『ZETMAN(ゼットマン)』面白さをネタバレ考察!桂正和の胸アツ漫画!

更新:2021.11.18

暴力的で陰惨な運命に立ち向かうヒーロー達の活躍を描く、ダークファンタジー『ZETMAN(ゼットマン)』。主人公たちを取り巻く強烈な悪意と、それを具現化したようなクリーチャー達とのバトルシーンが目白押しな、スリル溢れる作品となっています。 今回はそんな本作の面白さをご紹介します。なお、下のボタンのアプリから読むことができます。

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『ZETMAN(ゼットマン)』が面白さをネタバレ考察!【あらすじ】

 

左手の甲にリング状のコブを持つ不思議な少年・ジン。彼は人間離れした身体能力を武器に、困っている人々を助ける用心棒をしながら生計を立てていました。

そんな彼の正体。それは、なんと育ての親である神崎博士によって生み出された「ZET」という超生命体だったのです。

 

ZETMAN 1 (ヤングジャンプコミックス)

2003年11月19日
桂 正和
集英社

ジンは「プレイヤー」と呼ばれる人造生命体との戦いながら、自身やプレイヤーを生み出した「アマギコーポレーション」を取り巻く巨大な陰謀に巻き込まれていきます。

そして陰謀に立ち向かうなかで、彼はアマギコーポレーションの社長令息であるコウガと出会い、いつしか2人の間には因縁めいた絆が生まれるのでした。

2012年にはその人気からアニメ化!原作者である桂和彦が脚本に参加し、アニメオリジナルストーリーを書き上げ、原作とは異なるストーリー展開が好評でした。声優には浪川大輔、宮野真守が参加しています。

作者・桂正和とは

 

1981年に「週刊少年ジャンプ」にて「転校生はヘンソウセイ!?」を掲載してデビュー。その後に『ウイングマン』で連載デビューを果たしました。

その後は『電影少女』『I"s』といったヒット作品を世に生み出し、ジャンプの看板漫画家として活躍。その後は青年誌である「週刊ヤングジャンプ」に移籍しました。

本作『ZETMAN』も、ヤングジャンプ移籍後の連載作品となっています。

 

著者
桂 正和
出版日
2012-08-17

作者は、元々本作のようなSF作品を中心に描いていましたが、代表作である『I"s』のようにSF要素を取り払った作品も人気。また特徴として、持ち前の高い画力を活かし、性的な場面も含めた女性キャラクターのハイレベルな描写を得意としています。

本作中でも思わずドキッとするような描写が描かれており、持ち味を十分に活かした魅力が楽しめるでしょう。

桂正和の作品を集めた<桂正和おすすめ漫画作品ランキングベスト5!可愛い女の子に胸キュン!>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。

『ZETMAN(ゼットマン)』の見所1:異なる正義を追う、ダブル主人公のせめぎ合い!

本作は、タイトルの通りZETとして生み出された少年・ジンを主人公とした物語ですが、その対局に存在するもう1人の主人公が、コウガです。

まず、ジンこと神崎人(かんざき じん)は、あらすじのとおり神崎博士の研究から生み出された存在であり、人間ではありません。そのため、元々は心や感情を持ち合わせていなかったのですが、神崎博士の教育により、人間らしい人格を徐々に形成していきます。

それゆえに、体は成長しても、精神面が追い付いていない部分があるのです。一方で心に曇りがなく、ひたすら純粋な想いに従って行動できるのが特徴。そのため自分が守りたいと感じたものや、理不尽に虐げられる弱者の危機に対しては、自らを犠牲にしてでも守って戦おうとする気高さを持っています。

ZETMAN 2 (ヤングジャンプコミックス)

桂 正和
集英社

もう1人の主人公・コウガこと天城高雅(あまぎ こうが)は、どのような人物なのでしょうか。

彼は絶大な社会的権力を有する大企業アマギコーポレーションの社長令息であり、容姿・成績・身体能力すべて優秀。人当りもよく、女性からの人気も非常に高いため、作中でもまるでアイドルのような扱いを受けている好青年です。

そんな一見完璧に見える彼ですが、幼少期から憧れていた正義のヒーロー「アルファス」に強い憧れを感じている一面も。しかもこの憧れは少々子供っぽいところがある、といった程度では収まらないものでした。そのため自身が正義と信じる事が「善」で、それ以外は「悪」であるという、きわめて偏った価値観を抱いてしまっているのです。

ZETMAN 3 (ヤングジャンプコミックス)

桂 正和
集英社

これにより、正義を重んじるがゆえに融通が利かず、ただただ目の前の悪事を許せません。純粋に善行を働くジンとは対象的に、正義を成すがために善行を成そうとしてしまうのです。

物語が進むなかで、ジンと出会った事から、徐々にコウガの正義感も柔軟化していくことになります。しかし終盤では、ある事がきっかけで、この正義感の相違が決定的な対立を生む事になってしまうのです。

こうした「正義とは何か」を考えさせる2人の主人公の存在が、本作の重要な魅力であるといえるでしょう。

『ZETMAN(ゼットマン)』の見所2:明らかになっていく陰謀と深まる謎

本作はZETとして生み出されたジンと、ヒーローを目指すコウガを中心とした物語であるとご紹介しました。そんな2人を取り巻く環境が、物語を深く複雑にしていきます。

まずZETや、プレイヤーと呼ばれる敵のクリーチャー達は、先述のアマギコーポレーションが秘密裏に進めていた研究で生み出したもの。本来はコウガの祖父である天城光鎧(あまぎ みつがい)が、自らの野望のために進めていた「N・E・Tプロジェクト」という、まったく新しい地球人類を生み出す事を目的とした構想があったものでした。

