『酔うと化け物になる父がつらい』結末までの見所ネタバレ!泣ける実話映画化

更新:2021.12.10

「つらすぎて泣けた」とネットを大いに騒がせた、菊池真理子の実録家族崩壊マンガ。松本穂香はじめ注目の俳優陣で2020年に映画化もされています。 そんな衝撃的な原作のストーリーをご紹介しましょう。ネタバレ注意です。

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『酔うと化け物になる父がつらい』に考えさせられる。映画化決定!【あらすじ】

 

毎日のように酒に飲まれる父親と、宗教に逃げる母親の間に生まれた主人公の「私」。

本作は、漫画家・菊池真理子の実体験を基にしたコミックエッセイです。秋田書店のウェブコミック配信サイト「チャンピオンクロス」(現「マンガクロス」)にて11回にわたり連載されました。

当初から、主人公の私の前に立ちはだかるシビアな現実の壁と、平凡そうな家族が壊れていく様子がリアルに描かれ、大きな話題を呼んだ作品です。

 

酔うと化け物になる父がつらい(書籍扱いコミックス)

2017年09月15日
菊池 真理子
秋田書店

 

そんな本作は、2020年3月に映画が公開されました。映画版では、アルコール依存症の父親役を渋川清彦が、父に振り回される娘役を松本穂香が演じています。

渋川は、2018~2019年だけでも10本以上の主演・出演映画作品をもつ実力派俳優。松本も、TBS日曜劇場『この世界の片隅に』で主演、NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』などにも出演しており、演技力に定評があります。

映画にはこのほか、ともさかりえ、今泉佑唯(元欅坂46)、オダギリジョーなどが出演しました。監督は、映画&ドラマ『ルームロンダリング』も手掛けた片桐健滋です。哀しくもどこかおかしいストーリーがどのように映像化されたのか、気になる方はぜひ映画版もご覧ください。

詳細は、映画「酔うと化け物になる父がつらい」公式サイトをチェックしてみてください。


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『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:愛のない夫婦、衝撃のスタート!

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:衝撃のスタート!
出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

『酔うと化け物になる父がつらい』って、なんともインパクトのあるタイトルですよね。お酒のせいで人格が変わってしまう人の話は聞きますが、「化け物になる」とは相当なものでしょう。

話の中心は、父、母、子ども2人の平凡な4人家族。子どもは、姉と3歳下の妹です。このうち姉(私)の視点で、物語は進みます。この家族について「平凡な」と書きましたが、実際はそう「見える」だけ。

「私の家」は、昨日と今日がつながっていません。朝仕事に出て行く父親はおとなしくて小心者。それが帰ってきたときには泥酔して大声をはり上げ、表情はだらしなく崩れて、まったく別の人間になっているのです。私が父親を「化け物」のように感じたのもうなずけます。

しかし、第1話「酔っぱらいのいる家」で強烈な印象を最初に残すのは、父親より母親のほうかもしれません。

酔っぱらうと始末に負えない父ですが、主人公が逃げ回ったのは2日に1度は泥酔する父からではなく、母からでした。母親は酔った父親に何も言わず、召使いのように扱われています。2人の間に愛は見えません。

 

出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

母親は宗教にはまり、朝と夜の勤行(自宅などを回りながら礼拝をおこなうこと)を近所に響き渡らせ、私はそれをとても恥ずかしく思っています。

さらに週に1回、いつもは隣で寝る母が上半身裸になり、私も上半身裸にさせられ、1つの布団で背中合わせになって寝るのです。ちょっと異様な光景に感じます。

私は、母が1人流す涙にも、背中越しに伝わってくる母の深い悲しみにも気づかないふりをして、漫画を描くことに逃げます。そこはお酒も涙もなく、現実より筋の通った夢の世界です。

いびつな家庭環境。それでも私には、ここしかいるところがありません。私は、家族が壊れないように我慢しようと思います。しかし、その我慢は実を結びませんでした。

やがて、母親は自殺。私は中学2年生でした。どうにか守ろうとした家族はあっけなく1人欠けてしまいます。自分の無力さを知って、これから私はどのように生きていくのでしょうか?

