『かがみの孤城』5つの謎をネタバレ考察!伏線が回収される見事な結末も解説

更新:2019.1.6

本作は、代表作『ツナグ』『鍵のない夢を見る』で知られる辻村深月の長編小説作品です。 作者が「ミステリー作家の青春小説」である事を心掛けながら執筆したという本作。いじめ・家庭環境・人間関係……さまざまな事情から居場所を無くした7人の子供達が、ファンタジーと謎に満ちた「鏡の城」をとおして、かけがえのない絆を育んで成長していく物語です。 読者を夢中にさせてくれる魅力、そして作中に散りばめられた5つの謎についてご紹介させて頂きましょう。

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『かがみの孤城』あらすじを簡単にネタバレ紹介!

 

2017年5月に発行。翌2018年に発表された「2018年本屋大賞」の受賞を受けて35万部の増刷が決定、さらに売上げを伸ばして2019年1月現在、累計発行部数は55万部を突破しています。

この項では、辻村深月ならではのミステリーが盛り込まれた本作の魅力を、あらすじとともにご紹介していき。

 

著者
辻村 深月
出版日
2017-05-11

 

いじめによって不登校になってしまった中学生・安西こころ(あんざい こころ)。部屋に閉じ籠り、閉塞感と焦燥感に苛まれる彼女の自室の姿見に、ある日異変が起こります。突然鏡から光が溢れだし、彼女は鏡の向こう側にある「鏡の城」に引き込まれてしまったのです。

その城には、彼女と同じように居場所をなくした7人の少年少女が集められ、オオカミのお面を被った不思議な少女ーー自称「オオカミさま」から「お前らの願いをなんでも1つ叶えてやる」と言われます。

「ただし、願いを叶えられるのはこの中の1人だけ」
(『かがみの孤城』より引用)

突然の出来事に戸惑う7人。オオカミさまから提示される幾つかのルールと、浮かび上がる謎。なぜ、この7人が選ばれて、この場所に?すべての謎が明かされる時、この物語の隠された顔が見えてきます。

生きづらさを感じているすべての人に贈る、涙と優しさに溢れた物語です。

 

作者・辻村深月を紹介!

 

『かがみの孤城』の著者・辻村深月(つじむら みずき)。この項では、本作の作者についてご紹介していきたいと思います。

2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞して、作家デビュー。2012年に『鍵のない夢を見る』で直木三十五賞を受賞した他、数多くの受賞歴を持ちます。

山梨県出身で、同県初の直木賞受賞者。2014から2016年と3年連続で本屋大賞に選出されており、2018年に『かがみの孤城』で念願の大賞受賞を果たしました。

 

著者
辻村 深月
出版日
2015-07-10

 

『かがみの孤城』は、多くの仕掛けや謎が散りばめられており、さりげなく開示される情報や人物それぞれの細かな反応のなかに巧みに織り込まれた伏線は、ミステリー作家としてデビューした彼女らしさを感じさせてくれます。

ミステリーとして楽しめる他、いじめ・不登校に関わる親子の関係・両親の離婚……多くの人にとって無関係ではいられないテーマが盛り込まれている本作は、辻村深月作品を初めて手に取る方でも入り込みやすいのではないでしょうか。

 

『かがみの孤城』の謎1:登場人物は、なぜこの7人だった?

 

この項では、主な登場人物達の謎について考察していきます。鏡の城に招かれたのは、なぜこの7人だったのでしょうか。まずは、7人がどういう人物なのかを見ていきましょう。

彼らの本当の名前は、こころ、ウレシノ以外、物語の終盤まで明かされる事がありません。名前ひとつ取っても、この物語を構成する重要な要素なのです。なので、ここでは彼らが名乗った通称でご紹介させて頂きたいと思います。

安西こころ(あんざい こころ)……クラスの中心的な女子からいじめを受けており、不登校になっている中学1年の女の子。彼女はクラスの中心人物・真田美織(さなだ みおり)に目をつけられ、理不尽な思いをしています。

担任の伊田(いだ)先生は、「真面目で責任感がある」美織の言い分を信じている節があり、こころの味方とはいえません。そんな、学校に居場所をなくしたこころの視点で物語は進みます。

 

  • リオン……ハワイの学校にサッカー留学している、ジャージ姿のイケメン少年。幼い頃に病気で亡くした姉・実生(みお)の存在を巡って母親とうまくいっておらず、本当は日本の中学校に通いたかった事を言い出せずにいます。こころと同じ中学1年生。
     
  • アキ……中学3年生。溌剌としていて明るいポニーテールの女の子です。攻撃的な部分があり、どこか無神経で人を人とも思わない素振りが見られるトラブルメイカーでもあります。
     
  • フウカ……言葉遣いがきつく、取っつきにくそうに見える中学2年生の女の子。つっけんどんで、はっきりとものを言うところがあります。強い言葉を平然と使う彼女に苦手意識を感じていたこころですが、徐々に心根の優しさを感じる事が出来るようになり、友人になっていく事に。
     
