10年以上経っても名作と名高い『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』のようなバトル漫画に、『珍游記』や『まじかる☆タルるートくん』のようなギャグマンガが並んでいたジャンプ黄金時代の1991年。一風変わったホラー作品が存在したのをご存知でしょうか? 本作『アウターゾーン』は、ジャンプ黄金時代の「幻の秀作」ともいうべき作品です。その魅力を、印象的な10の名場面を中心にご紹介しましょう。
その世界では、現実を超えたあらゆる出来事が起こります。
過去と未来が同時に存在する世界、二次元と三次元が同時に存在する世界、人の心の闇が露わになる世界……それが現実の範疇から外れた領域、アウターゾーンと呼ばれるものなのです。
その世界を紹介するのは、謎の美女・ミザリィ。彼女は時に人に助言を与える存在として、時に人を貶める存在として、人々をアウターゾーンに誘います……。
本作は1991年の「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、1話完結のオムニバス形式の漫画です。物語の原型となったのは、アメリカのテレビ番組「トワイライト・ゾーン」や「アウター・リミッツ」。これは「世にも奇妙な物語」や「ウルトラQ」などの原型ともいえる作品です(タイトルは、「アウター・リミッツ」と「トワイライト・ゾーン」を合わせたもの)。
また本作は、作者の趣向から80年代、70年代の海外B級ホラーや、SF映画の影響も受けています。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
本作の語り部であるミザリィは不思議な美女で、上記のとおり、時に主人公の協力者、時に罠に陥れてアウターゾーンへと引きずり込んでいく狂言回し的な存在となっています。
物語の登場人物に関わる場合は『笑ゥせえるすまん』の喪黒福造のように、奇妙なアイテムを渡すというパータンがほとんどです。
その場合も喪黒福造と同様、道具を使用する際にその使用に関する忠告を伝えますが、大抵は忠告を無視されるのが定番。不思議な現象の説明をする際も、同様のパターンが出てくることがあります。
また、物語にあまり関わろうとはせず、ナレーションのみであったり、まったく出てこない場合も。
性格は、気まぐれでクールです。人情味のある一面もありますが、自分に危害を加えた者には容赦がありません。
ちなみに彼女は、自分の秘密を探ろうとした者には特に容赦がないので、彼女に関しての情報はこのあたりまででご容赦を。
本作の作者である光原伸は、「リボルバー・クイーン」をはじめとする読み切りを何作か書いた後、1991年に本作を発表しました。
本来は10話で終わるところを、人気があったために連載が延長になったということなので、連載当時はジャンプで実験的に開始した漫画だったようです。
彼は海外のB級映画のホラーや、サスペンス、スリラーに影響を受けた作家。そのため、本作はジャンプ作品としてはかなり珍しいスリラー、ホラー系に分類する作品となっています。
厳密にいえば、ジャンプでホラー寄りの作風となると『ジョジョの奇妙な冒険』も該当するでしょう。その他にも諸星大二郎の『妖怪ハンター』や、岡野剛の『地獄先生ぬ~べ〜』などがあります。
しかし『アウターゾーン』は他の作品とは違い、オムニバス形式で特定の主人公がいないため(ミザリィはあくまでも語り部)、異色中の異色作品となったのです。
1991年のジャンプは『ドラゴンボール』『幽☆遊☆白書』などのバトルアクション漫画、『珍遊記』『まじかる☆タルるートくん』『ジャングルの王者ターちゃん』などのギャグマンガが主流でした。
その一方で『SLAM DUNK』のようなバスケット漫画、『シティーハンター』のようなコミカルなハードボイルドもの、さらには『花の慶次―雲のかなたにー』のような時代劇ものまであり、当時のジャンプの幅の広さが伺えます。
それもそのはずで、のむらしんぼの自伝漫画『コロコロ創刊伝説』によると、80年代から90年代の漫画編集者は、新人発掘のために日本全国を渡り歩いていたそう。しかもコロコロの編集者が、これは!と思う新人に出会うと、大抵ジャンプに取られていたというのです。
つまり、新人発掘に貪欲な時代だったからこそ、この『アウターゾーン』という作品が生まれたといえるのです。
光原伸は、上記のとおり「トワイライトゾーン」から本作を思いついたようですが、他にもヒッチコックの作品や、80年代のSF映画の影響も大きく受けています。
しかし、意外にもギャグマンガの『トイレット博士』や『がきデカ』などもお気に入りであるため、あらためて見直してみると、本作は意外とポップで明るい雰囲気を持っていると感じられるでしょう。
この手の物語は、登場人物が悲劇的な結末を迎えることが多いのですが、本作は意外にもハッピーエンドで終わるものがほとんどです。
これは光原伸が、不幸で悲劇的な結末を嫌がったためでした。そのため、絵柄もサスペンスでありながらきれいで読みやすく描かれており、この辺りもジャンプで連載できた理由の1つでしょう。
また、少女漫画の影響も受けており、恋愛もののストーリーが多く見受けられます。この作者の嗜好の幅広さこそが、まさに本作の魅力へと繋がっているのです。
とある平凡なマンションに、一組の母子が住んでいました。子供の名前はひろし。大人しく、素直な子です。母親はどこかの新興宗教の勧誘の仕事をしていました。父親はいません、足を滑らせてマンションのベランダから、誤って落ちて死亡してしまったのです。
母親はいつも、何かにつけて子供に当たり散らしていました。それを隣に住む若い夫婦の奥さんは聞きつけていて、ひろしの心配していました。
そんなある日、ミザリィはひろしの母親に不思議な品物を渡すのです。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
現代でいうところの毒親ともいうべき、この母親。しかもカルト宗教にはまっているという二重苦であるため、子供にはたまったものではありません。
このエピソードで救いになっているのは、ひろしの隣近所に住んでいる奥さんのみで、彼女は何かと彼に助け船を出してくれます。しかし現実の社会で、それおこなおうとする人はどれだけいるのでしょうか?
