海賊王になるため仲間達と一緒に海に出て、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を目指すモンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味。そんな本作は、さまざまな敵との戦いや仲間の大切さなどを描いた、冒険アクションです。ここでは、麦わらの一味のコックであるサンジについて紹介していきます。彼の意外で壮絶な過去とは……?
※2018年時点のデータです
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 1999-03-04
黒いスーツ姿に渦巻き眉毛、くわえタバコがトレードマーク。髪は金髪で前髪が長く、2019年5月現在は左目を覆っています(以前は右目でした)。
麦わらの一味ではコックを務め、その腕前は超一流。一味が立ち寄った町や村では、珍しい魚や食材を購入したり、レシピを手に入れる姿も描かれています。過去に遭難して過酷な空腹体験をしているため、相手が敵であっても空腹の奴には食わせるという器の大きさを持っています。
基本的に冷静沈着で、一味のバランスを取るような場面も多く見られる人物。悪魔の実の能力者ではないですが戦闘能力は高く、手ではなく足を使った攻撃がメインです。
また、超が付くほどの女好きで、女性を見るとすぐに口説いてしまう一面も……。子供の頃から「男は女を蹴ってはいけない」と教えられているため、たとえ敵であっても蹴る事はしません。そんな騎士道の精神を持つ、かっこいい一面もあるのです。
サンジと一味の出会いは、東の海編です。サンジの働くレストランを訪れたルフィ達ですが、そこに海賊が現れた事で、事態はレストランをも巻き込む展開になっていきます。
ルフィは、麦わらの一味のゾロとウソップとともに海上レストラン「バラティエ」に立ち寄ることに。そこで、スープに虫を入れてクレームをつける客をボコボコにしているサンジと出会います。するとその場に、東の海で最強最大のクリーク海賊団のギンが現れるのです。
お腹を空かせたボロボロの姿で、そのうえお金も持っていないギンに、サンジは温かい食事を食べさせます。その気持ちとおいしさに、泣きながら食べるギン。その光景を見ていたルフィはサンジを気に入り、仲間に誘うのです。しかし、
それは断る
おれはこの店で働かなきゃいけねェ理由があるんだ
(『ONE PIECE』6巻参照)
と断られてしまうのです。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 1998-12-03
すると今度はレストランを乗っ取ろうと、クリーク海賊団本隊がレストランを襲撃。しかしサンジにとって、ゼフがオーナーを務めるこのレストランは絶対に守らなければいけない店でした。
サンジが子供だった頃、彼の乗っていた船は、当時海賊だったゼフが率いるクック海賊団に襲われ、海に落ちてしまいます。それを助けてくれたのがゼフでしたが、そのせいで遭難し、さらにゼフは右足を失う事になりました。つまりサンジにとって、彼は命の恩人だったのです。
そのゼフの夢であり、大切にしているレストランを守るため、サンジはクリーク海賊団と戦います。それを知ったルフィも一緒に戦い、東の海で最大の勢力を持つ船長ドン・クリークを倒すのです。
サンジのコックとしての腕や義理堅さを気に入ったルフィは再び麦わらの一味に誘いますが、今回のことがあったからなおさら離れられないと言うサンジ。
ここでコックを続けるよ
クソジジィにおれの腕を認めさせるまで……
(『ONE PIECE』8巻参照)
しかし、そのうえで、いつかグランドラインに行きたいという夢も語るのです。その気持ちを理解していたゼフは、わざと冷たい態度を見せ、サンジが出て行くように仕向けます。ですが、サンジもまた、それがゼフの優しさである事はわかっていました。
心ではわかりながらも、憎まれ口を言い合う2人。しかしサンジが出て行こうとした時に、ゼフの「おいサンジ、カゼひくなよ」の一言に涙があふれ、サンジは感謝の言葉を告げるのです。そして彼は大海原へと旅立ったのでした。
こうして彼は、麦わらの一味4人目の仲間になったのです。