  • マサムネ……ゲーム好きで理屈っぽく、生意気な中学2年生。プライドが高く、皮肉っぽい言動で相手を馬鹿にしたような態度をとる事が多いので、反感を買いやすい性格です。
     
  • スバル……背が高く、「ハリーポッター」に登場する人物・ロンのような、そばかすのある中学3年生の少年。優しくて紳士的な性格をしていますが、途中からいかにも「遊んでる子」のような外見になり、城の仲間達を驚かせました。
     
  • ウレシノ……小太りで気弱そうな、食いしん坊の少年。中学1年生です。恋愛至上主義で惚れっぽく、城に招かれた3人の女子に次々と恋をして呆れられます。強引なアプローチで彼女達から辟易されていますが、めげません。自分がいじられキャラである事を、人から「軽く見られている」からだと自覚しており、その事に内心の憤りを抱えています。
     

 

さて、この7人には幾つかの共通点があります。

1つ目は「何らかの事情を抱えており、居場所がないと感じている」事。そして2つ目は、物語中盤にようやく明かされる「雪科第五中学校に通うはずだったけれど、通えていない」という事です。

特に2つ目の共通点は、重要なファクターでもあります。同じ中学校、同じ学区。しかし、彼らにはまったく面識がありません。なかには同じ小学校に通っていた者同士がいるにも関わらず、お互いの事をまったく知らなかった彼ら。それは一体なぜなのでしょうか。

積み重なっていく些細な違和感といくつもの伏線が、とある事実を浮かび上がらせていきます。マサムネは自分達をゲームの主人公キャラクターになぞらえて、1つの推論を導きだしますが……。

「どうしてこの7人だったのか」、この謎はぜひ本作を読みながら推理して頂きたい部分です。

 

『かがみの孤城』の謎2:オオカミ様とは何者?突きつけられたルール

 

オオカミさま

「鏡の城」に集められた7人の「お世話係兼お目付け役のようなもの」と自らを称した人物。オオカミのお面を着けており顔は見えませんが、小学校低学年くらいの女の子です。

なぜか芝居がかった話し方をしており、いつもピアノの発表会のようなドレスを着ています。呼べば現れる事もありますが、出てきてくれない事もあり、さらに呼んでなくても不意に現れて7人を驚かせたりもします。

自在に姿を消したり出来る事から、城のある空間と同じく超常的な存在のようにも思えますが、彼女は一体何者なのでしょうか。

そのオオカミさまが7人に突き付けたルールをまとめると、以下のようになります。

 

  • 城に隠された「願いの鍵」を見つけて、「願いの部屋」を開いた者は願いが1つ叶う。期限は、城に招待された日から翌年3月30日まで。
     
  • 城が開くのは、日本時間の9時から17時の間。
     
  • 願いの部屋に入った者が現れたら、城は3月30日を待たずに閉じる。
     
  • 誰かが願いを叶えたら城で過ごした記憶は消えるが、誰も願いを叶えなかった場合は城で過ごした記憶を保持できる。
     
  • 誰かが17時以降も城に残っていた場合、ペナルティとして「狼に喰われる」。1人がルールを破った場合、連帯責任として「その日城に来てた他の奴らも全員、戻れなくなる」。
     

 

そのルールのなかで鍵を探す事になる7人を「赤ずきんちゃん」と呼び、話す言葉には鍵を見つけるためのヒントが隠されている不思議な存在・オオカミさま。とある人物は、彼女について何か思うところがあるようですが……。

彼女の正体は、物語の最終盤で明かされる事になります。一体「誰」がオオカミさまなのでしょうか。推理しながら読んでみるのも面白いかもしれません。

 

『かがみの孤城』の謎3:登場人物たちは、なぜ会えない?

 

それぞれの現実から、鏡を通って城にやって来る7人。通路となる鏡は7枚あって、自分の鏡以外使用する事は出来ません。

彼らはやがて、リオン以外皆同じ雪科第五中学校に通う生徒だという事に気が付きます。学校の話題に関しては暗黙の了解的な沈黙があり、それに気付くのが遅れたのです。リオンは留学中ですが、「日本に居たなら通っていたはず」の学校が雪科第五中学校でした。

その事実を知って3月の別れが迫る冬休み、マサムネの願いで「全員で1日だけ登校する」事を決意した6人。「自分達は助け合えるのではないか」という希望を抱き、3学期の始業式の日に登校すると決めた矢先、彼らは驚きの事実に直面する事になります。

保健室登校したこころは自分以外の5人を探しますが、養護教諭に「そんな生徒はいない」と告げられてしまうのです。同じ学年で1人だけ名字も名前もわかっている「嬉野遥(うれしの はるか)」の名前を出しても、養護教諭の反応は芳しくなく混乱するこころ。