近年は町内会やマンションの自治会というものまでなくなりつつあり、特に都会は隣人同士の付き合いはおろか、話すきっかけも無くなりつつあるでしょう。
隣近所で誰かが危篤になったり子供が虐待されても、果たしてそれに気づいて手を差し伸べられる人間はいるのでしょうか?そんなことを考えさせられるエピソードです。
江藤明、27歳。彼はある暴力組織の下部構成員で、敵対勢力のボスを撃ち殺しましたが、同時に己も撃たれてしまいます。 彼は必死の思いでタクシーに乗って、逃げようとしますが、タクシーから降りると、彼は町の様子がおかしいことに気がつきます。
周囲の人々が、何やら古めかしい恰好をしていたのです。彼はゴミ箱からジャンプを手に取ると、自分が20年前にタイムスリップしたことがわかったのです。
体力を消耗していた彼は、かつて自分が通っていた小学校が近くにあることを思い出して、そこで体を休めました。
そして、彼はそこで、小学校時代の自分自身を見ることとなるのです。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
いわゆるタイムスリップものですが、この手の作品にありがちな過去に戻って何か重大な事件を解決するというものではなく、過去の自分に言い聞かせる物語という形になっています。
あらためてこのエピソードを読んでみると、大人とは本来子供の悩みを聞き、自分の失敗や経験談からアドバイスをしたり、励ましたりするものではないか、と感じさせられます。人生における分岐点とは、些細な気の持ちようで大きく変化するのではないか、と考えさせるエピソードです。
ちなみに、本作連載時の1991年から20年前にタイムスリップしたので、明がたどり着いた時代は1970年代。彼が手に取ったジャンプには当時連載されていた『ど根性ガエル』が表紙に飾られていて、まだ70年代が手に届く時代でもあったのだと、感慨深くなります。
時を隔ててから漫画を読み直すと、こんな楽しみ方もあるのです。
とある家族が犬を飼っていました。名前はブチ。
ブチはその家族の息子にかわいがられていましたが、引っ越し先のマンションでは犬を飼えないので、子供に内緒で捨てられてしまうことに。
父親が山の中にブチを置いて去ろうとしたとき、なんと誤って車ごと崖から落ちてしまいます。
1週間後、父親が目をさますと、彼は見知らぬ人間たちに囲まれていました。彼らに言わせると地球は宇宙人に侵略されてしまったとのこと、そして、その宇宙人は犬そっくりだったのです。
宇宙人は彼らを捕まえると、牢獄に閉じ込めました。そして犬を連れてきて、人間達が閉じ込められている牢獄の前に向かわるのです。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
内容的には映画『猿の惑星』を彷彿させますが、どちらかというと、江戸時代の法律「生類憐みの令」を元にした、藤子不二雄・Fの短編漫画「ミノタウロスの皿」という感じで描かれたのではないでしょうか。
つまり飼われる側が、ある日飼う側に、そしてその生殺与奪の権限を握るようになるという主客転倒の恐怖を描いた作品といえます。捨て犬やその処分に対する批判が込められた作品のようにも思えるでしょう。
ちなみに「生類憐みの令」は悪法として有名ですが、生き物全般に優しい法律でもありました。それによって捨て子の対策になっていたりもするので、近年は見直されている一面もあるのだとか。
己の顔を醜いと思っている女性・愛恵(めぐみ)は、ミザリィの元に相談にやってきました。それは、自分が使用人として働いている屋敷住んでいる盲目の男・明の目についてです。
彼は資産家の息子。ある日家族と車に乗っているとき、不注意で道路に出てしまった愛実を車が避けようとしたために事故を起こしてしまい、両親は死亡、そして明は失明してしまったのです。責任を感じた愛美は彼の屋敷の使用人として働き、身の回りの世話をしていたのでした。
ミザリィは彼の眼を治せると言い、愛美とともに屋敷にやってきます。
