活動歴30年を越えるベテラン女性漫画家・桜沢エリカ。デビュー当時から、等身大の女性を描いてきたことで知られる人気の作家です。『贅沢なお産』、はテレビドラマ化、『天使』は映画化もされました。また、かつて、情報番組の司会を務めていたことでも知られています。 今回は、そんな桜沢エリカの知られざる素顔をご紹介していきましょう。
桜沢エリカ(さくらざわ えりか)は東京都出身の女性漫画家で、誕生日は1963年7月8日です。年齢は55歳(2019年1月現在)。
小学生の頃に両親が離婚。母親の影響から、少女漫画に親しむようになりました。特に影響を受けたのは一条ゆかり、山岸凉子、竹宮惠子で、彼女らの作品を真似して絵を描いていたのが漫画家・桜沢エリカの原点といえるでしょう。
天使 (FEEL COMICS)
高校2年生の頃、自販機本(一般書店流通はなく、自動販売機のみに卸されたアダルト系雑誌の総称)の「少女アリス」に興味を抱き、出版元のアリス出版を訪ねたことから、漫画家の道を歩み始めることとなります。デビュー当時、彼女は19歳でした。
ちなみに「少女アリス」は1980年代の、いわゆるロリコンブームの先駆けとなった、サブカル界隈では伝説の雑誌です。
性的な内容までも含めた女性の内面をありありと描く作風で、同時期にデビューした岡崎京子、内田春菊とともに、3人は「女の子エッチ漫画家」と呼ばれていました。
私生活は、夫と長男長女の4人家族。その生活のなかで身の回りの経験や出産を元にした『今日もお天気』シリーズを発表しています。
TV番組にコメンテーターとして出演することも多く、比較的露出の多い作家といえるでしょう。その美貌が印象深いことでも有名です。
代表作は、出産体験エッセイの『贅沢なお産』、天使と東京の人々の関わりを描いた『天使』、主人公が卒業旅行でタイに離れて暮らしていた実母を訪ねる『プール』など。
『贅沢なお産』は2006年にテレビドラマ化され、あと2作は実写映画化されました。
- 著者
- 桜沢 エリカ
- 出版日
彼女は多作で、売れっ子漫画家です。そんななかで一男一女の母でもあるので、仕事との両立は大変そうに思えます。しかし、それでも日々の生活が成り立っているのは、夫・青木武紀(あおき たけのり)がしっかりサポートしているからこそ。
と、いいますか、育児を担っているのは、専業主夫である彼なのです。妊娠が判明した1999年、当時はまだクラブDJ兼店長だった青木に、桜沢は家事と育児に専念してほしいと申し出ます。
元々子供を欲しがったのは青木の方ということもあって、彼はこれを快諾。当時まだ珍しい、専業主夫となったのでした。
- 著者
- ["青木 武紀", "桜沢 エリカ"]
- 出版日
出産に関わる諸々は、桜沢のエッセイ『今日もお天気』でも紹介されています。こちらも育児のノウハウが詰まった大変素晴らしい本なのですが、ホメオパシー(簡単に言うと、毒を取り入れて耐性を付ける民間療法)や、反予防接種の描写にやや問題があることが指摘されています。
そういったものに少し抵抗がある方は、青木が体当たりで挑戦した育児をまとめた『青木パパの育児伝説』がおすすめです。一見の価値ありですよ。
ベテラン漫画家・桜沢エリカ。夫が専業主夫になっても、資金面でまったく問題がないほど収入があると言います。
先述したように、彼女は高校生でデビューしたのですが、ライターやイラストレーターも兼任して働いていたため、当時から月収が40万円ほどもあったとか。
羽振りがよかったことと価値観を養う目的もあって、ファッションや美容関係も徹底して「本物」重視。この辺りのこだわりについては、愛用品をつらねた『エリカスタイル』でも語られています。
