『都立水商!』は、とても奇抜な設定の学校でくり広げられる、学園コメディ漫画。ここは、ある専門的な分野を教える学校です。その分野とは……?2019年5月から深夜帯での連続ドラマも予定されている本作の見所をご紹介します。ネタバレも含みますので、ご注意ください。
都立水商の正式名称は「東京都立水商業高校」。水商売を専門的に学べる学校であり、私立高校ではなく都立高校という奇抜な学校を舞台にした物語です。 主人公は前の学校でトラブルがあり、普通科の高校から赴任してきた教師・田辺圭介。
フーゾク科の担任にはなったものの、圭介自身は水商売でのノウハウはありません。しかも学校は開校したばかりで、すべて手探りの状態。しかし彼はおせっかいな性格を発揮し、その道のプロであるキャラクターの濃い講師たちとともに、生徒たちを一人前の「水商売のプロ」にするべく奮闘していきます。
- 著者
- 室積 光
- 出版日
- 2003-10-04
『都立水商!』は、2001年に発行された室積光の小説が原作です。その後2003年に作画・猪熊しのぶでコミカライズがスタートし、2009年まで続く人気作品となりました。2011年から2018年にかけては、続編である『都立水商!2』が連載されていました。
また、2018年にはゲーム会社「サクセス」によりブラウザゲーム化もされましたが、残念ながら現在はサービス終了となっています。
お色気あり、笑いありの本作は、2006年にスペシャルドラマとして放送されました。そして2019年5月、「都立水商!~令和~」という、新元号をタイトルにつけた、新しいドラマがMBSより放送されます。ドラマ版の設定は変えず、オリジナルストーリー、オリジナルキャラクターで物語が描かれます。キャストは竜星涼、恒松祐里、飯窪春菜といった、若手の注目俳優が出演します。
本作の作者である室積光は、1955年4月11日生まれ。本名の福田勝洋名義で俳優としても活動しています。
俳優として活動を続けながら、劇作家として劇団を主宰し、脚本や演出も手掛けるようになります。そんな中、2001年に本作の小説で作家デビュー。コミカライズやドラマ化もされる、大ヒット作品となりました。
その後も作家として活動を続け、『小森課長の優雅な日々』『ドスコイ警備保障』『史上最強の内閣』などを発表しており、どれも話題作となりました。
作品の特徴は、普通にはあり得ないような奇抜な設定と痛快なストーリー。財政再建のために埋蔵金を発掘したり、引退した力士が警備保障会社を創設したりと、ありそうでなかった設定が登場します。様々なジャンルを取り上げ、いずれもクスリと笑えるコミカルで痛快なストーリーを展開しています。
- 著者
- 猪熊 しのぶ
- 出版日
- 2016-11-28
コミカライズを担当している猪熊しのぶは、1968年8月17日生まれ、栃木県出身の漫画家です。1994年に井上敏樹原作の『DRUM拳』の作画担当として漫画家デビュー。1997年より正統派オムニバス恋愛ストーリー『SALAD DAYS』の連載を開始。美少女と青年の恋模様を描いたこの作品で、人気を集めました。
その後青年誌に移動し、本作の連載を開始します。芸能界を舞台にした『ダクションマン』や、戦国時代以前の日本を舞台にした、山上旅路原作のファンタジー『雪月記』などを発表。猪熊しのぶ自身の作品と、作画担当の作品両方をコンスタントに発表しています。
猪熊しのぶ作品の大きな売りは、女の子のかわいらしさではないでしょうか。本作でも様々な女の子が登場しますが、それぞれに個性を持つリアルな女の子たちが描かれます。
水商売は職に就いてから自ら学び、成長していくというのが一般的な見解でしょう。本作では学校で様々な水商売のノウハウを学ぶことができるという、まさしく現実ではありえない奇抜な設定で物語が展開されます。
水商売と一口に言っても分類は様々。学校でも学ぶ内容によって科が分けられています。女生徒が主に通うのは、ホステス科とフーゾク科。女性による男性向けの接待を学びますが、前者はお触りが禁止なのに対し、後者は肉体を使用しての接待を学ぶという、きわどいラインを攻めています。
男性では、ホスト科とゲイバー科。男性による女性への接待を学ぶホスト科に対し、ゲイバー科は、ゲイによる接待の仕方を学ぶことができます。性的な部分をオープンに表現するのも、水商売を勉強する学校が舞台な本作ならではの魅力といえるでしょう。
男女ともに学べるのが、マネージャー科。お店の運営や経営だけではなく、スタッフとしての接待の仕方を学ぶことができるなど、経営のプロを育てていきます。
