急速に進んでいく「グローバル化」。世界が一体化し、従来よりも人やモノ、金、情報が国境を越えて移動するようになりました。この記事では、日常生活に与える影響や、メリットとデメリットをわかりやすく解説していきます。あわせて、もっと理解が深まるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
情報通信や交通技術などの発展により、世界が社会的、あるいは経済的に一体化されていく状態を「グローバル化」といいます。
かつて食料や工業製品などのモノは、国内で生産し、消費されることがほとんどでした。しかし「産業革命」をきっかけに、技術が急速に発展。貿易が拡大し、人やモノ、さらには金や情報が国境を越えて行き交うよう変化していったのです。その結果、現代の国家は他国の存在なしに成り立つことができない「相互依存」の状態にあるといわれます。
グローバル化により、私たちの生活は大きく変化しています。たとえば日本では、海外からの食料品の輸入が増え、食の国際化が進みました。また日本で暮らす外国人の数も増加。さまざまな文化をもつ人がともに暮らす「多文化社会」化も進展しています。
一方で、異なる文化間での軋轢が生じたり、その過程で伝統的な文化が消滅してしまうことを問題視する指摘があるのも事実です。また「相互依存」が強まった結果、ある一国の問題が世界中に影響を及ぼすようになり、問題を解決するために国際社会の協力が不可欠となるケースも増えています。
このようにグローバル化によって、良くも悪くも私たちの生活は大きく変化しているといえるでしょう。
上述したとおり、グローバル化とは世界の一体化のこと。欧米諸国の海外進出を中心に進められてきました。その歴史は意外と古く、始まりは15世紀なかばの「大航海時代」だといわれています。
スペインやポルトガルなどが航海技術をつけて遠海に出たことにより、それまでヨーロッパと交流のなかった南北アメリカ大陸が「発見」されました。また日本にはキリスト教や鉄砲が伝来し、戦国時代に大きな影響を与えています。
そして「産業革命」が起こった18世紀末から19世紀に、グローバル化は急速に進展することとなります。欧米各国は、市場と原料を求めて世界中に進出。その結果欧米で形成された「万国公法(現在の国際法の原型)」や「国民国家」という形態が世界中でスタンダードとなり、欧米の価値観を基準とする今日の国際社会が形成されていったのです。
この過程で日本も1854年に開国。明治維新が起こり、西洋の文化や風習を取り入れる「文明開化」という現象が発生しました。
このように、欧米諸国の影響を受けながら、各地でグローバル化が進展。そして今日では、あらゆる国家が他国の存在なしには成立しえないほど、深化もしているのです。
グローバル化は、私たちの日常生活にも大きな影響を与えています。
たとえばスーパーマーケットに行くと、国産の食料品だけでなく、外国産のさまざまな食料品が販売されています。大型貨物船や飛行機の開発にともない、外国で作られた商品を遠くに、早く、大量に輸送することが可能となったためです。
食料品だけでなく、衣服や雑貨などの日用品も、日本産の製品よりも外国産の製品を探すほうが容易いでしょう。このようにモノの移動が活発になった結果、私たちの日常生活は多くの外国産製品によって支えられるように変化したのです。
またグローバル化は、人の移動も活発にしています。日本を訪れる外国人観光客の増加、また日本に居を移す外国人も増え、異なる文化の人々が出会い、ともに暮らす「多文化社会」へと変化しつつあるのです。
さらに私たちは、インターネットを使うことで、どこにいても世界中の人と交流することができ、情報を得ることができるようになりました。このように、グローバル化によって日常生活は大きな影響を受けているといえるでしょう。
ここまで紹介したように、私たちの暮らしを大きく変えたグローバル化。しかしこの変化には、メリットもあればデメリットもあるといわれています。
まずメリットです。グローバル化にともない各国は、競争力のある製品の自国での生産に力を入れ、競争力の低い製品については海外から輸入する「国際分業」を進めています。その結果、従来よりも効率的な生産が可能となり、それぞれの国がより豊かに暮らすことができるようになりました。