麦わらの一味については<漫画「ワンピース」麦わら海賊団メンバー一覧!ついにジンベエが加入!?>の記事で紹介しています。改めておさらいしたい方はぜひご覧ください。
麦わらの一味になったサンジですが、これまで過去についてあまり明らかになっていませんでした。また生い立ちを話したがらない事や、突然彼の手配書だけONLYALIVE(生け捕りのみ)に変更された事などから、さまざまな噂が囁かれました。
しかし遂にホールケーキアイランド編で、その過去が明らかになります。しかし、これが原因で、後に彼が麦わらの一味を抜ける事態に発展してしまうのです。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 2017-08-04
これまでにサンジは北の海(ノースブルー)生まれだと語った事がありましたが、それ以上は話そうとしませんでした。その理由が、ホールケーキアイランド編の回想シーンで明らかになります。彼の正体はジェルマ王国の生まれで、ヴィンスモーク家の3男。つまり、王子だったのです。
ヴィンスモーク家とはその昔、北の海を支配していた王族で、現在は国土を持たず大船団を組み、ジェルマ王国として生活する海遊国家です。またジェルマ王国は「戦争屋」と呼ばれる科学戦闘部隊、ジェルマ66を所有しています。
ジェルマ66を率いる国王は、サンジの父であるヴィンスモーク・ジャッジ。つまり、サンジの本名はヴィンスモーク・サンジだったのです。兄弟は姉のレイジュ、長男イチジ、次男ニジ、四男ヨンジで、レイジュ以外は4つ子。
戦争に勝つことがすべてと考えるジャッジは血統因子を施し、生まれてくる子供を感情を持たない人間兵器にしようと考えます(レイジュ以外)。しかし、これに反発した母親のソラは、劇薬を飲んで抵抗します。しかし、その抵抗も虚しく、生まれてきた男の子達は感情を持たないマシーンのような人間だったのです。
しかしサンジだけは、感情を持った普通の子供でした。当然、兄弟のなかで彼は落ちこぼれだったため、いつもイジメられていました。そんな彼の心の救いは、自分の作った料理をおいしいと食べてくれる母ソラでした。しかし、そんな彼女も、体を壊して、遂には亡くなってしまいます。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 2017-02-03
ある日サンジの能力の無さに見切りを付けたジャッジは、サンジを牢獄に閉じ込めます。しかし、あまりに酷い仕打ちに姉のレイジュが彼を逃がそうとしますが、なんとジャッジに見つかってしまうのです。
牢獄に戻されると思いきや、「自分からいなくなってくれるなら助かる」と言われ、さらにこのように告げるのでした。
私がお前の父親であることは
絶対に人前では口に出さないでくれ!!!
誰にも知られたくない汚点なのだ……わかるよな?
(『ONE PIECE』84巻参照)
そしてサンジは、泣きながら国から出て行ったのです。
こうして家族から邪魔者扱いされ出て行った彼は、この後ゼフと出会ってコックになります。父親から愛情を受けてこなかった彼にとって、ゼフの存在は父親のようなものだったのかもしれません。
ホールケーキアイランド編では、なんとサンジが四皇(皇帝のような強さを誇る海賊4人)の1人ビッグマムの娘プリンと結婚する事になります。しかし、そこにはヴィンスモーク家が大きく関わっていたのです。
父ヴィンスモーク・ジャッジはジェルマ66がビッグ・マム海賊団と同盟を組むため、幼少期に見切りをつけ捨てたサンジを使い、政略結婚を企てます。そのためにわざわざサンジの手配書を「ONLYALIVE(生け捕りのみ)」に変更させたのです。
そしてサンジを呼び出し、拒否すれば麦わらの一味や恩人ゼフの命はないと脅します。そこにサンジを助けるためルフィが現れますが、自分1人が犠牲になれば誰も傷つかずに終われると考えたサンジは、わざと悪態をついて一味を抜けようとするのです。
さらに、初めてルフィと本気で決闘をします。しかし、サンジにボコボコにされても、ルフィは1度も手を出しません。サンジの考えをわかっているので、殴り合いに応じなかったのです。
そして、その場を去るサンジに
おれはお前の作ったメシしか食わねェ!!!