 

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:母がいなくなっても変わらない生活

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:もとに戻ってしまう生活。衝撃の事実
出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

母親の自殺。私が感じたのは、家族を失った悲しさよりも、母親から逃げたという自己嫌悪でした。自分のせいで母は死んだと、中学2年生の私は答えを出します。

父親は何を考えているのか、相変わらずわかりません。ただ、大きく変わったことがあります。父親がお酒をやめたのです。マージャンもやめました。朝出かけて行った父親が、同じ人間のまま家に帰ってくるようになったのです。そんな普通のことが、私の家では奇跡でした。

しかし、奇跡は1か月も続きはしませんでした。再び酒におぼれ、父親は化け物に逆戻りしてしまいます。父親は、母親が死んでも何も言いません。娘の進路についても、何も言いません。なぜ、こんなに無関心なのでしょう。思えば私の家には、家族団らんがありませんでした。

あるとき、私は母親が残した日記を見つけます。信心していた宗教のことばかり書いてある日記でした。でもそこに、私が望まれない子だったことが記されていたのです。産みたいと言った母。堕ろしてほしいと言った父……。

 

出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

私はいつしか、自分の心にふたをしてしまいます。見ないふり、聞かないふり。突然あふれ出す涙も、無理やり理由を見つけて自分を納得させようとするのです。自分をだますように生きている私は、やがて高校を卒業し、就職も進学もせずバイト生活を送ることになります。

母親の自殺までは家族を守ろうとがんばっていましたが、やがて自分が子どもをつくることに嫌悪感を抱いていると気づく私。子どもなどいらない。こんな父親の遺伝子や自分の遺伝子など、残したくないのは当たり前だと。

それでも私は、漫画を描き続けていました。そのときだけは素直になれるからです。それは家族に代わる新しい居場所だったのではないでしょうか。

 

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:父に似た彼氏・太一の存在

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:彼氏・太一の存在
出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

そんな環境で育った私の男性観も、いつからかいびつなものになっていました。

父親を心の中で化け物扱いしておきながら、マイホーム主義、酒もたばこもやらないような男なんてつまらないと私は思っています。そう、彼女は父親のような男をかっこいいと思ってしまっているのでした。

好きな父親と、嫌いな父親の姿。極端過ぎて思考停止してしまう私。そして、その隙間に入りこむように、その男は現れました。第4話「思考停止」で登場する、化け物以上に強力なクズ男・太一です。

彼は24歳の同い年。大学院で数学の研究をしていて、小説家を志しています。物静かそうな外見と裏腹に、実は熱い人物。私を気に入り猛アタックしますが、自分に自信がない私は不釣り合いだと逃げ回るのです。

そんな私も、「こんなにかまってくれる人はいない」「私ごときがふるなんて」と、彼と付き合うことを決意。しかし、喜んでもらえるかと思ったら、「何で急に態度を変えたんだ」「信用できないと」と、なぜか逆上される始末。太一はコートに忍ばせていたジンのボトルを一気飲みしたうえ、それを怒りに任せてケリ上げます。

酒に強く、嫉妬深く、ことあるごとに私を束縛する、自己中男の太一。「中学の授業中に発見した」とコートのそでに日本酒の紙パックを隠し持ち、自慢気にストローで吸う男、太一。

私は、父に似た男を好きになってしまったと気づきます。しかし、太一が豹変するスイッチはいつ入るか、予測不能です。ちょっとしたきっかけでなじられ、時に暴力を振るわれます。周りで人が見ていようが構わずに。

くるくると変わる彼の態度に、振り回されるだけ振り回される私。それに比べれば、父親は酒に弱く、化け物になって帰ってくるだけですから、まだ安全なのかもしれません。私に手をあげたのも、定職に就かない私に対して1度きりのこと。太一とはまったく違うような……。