女性の社会進出に先駆けるかのように有名になっていった桜沢エリカは、そのため女性の「あり方」についても一家言を持っています。
近年何かと「○○女子」や「女子会」などが取り沙汰されていますが、桜沢は真っ向から反対。『脱・女子』という、そのものずばりな本も出しています。
- 著者
- 桜沢 エリカ
- 出版日
- 2012-09-22
曰く「女子」は男性に守られたい、あるいは守られる前提の生き方であり、時代にそぐわないと言います。女性は男性から独立して、自由に自己確立した方が、楽しみが多いとのことなのです。
ちなみに、「モテ」について考えを巡らせ、たどり着いたのが「脱・女子」だったのだとか。
経済的にも、精神的にも自立していることが必要だと言いますが、誰かに依存せずに生きることができれば、それも自立していることになり、「脱・女子」に繋がるようです。このような独自の考え方があるのも、彼女ならではの魅力でしょう。
主人公・小優美(さゆみ)は、友人の英(はな)と2人で、夏期休暇を利用して避暑地の別荘に訪れていました。小優美は、夫婦仲が険悪になった英の夫の代わりに来たのですが、小優美の方も5年間付き合っている彼氏と倦怠気味でした。
女2人で気楽に過ごすはずだったのですが、そこへ道に迷った行楽客の男・裕介が現れます。年下でバーテンダーという彼に、小優美は忘れかけていた恋愛感情が揺さぶられるのを感じるのでした。
アロマチック・ビターズ 1 (Feelコミックス)
ファンタジーでもメルヘンでもない、大人のほろ苦い恋愛モノ。登場人物の感情の機微が、非常にドラマチックなお話です。
ラブストーリーではあるものの、いい意味で歯切れが悪く、収まりが悪いところなどが、とてもリアル。「女子」を卒業したアラサー女性には、共感するところの多い作品といえるでしょう。
マスコミ志望だった主人公・林田季美子は、念願叶って女性週刊誌の記者となりました。
その週刊誌「女性時代」の編集部には、50年以上も最前線で取材を続けてきたベテラン芸能記者・市松たま緒が在籍しています。季美子は、「生き字引」であるたま緒の追想で、華やかな昭和芸能界の光と影を知っていくことになるのです。
- 著者
- 桜沢エリカ
- 出版日
- 2016-05-18
「女性自身」で連載されていた、初の長編漫画です。一応フィクションということになっていますが、それぞれにモデルとなった人物と出来事があり、見る人が見れば何がモチーフかわかるようになっています。
それらをまったく知らなかったとしても、昭和レトロな世界観は現代では新鮮に映り、興味深く楽しむことが出来るでしょう。
20世紀初頭のフランス。そこで、たった20年間だけ活動していた私営バレエ団がありました。その名を「バレエ・リュス」。今日のモダンバレエの礎ともなり、20世紀前半の芸能の結晶とも言われる、伝説のバレエ団でした。
物語はバレエ・リュスの創始者セルジュ・ディアギレフの最期を看取った女性、ミシア・セールとココ・シャネルの視点で、その始まりから回想されていきます。
- 著者
- 桜沢エリカ
- 出版日
- 2017-10-07
奇跡を起こした2人の天才、ニジンスキーとディアギレフの知られざる素顔。対称的な彼らだからこそ出来た奇跡と、そんな2人だからこそ訪れた決定的な別離が、ロマンスを織り交ぜて語られる見事な構成です。
桜沢は同じバレエを題材として、日本のバレエの始まりに活躍した佐々木忠次を主人公とした『バレエで世界に挑んだ男 スタアの時代 外伝』も描いています。あわせて読むと、一層楽しめることでしょう。
いかがでしたか?桜坂エリカはさまざまな経験を積んだからこそ、あれほど多彩な女性像を作品で描けるのだなと、知れば知るほど納得の出来る作家です。ぜひ、その魅力的な作品たちに触れてみてください。