その過程で派生した「プレイヤープロジェクト」にて、権力者達の娯楽用生命体として生み出されたのがプレイヤーだったのです。しかし、プレイヤー達がアマギコーポレーションから集団で脱走した事をきっかけに、光鎧は彼らの殲滅を決意します。

ZETMAN 4 (ヤングジャンプコミックス)

桂 正和
集英社

 

その過程で生み出されたのが、対プレイヤーのための戦力であるZETでした。本作は、こうした顛末から生まれた人間とプレイヤーの対立関係により生じるさまざまな事件に翻弄されつつも、それぞれの思惑と真相を解明しようと奮闘する、主人公達の物語なのです。

物語が進むにつれて、徐々にアマギコーポレーションを中心とした人間勢力の思惑と計画が明らかになっていきます。しかし、それと同時に謎が深まっていくのは、プレイヤー達の勢力である「エボル」の狙いです。

 

ZETMAN 5 (ヤングジャンプコミックス)

桂 正和
集英社

 

利権や過去の不始末の隠蔽という人間の目的とは異なり、エボルは同じ組織の中にあっても個人によって狙いが異なるなど、一枚岩ではありません。ジンと協力関係を結んだり、無差別に人間を殺戮したり、味方同士で殺し合ったりと、その目的は定まっていません。

また、彼らの首領であり始祖とされる存在については、その思惑がまったくもって明らかになっていないのです。

果たして何が狙いなのか、そしてジンたちにどのように接してくるのか、底が知れません。こうしたそれぞれの組織にある思惑がどのように絡み合っているのかを考察しながら読み進めるのも本作の楽しみのひとつです。

 

『ZETMAN(ゼットマン)』の見所3:シビアでハードな展開の数々……

 

本作は、物語全体を取り巻く沈痛でダークな雰囲気を演出する展開の数々も、大きな特徴といえるでしょう。

ジンはその出生の秘密もあり、人間からも、プレイヤーからも狙われます。物語の冒頭では、ホームレスとして自分達の素性を隠しながら生きていた神崎博士とジンが、カメレオン型のプレイヤーから襲撃され、結果として神崎博士は致命傷を受けて絶命してしまいます。

その際ジンは、生き物の死を理解しておらず、殺された神崎博士の死体を担いで、医者に連れて行こうとするのです。幼いジンが唯一の肉親の死を受け入れられず、街を駆けずり回る姿は悲壮と言わざるを得ません。

 

著者
桂 正和
出版日
2006-07-19

これ以降も彼は、ZETである自身を取り巻く運命に翻弄され、愛する人を失う悲しみを幾度となく味わいます。

対してコウガはといえば、こちらもかなり悲痛な体験をします。

ヒーローに憧れる彼は、とある事件に巻き込まれた女性達を救うため、身を呈して悪意に立ち向かいました。しかし、この時点では優秀とはいっても普通の人間に過ぎなかった彼は、守るべき人々を救えずほとんど目の前で殺されてしまい、酷い無力感に苛まれるのです。

著者
桂 正和
出版日
2007-10-19

この事件をきっかけに、コウガは真に力を持ったヒーローとなるため、より強い力を渇望するようになります。そして、アマギの科学力をもって実現した自身のヒーロー化計画「アルファスプロジェクト」によって、ついに超人的な身体能力を手に入れる事となったのでした。

しかし、絶望の淵から力を渇望するようになってしまった彼は、その根底で徐々に正気を失っていき、いつしか歪んだ正義感に囚われるようになります。

厳しい運命をくぐりぬけた先、2人の主人公の物語はどのように終着するのでしょうか。

『ZETMAN(ゼットマン)』の見所4:切ない最終回?衝撃的な結末を考察【ネタバレ注意】

本作はコミックス20巻まで発売され、第1幕が完結したところで物語は一時終焉を迎えています。今回は、そんな第1幕の最終回の魅力についてご紹介しましょう。アルファスプロジェクトの過程で生み出された不完全なヒーロースーツと、プレイヤーの力で得た身体強化の副作用である精神作用の影響により、コウガは正気を失ってしまいます。
 

自分の根底にある正義に反したおこないをする者はすべて悪であると判断するようになり、ついには自身の母親すらも手にかけてしまうのでした。

著者
桂 正和
出版日
2014-10-17

そんな正義感が暴走してしまったコウガとジンは完全に敵対する事となり、激しい戦いの末に、コウガはジンにトドメを刺す手前まで追い詰めます。そこでコウガは、悪の汚名を被って自らの犠牲をも厭わないジンの正義を目の当たりにして、正気を取り戻していくのです。

しかし自らの犯した過ちを明確に理解した事で、ジンは罪の意識から自殺を図ろうとして……。

一時は友情を芽生えさせ、お互いに敬意さえ抱いていた2人。しかし凶悪な運命に翻弄された挙句、それぞれの道を歩む事になるラストは、切なさを感じずにはいられません。

ここに至るまでのストーリーについては、ぜひご自身の目でチェックしていただきたいところ。彼らを待ち受けるさらなる試練に期待しながら、続編である第2部(ACT2)の再開を楽しみに待ちましょう。

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