小説家であり、エッセイストでもあり、俳優業もこなすマルチタレント。それが今回ご紹介する漫画家・内田春菊です。1984年にデビュー。数々の浮き名を流し、その壮絶な人生が作品に反映されていることでも知られています。 性的虐待、驚くような恋愛遍歴、果ては大腸がんを患ったという彼女について、詳しくご紹介しましょう。
内田春菊(うちだ しゅんぎく)は長崎県出身、1959年8月7日生まれで、年齢は59歳(2019年1月現在)の女性です。血液型はA型。本名は、内田滋子です。漫画や小説、エッセイ、さらにはに女優と幅広く活躍しています。
小学生の頃から漫画家を志していましたが、当時の両親は大反対。詳しくは後述しますが、高校1年生の時に家出して上京し、印刷会社の写植やホステス、ウェイトレスなどで生計を立てていました。
このことから高校は強制退学となり、後に心理学を学ぶために慶應義塾大学通信教育課程に入りますが、こちらも退学してしまいます。
そうして職歴を重ねるなかで編集者・秋山道男に才能を見出され、1984年に「小説推理」に『シーラカンスぶれいん』が掲載されて漫画家デビューを果たしたのです。
- 著者
- 内田 春菊
- 出版日
以降は、伏せられがちな性事情に斬り込んだ作風で知られていき、同時代の女性作家・岡崎京子、桜沢エリカらとともに「女の子エッチ漫画家」として人気を博していきました。
代表作は『南くんの恋人』。平凡な高校生・南浩之と、なぜか身長が15cmになってしまった恋人・ちよみの不思議な同棲生活が描かれた作品でした。2015年までに4度も実写テレビドラマ化がされています。
- 著者
- 内田 春菊
- 出版日
小説家としては『キオミ』が芥川賞の候補になったことも。同作は、女性の視点からの性愛をテーマとした短編集です。不倫や妊娠へのストレートな感情の吐露が話題となりました。
内田は歌手や女優など芸能活動もしており、ドラマ『イアリー 見えない顔』や映画『闇金ウシジマくん』にも出演。インタビューなどでテレビに出る際には、着物で現れることが多々あります(お腹周りが楽なのだとか)。
夫とは離婚しており、現在は5人家族。子供は4人いて、長男から順に在波(あるふぁ)、長女・紅多(べえた)、次女・紅甘(ぐあま)、次男・出誕(でるた)です。皆、かなり個性的な名前がつけられていますね。このうち紅甘は、2007年から女優として活動しています。
内田春菊の壮絶な人生を語るには、まず中学生時代から始めなければいけません。
彼女は当時、同級生との間に子供を妊娠しました。それは中絶によって堕胎され、相手の同級生も転校して終わってしまうのですが、そこから酷いことがおこなわれるようになるのです。
以前から彼女は、養父から不必要なボディタッチを受けていたのですが、その一件以来、性的虐待を受けるようになったのです。しかも、実の母親公認で……。
それは、ある種の儀式のようなものだったそうです。彼女はこのつらさに耐えかねて、高校1年生の時に家出をします。
- 著者
- 内田 春菊
- 出版日
- 2018-11-22
その時の虐待経験から、ある小説が執筆されました。それが、主人公が母親の手引きで養父に犯される長編小説『ファザーファッカー』です。
そして、さらに2018年になって、同じ題材で、今度は娘を男に差し出す母親サイドを描いた小説『ダンシング・マザー』が発表されました。
「毒親」ものの執筆を依頼された内田が、母親目線で物語を書くことを思いつき、自分のなかの怒りと闘いながら執筆に取り組んだ一冊です。
そんな経歴が影響しているかは定かではありませんが、内田は非常に恋愛沙汰の多い奔放な女性です。
1度目の結婚は、一般男性が相手でした。妊娠はしたものの中絶し、DVが原因で離婚。その後、結婚相手ではない交際相手との間で、長男が生まれました。