科でわかれているだけでなく、作中にはしっかりと授業風景も登場。なぜこれを学ぶのかという理由づけもしてあり、設定の細かさに「実は水商って実在しているのでは」という気持ちになってきます。
水商では「高校生だからお触り禁止の接待まで」などという制限は設けておらず、肉体的な接触の多い職も含まれます。主にソープなどを就職先に想定したフーゾク科は、女性が肉体で男性を接待します。つまりはお色気シーンがあるということです。
しかし読者が期待しているようなお色気シーンなのかというと、そうではありません。実地訓練的な場面もありますが、生徒は勉強の意識があるため、ちょっとエッチな雰囲気というような淫靡さは皆無といえるかもしれません。
男性を喜ばせるために、性器を模したこけしを使いながら技術の練習をするフーゾク科の授業。生徒たちは下着姿になるものの、必死でこけしをこすっているというかなりシュールなシーンが。お色気といいつつも、自然と笑いがこみあげてきてしまいます。
だんだんとこの空気に慣れていきますが、ふとした瞬間の違和感に気がつくと、つい笑いが漏れてしまいます。
主人公の田辺圭介は一見普通ですが、とてもおせっかいな性格で、他者からの好意に鈍感な性格です。 しかし、都立水商に通う生徒や先生は、一筋縄でいかないことも。
圭介のように普通の高校からやってきた教師もおり、音楽や体育、社会といった授業もしていますが、やはり個性的なのは水商ならではの授業を担当する、元プロの講師たち。
元NO1ホストで、子煩悩なホスト科講師の竹井俊仁や、見事なプロポーションを持つ元ソープ嬢で、現在ではエッセイストとして活躍するフーゾク科講師の吉岡あかね。厳しい授業をするが、ぬいぐるみ作りが趣味のマネージャー科講師の黒沢忠夫。
なかでもゲイバー科の講師である大野誠のインパクトは強いでしょう。柔道部の顧問をしており、かつて国体で準優勝をしたという実力者でありながら、心は女性であり、美しくなりたいと考えているところがいじらしく感じられます。明るい言動に、癒される部分もあるのではないでしょうか。
また、生徒たちも様々な個性や事情をもっています。複雑な家庭環境で育ち、援助交際をしていた過去がありながら、実は処女という小田真理や、自分では意識していないが、結果として援助交際をしてしまっている江藤いずみなど、水商で学ぶ生徒たちの抱える事情は複雑そう。学校に通うことで、彼女たちの未来は明るくなるのでしょうか……。
最後に、一番謎の多い人物をご紹介します。
入学式から腐っていた新入生に喝を入れ、やる気を呼び起こしたのが矢倉茂夫校長です。がっちりとした体格で、ダンディという言葉が似合います。水商の設立に並々ならぬ熱意を注いでおり。教育者としてその思想は立派なのですが、いかんせん謎の多いキャラクターとなっています。人格者だと感じる部分が多いからこそ、矢倉校長の背景が気になって仕方ありません。
学園を巡る陰謀や、生徒たちの引き起こす事件がありながらも、人間として成長していく登場人物たちを描く王道の青春ストーリーが魅力の本作。主人公である圭介の恋模様も見どころのひとつです。
圭介は様々な女性からアプローチをされます。フーゾク科講師の吉岡あかねをはじめ、ホステス科講師の近藤明美、ゲイバー科の大野誠、生徒の小田真理など、出会った人間すべて、一度は圭介に惚れてしまうのでは、というくらいのモテ度です。
そんな圭介は実は心に決めた人がおり、やがてその相手に告白します。しかし彼女は自身の過去により、幸せになることをためらい、告白を断るのです。
- 著者
- 室積 光
- 出版日
- 2009-02-27
意中の女性と微妙な関係が続く中、圭介は前任の学校を去るきっかけとなった少女とのトラブルや、生徒たちの現場実習や就職の問題が発生。そして水商を巡る様々な利権辛みの問題に、巻き込まれていきます。
学校では学園祭が開催されるという時期、圭介の問題や、生徒それぞれの進路や成長はもちろん見所ではあります。しかし、やはり気になるのは圭介は誰とくっつくのかという点でしょう。物語の結末を、ぜひ見届けてください。
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奇抜な設定が目を引きますが、中身はいたってまじめな王道青春ストーリー。お色気要素も想像以上にソフトなので、女性でも安心して手に取っていただけます。ドラマでは授業風景がどのように再現されるのか、水商ならではの描写に注目です。