風俗という言葉には、常にエロなどの低俗な印象が付きまといます。しかしその作品の中には、エロいだけじゃない、実に深い味わいの作品が存在しているのです。今回は、人間の真実の姿を描く良質な作品をご紹介していきましょう。
フルーツを源氏名にしたデリヘル嬢を描く作品。デリバリーヘルスという業界を舞台に、様々な事情で働く女性たちの心理と、彼女たちの置かれた状況が細かく描かれています。これみよがしのエロ描写や表現は一切なく、等身大の嬢たちの姿を描いている点が秀逸です。
風俗業界で働く女性たちは、なぜ自らの体を露わにして生きていくことを決めたのでしょう。興味本位だったり、快楽を求めた果てのことであったり、金銭的な事情があったりとその理由は様々。本作には、まさにそういった千差万別の事情でデリヘル嬢となった女性たちの姿が、時にシリアスに、時にコミカルに描かれています。
描かれる絵は綺麗すぎず、雑すぎず、どちらかというと暖かみのある絵です。登場する女性キャラクターたちも、いわゆる美少女などではなく、実際にいそうなリアルなキャラクターとして描かれています。女性のバスタオル姿程度の描写はありますが、エロシーンと言えるようなものは一切なく、風俗漫画にありがちな暴力的な表現や、業界の裏側などの暗い部分なども全く登場しないのが特徴です。悪いイメージばかりを捉えた作品とはここが大きく違い、万人におすすめすることができるような作品に仕上がっているのです。
作中に描かれているのは女性心理。それから、現代社会のひずみと言える部分です。もし自分が多額の借金を背負うことになったら、子供を抱えながらも養育費がもらえなかったら……。一般的なお仕事をしている女性にとっては、風俗業に身を置く女性たちを「別世界」の人たちだと感じているかもしれません。しかし、そんな女性たちがいつこうなってもおかしくないのだと、そう訴えかけるような内容の作品なのです。
- 著者
- 鈴木 良雄
- 出版日
- 2016-07-29
作中に登場する女性たちが置かれている状況は実に様々です。どのエピソードも実にリアルで、変に誇張などせず等身大で語られる彼女たちの心理には、素直に共感させられます。様々な事情でデリヘル嬢になってしまった彼女たちですが、それぞれの考え方で気持ちを切り替え必死に生きていきます。子供や恋人、周囲の人間との関係も描きつつ、女性ならではの想いがつづられていくのです。時にはほんのり涙をさそう場面などもあり、ドキュメンタリー作品のような深みもあります。
色んな意味で、女性にこそ読んで欲しい作品と言えます。「風俗漫画はエロだけではない」と語ることができる、最たる作品ではないでしょうか。
春うららかな4月。新宿歌舞伎町に前代未聞の学校が開校されます。都立水商業高等学校、通称「水商」。この物語は、水商売のプロを養成する学校を舞台にした、ちょっとエロい、いえ、かなりエロい学園コメディ作品です。
現実ではあり得ない設定である、水商売の養成学校。集まる生徒たちは他の学校に入学できずやむなく入学してきたような問題児ばかりです。さらに講師陣は元ソープ嬢などのお水のプロたち。そんな一癖も二癖もありそうな面々が、フーゾク、ホステス、ホスト、ゲイバー、マネージャー、という用意された5つの学科それぞれで、「まじめ」に水商売を学び青春を謳歌していきます。
水商売というと、世間ではどうしても一定の差別や風評被害にさらされるお仕事です。しかし本作の舞台となる水商では、お水のお仕事は決して負け組ではない、胸を張って生きる資格があると説いています。ストーリーがエロの付属品になっている漫画作品などとは違い、良くも悪くも「水商売」というものを肯定し、情熱を注いでいる人物たちの姿が描かれるのです。もちろん読者の期待する性描写も満載です。しかしそれだけではない、強いメッセージ性のある作品にも仕上がっています。
- 著者
- 室積 光
- 出版日
- 2003-10-04
風俗に代表される水商売はピンからキリまで様々です。場合によっては違法行為などに該当するものも少なくなく、世間的なイメージが悪いのも無理はないことです。しかし風俗を提供する人間と、それを求める人間との利害が一致したうえで成り立つお仕事である以上、プライドを持つべきだという作者のメッセージもうなずけます。人を喜ばせる事の何が悪いのだ!そう、強く訴えかけられるような作品です。
エロとギャグが入り乱れるストーリーの中にも、登場人物たちなりのプライドと情熱が見て取れる本作品は、ただのエロではない、一風変わった漫画作品です。ちょっと違った観点で風俗というものに触れられる、そんな異色の学園コメディを楽しんでみるのもいいかもしれません。ひょっとしたら、あなたの風俗というものへの見方が変わるかもしれませんよ?