2度目の結婚は、マネージャーと。長男出産で未婚の母となった内田が、体裁を整えるために結婚したようです。この時期に長女を授かるのですが、父親は2人目の夫ではないという話。
3人目の夫である俳優・貴山侑哉との不倫によって2度目の離婚をし、その後に3度目の結婚となります。ちなみに2人目の元夫については、ヒモの癖に慰謝料を取ってくる、とコメント。貴山とも2005年に離婚して、その後も同居は続けておりましたが、現在は別々に暮らしているようです。
子供たちのが父親がここまでバラバラというのは、なかなかのインパクトでしょう。それだけの子供を育てた彼女は、育児に関しても一家言があり、子育て相談にも乗っています。
こうして彼女なりに人生を謳歌してきた内田ですが、2015年にさらなる転機が訪れます。その頃、急激に痩せたという彼女は、検査の結果、大腸がんと診断されるのです。
さすがの内田もショックだったようですが、子供たちに支えられて人工肛門(ストーマ)を造設して見事に克服。そして新しい自分と、新しい世界を感じ、それを機に心機一転して、恋愛もお酒もきっぱり止めたのでした。
この大腸がん手術の経緯や闘病記録は、後述する漫画で公開されています。
2015年の春、作者にして主人公の内田春菊は、体型維持のため糖質制限ダイエットに挑戦。
見る間に痩せていくのですが……その度合いが尋常ではありませんでした。やがて激痛も感じるようになり、受診した大病院で、がんの告知を受けたのです。
- 著者
- 内田春菊
- 出版日
- 2018-01-10
こちらは、前述した大腸がん闘病記です。初期症状からがん発見の流れは、体験談だけあって非常にリアル。化学療法や手術の経緯、ストーマの説明など、大腸がんに関する知識が網羅されています。
60歳までにがんにかかる確率は男性で8%、女性で11%。決して高い数字ではありませんが、これは誰にも起こり得ることなのです。「その時」のために読んでおくのもよいでしょう。
続編『すとまんが~がんまんが人工肛門編~』もあわせてどうぞ。
朝起きると、先に起きたパートナーが食事を作っている。昼食、あるいは夕食もそう。それは日本のどこにでもある、当たり前の光景かもしれません。しかし、それは別に女性の役割でなくともよいはずではないでしょうか?
食事は妻が用意するもの。夫婦が夜の生活ですべきこと。押しつけられた価値観や、男のイメージする女性像を崩す、内田春菊のコミックエッセイとなっています。
- 著者
- 内田 春菊
- 出版日
本作は決して、男女や結婚生活の答えを提示するものではありません。女性らしくに縛られず、自分らしく生きるための1つの可能性が描かれていきます。そういった内容から、現代の女性こそ共感を得られるものといえるでしょう。
オールカラーで描かれているのが、嬉しいポイントです。
法的なパートナー(交際相手はいる)なしで経験する、初めての出産。
内田春菊自身の経験を元に、初出産から初めての育児、子育て中のあれこれまで、すべてが赤裸々に描かれた育児漫画の金字塔です。
- 著者
- 内田 春菊
- 出版日
- 1994-05-25
当時はまだ珍しい、シングルマザー視点の体験記。内田独特のシニカルで冷静な視点から、一連の出来事が淡々と描かれていくのが興味深いでしょう。
一応断っておきますと、完全なノンフィクションではありません。漫画的な創作を挟みつつ、体験を誇張した形の作品となっています。
それでも出産、育児に関する彼女の人生観はしっかりと反映されており、本音の部分が垣間見えて面白いのです。
『私たちは繁殖している』については<『私たちは繁殖している』実話?破天荒な面白さを17巻までネタバレ>で紹介しています。ぜひご覧ください。
いかがでしたか?「事実は小説より奇なり」とは言いますが、内田春菊の人生は、彼女の作品よりも波瀾万丈だといえるかもしれません。