作中作が出てくるミステリー小説おすすめ5選!読者を翻弄する不思議な魅力

更新:2019.4.19

物語のなかに登場するまた別の物語「作中作」。ミステリー小説においては事件解決のヒントにかかわることも多く、注目されている技法です。この記事では、「作中作」が出てくるミステリー小説のなかでも特におすすめの作品を紹介していきます。

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「作中作」とは。作品のなかに作品?

 

作品のなかに登場する「別の作品」を「作中作」といいます。小説でいえば、読者が読んでいる小説のなかに、また別の小説が登場すること。同様に、劇のなかで別の劇が展開されることを「劇中劇」といいます。

この技法を用いると、読者と物語の間にさらなる距離感を与えることが可能になります。そのため、フィクションをフィクションとしてより意識させたい時に使うのが効果的。たとえば小説であれば、登場人物が愛読している物語や、登場人物自らが執筆している物語として登場することが多いです。

代表的な「作中作」が登場する作品は、主人公のひとりシェヘラザード姫が、『シンドバッドの冒険』や『アリババと40人の盗賊』などの物語を語る『千夜一夜物語』。「作中作」の典型といわれています。当初は実在しない架空の物語である「作中作」ですが、作品内における存在感の大きさや、結末への関心から、実際に作品化してほしいという声があがることもあるようです。

5つの「作中作」を辿るミステリー小説『追想五断章』

 

主人公の菅生芳光は、大学の学費を稼ぐために、伯父の古書店で居候をしながらアルバイトをしています。ある日、長野県からはるばる女性が訪ねてきました。

北里可南子と名乗る彼女は、生前の父が残した5つの「リドル・ストーリー(結末のない物語)」を探してほしいと依頼をします。

報酬につられて調査を始める芳光ですが、しだいに「リドル・ストーリー」と、22年前に起きた未解決事件「アントワープの銃声」の関連に気付くのです。

著者
米澤 穂信
出版日
2012-04-20

 

2009年に発表された米澤穂信の作品です。「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」などに選出され、話題になりました。

「作中作」として登場する5つの物語には、どれも結末がありません。その謎を探っていくうちに、物語の作者である可南子の父が伝えたかったことが見えてきます。

人間のもつ光と闇を丁寧に描き、緻密な構成が魅力の本作。バラバラになった物語をかき集め、最後はまるでパズルのピースがぴたりとはまった時のような快感を得ることができるでしょう。

「作中作」によってミステリー要素とホラー要素が強調される小説『忌館―ホラー作家の棲む家』

 

主人公は、編集者をしている「私」。名前は、三津田信三です。ある日同僚から、新人賞に奇妙な原稿が届いていると聞かされました。その原稿に書かれた物語の主人公の名前は、なんと三津田信三。しかし作者の名前を見てみても、「私」には心当たりがありません。

同時期、「私」は空き家になっている洋館に興味を抱き、そこに住み込んで『忌む家』という怪奇小説の執筆を始めました。同人誌で作品の連載をしたところ、愛読者だと名乗る人物が現れます。

著者
三津田 信三
出版日
2008-07-15

 

2001年に発表された三津田信三のデビュー作です。「作家三部作」の第1弾で、自身と同姓同名の作家が作中に登場。「現実」「作中の現実」「作中作」を意図的に織り交ぜるメタフィクションの技法が用いられています。

本書が秀逸なのは、それぞれの境界がしだいに曖昧になり、ミステリー要素とホラー要素を強めていること。一体何が本当のことなのか、考えれば考えるほど怖くなってしまうのです。

「三津田信三」に翻弄されながら、謎解きを楽しんでみてください。

「作中作」が作り出す迷宮のような物語『匣の中の失楽』

 

探偵小説愛好家の間で、「黒魔術師」という愛称で呼ばれていた曳間が、ある日殺害されるという事件が起きました。しかもその手口は、彼の友人で「ナイルズ」という愛称の片城成が執筆していた小説『いかにして密室はつくられたか』と同じものだったのです。

まるで「作中作」の小説が事件を予言していたかのよう。しかも『いかにして密室はつくられたか』には他の登場人物の名前も書かれていて……。

著者
竹本 健治
出版日
1991-10-30

 

1977年に発表された竹本健治のデビュー作です。長らく絶版になっていて、「幻の名作」といわれていました。

本書は、「作中作」の『いかにして密室はつくられたか』を中心に物語が進行していきます。しかも、奇数章では偶数章の内容が「作中作」として、偶数章では奇数章の内容が「作中作」として描かれるという特殊な構成。つまり章ごとに現実と虚構が反転していくのです。

まさに迷宮と化した本作。作者の作り出す新しい世界を彷徨うことになるでしょう。

手品やトリックがふんだんに登場するミステリー小説『11枚のとらんぷ』

 

奇術ショーで仕掛けから登場する予定だった女性が姿を消し、マンションの自室で殺されていたという事件が起こります。死体の周りには、同じく奇術仲間である鹿川が書いた小説『11枚のとらんぷ』に出てくる小道具が散乱していました。

その事実を知った鹿川は、自身の作品を手掛かりに、事件の真相を調べ始めます。

著者
泡坂 妻夫
出版日
2014-06-20

 

1976年に発表された泡坂妻夫の作品です。泡坂は小説家でありながら、奇術師としても活躍している人物です。

「作中作」の短編集『11枚のとらんぷ』が収録されているのですが、これ自体もミステリーとして面白く、そのうえ事件解決の鍵となっているので、とにかく目を離す隙がありません。

トリックとアリバイが何重にも張り巡らされ、どんでん返しが待っています。

現実と「作中作」が絡み合うミステリー小説『カササギ殺人事件』

 

物語は、作家をしているアラン・コンウェイの新作『カササギ殺人事件』の原稿を、編集者であるスーザン・ライランドが読む場面から始まります。

『カササギ殺人事件』の内容は、1955年にサマセット州で起きた、とある屋敷の家政婦が亡くなった事件について。探偵役のアティカス・ピュントが、死の謎を追いかけていきます。

ところがこの物語には結末が書かれておらず、さらに作者のアラン・コンウェイが自殺をしたというニュースが入ってきました。

著者
アンソニー・ホロヴィッツ
出版日
2018-09-28

 

2016年に発表された、イギリスの小説家アンソニー・ホロヴィッツの作品です。

作中現実のスーザンと、「作中作」の探偵アティカスの物語が複雑に絡みあい、読者は2つの謎解きをすることになります。

実在する人物名や地名が登場する遊び心も満載。原文で用いられている言葉遊びも秀逸に翻訳されていて、ミステリー以外の要素でも楽しめるでしょう。

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