気の弱い少年・ヒロは、とある屋敷で記憶のない状態で目覚めました。そして同じく記憶のない怪物の国の王女・姫、人狼・リザ、吸血鬼・令裡とともに、王位継承権争い参加することとなり……。 『怪物王女』から時を経て、完全新シリーズとして4人の新たな戦いを描いた『怪物王女ナイトメア』。スマホのアプリで無料で読める本作の魅力や見所を紹介していきます。
少年・ヒロが目覚めると、そこは見知らぬ場所でした。
自分が何者かも思い出せぬまま、彼は同じように記憶を失っている、怪物の国の王女・姫、人狼・リザ、吸血鬼・令裡、人造人間・フランドルとともに、迫り来る敵に立ち向かうこととなったのです。
自分が誰なのか思い出されないまま、ヒロは半不死身の王族の血の戦士として徐々に覚醒していき、王位継承権争いで命を狙われる姫を守るため、その力を使っていくことになるのでした。
- 著者
- 光永 康則
- 出版日
- 2018-05-09
『怪物王女ナイトメア』の魅力は、やはり「疑問」や「謎」が徐々に明らかになっていくところではないでしょうか。
姫は、自分の置かれている現状にどこか違和感を感じていました。自分の名前がわからないというのもそうですが、一緒に王位継承権争いをしているはずの兄弟たちに対して、果たして本当に兄弟なのかという疑問を抱いていたのです。
前作『怪物王女』から読んでいる読者はこの彼女の疑問の答えを知っていますが、なぜ彼女が今回の王位継承争いに参加させられたのかはわかっていません。
作中で「この作品は前作のパラレルワールドなのか」「姫たちは前作とは別人なのか」といった読者の疑問の答えを小出しにすることで、「パラレルワールドでも姫たちは前作と同じなのか」「なぜ王位継承権争いを戦い抜いたのにまた戦わせるのか」という新たな疑問が生まれてきます。
前作も読みながらどんどん疑問点が溜まっていき、最後の最後で全容が明らかになるという形を取っていましたが、本作も同様。世界観が明らかになるにつれ、疑問も多く出てくるのです。
疑問が溜まり、自分なりに考察して、それが作品の答えと一致していたら気持ちいいですよね。本作は、作中の疑問をキャラクターと一緒に考えるという楽しさがありますよ。
前作『怪物王女』については<『怪物王女』を最終回までネタバレ紹介!>の記事で紹介しています。おさらいしておきたい方はぜひご覧ください。
『怪物王女ナイトメア』には『怪物王女』という前作が存在しますが、この前作を読んでいても、初めて読んでも、ドキドキ感を味わえるのが魅力的なところでもあります。
本作は、主要人物であるヒロ、姫、リザ、令裡がそれぞれ互いのこともわからないフラットな状態からスタート。ほぼ初対面から関係性が始まっているからこそ、既読の方もワクワクしながら読むことが可能です。
また、敵となる兄弟たちも変わっていたり、前作でもやったようなやり取りが再び丁寧に描かれていることで、「別の作品」という気持ちで読み進めることができるのです。
- 著者
- 光永 康則
- 出版日
- 2006-01-23
前作を知っているから予想できる部分というのもありますが、それでも続編という雰囲気はなく、同じキャラクターたちが紡ぐ新たな物語というスタンス。同じ作品を2度楽しめるというのは、ファンとしては嬉しいですよね。
もちろん、物語は「初めまして」から始まっているので、前作を未読の方でも楽しんで読むことができますよ。前作を読んでいれば大体の世界観がわかる、というだけで、前作を読んでいなればわからない、ということはありません。
前作を既読でも未読でも楽しく作品を読めるというのが、本作の魅力的な部分でもあるのです。
ヒロが目を覚ますと、そこには見知らぬ少女が2人立っていました。状況を整理するなかで、互いに名前や自分がどんな存在なのかわからないこと、自分たちが何者かと交戦中であることが明らかになります。
本巻では、ホラーらしい話が多く、やはりそこが見所といえるのではないでしょうか。
まず幽霊に家を乗っ取られる話ですが、この話は非常に洋物ホラー感があります。幽霊が家人を追い出して食卓を囲む姿は、不気味さとともに、どこかシュールな面白さが感じられますね。