(中略)必ず戻ってこい!!サンジ
……お前がいねェと…!
俺は 海賊王になれねェ!!!!
(『ONE PIECE』84巻参照)
と叫び、それを聞いたサンジは背中越しに涙を流しながら、その場を後にします。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 2017-02-03
もう、麦わらの一味には戻らない。そう決めたサンジは、ルフィ達に手を出さない事を条件に結婚を決意。しかし偶然プリンの会話を聞いてしまい、ビッグ・マム海賊団が結婚式当日に、サンジを含むヴィンスモーク家を皆殺しにするという計画を立てていることを知るのです。
驚きとショックを隠せないサンジでしたが、ルフィの元に行ってすべてを話し、仲間の元に戻りたい気持ちや家族を助けたいという本心を伝えます。それを聞いたルフィは彼の思いを受け入れ、式をぶっ壊そうと提案。そしてジャッジ達の救出と、同時にビッグマム暗殺を企てるのです。
結果的にビッグマムの暗殺は失敗に終わりますが、ジャッジ達の救出には成功。ジャッジは、恨んでいる自分をなぜ助けたのかと聞くと、サンジは「父親(ゼフ)が悲しむ。あの人に顔向けできない生き方はしない」と答えます。
そして2度と俺の前に現れるなと言い、ヴィンスモーク家と決別。その後、結婚式をメチャクチャにされ、大好きなウエディングケーキまで壊されたビッグマムが「食いわずらい(食べたいものを口にするまで納まることはない)」を起こし、暴れます。サンジ達は急いで新しいケーキを作ってビッグマムに食べさせ、事なきを得たのでした。
ホールケーキアイランド編は、基本的にサンジが主役のストーリー。ですので、彼の自己犠牲、友情、尊敬、義理、男気など、普段あまり見せないいろいろな顔が見えました。彼のファンは、必見です。
サンジは、悪魔の実の能力者ではありません。さらにコックという事もあり、手を使った攻撃もしませんし、武器も持ちません(ウォーターセブン編で、ワンゼ相手に1度だけ包丁を使っています)。
しかしゼフに教わった足技を駆使し、いろいろな敵を倒します。ここでは、そんな彼の必殺技や、覇気について紹介しましょう。
サンジの技名は料理に関する言葉を用いたものが多く、受付(レセプション)、反行儀(アンチマナー)キックコース、粗砕(コンカッセ)、三級挽き肉(トロワジェム・アッシ)などさまざまな蹴り技があります。
頂上戦争編の後に一味が別々に2年間修行する事になり、その際にサンジは技のパワーアップや新技を習得。特に足の回転で摩擦を起こし、発熱させて攻撃する「悪魔風脚」は、炎を纏い攻撃力がパワーアップしています。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 2018-09-04
さらに、水を蹴り水中を移動する「海歩行(ブルーウォーク)」やCP9(世界政府直下暗躍諜報機関)が使う体技の1つ「月歩」のように空中を歩く空中歩行(スカイウォーク)なども習得しました。
また覇気も習得していて、魚人島編ではパシフィスタを倒すときに「武装色の覇気(見えない鎧を纏う感覚の能力)」を使い、パンクハザード編では涙の落ちる音を感じ「見聞色の覇気(心の声や感情を聞く能力)」も習得している事がわかりました。
さらにワノ国編では、兄弟のニジに貰ったレイドスーツ(ジェルマ66の戦闘スーツ)が攻撃力・防御力・スピードが上がるだけでなく、透明になれる能力がある事が明らかに。
変身するには服を脱がないといけないというのがネックですが、このスーツを使いこなせるようになれば、彼の戦闘能力が跳ね上がる事は間違いなしでしょう。
本作の人気の理由でもある名言・名シーンですが、もちろんサンジが放ったものも多数存在。ここではそのなかから、珠玉の5つを紹介しましょう。
“女のウソ”は 許すのが 男だ
(『ONE PIECE』38巻参照)
ウォーターセブン編で、チョッパーに言ったセリフ。仲間のロビンを助けるため一味が彼女を捜索するなか、自分のせいで彼らを傷付けたくないロビンは、今まで皆を騙していた事や、皆が嫌いだと言い残して消えてしまいます。
サンジは当然、それが嘘だとわかっていました。しかし素直なチョッパーは真に受けてしまったので、この言葉を伝えます。彼が言うと説得力があり、よりカッコよく聞こえますね。
タバコの火ィ……!!!
