『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」に登場するキャラクター。元警官のギャングという異色の経歴を持つ男で、トリッキーなスタンド能力を含めて魅力的な人物となっています。2018年から放送のテレビアニメ版でも活躍中です。 今回はそんなアバッキオについて、詳しくご紹介していきましょう。本作は下のボタンアプリから読むことができるので、そちらもどうぞ!
第5部「黄金の風」の登場人物。アニメ版の声優は、諏訪部順一です。
アバッキオの名前の由来は、イタリア語の「Abbacchio」で、これは「子羊」という意味。 長い髪の毛が特徴的で、頭に星型(?)の皿のような飾りを乗せているため、ファンからは「カリメロ」(アニメのキャラ)と呼ばれることもある独特な髪型をしています。
美しい顔立ちをしており、まるでモデルのようですが、女性的なところはありません。むしろ言葉遣いも荒く、チームのなかではもっとも男らしい人物をいえるでしょう。
第6部のキャラクターである、ナルシソ・アナスイと似ていると言われることもあるようです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1997-04-01
1980年3月25日生まれの年齢21歳。体重は不明ですが、身長は188cmとかなりの高さです。
目の色はカラーページから紫や金であることが伺えますが、実際のところは不明。唇は紫色です。一人称は「オレ」で、ぶっきらぼうな性格をしています。黒革のロングコートのような服装がトレードマーク。白ワイン、ピッツァ・マルガリータが好物です。
元々は正義感ある警察官でしたが不正に手を染めてしまい、それが原因で同僚が殉職したことから警察を追放され、路頭に迷っていたなかで組織「パッショーネ」に入団しました。
後述しますが彼の初登場時の行動に、読者はかなり驚かされたはず……。ブチャラティの部下であり、フーゴ、ナランチャ、ミスタ、そして主人公のジョルノらとともに、トリッシュの護衛チームとなります。
5部の護衛チーム、暗殺チームを紹介した<「ジョジョ」5部の護衛チーム、暗殺チームを徹底比較!名言や能力、強さなど>もあわせてご覧ください。
先述したように、彼の初登場は非常に奇抜でした。ブチャラティが連れてきた新入り・ジョルノにお茶を振る舞うのですが……なんと、その中身は、彼の尿!
実はジョルノが来る前、紅茶の入っていたポットに尿を入れ、「お茶でも飲んで話でもしようや」と持ちかけてジョルノに飲ませようとしたのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
ジョルノは口を近づけたタイミングで、このことに気づきます。アバッキオを含めたチームのメンバーが笑いをこらえながら彼を見つめるなか、なんとジョルノは、それを一気に飲み干したのです。
彼はスタンド能力で歯をクラゲに変えてから一息に飲み干し、尿を吸い取ってもらっていたのでした。この驚きのフォーマンスを見せ、見事アバッキオの手荒い歓迎をかわしたのです。
「ジョジョ」シリーズ屈指の気持ち悪い、迷シーン。このシーンのお茶は、ファンから通称「アバ茶」と呼ばれています。
ジョルノについて紹介した<ジョルノ・ジョバァーナに関する10の事実!ジョジョ5部の主人公が最強!>もあわせてご覧ください。
彼の過去がはっきりと描かれるのは、52巻のイルーゾォ戦です。
前職は警察官。警察時代の髪型は短髪で、現在のやさぐれた印象と違って前向きで、希望に満ちた表情をしていました。
正義感を持って警察官になった彼でしたが、仕事をとおして見えてくるのは汚い現実。それを目の当たりにした彼は、段々と不正に染まっていきます。そして、ある時に賄賂をもらい、違反を見逃してしまうのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1997-04-01
その後、犯罪者を追うなかで、彼に衝撃的な出来事が起こります。なんと彼が追っていた犯罪者は、かつて自分に賄賂をよこしてきた人物だったのです。
汚職の事実がバレることをおそれたアバッキオに、つい迷いが生じてしまいます。そんななか、相手が銃を持っていることに気づいた先輩警官が彼を庇って……。
アバッキオは汚職警官となり、先輩警官は殉職するという、最悪の結末を迎えることになったのでした。