- 著者
- 光永 康則
- 出版日
- 2018-05-09
また同じ洋物系ホラーで、呪いの人形を受け取ったことで死ぬまで永遠に命を狙われるという悪夢に引きずり込まれる話も。姫やリザ、令裡は、回を重ねるごとにやられないよう対応していくのに対し、ヒロは毎回同じところでやられてしまっているのがおかしいところです。
ヒロは、姫を守る血の戦士としてはまだまだ目覚めきっていないので、最初に異形のものと出会ってしまうと、どうしても後手後手に回ってしまうよう。本来の姫を守るという役目を果たせないものの、最終的には敵を倒すカギとなるのもすごいですね。
上記2つの話は戦闘面ではまったく活躍しないものの、敵を倒す手がかりになってくれるヒロが見られるので、ぜひ注目したいポイントです。
ヒロたちの暮らす笹鳴町で、連続通り魔を連想させる事件が起きていました。連続通り魔は人間の仕業ではないと考えた令裡は、ヒロとともにその調査に乗り出すことに。そんななか、姫のもとに妹・カティアが訪ねてきていました。
本巻は前作を彷彿とさせる展開が多く、ファンの読者にはさらに嬉しい内容が多くなっています。しかし、やはり新たな物語に直接関わるカティアとの接触、そして、かつて存在したというシルヴィア王女の話が特に見所ではないでしょうか。
- 著者
- 光永 康則
- 出版日
- 2018-08-09
まず、褐色肌の妹を名乗る王女・カティアが訪ねてきます。彼女が王族であることは王族付きの人造人間がいることからわかりますが、姫はこのカティアに対して「まったく覚えがない」という態度をとるのです。
もちろん記憶を失っているせいではあるのですが、それでも「馴染みがない」と一刀両断。なぜ姫がこのようなことを言ったのか、それは、その後登場する彼女の姉を名乗る偽物がヒントを与えてくれます。
偽物は、「かつてシルヴィアという王女がいたこと」「姫は別の組に入れられたこと」を明言しました。シルヴィアというのは前作で登場した姫の実姉で、彼女に関する話は実際に前作で語られた内容と同じでした。
『怪物王女ナイトメア』の世界は、前作から何年後の話なのか、無理やり姫たちが組み込まれた別世界なのか、疑問点が増えていきます。真相は一体どういうものなのか、楽しみになる話が非常に多いですよ。
ヒロたち一行は、海へとやってきました。周りの海水浴客同様、せっかくの海を楽しもうとしたのもつかの間、潮位が異常に高くなり、浜辺にいたヒロとリザは巨大鮫に狙われ孤立することに……。
王位継承権争いがおこなわれているせいで、どこに行っても不思議な出来事に巻き込まれて命を狙われる姫ですが、今回の事件は偶然なのか必然なのか、判断しづらい事件です。
- 著者
- 光永 康則
- 出版日
- 2018-12-06
この海での話の最後に、姫の兄を名乗る褐色肌の王子が登場するのですが、その言動がまるで姫のおこないを観察していたようなもの。今回の事件はすべて彼の計画だったのか、偶然だったのか、なかなか判断が難しい展開が描かれるのです。
判断を悩む理由としてもう1つあげられるのが、この王子の名前と姿が、前作に登場した姫の実兄・サリエリと同一ということ。肌が褐色という違いはありますが、姫がこのサリエリに対しては、カティアのような疑心をあまり見せないというのも注目したいところです。
またリザも言っていますが、今まで姫の兄弟といって登場した2人とも、彼女とは違う褐色というのが気なりますね。この違いは、偽王女が言っていた「別の組」ということに関係してくるのではないでしょうか。
新たな王位継承というのがどういう理屈のもとおこなわれているのかが、鍵になってきそうです。
『怪物王女』の続編なのか、パラレルワールドなのか、その詳細が明記されないまま始まった『怪物王女ナイトメア』。ホラー漫画でありながら、ギャグやコメディの楽しさもあり、また考察力も試させる、ただ怖いだけの漫画ではないのが特徴的な作品です。
ホラーが得意でない人でも楽しく読める作品となっていますよ。