『都立水商!』について紹介した<漫画『都立水商!』の奇抜な設定&王道の面白さ!最終回までの見所をネタバレ>の記事もおすすめです。
デリヘル嬢の送迎をする一人の若手ドライバーのお話。強面でいかにもB系といった容貌の彼は、実は田舎出の優しい人物。そんな彼と、過酷な業界で必死に生きる女性たちの姿を描いた漫画作品。好人物の主人公と、前向きに生きるデリヘル嬢たちの姿を見ていると、もりもりと元気が湧いてくる、そんな物語です。
けっこうなインパクトを受ける表紙に描かれているのは、強面の主人公、ユキ。店長に客に舐められないようにと、あんな格好をさせられてはいますが、怖いのは見た目だけ。山形の漁村で育った彼は大らかな性格で、非常に気の良い青年なのです。何かと辛いことが多いデリヘル嬢たちの世界で、彼女たちはきっと、ユキの笑顔に癒やされているに違いありません。
こういった風俗関連のお仕事を描く作品の魅力は、エロ描写だけでなく、「業界の裏側や楽屋ネタを見られる」という点も大きいです。本作にも業界の裏側がしっかりと描かれていて、エロよりもそちらのほうに重点を置かれている印象を受けます。デリヘル嬢ならではの、あるあるネタや、ちょっと下品だけど笑えるエピソードなどが満載です。
- 著者
- 出版日
- 2013-10-28
風俗作品ならではの特徴として、世間からの風当たりが強く、偏見の対象になっているお仕事だという部分があります。登場する人物たちは、様々な悩みを抱えており、デリヘル嬢たちは彼女たちなりに真剣に仕事に打ち込み、日々一生懸命生きています。しかしその反面、社会的なつまはじきものであるという自覚も持っており、そういった彼女たちの葛藤も細かく描写されているのです。
一般的な風俗作品なら、そんな暗い部分を描き出すと作品全体に淀んだ雰囲気が蔓延してしまうものですが、本作には主人公のユキがいます。彼は本当に穏やかで、優しい青年なのです。辛いことがあって悩んでいる嬢がいても、満面の笑顔で優しく語りかけてくれます。そんな彼と嬢たちの掛け合いは、風俗業界という厳しい世界を描いているにも関わらず、ほんのり優しい気持ちにさえしてくれます。
たっぷりとエロシーンを見たいという読者にとっては少々物足りない感じもするかもしれません。しかし、過酷な環境でありながら強く生きているデリヘル嬢の姿は非常に魅力的で、見ているだけで元気が出てきます。エロだけでなく、そういった部分にも非常に価値があるのです。男性読者はもちろんですが、嬢たちのひたむきな姿はむしろ、女性読者の方々に見て欲しいところ。ひょっとしたらあなたも、ユキの満面の笑顔に癒やされることになるかもしれません。
物語の主人公は、複数のデリヘルをかけもちする敏腕女性ドライバー、桜坂。彼女と様々なデリヘル嬢とのエピソードが次々に語られていく、1話完結型のストーリーです。デリヘルならではのトラブルや、嬢たちの悩みが展開されていきます。
嬢ひとりひとりの好みを熟知し、客から身を守るための腕っぷしも備えた主人公、桜坂。女でありながらデリヘルの送迎を生業とする彼女は、多くの嬢たちに慕われ気に入られています。そんな桜坂と、次々に登場する個性的なデリヘル嬢たちが関わっていくのが本作品の主軸。全体的にエロシーンは少なめで、エロというよりは物語ありきの作品です。嬢とお客の間のトラブルに桜坂が巻き込まれていく形で物語が展開します。
- 著者
- usi
- 出版日
- 2015-02-16
本作の魅力はまず、女だてらに腕っぷしがあり、嬢からの信頼も厚い敏腕ドライバーの桜坂、彼女自身にあります。彼女がこの仕事をするのには一貫した理由があるようです。それ自体は読む人のお楽しみとしておいて欲しいところですが、この一貫したこだわりが、主人公の魅力を引き立てているのです。
とある嬢とのエピソードでは、本番を強要する客を撃退し、嬢から大きな信頼を得ます。また他の嬢との場合は、客のサイフから金を盗んでいた嬢を叱りつけ、仕事を続けていくための覚悟を説きます。彼女の行動は常に「男前」で、すがすがしいカッコよさがあるのです。
