ!」となってしまうものも……。同じ女性でも思うことは様々です。
〈きっと、知っている恋に出会えると思います。〉と送り出される冒頭の言葉は、何だか著者に諭されているようにも感じました。
今恋をしている人にも、つい最近まで恋をしていた人にも、心に纏う雲を払ってくれるようなメッセージがたくさん詰まっています。もちろん、これから恋をする人にとっても気持ちを和らげる1冊になること間違いなし! もう恋なんてしないなんて、言わなくなるかもしれませんよ(笑)。
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。