また技術の進化によって最新の情報を得ることが容易になり、異なる文化や思考が出会いやすくなったことが、さらなる技術革新を促進していると指摘されています。
その半面、たとえば日本では「国際分業」の結果農業が衰退するなど、輸入の増加が自国の産業に大きな影響を与える場合があります。グローバル化には競争力の低い産業を淘汰する弱肉強食の側面があり、デメリットだといえるでしょう。
また、確かに多くの国が豊かになっている一方で、先進国と途上国では厳然たる賃金の格差が存在します。グローバル化を通じ、先進国による途上国からの搾取が続いているという指摘もあるのです。
欧米の価値観をもとにして世界が一体化した結果、非欧米圏の文化が破壊されることも問題視されています。たとえば日本でも和服を着ることは稀になり、日常生活は洋装が一般的でしょう。良くも悪くも文化が均一化されてしまうことは、ひとつのデメリットだといえます。
さらに、文化が破壊されることへの反発や、異なる文化と接することで生じる違和感などが原因となり、民族同士の対立が発生してしまうことも。グローバル化を通じて人々の交流が盛んになった結果、対立も表面化するようになっているのです。
このような状態を踏まえ、日本の行政はグローバル化に対応した教育方針の転換を進めています。2009年に文部科学省が開催した「第1回国際教育交流政策懇談会」で配布された「グローバル化と教育に関して議論していただきたい論点例」には、グローバル化が進む世界において必要となる「教育」の要点について、次のように記されていました。
グローバル化は(中略)国際競争を加速させるとともに、製造業等の海外移転による国内雇用の変化をもたらしている。(中略)
これらを背景に進展している競争社会において、自己の能力を発揮し社会に貢献するためには、基礎的・基本的な知識・技能の習得やそれらを活用して課題を見いだし、解決するための思考力・判断力・表現力等が必要である。(中略)
同時に、「共存・協力」も必要である。国や社会の間を情報や人材が行き交い、相互に密接・複雑に関連する中で、世界や我が国社会が持続可能な発展を遂げるためには、(中略)異文化を背景に持つ者や自然と共に生きることができる寛容な精神を涵養することが求められる。
また、グローバル化の中で、自分とは異なる文化や歴史に立脚する人々と共存していくためには、自らの国や地域の伝統や文化についての理解を深め、尊重する態度を身に付けることが重要になっている。
ここでまとめられているように、グローバル化の進展にともない生じているさまざまな問題を乗り越えるために、自発的に行動する力を養うことと、寛容な精神を育むことが求められているといえるでしょう。
- 著者
- 村井 吉敬
- 出版日
- 2007-12-20
1988年に刊行された『エビと日本人』の続編にあたる作品です。グローバル化にともない、日本人の食生活がどのように変化しているのかを「エビ」を中心に論じています。
本書では特に、環境破壊や低賃金労働の増大に焦点を当てて解説。効率的なエビの養殖手法が世界中に普及した半面で、マングローブ林の破壊や水質汚染などが深刻な問題となっているのだそうです。さらに、エビを生産する南半球の国々と、消費する北半球の国々の間では格差が拡大する一方……。
本書を読むことで、グローバル化は食という身近な場面にも影響をおよぼしていること、そして日本人の食を支えるために、実は世界中でさまざまな問題が生じていることを理解できるでしょう。
- 著者
- エマニュエル トッド 柴山 桂太 中野 剛志 藤井 聡 堀 茂樹 ハジュン チャン
- 出版日
- 2014-06-20
「経済発展のためにグローバル化は不可欠である」という主張に対し、真っ向から反論を唱えた作品。
登場する国内外の6人の論者は、それぞれの観点からグローバル化の進展が格差の拡大や社会の崩壊をもたらすと警告しています。本書を読むことで、グローバル化を通じてどのように資本主義の弊害が拡大したのかが理解できるでしょう。
さらに、弊害があるにもかかわらずグローバル化に歯止めがかからない理由として「エリートの劣化」を挙げています。
グローバル化の課題を確認し、今後の在り方を考えるうえで、意見のひとつとして参考になる作品です。