こういった感じで1話完結というスタイルで進んでいくストーリーは、終始さっぱりとしています。エロシーンも抑え気味ですし、描かれているのは主人公、嬢ともに女性ですから、その心理描写も女性が主体です。本作もどちらかというと女性向きと言えるでしょう。
暗い作品やドロドロした風俗作品が苦手だという方も、本作であれば抵抗なく読めるのではないでしょうか。毒舌ぎみな主人公、桜坂が語る、デリヘルという仕事への哲学めいたものも、時にグッと胸に迫るものがあります。風俗作品を敬遠していたという方も、ためしに手にとって見てはいかがでしょうか。エロや低俗なネタばかりが風俗漫画ではない、ということがお分かりいただける作品です。
『ショムニ』で有名な安田弘之による風俗漫画。世の中で「当たり前」として通っている事実に疑問を投げかけ、風俗の仕事に身を置くことにした、ちひろ。何かをごまかし、我慢して生きるわけではなく、心のおもむくままの生き方として「風俗嬢」を選んだ、ひとりの女性を描いた物語です。
ファッションヘルス「ぷちブル」のNo.1ヘルス嬢ちひろ。彼女は、元々は普通のOLでした。OL吉澤綾だった頃は、上司のセクハラや同僚の陰口に耐え続ける日々。世間で生きていくため、時には肉親の前ですら自分をごまかすような生き方をしていました。一般的に言えばそんなことは「当たり前」で、誰しも何かしらの我慢や無理をしているのかもしれません。しかし彼女はそんな自分の生き方に疑念を抱き、自由に自分をさらけ出せる職業「風俗嬢」になるのです。
この物語は、そんな彼女の生き方を中心にお話が構成されており、周囲の人間関係や仕事の内容をつづりながら、同時に彼女の人生模様が描かれていきます。複雑な心を持った彼女の生き方そのものが最大の魅力であり、本作を構成する重要な要素となります。少々哲学的で抽象的な部分もありますが、そういった所が独特で、作品を魅力的なものにしているのです。
- 著者
- 安田 弘之
- 出版日
- 2007-06-20
ちひろは風俗嬢となることで、自分の居場所にしがみつくことなく、自由な生き方ができるようになります。ちひろは風俗嬢となったことで初めて「自分」というものを見出すのです。
本作品の続編に『ちひろさん』という作品があり、ちひろのその後が描かれています。その作品の中で、ちひろは弁当屋になっているのですが、周囲には自分が元風俗嬢であったことを隠してはいません。というより隠す必要がないのです。彼女にとっては風俗嬢だったことこそが、自分を自分たらしめる事実だったわけで、それを誇りこそすれ隠す必要はまったくないと思っているのです。
そうやって世間で当たり前とされることに疑念を抱き、自分が思うまま真っ直ぐに生きている彼女の姿はとても美しく、そして時に儚げでもあります。浮世離れしているがゆえの切ない心理描写などがまさにそうで、彼女が働いているお店で築き上げた幸せを放棄し、去っていくシーンなどは特に読者の心に残るはずです。普通なら幸せを放棄する理由など無いのにどうして……、彼女らしい生き方が垣間見えるシーンです。
しかしそれこそが、彼女が自分を自分たらしめる理由であり、当たり前の価値観をひっくり返すような、ひとつの真理を物語っています。複雑で美しい彼女の生き方を見るだけでも価値がある、そう言える作品です。少しでも興味の湧いた方は是非一度ご覧になってみて下さい。ちょっと難解かもしれませんが、その分深いお話です。
原作は、石田衣良の初の恋愛小説。女性にも、SEXにも退屈していた主人公の青年が、女性向けボーイズクラブで「娼夫」となって働くことになるお話です。お客は様々な理由で男を買う女たち。そんな彼女たちと触れ合い、退屈だった彼の人生は大きく変わっていきます。
