野蛮なオークに囚われてしまった女騎士……しかし彼女は、とてつもない肥満体型!手足も短く三頭身の見た目でも、プライドだけは人並み以上。そんなやっかいな彼女を持て余したオーク達は、なぜか彼女の性根を叩き直すべくダイエットを始めさせるのです。 ファンタジーのお約束をことごとく打ち破るこのコメディは、下のボタンのアプリから読むことができます。
人間が魔王と戦う、混沌の時代。人間は魔族以外にも、オーク族を野蛮な蛮族として敵視していました。
人間国の騎士団から特命を受けた主人公の女騎士は、単身でオーク族の縄張りに乗り込み、彼らを壊滅させようとします。
が、あっさり捕縛されてしまいました。何しろその女は、肥満体。鈍くさくて大した実力もないのに、口だけは達者な騎士だったのです。
- 著者
- くま
- 出版日
- 2017-03-17
オークの代表で若頭と呼ばれる男は、女騎士を尋問……ではなく質問攻めし、彼女の怠惰で駄目駄目な個人情報を聞き出します。まったく危険性がないことを認識した若頭は、酷すぎる彼女の現状を見て、なぜか彼女を一人前の騎士に育てると言い始めました。
最初は難色を示した女騎士も、なぜか口車に乗って、あっさり了承。そこからオーク族による、女騎士のハードなダイエット兼トレーニングが始まるのでした。
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本作は『オークが女騎士を育成してみた』というタイトルからして、若干の出オチ感のある漫画ですが、その中核を支えるのが主人公です。
今のところ本名を名乗るシーンがなく、単に「女騎士」あるいは「女騎士(仮)」と呼ばれています。(仮)と書いて「カッコカリ」と読み、そこから転じて「カッカリ」というあだ名を付けられました。
このカッカリ、オークが8頭身なのに比べて、なんと3頭身というビジュアル。まん丸で柔らかい頭部と、締まりのない胴体、棒のように起伏のない足がほとんど同じ比率です。
一応騎士の資格はあるようですが、体力テストの準備運動で息切れするほど運動音痴。当初は特訓で努力することも嫌がり、特技らしい特技もなく、なぜ騎士の資格があるのか不思議なほど。
何から何まで残念ですが、マスコット的なブサ可愛いさがあり、オークと接して精神的に成長していく部分が憎めないキャラなのです。
オークといえば、ファンタジーではお決まりの悪役です。粗野にして粗暴、非常に残忍で、人を襲う魔物。18禁方面では、女性キャラの陵辱担当というのが定番となっています。
そういった先入観からすると、本作のオーク達の人のよさに驚いてしまうでしょう。顔は怖いですが話は通じるし(むしろ常識人)、ある程度の教養も感じさせます。
どちらかといえば、後述する「くっころ」のように見当違いな言動をくり返すカッカリの方が、よほど奇妙に映るでしょう。
特に第2の主人公ともいえる若頭は、別格。若干脳筋気味ですが、オークとは思えないほど整った容貌で、思慮深い人格者です。若者ながら、実質的な集落のリーダー格。
とはいえ残念な面が1つだけあり、それは料理が壊滅的に下手なこと。しかも自覚がないので、タチが悪いのです。いつも付き従うオークの若手達が、その話題になると動揺し始めるのが面白いところでしょう。
また女性のオーク、シルルやソニアも登場するのですが、これがなかなかの美女。男所帯のトレーニングに揉まれたカッカリにとって、貴重な同性として接します(ただし彼女達も基本は脳筋)。
女騎士が善良でオークが野蛮というお約束とは違って、女騎士の方が残念でオークは善良というのが、本作の特色でしょう。
若頭の指示のもと、カッカリのトレーニングが始まります。どんな内容かといえば、途轍もなく地味な基礎運動です。
彼女は自慢の鎧を奪われ、これまた地味ーなジャージに着替えさせらます。こつこつ腹筋したり走り込みしたり、やる内容は現実世界でいう学校の体育とさほど変わりありません。理に適っているといえばそうなのですが、ファンタジーの世界観とのギャップが面白いところ。
そしてカッカリは毎回、真面目にトレーニングしようとせず、自分も同意したくせにしょっちゅうサボろうとします。
ダイエットへの意気込みだけはあるのですが、実態が伴っていません。楽して痩せたいという自堕落思考の表れなのです。
彼女はいかにしてサボるか、ダイエットメニューの合間にたらふく食うか、そんなことばかり虎視眈々と狙っています。痩せるためのトレーニングなのに、本末転倒になっているのが面白さに繋がっています。
上記の通り、カッカリはプライドばかりが高いだけで、騎士らしい部分はほとんどありません(人間側の陰謀に関する時だけは、キリッとした騎士らしくなります)。それにも関わらず、ファンタジーにありがちな高潔で気高い女騎士っぽく振る舞うのが、彼女の持ちネタ(?)です。
3頭身で落書きのような両目、色気の欠片もないのに、オークに対してこれから陵辱されると勘違いし、「くっ、殺せ!」と言い放つ姿には、見ていて苛立ちすら感じます。
18禁方面では、気丈に振る舞う女騎士の代表的ともいえるエロチック台詞なのですが、カッカリが言えばほとんどギャグと化します。こんなに嬉しくない「くっころ」は見たことがない、と本作のファンには評判です。
そもそもオークには彼女を性的にどうこうする気はないので、これはただただ彼女が1人で暴走している空回り。
これに限らず、自分の立場と見た目を無視して無理に女騎士っぽい発言をするところも、本作の面白い部分です。
若頭と喧嘩別れして1人村を出たカッカリが、ワイバーンの群れに襲われます。彼女は危ういところを間一髪で、駆け付けた若頭と精鋭部隊に救われました。
カッカリにとっては、心強い救援。思わずホロリとくる感動の対面だったのですが、オークらの勢いは止まりません。カッカリの無事の確認もそこそこに、巨大なワイバーンの肉を解体して、食糧確保に夢中となります。
- 著者
- くま
- 出版日
- 2018-02-19
安心するやら肩透かしやらで、悲劇のヒロインモードだった彼女も気落ち。このままでは気が済まないと、自ら名乗り出て力仕事の解体作業へと加わるのです。
自分本位だった彼女の成長が感じられるシーン……と思いきや、ワイバーンから逃げるのに必死で疲れ切っていたためか、無意識のうちに肉にかぶりつくのでした。
とはいえ、そこでカッカリと若頭が和解して感動的な場面になるかと思いきや、そうはなりません。最終的に、どこまでもカッカリが描かれます。ここまでいくと、食への飽くなき執念が、彼女のアイデンティティだと認めざるを得ません。
一方、人間側では何やら不穏な動きが。しかしカッカリと若頭をはじめとするオークを見ていると、なんとかなるのではという楽観的な気持ちになってきます。そんな風に異種族の友情を感じられるのが2巻の見所でしょう。
いかがでしたか?女騎士とオークの組み合わせで、なぜか誕生したダイエットファンタジー。おかしなところが多すぎて、読者は笑うしかありません。