翌日城へ行った彼女は、他の皆もそれぞれ登校したけれど誰にも出会えなかったという事を知るのです。

発案者のマサムネはその事実をもとに、「自分達はパレレルワールドの住人で、それぞれが違う世界から来ているのではないか」と推測しました。もしそうなのだとしたら、7人は現実世界で出会う事は出来ません。

「助け合えるんじゃないか」といえるほど、お互いを心の支えにしてこの城で過ごしてきた彼らに突きつけられる現実。しかし、オオカミさまはその説を否定します。

しかし否定はしましたが、正解は教えてくれなかったため、こころ達はなんとなく「パラレルワールド説」を信じて、城での記憶、仲間が確かに居た記憶をもって、それぞれの現実に帰る事を望むようになるのです。

果たして、彼女達はパラレルワールドの住人なのでしょうか。7人が出会えない理由とは、一体何なのでしょうか。こころや他の皆が感じている微かな違和感がヒントになり、やがて解き明かされるこの謎に注目して読んでみるのもおすすめです。

 

『かがみの孤城』の謎4:喜多嶋先生は何者?

 

フリースクール・心の家の喜多嶋先生は、ショートカットが活動的な印象の、笑顔が優しい女性です。学校に居場所がなく、母親ともうまくいっていないこころは、あるきっかけで彼女に信頼を寄せていく事になります。

「学校に通えなくなったのは、絶対にこころのせいじゃない」と、母親に言ってくれたという喜多嶋先生は、現実世界でこころにたくさんの言葉を届けてくれます。

こころが自分なりに闘っている事を察してくれて、「闘わなくてもいい」という新たな道を教えてくれる彼女の存在は、こころに確かな救いをもたらしました。

7人のうち、ウレシノとマサムネは彼女を知っている様子で、フウカも心の教室というフリースクールに心当たりがあるようです。その心当たりが正解なら、パラレルワールド説は立証されない事になります。彼女の存在は一体……?

彼女の正体は、この本のラストに明かされる事になります。そして、こころが疑問に感じた「どうして現実でみんなと会えなかったのか」という謎を解くキーパーソンでもあるのです。

みなさんは、喜多嶋先生は「誰」だと思いますか?読み終わった際には読んだ事がある方と、語り合ってみたくなるかもしれない、重要な人物。幾つかの違和感の正体はここに繋がってくるのか!と、伏線が回収される際にはすっきりする事でしょう。読んでいて「おや?」と思った事は、ぜひ覚えていて頂きたいです。

 

『かがみの孤城』の謎5:その後はどうなる?伏線が回収される結末をネタバレ解説!

 

願いの鍵は使わない。皆が居た記憶を、忘れたくないから。

そんな思いで、穏やかに「城の終わり」を迎えようとしていた7人の日々は、突然の緊急事態を迎えることになります。

唐突に破られたルール。7人のうちの1人が、城から出ることを拒んだのです。そしてオオカミが牙を剥き、「食べられてしまう」仲間達……。ルール違反のペナルティは、こころ以外の全員を襲います。たまたま、その日城を訪れていなかったこころは、1人残されてしまったのです。

もう、皆を助けられるのはこころだけ。そして、その方法は「願いの鍵」を見つけて、「願いの部屋」への道を開く事で示されるのです。

彼女は、大切な絆を結んだ仲間達を助ける事が出来るのでしょうか。最後の冒険は、たった1人で立ち向かうしかありません。この結末は、ぜひ本作でお確かめください。

 

著者
辻村 深月
出版日
2017-05-11

 

物語に新たな光が当たって、隠されていた側面が明らかになっていくエピローグで、ある人物が口にする「大丈夫。大丈夫だから、大人になって。」というセリフは物語を通じて感じ取る、読了後に響く名言です。

その言葉は、かつて自分を救ってくれた言葉。そして、これからの「誰か」を救う言葉でもあるのです。さりげなく配置されている伏線が一気に回収されていく終盤の展開は秀逸で、本作が「問答無用の著者最高傑作」と評されるのも頷けます。

読了後にもう1度読み返してみたくなる一冊。最後に1つ、表立っては語られなかった伏線についてご紹介したいと思います。

ゲーム好きのマサムネがパラレルワールドについて説明する時に、とあるゲームについて語るシーンがあります。『ゲートワールド』で有名な、天才ディレクター「ナガヒサ・ロクレン」。これも、実は1つの伏線なのです。

この名字、そしてロクレン……六連星(むつらぼし)を連想させる、その名前。最終盤に放たれる、虚言で苦しんだマサムネを救うとある人物の一言が、一体どういう結末を迎えていたのかが、ここから推測されます。

全員の本名が最終盤にならないと明かされないからこそ生きてくるこの結末に気が付いた時、思わず感嘆の声が漏れてしまうかもしれません。

自分達は「助け合えない」と言ったマサムネに、オオカミさまは「助け合えない事もない」と答えました。その答えの意味が推し量れるようなこの仕掛けを、ぜひ堪能して頂きたいです。

 

ミステリー小説としても楽しめる感動作。おすすめです。

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