大学生活にも女性にも、そしてSEXにも退屈していた主人公の青年リョウ。ある日彼は、中学時代の同級生シンヤが連れていた女性、御堂静香と出会います。女性向けボーイズクラブのオーナーである静香は、リョウの女性やセックスへの無関心さに興味を示し、彼にあるテストを持ちかけます。テストの内容はひとりの女性とのSEX。リョウはテストに合格し、クラブでVIP向けの娼夫として働くことになるのです。
- 著者
- 幸田 育子
- 出版日
- 2007-01-19
本作には、全体を通して大人のイメージが漂っています。主人公リョウは大学生でありながら、どこか人生を達観している人物です。静香が自身の経営するクラブでSEXのテストを提案した際にも、普通ならたじろいたりするところを、リョウは「いいですよ。」と、状況をすんなり受け入れます。静香もまた、その一挙手一投足が大人びていて、言動もボーイズクラブのオーナーらしいものばかりです。
物語の中で登場するクラブのお客たちは、人には言えない性癖や様々な理由を持つ大人の女性たち。そんな大人の世界で、リョウはただ単にSEXするだけでなく、お客である女性たちの心に寄り添い、彼女たちの癒やしとなっていきます。性行為や、それを取り巻く環境だからこそ描ける女性たちの悩みや喜び。また、そんな大人の女性たちと触れあうことで変わっていくリョウの心情などが細やかに描かれ、単純な風俗漫画とは違った味わいを見せてくれています。
女性やSEXをつまらないと言い、人生に飽いていたリョウの心の背景には、実は母親にまつわる過去がありました。静香に無意識の内に引かれていたのも、彼女に母親の面影を見たからかもしれません。女性たちとの触れ合いももちろんですが、そういったリョウの背景に繋がるエピソードからも目が離せない作品です。
知っているようで知らない風俗業界。一般男性はまだしも、一般女性は興味があっても立ち入れない場所だったりします。風俗店の中では一体どんなことが行われているのか、それを漫画やイラストを通して簡単に知ることができる本なのです。
本作を一言で言うならば「エロを学ぶ本」です。この本一冊で、様々な性を学ぶことが出来ます。風俗経験が豊富な方はともかく、一般的な方々はそれほど多くの風俗経験は無いはずです。特に女性などは出入りが禁止されている風俗店などもありますし、あの中で何が行われているのか全くわからない、という方もいらっしゃるでしょう。そんな人たちに、漫画という手軽な媒体で様々な性サービスの実態などを解説していく本なのです。
- 著者
- 大田垣晴子
- 出版日
- 2008-07-02
風俗業界を描く漫画作品は、色気重視だったり、低俗だったり、どちらかというと背徳的なイメージがあるものです。しかし本作の趣旨は、様々な性の形をわかりやすく漫画やイラストで解説するというもので、余計なエロ描写や裏話などはほとんど登場しません。全体的に明るいタッチで描かれており、女性でも気軽に読めるように配慮されているのです。
具体的にどういった内容かを少々解説してみましょう。例えば性感マッサージの場合、どこにどういった性感帯があるのか、どこをどう刺激すれば快感を得られるのかなどが詳しく解説されます。またSMクラブでの場合は、どういったサービス内容で、どういう行為がお客を喜ばせるのかなどが細かく解説されます。
活字は少なめで、わかりやすく絵で描写されていますから、知識として吸収しやすいというのも特徴です。そんな知識なんて!と毛嫌いする方もいらっしゃるかもしれませんが、気恥ずかしさなどを気にせず見てみると、案外実生活に役立つ情報は多いもの。本作で得られるのはまさに、普段の生活では絶対に手に入らないであろう、意外に役立つ知識なのです。
性的な行為やそれにまつわる事柄に対しては一種の抵抗を感じるものです。しかしそうは言っても、我々人間とは切っても切れない部分なのも確か。そんな人生において重要な知識を、それほど恥ずかしいと感じることも無く気軽に学べるというのは、思った以上に大きなアドバンテージだと言えます。表紙が少々手に取りづらいのが難点ではありますが、内容は気軽に楽しめるはずです。あなたの知らない性の世界を、ちょっと覗いてみたいとは思いませんか?