彼のどこかやさぐれた性格は、この過去の経験からきているものなのかもしれません。しかし、かつて警官を志した時にあった正義感は今なお彼のなかで燃えて、チームのため、そして任務のために行動しているのです。
彼のスタンドは「ムーディー・ブルース」。破壊力は人間並みにしかありませんが、能力を発動させた場所で、過去そこにいた人物の行動を再生(リプレイ)することができます。
しかし、めぼしい戦績がないこと、さらにはゲーム版では本人の喧嘩殺法じみた腕っぷしの方が使いやすいこともあり、本体の方が強いと言われることも。5部では、最弱のスタンドかもしれません。
加えてジョルノに対して否定的な言動をくり返すことから、一部のファンから「うざい」「いらない」などと言われることもあります。
しかし、謎解きに関して言えば、最強クラス。答えを覗き見るチートといえるでしょう。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
彼のスタンド初登場は、船の上での戦いとなった、ズッケェロとのバトルでした。敵のスタンド「ソフト・マシーン」は、空気の抜けた風船のように物体を薄くすること。最初はこの能力に気づかず、仲間が1人、また1人と消えていってしまったのです。
その際、謎解きのために登場したのが、ムーディー・ブルースでした。しかし、彼らの乗る船と、ペラペラにされたヨットが重なった二重造像になっていて、そこに敵が隠れているという予想もできないトリックが使用されていたため、むしろアバッキオの能力がやや混乱を招くことに……。
結局、アバッキオ本人がズッケェロの能力に気付いたことで、最後は勝利に繋がりました。
ムーディー・ブルースは万能ではありませんが、うまく使えば、情報サポート能力として大変有能です。しかし、そのせいで、彼はやがて敵から目をつけられてしまうことになるのでした……。
彼のスタンド能力は、イルーゾォとの戦いでも活かされました。イルーゾォの「マン・イン・ザ・ミラー」は、鏡に映った人物を鏡の中に引きずり込むという、おそるべきスタンド。しかも彼が許可したものだけ引きずり込むことが可能なので、本体とスタンドを切り離すことができるのです。
戦闘のなかで鏡の秘密に気付いたアバッキオは、ムーディー・ブルースの能力を使用してスタンドを自分の姿にさせ、イルーゾォの虚をつくことに成功します。しかし、その後、本体の左側とスタンドの右側を鏡の中に入れられて、行動不能となってしまいました。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1997-02-01
窮地に立たされた彼は、自分の体より任務を優先。なんとムーディー・ブルースの右手を切り離して巻き戻し、ボスから取りに行くように指示されていた「鍵」をジョルノの元へ送るのです。自分の生死も顧みない、アバッキオの強い意志が感じられるイケメンなエピソードでした。
ちなみに、この切り離した手は、ブチャラティのスタンド「スティッキィ・フィンガーズ」で治してもらっています。治すといっても、ジッパーでくっつけただけですが……。
トリッシュを殺害しようとしたボスを裏切った護衛チームは、飛行機でサルディニア島に向かいました。ボスの正体を、ムーディー・ブルースで再生するためです。
しかし、その狙いはボスも気づいていました。自らの正体を隠すボスにとって、ムーディー・ブルースの能力は非常に邪魔だったのです。そして、アバッキオに魔の手が忍び寄ります。
アバッキオは海辺で、ボスの正体を探るべく、スタンドを使用していました。そんななか、あるサッカー少年がスタンドを出し、アバッキオは腹部に穴を開けられてしまいます。まさに一瞬の出来事で、即死でした。その少年こそボスであり、スタンド「キング・クリムゾン」だったのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1998-08-01
しかし、彼の死に関しては「その後」が描かれます。
アバッキオは穏やかな街のレストランで、食事をとっていました。そんななか、ある警官が、割れたガラスを1枚1枚調べています。警官と話した彼は、こう言われます。
大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている
向かおうとする意志さえあれば(中略)いつかはたどり着くだろう?