そこには明の婚約者である冷子と、彼の叔父夫婦がいました。彼らはさっそく、ミザリィを胡散臭いものを見るような目で見ます。そんな彼らをよそに、ミザリィは治せる証拠に、屋敷にいる足を悪くした犬を、不思議な力で治療したのです。
犬の足が見事に治ったことを知った明は、さっそく彼女に治療を頼みました。
効果が現れるのは、明日の朝。しかし、愛実は夜のうちに屋敷を抜け出そうとして……。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
巻末の作者のコメント通り、この物語は少女漫画の世界を『アウターゾーン』風に描いたものです。
不幸な境遇にあるヒロインと、あこがれの男性。しかし、その男性には、美人だが底意地が悪い婚約者がいるという、ちょっと古い時代の少女漫画そのものです。
結末はもちろんハッピーエンド……と見せかけて、本当によかったのかどうかわからない結末となっています。どういったものになっているかは、ぜひ本編でお確かめください。
あるところに、険しい山に囲まれた村がありました。その村の村長の家には、美里という娘が働いています。
彼女は3歳のころ両親を亡くしてから、ずっと村長の家で働いていたのです。しかし、村長とその息子は底意地の悪い人間。息子は人食い妖怪の住む森に美里を連れてきて、なんと強姦しようとしました。その際に美里は誤って、崖から落ちてしまいます。
息子は逃げ出し、美里はそのまま置き去りにされましたが、意外な者が彼女を助けました。それは、人食いと言われていた妖怪だったのです。
妖怪は意外にも善良で、言葉こそ話そうとはしませんでしたが、怪我をした彼女を献身的に介護しました。
しかし、その様子を村長の息子に見られてしまい、村長は村人をかき集めてその妖怪のもとに攻め入ります。
美里は妖怪をかばいましたが、村人たちは聞き入れようとはしませんでした。そして……。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-01-18
冒頭を見てみると、いつものパターンとは違い、日本の昔話風で始まって、怪物映画にありがちな、周囲の人に理解を得られない異形の者の哀愁を描くという話へと発展していきます。
……と見せかけて、それさえも違うという、この二転三転する話の構成がなかなか面白いのです。
人間の本性をむき出しになるエピソードが多い本作。そのなかでもこのエピソードは象徴的で、実は善良な本質の持ち主である妖怪に対して、排他的で暴力的な人間の本性が露わになります。
作者は巻末のコメントで、設定が説明不足で悔いの残る作品と言っていましたが、むしろ余計な解説がない分、すっきりとまとまった物語になっているところもあるように感じられるエピソードです。
道端で謎の異臭騒ぎが起きますが、原因がわかりません。
さかのぼること、異臭騒ぎの数日前。会社員の細井は、いつもミスをしては上司に怒られてばかりの男で、そのくせ、なぜか周囲を見下すような態度をとるので、同僚からも嫌われていました。
挙句の果てに叱られた腹いせに車をパンクさせたり、いたずら電話をするなど、最低な行動ばかりしています。
彼がいつものように、憂さ晴らしにいたずら電話をしていると、若い女性が引っかかりました。よいカモが見つかったとばかりに、相手が切ってもしつこく電話をしようとしましたが、その相手はミザリィでした。
ミザリィは彼に、あるものを売りつけます。それは、透明人間になれる薬です。正確には飲んだ人の存在を他人の頭から消し去る薬なので、服ごと消えることができるというもの。一口で24時間効果が続きますが、ミザリィは1度に一口以上は飲まないようにと、忠告しました。
その後、男は透明人間になって、やりたい放題。その結果、薬の残りはあと二口分程度となり……。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-03-18
薬で透明人間になれるというのは、H・G・ウェルズの小説『透明人間』のオマージュのようですが、服を着ると見えてしまう、体内にある食べたものや、煙草の煙が見えてしまうという、欠点だらけのウェルズの透明人間とは違いに、こちらは自分の存在を他人の頭から消すという、ドラえもんの「石ころ帽子」方式です。