漫画家、沖田×華(ばっか)による日常エッセイ作品。元風俗嬢だった頃や看護師時代などの体験談をつづったお話です。アスペルガーであることを公言している彼女の破天荒な経験談を、笑いたっぷりで提供してくれています。
主人公は作者本人、沖田×華です。彼女は『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』という作品で一躍脚光を浴び人気者となりました。過去に美容整形、風俗嬢、正看護師、など様々な経験を経て漫画家となった人物で、作中では、その壮絶な人生を包み隠さず描き出してくれています。自分の整形好きな部分や、割り切った風俗嬢時代などをコミカルな絵で面白おかしく表現しており、世間の風評や思い込みなんか笑い飛ばしてくれるような明るい内容になっています。
- 著者
- 沖田 ×華
- 出版日
- 2013-03-29
本作は作者自身の体験談を語るエッセイです。同じ風俗という題材であっても、実際に経験したからこそ語れるエピソードや考え方などがてんこもりです。美容整形や風俗に関してのあるあるネタはもちろん、彼女自身が「やらかしてしまった」とんでもないエピソードなども語られます。業界の裏話にも通じ、わたしたちの知らない世界のことを深く知ることにもなる作品です。
あまりにもコアな内容で、実際にその業界に詳しい人じゃないとわからないような内容も少々目につきます。しかし、そんなコアな内容だからこその魅力があり、特に美容整形に関しては無駄に詳細な知識が身についてしまう程です。10回以上の美容整形を繰り返してきたという、彼女の経験に裏打ちされているお話なのがよくわかります。
彼女の生き方は自由です。様々な職業を経験してきたこともそれを物語っています。自由だからこそ世間から逸脱し、激しくつまずくこともあったでしょう。しかし、そんな生き方をしてきた彼女だからこそ得られた想いが、漫画を通して読者の心にも伝わってきます。下品で粗野なネタが満載の作品ですが、彼女の生き方や考え方に何かしら学ぶこともあるでしょう。面白いだけでは満足できないという方にはピッタリの、読み応え十分の作品だと思います。おすすめです。
タイトルだけでは少々伝わりにくいですが、本作品の概要は、さびしすぎてレズ風俗に行く決意をするほどに悩んだ筆者の体験レポ、です。重要なのは「さびしすぎて」の部分。社会と人間関係、そして性に真剣に悩む作者自身が、レズ風俗経験を通じて自らの心情をつづるお話です。
作者、永田カビは女性です。28歳まで異性経験が無く、社会人としての経験すらありませんでした。しかも孤独感により自殺未遂をはかり、摂食障害、脱毛、鬱などの様々な弊害にも苦しみます。本作品で語られるのは、そういった「さびしさ」をうめるために行ったレズ風俗の体験談。レポートと題してありますが、レズ風俗を紹介するというよりは作者自身の体験した感想や心情が中心に描かれた内容となっています。
- 著者
- 永田カビ
- 出版日
- 2016-06-17
本作は、作者のように、性への向き合い方に悩む読者やファンから大きな反響があり、様々なメディアでも紹介され、ちょっとした話題になりました。しかしその反面、タイトルから想像できる内容と作品の内容が大きく異なっていたこともあり、賛否の評価を得ている作品でもあります。念を押しますが、レズ風俗の詳細を描くレポート漫画ではなく、レズ風俗に癒やしを求めた、ひとりの女性の体験談です。
作中では作者、永田カビがどういった症状に苦しみ、どういう経緯でレズ風俗に行くに至ったかが詳しく語られます。正直な所、人によってはあまりにメンヘラな内容に拒絶反応を示すかもしれません。しかし、世の中にはこういった悩みを抱える人たちがたくさんいるのです。そんな自身の弱さをさらけだし、真実のままに語ってくれているこの体験漫画は、多くの人たちの心の琴線に触れています。