そんな男とは早く別れてしまえ!と多くの人が思うでしょう。しかし、歪な家庭環境で育った私には、それを判断するだけの能力が備わっていないのです。家族をつなぎとめるため、いつも我慢して、自分をだまして生きてきた彼女は、太一に対しても同様の対応をしてしまいます。もともと、自分はだれからも望まれていない人間。愛されているならそれでいいや、と思ってしまうのです。

 

『酔うと化け物になる父がつらい』をネタバレ解説:弱った父を目の前にして……

 

酔った父親をかまいたくないと思いながらも、かまわないと死んでしまうということを1番知っていた私。酒には弱いけれど、父は働いて自分たち娘2人を育ててくれました。私の漫画家デビューが決まったときも、やれるだけやってみろと応援してもくれました。

ずっと化け物だったら、嫌いなだけでいられたかもしれない。しかし、いやな記憶を上書きしてしまうほど、大好きな父親がいるのです。彼が酔っぱらったときのエピソードは編集者にも受けがよく、父のおかげで漫画家の道も開けたと私は感謝します。

でも、その気持ちを素直に伝えられません。やはり、父は酔うと化け物になってしまうのですから。

心にふたをして、何も言わずにいた私でしたが、ある時期から、うまくいかないことがあると、父親のせいで自分の人生が台無しになったと思うように。

そんなある日、私は「自分に恨まれていることを知って死ね」と、父親を思い切り罵倒してしまうのです。

 

出典:『酔うと化け物になる父がつらい』

 

しかし、化け物は不死身ではありませんでした。家族を振り回し続けた父親が末期がんを患っていることが、病院で知らされるのです。そこでようやく、私は、助けてくれる人が昔から周りにいて、自分が閉じこもっていただけだったと気づきます。1人で生きているわけではなかったのだ、と。

ただ、父親との関係だけは変わらずでした。がん宣告から2年。本格的な在宅介護。父親に治ってほしいとも、長生きしてほしいともどうしても思えなかったのです。

入院ベッドに横たわる父親が、私に微笑みかけます。やせ衰えて、昔の面影はない顔。初めて長いこと目を合わせる親子は……。

 

『酔うと化け物になる父が辛い』をネタバレ解説:自分も病に?最後は、泣ける結末が…

 

死んでもいい、と思っていた父親が死にました。

告別式で彼が皆に愛されていたことを感じた私は、自分だけが父に冷たくしたり、怒ったり、叩いたり、暴言を吐いたりしたことを思い起こし、「人の心を持たない化け物は私のほうだったのか」と自問するのです。

父親を責め立てていた私の刃は、父親の死とともに向かう先を失い、すべて自分に突き刺さります。そして身体と心のバランスを崩して、眠れなくなってしまったのです。

 

酔うと化け物になる父がつらい(書籍扱いコミックス)

2017年09月15日
菊池 真理子
秋田書店

 

母親が自殺したときに「私のせいで死んだ」と答えを出した中学2年生の私。大人になった私は、父親を亡くしたことに対して「私のせいじゃない」と思いたいのですが、そう考える頭に、心が追い付きません。化け物はいなくなったけれど、いなくなってもつらさは変わりませんでした。

このまま心を閉ざして周りに頼らなければ、昔に逆戻りです。

やがて、私は気づきます。たとえ、自分の偏屈さが親や家庭環境のせいであったとしても、欠点や失敗は自分でなんとかしていくもの。多くの手に支えられて、私の人生を生きなくちゃ。

そして、父が死んでから2年経ち、私にもある変化が訪れるのです。

「家族って何?」「周りの大人とどう向き合えばいいの?」

私は家族の在り方について小さいころから悩み、自身に問いかけ続けてきました。果たして、私はどんな答えを出すのでしょうか。

単行本には、連載時にはなかった後日談も描かれています。私の父への気持ち、私のその後をどうぞお確かめください。

 

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