向かっているわけだからな……………違うかい?
(『ジョジョの奇妙な冒険』59巻より引用)
アバッキオは、この警官の姿勢を羨ましく感じ、中途半端な自分を悔いるのです。そんな彼に対し警官は、「そんなことはないよ、アバッキオ 」「お前は立派にやっている」と言いました。実はその人物は、かつてアバッキオを庇って殉職した、先輩警官だったのです。
アバッキオが正義を取り戻し、物語から退場する「今にも落ちて来そうな空の下で」と題されたこのエピソードは、先輩警官の名言とあわせてシリーズ屈指の名場面となっています。
その後、ブチャラティは次善策のため、アバッキオの死体を置いていくことを決意。そんななかで、ジョルノはアバッキオの手に握られていた何かの破片に気づきます。それは、ムーディー・ブルースによって完成された、ボスのデスマスクだったのです。これが、ラストバトルに繋がる手がかりにもなりました。
最後にアバッキオの名言、名場面ベスト5をご紹介しましょう。チームの年長者で捻くれキャラであることから、彼のセリフには渋さが光ります。しかし、それこそが彼の魅力なのです。
もし今フーゴのかわりにオレが襲われているのだとしても
オレは見捨ててほしいと思う
(『ジョジョの奇妙な冒険』52巻より引用)
イルーゾォのマン・イン・ザ・ミラー戦で言った名言。仲間の救助より任務を優先させる、非情な宣言とも捉えられるでしょう。しかし、仲間を本当に信頼しているからこそ言える、マフィアらしいセリフでもあるのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1997-04-01
許可するだって? オレだけ入る事を?
グラッツェ(ありがとよ)! 引きずり込まれてやるぜ!
(『ジョジョの奇妙な冒険』52巻より引用)
こちらも同じく、イルーゾォ戦で言った名言。アバッキオは鏡の世界に引き込む能力を見抜き、それを逆手に取って奇襲しました。柔軟性としたたかさが窺える、かっこいいシーンでしょう。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1998-01-01
くっそォ――――ジョルノ…
ボゴボゴにブン殴ってやろうと思ったが…
手がこんなんじゃあそれもできねーか……
いずれってことにしといてやるぜ…
(『ジョジョの奇妙な冒険』52巻より引用)
イルーゾォ戦後、満身創痍のアバッキオが言った名言です。憎まれ口を叩きながらも、ジョルノを認めつつあることがわかります。ストレートに言わないのが、逆に魅力的。
オレの落ちつける所は…………ブチャラティ
あんたといっしょの時だけだ…………
(『ジョジョの奇妙な冒険』56巻より引用)
ブチャラティが組織への裏切りを決めたシーンでの名言です。当初ブチャラティの判断に否定的かに見えたアバッキオが、なんと真っ先に賛同。組織よりも仲間を重んじる、彼の仁義が垣間見えます。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1998-08-01
以前オレは…警官になりたいと思っていた…
子供のころから…ずっと、
りっぱな警官に……なりたかったんだ……
かつてあんたのような『意志』をいだいていた事もあった……
でもだめにしちまった…オレって人間はな…………
くだらない男さ なんだって途中で終わっちまう
いつだって途中でだめになっちまう…………
(『ジョジョの奇妙な冒険』59巻より引用)
カフェテリアで警官に述懐した名言です。アバッキオが弱音、本音を見せた唯一の場面。その言葉を受け、警官はこう返します。
アバッキオ おまえはりっぱにやったのだ
そしておまえの真実に『向かおうとする意志』は
あとの者たちが感じとってくれているさ
(『ジョジョの奇妙な冒険』59巻より引用)
同僚がアバッキオに対し、やり遂げたと称賛する一連のシーンは、シリーズでも屈指の名場面となりました。
いかがでしたか?アバッキオはまさに、殉職と言うべき最期を遂げます。その死が仲間に与えた影響、勝利の貢献を考えると思わず胸がアツくなる、そんな名キャラクターといえるでしょう。