深い悩みを抱えながら一大決心でレズ風俗に行った永田カビは、同性が相手とはいえ、初めてのSEXを経験します。殻に閉じこもっていた彼女が初めて経験する快感は、肉体的なものだけでなく精神的な癒やしでもありました。相手のお姉さんに素直に心を開けない自分を申し訳なく思ったり、それでも抱きしめてくれてありがとうと思えたり、彼女にしかわからない心情が事細かく描写されています。
レズ風俗体験漫画としてエロシーンを期待した方には申し訳ありませんが、本作品には必要以上の性描写はありません。レズ風俗のおおまかなシステムを理解する程度の知識は得られますが、内容はあくまで、自分の心に向き合い、大きな一歩を踏み出したひとりの女性のお話です。性と心という人間の精神に深く思い至ったこの体験談は、女性はもちろん、男性であっても彼女と同じような症状で悩んでいる方ならば必見です。風俗漫画の傑作と言えるでしょう。
風俗は、その仕事内容から、高額な給料をもらっているというイメージがあります。実際、風俗関係の職についている女性は、ブランド物の服やバッグを持ち、華やかな生活を送っている様子。しかし、最初から贅沢がしたいから、と風俗に関わる人はごく少数ではないでしょうか。色々と考えた結果、一番稼げる風俗にたどり着いた、という人もいるはずです。
『デリバリーシンデレラ』は、デリヘル嬢を題材とした作品。デリヘルとは正式名称をデリバリーヘルスと言います。自宅やホテルなどに、性的サービスを行う風俗嬢を派遣する、という業態の風俗で、出張型ヘルスともよばれています。サービス形態などはお店によって異なりますが、出勤や勤務時間のに融通が利くためか、主婦や社会人、大学生がアルバイト感覚で始めることも少なくない様子。本作の主人公、山田雅美もその1人です。
- 著者
- NON
- 出版日
- 2010-05-19
女子大生の雅美は、田舎から上京してきた、どこか垢抜けない普通の女子大生。介護士を目指し、勉強に励んでいましたが、友人は少なく女子大生としては花がありません。しかし、雅美には誰にも言えない秘密がありました。夜の闇があたりを包むころ、昼間の垢抜けない姿からは一変、華麗なメイクで客を魅了するデリヘル嬢、ミヤビへと変身するのです。
お客に奉仕し、喜んでもらうことに、やりがいを感じている雅美でしたが、デリヘルの世界へ足を踏み入れた時は、辛くてトイレに閉じこもるほど精神的なダメージを受けていました。しかし、同じデリヘル店で働くNo.1デリヘル嬢、雫のあなただけの喜びを探すというアドバイスに心を打たれ、デリヘル嬢の仕事に打ち込んでいくのです。
風俗の仕事は性的なもの。お金が必要な事情があって風俗嬢をしている人は少なくはなく、雅美もそのうちの1人でした。しかし、嫌々ではなく、お客に喜んでもらおうと奮闘する姿はとても新鮮。地味な姿から大人の女性に変わる瞬間は、どきりとしてしまいます。
『デリバリーシンデレラ』については<『デリバリーシンデレラ』最終回までの見所ネタバレ!名言が沁みる泣ける漫画>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
風俗店は、行くまでにはかなりの勇気を必要とし、ハードルが高いと感じる人も多いでしょう。しかし、性的なものが見たい、できれば写真ではなくて動く方がいい、と考えた時に頼るのがAV、アダルトビデオです。18歳未満はご法度、レンタルビデオ店では隔離され、隙間から垣間見える世界に、ドキリとした経験がある人も多いでしょう。