透明人間の定番で男は好き放題やっていますが、彼はその前から、いたずら電話という手法を使って欲望のままに憂さを晴らしていました。
今はネットを使った炎上や、誹謗中傷の書き込みなどをやっている人が多いようですが、インターネットのない90年代初頭では、いたずら電話が多かったのです。
その根底にある心理は、安全な所にいながら、正体を知られず憂さを晴らせることにあります。
透明人間が普遍的なテーマなのは、透明になりたいからではなく、透明になってやりたい放題したいという願望があるからなのでしょう。
冒頭の異臭騒ぎの真実は、最後に明らかになります。
ホラーマニアの少年・長坂想一は、近年家で物が無くなったり、それが変な所から出てくるなど、奇妙な現象に悩まされていました。
行きつけのホラーショップにいるミザリィに相談すると、それは妖精の仕業で、もしその妖精を見たら、見なかったふりをしなさいと忠告するのです。
そして、もし見たことがばれたら命はない、とも言いました。
そんなある日、想一がゲームの説明書を探していると、何かが動く気配がしました。そして本棚を見てみると、そこには気味の悪い小さな生き物がいて、ゲームの説明書を持っていたのです。
妖精と勘付いた想一は、必死で見なかったふりをしていましたが、妖精に気づかれてしまい……。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-03-18
物語は映画『グレムリン』と『ホーム・アローン』を足したような話ですが、出てくる妖精はヨーロッパの民話に出てくる、パックやピクシー、ブラウニーなど、悪戯好きで帽子をかぶった小人のような、古典的な妖精のイメージの方が近いようです。現代社会に古典的な妖精というのも、面白い趣向ではないでしょうか。
また、ミザリィは意外に子供に甘い一面があり、この話以外でも、子供を助けるエピソードが時折出てくるのです。
ちなみに、民話の妖精は悪さをするだけでなく、家事の手伝いをしてくれる者もいるそう。一概に悪い存在というわけではありません。
遠い未来の世界、地球の植民地惑星。厳しい環境と管理された社会、人口の密度の高さから、住民は神経をすり減らしてしまい、人間らしさを失ってしまいました。
工場で行員として働くリサはそんな社会に疑問を持ちつつも、変人扱いされてしまい、鬱屈した毎日を送っていました。
そんなある日、彼女が工場で働いていると、誤って機械に服の袖を巻き込まれてしまいます。誰も見向きもしないなか助けてくれたのは、ルークという男性でした。
人間性が無くなってしまった世界のなかで同じ価値観を持つ者同士、2人はやがてに恋に落ちるのです。
しかしルークの正体は、廃棄処分される予定のアンドロイドだったのでした。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-03-18
「傍観者効果」という言葉をご存知でしょうか?多くの人に囲まれた状態で誰かが危険な目にあっても、誰かが助けてくれるだろうという心理から責任がたらい回しになり、結局誰も助けないということが人間にはあります。
これはアメリカで実際に起きた、キティ・ジェノヴィーズ事件(アパートの前で暴漢に襲われても誰も助けなかった事件)から発見された心理状態で、このエピソードの機械に巻き込まれたリサのときの状況も、これに近いものがあります。
そんななか助けてくれた人物が現れて、彼女は彼と恋に落ちますが、なんと皮肉なことに彼はアンドロイドだったのです。
21世紀に入り、AIが誕生して日進月歩で進化を続けています。もしAIがこのまま進化を続けていたら、人間らしい心を持つのでしょうか?
その一方、人間は都会のように人口が密集された場所にいると、どうしても他者に干渉するということができずらくなってしまいます。「ママと悪魔」の項でも記しましたが、すぐ隣で誰かが危険な目にあったら、その人たちは手を差し伸べることはできるのでしょうか?