欲しかった……トコだ…………!!!
(『ONE PIECE』30巻参照)
空島編で、敵であるエネルに言ったセリフ。自分を「神」と呼ぶエネルはとても強く、電気を使う能力に手も足も出ません。勝てないと悟ったサンジは身代わりになるため、その場にいたナミとウソップを逃がします。
そしてタバコをくわえながら電撃を受け、黒コゲにされながらこのセリフを言って倒れたのです。瀕死の状態になりながらも強がり挑発する姿に、カッコよさを感じた場面でしょう。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 2006-07-04
…たとえ死んでも おれは女は蹴らん…!!!!
(『ONE PIECE』42巻参照)
エニエス・ロビー編で、CP9(世界政府直下暗躍諜報機関)の女幹部カリファとの戦いで言ったセリフ。ロビンを助けるため一刻も早く倒さなければならない状況でしたが、それでも手を出せない彼は弾き飛ばされます。
その様子を見たナミに「本当にまともに戦って勝てなかったの?女に甘い!」と言われますが、彼はこう返したのです。ナミは呆れますが、「騎士道を少し見直した」とも言いました。確かに、これぞ騎士道!というシーンであり、サンジという人間の信念がわかるシーンでもありました。
……長い間!!!
くそお世話になりました!!!
(『ONE PIECE』8巻参照)
東の海編で、恩人であり師匠のゼフに言ったセリフ。ルフィと出会い、麦わらの一味に入る事に決めたサンジは、今まで働いていた海上レストラン「バラティエ」を後にします。
お互い別れの挨拶をするような柄ではなく、無言で出て行こうとした時に、ゼフが「おいサンジ、カゼひくなよ」と言いました。この言葉に涙が止まらなくなったサンジは、頭を下げてこのセリフを叫んだのです。
その言葉に、ゼフも仲間のコック達も涙を流しました。サンジにとって、ゼフという存在がどれほど大きいのかよくわかる名シーンです。
”決闘”に敗けて その上…同情された男が
どれだけ惨めな気持ちになるか 考えろ!!!
(『ONE PIECE』35巻参照)
ウォーターセブン編で麦わらの一味の海賊船を巡り、ルフィとウソップがぶつかって決闘をする事になってしまいます。もちろんウソップが勝てるはずもなくボコボコになり、遂には一味を抜ける事に。
瀕死の状態になったウソップを心配して手を貸そうとしたチョッパーに、サンジはこのセリフを言うのです。そして「あいつはこうなる事を覚悟のうえで決闘を挑んだんだ」と続けます。負けたウソップを思いやる気持ちと、勝ってしまったルフィに対する配慮が感じられるシーン。彼には珍しく、男臭い部分が見れた場面です。
仲間思い、女好き、負けん気、ゼフへの敬意など、さまざまなシーンでの名言がありました。口は悪く、女の前ではヘラヘラし、いつもくわえタバコのサンジですが、これらのシーンを見るとなぜか紳士っぽく感じてしまうかもしれません。
女好きなサンジの目がハートになった回数を数えたマニアックな記事<「ワンピース」でサンジの目がハートになった回数を数えてみた【~86巻】>もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
ここまで、サンジのさまざまなデータや出来事を紹介してきました。当初は料理が得意で女好き、まあまあ強い男くらいのイメージでしたが、ストーリーが進むにつれて、思いやりや義理、男気などカッコいい姿がどんどん見れるようになりました。サンジという男に興味を持った人は、1度『ONE PIECE』を読んでみてください。