AVは性行為を主とした映像を収録したものですが、もちろんどこかの誰かの私生活を除いているわけではありません。AVを作る人たちが存在し、業種として成り立っています。『AV烈伝』は、そんなAV制作に携わる、様々な人が登場する、ドキュメンタリー作品。仕事としてAVの事をどう考えているのか、様々な人生とともにその胸の内を垣間見ることができます。
- 著者
- 井浦 秀夫
- 出版日
その性質からか、やはりAV制作をしている人と言うと、性的な欲求が強かったり、興味関心が高かったりする人が、そちらの道に進むのだろう、という漠然としたイメージがあります。しかし、もちろん、彼らはプロ。それだけではやっていけない業種であることが、読み進めていくうちにわかってきます。
AV監督や女優、男優などが登場し、自分が仕事に関わることになった理由や、AVに対するこだわりなどが、赤裸々に語られていきます。興味本位で手に取る読者が多いとは思いますが、インタビューをしている作者、井浦秀夫はいたって真剣。真面目に、真摯に相手に向き合い、言葉を引き出してきます。
下世話なことはなく、皆がAVというものに真剣に向き合い、職業として成り立たせていることをひしひしと感じられる作品、レンタルビデオ店の一角への印象がだいぶ変わってくることでしょう。あの1作1作に、こだわりと多くのプロ意識が詰め込まれているのです。普段は見知ることができないAV制作の裏側にいる人々の姿を、ぜひのぞいてみてください。
人には様々な性癖があります。嗜虐的、被虐的のみならず、寝取られ状況で興奮したり、小さな子供しか愛せなかったりと、分類をしてしまうと多岐にわたります。他人には理解されづらい者も多く、自分が何に対して性的興奮を得るのか、ひた隠しにしている人も多いでしょう。性癖は、その人の隠された部分のひとつだと言えます。
『実録企画モノ』は、そんな特殊性癖持ちの方に、どストライクな作品の制作に携わっていた作者が描く、コミックエッセイです。作者の卯月妙子は、壮絶な人生を歩んできたことで知られる漫画家。その人生のどん底さに反し、どこか吹っ切れたような明るさと、独特な世界観を垣間見ることができるエッセイが人気です。
- 著者
- 卯月 妙子
- 出版日
卯月妙子は、小学5年生の頃から精神疾患の症状があり、中学3年生で自殺未遂。20歳で結婚したものの、元夫の会社が倒産、借金返済のためにホステスやストリップ嬢、ヌードモデルやAV女優などをし、お金を稼ぎました。本作は、そのAV女優など風俗業に携わっていた時の経験や出来事などが綴られています。
上記の簡単な紹介でも、かなりヘビーな人生を歩んできたことが分かりますが、AV女優時代の卯月妙子が出演していたのは、嘔吐物や排泄物、稀に昆虫などを食べるという、スカトロ系のかなりハードな作品。その特殊性とやりすぎとすら感じる内容で、伝説と化しました。しかも、その内容自体を自分から売り込んでいたという驚きのエピソードも明かされています。
お金を稼ぐために何でもした、と語られていますが、ただ需要があるからそれをやっていた、と感じられないところが本作のポイント。くだんのAVにも、卯月妙子なりのこだわりや、企画意図があった事が伝わってきます。人生の壮絶さや、独特の描写に隠れがちですが、作者の持つ狂気的な芸術性を感じることができる1冊、狂気や欲望の渦に巻き込まれないよう、ご注意ください。
現代日本には新宿、すすきのなど、歓楽街がいくつか存在します。発展している街には、風俗街はつきもの。遠い昔、江戸時代には吉原や島原といった、遊郭街があり、日々男女が偽りの恋人関係に心と身体を燃やしていました。遊郭の独特なシステムは現代に継承されていませんが、そういった文化が日本にあった事は、広く知られている事実です。