それをAIが代替できるとしたら?この物語のような未来が、もしかしたら待っているのかもしれません。
「妖精を見た!」で、妖精に襲われてから5年が経ち、長坂想一少年は高校生になっていました。しかし妖精にひどい目にあわされたトラウマから、妖精のことばかり口にするようになり、周囲から少々浮いていました。
そんな彼のことを信じてくれるのは、同じ美術部員の女の子・高橋だけ。
そんな時、彼の所属する美術部がペンションを借りて合宿することになり、想一と高橋も行くことになりました。しかし、そこにいたペンションの管理人はミザリィだったのです。
子供時代に行きつけのホラーショップを経営していた人ということで、想一はあの妖精のことを訪ねましたが、ミザリィはなぜか素知らぬ顔。
彼女は合宿のメンバーに、あの山奥にある廃屋には近づくなと警告をします。しかし顧問の先生が出かけている間に、一同は面白半分でそこへ入り込んでしまうのです。
そこには、なんと妖精の本とビデオテープが落ちていました。ビデオテープには1人の科学者が呪文を唱えながら、異次元より妖精を召喚する映像が映し出されていたのです。
その夜、ペンションには黒い帽子をかぶった、小さな妖精が大量に集まってきました。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-03-18
3巻の「妖精をみた!」のエピソードの続編で、小学生だった長坂少年も高校生になり、性格も少々ぶっきらぼうな、学校の変人という感じになっています。
その理由はもちろん、小学校の時に妖精に襲われたトラウマによるものです。
再登場したミザリィは素っ気ない態度をとっていますが、どことなく彼の心の葛藤に気づき、彼をトラウマから克服させるように仕向けているようにも見えます。
このことから見ても、この物語は少年の成長がテーマになっているようです。
内容自体は、サム・ライミ監督の伝説的B級ホラー『死霊のはらわた』と鈴木光司のホラー小説『リング』を合わせたような感じでしょう。
『リング』は映画が有名ですが、こちらは1998年公開なので、1991年に発表された原作の小説の方を参考にした可能性が高いかもしれません。
女子校生の真美は、友達の由利に誘われて、兄とともに田舎の島へ春休みに遊びに行くことになりました。
由利の父親は昆虫学者で、この島の研究施設で研究しています。由利も春休みはそこで過ごすので、友達の真美を招いたのでした。
連絡船は週に1度しか来られず、真美と兄は漁船に乗せてもらうことになりました。そこにはミザリィも乗っています。
島に到着すると、一同は由利の泊まっているところを探すために、駐在所を訪れました。しかし駐在所のお巡りさんは、何者かに殺されていたのです。
あたりを見回すと、周囲の人間も殺されている様子。そのうえ船は出向してしまい、一同はこの島で孤立してしまうのです。
ようやく無事だった人を探し当てましたが、何があったのか、彼は恐怖で頭がおかしくなっています。民家に入ってみると、なんと電話線は切られていました。その夜ようやく人が現れたと思いきや、それは先ほど死んでいた人々。しかも、彼らの口の中には不気味な虫が入っていたのです。
大慌てで一同が山中に逃げ込むと、建物が見えました。そこにいたのは、由利と彼女の父親の昆虫学者。彼に言わせると島の人間は、この研究所で調査していた虫に寄生されてしまったというのでした。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2005-07-15
冒頭はどことなく、ミステリーかサスペンスのような始まり方ですが、内容は映画『エイリアン』と、ゾンビ映画を足したような内容です。
ゾンビ映画は今でこそ主流になっていますが、この当時は基本B級作品でした。
光原伸は大変なゾンビ映画好きなので、このストーリー以外にもゾンビが登場するエピソードがあります。
もっとも、単なるゾンビにしたのではなく、虫に寄生させることでひねりをきかせています。島は虫を研究する施設だったようですが、虫の正体は何なのか、そして、その虫を研究していた存在も果たして何なのか、というのが気になるポイント。
変わり果ててしまった人々もおそろしいですが、何よりも、こんなものを研究する人間が1番怖いです……。
2011年、すなわち連載開始から20年のときを経て『アウターゾーン』は復活しました。連載はホーム社の「コミック特盛」で、青年誌ということもあり、ジャンプ連載時よりも後味の悪い結末やラブドールなど、より性的嗜好が強く出ています。
絵柄も大分変化が出て、線が太くより濃い感じになり、ミザリィも含めた女性キャラはより目が大きくなりました。ジャンプ連載時は面長だった輪郭は、やや丸っこくなっています。
そのためジャンプ版と比べると、ミザリィのキャラクターはどこか柔らかくなっているように感じられるでしょう。その代わり、1巻収録の作品「魂の墓標」のように、シリアルキラー型のキャラクターなど危険な感じの人間が登場します。
- 著者
- 光原 伸
- 出版日
- 2012-12-19
おすすめは「侵略生物X」で、現在さまざまなコミックで見られる強力な力を持つ生物がどんどん人間を追いつめていくという、どことなくヒッチコックの映画『鳥』を連想させるような内容。しかし最後の意外などんでん返しは、まさに『アウターゾーン』ならではです。
またハードタッチの作風である一方、「どら猫マグ」のように動物を主人公とした作品もあり、これもジャンプ連載時ではなかった作風です。
ぜひこちらも、合わせてお楽しみください。
ここに紹介したエピソード以外にも、怖くて不思議な話がまだまだあります。さらにこの作者、ラブコメもうまいので、そちらが好きな人にもおすすめです。