過酷な労働環境でもあった当時の女郎たちと、現代の風俗嬢たちは、どちらが優れているのだろうか。そんな想像を具現化した作品が『吉原のMIRAIさん』。ソープ嬢として現代の吉原界隈でトップの人気を誇る未来が、ひょんなことからタイムスリップ、偶然落ちた先にあった女郎屋で、ソープ嬢として身に着けた技術を駆使して、トップを目指していくという物語です。
- 著者
- ["真倉 翔", "真里 まさとし"]
- 出版日
- 2006-02-17
ソープ嬢とは、ソープランドで働く女性のこと。湯船が設置してある部屋で、お客に対して性的なサービスを施します。戦後に爆発的に広がり、現代でも残る風俗の中では長い歴史を持っています。そんなソープで働き、かなりの人気を誇っていた未来が、同僚の嫉妬をきっかけに、怪しい薬を盛られてタイムスリップした先が、吉原です。
江戸最大の遊郭街で、突然女郎として働くこととなった未来ですが、さすがはトップをとるほどのソープ嬢。純応力の高さと技術で吉原でも人気を獲得していきます。女性同士の嫉妬や、吉原ならではの女郎たちの人生がありつつも、未来の明るい性格のせいか、重くなりすぎないところがポイント。あり得ない状況を、純粋に楽しむことができます。
描写は過激ですが、未来のテクニック披露の場という感じもあり、エロティックになりすぎないところに、未来のソープ嬢としてのプライドが感じられます。友情あり、過激描写あり、新感覚のタイムスリップもの、当時の風俗事情も知ることができる、お楽しみ要素の多い作品です。
現代では男女平等が叫ばれ、社会進出する女性が増えてきました。しかし、女性というだけでいわれのない非難を受けたり、軽視されたりすることも、もちろんあります。意識が変わってきたとはいえ、男が優勢だった長い歴史を持つ日本、その考え方が、簡単に覆ることはありません。
男子は跡取りや労働力として重宝されてきましたが、女子は昔からお金に困ると売られることが珍しくはありませんでした。どこか、大きな屋敷の下働きに奉公に出るのは良いほうで、女郎として幼い頃に売られる女子の多くは、悲しい最期を迎えています。『親なるもの断崖』は、昭和初期の北海道を舞台とした物語。女郎に売られた女たちの人生を描いており、かなりヘビーです。現実にこうであった、という事実が読者の心に影を落とします。
- 著者
- 曽根 富美子
- 出版日
- 2015-07-10
青森の農村で育った16歳の松恵、11歳の梅姉妹と13歳の武子、11歳の道子は女衒に売られ、北海道室蘭にある幕西遊郭に売られていきました。美貌の姉妹は遊女として、凛として風格のある武子は芸妓として育てられることとなりましたが、容姿に恵まれず身体も子供のような姿の道子は、下働きとして幕西に残る事になりました。
すぐさま客を取らされ、松恵は自ら命を絶ち、姉の借金まで背負うことになった梅と、武子を中心に物語が進んでいきます。これは本当に現実にあった事なのだろうか、とページを捲る手が震えるほど、その描写は克明で過激。壮絶という言葉で片付けることができないほど、非人道的な行いが次々と登場、読者を打ちのめしていきます。
そんな中で生まれる恋は、絶望フラグにしか見えず、もういっそ女郎として極めてしまったほうが幸せなのでは、と思えてしまうほど。3人の少女は、己の道を真っすぐに突き進もうとする力強さに、現実はさておき救われた気持ちになります。雪深い大地で描かれる、人間たちの生きる姿に、どうか幸福にと願わずにはいられない作品です。
日本は島国で、独自の文化を築いてきたとはいっても、現代日本はかなり欧米化が進みました。様々なところに日本らしさはうかがえるものの、時代によって大きく変化しているというのは疑いようもありません。当たり前に着ていた着物も、今は特別な時に着る物、といった扱いに。時代に合わせ、多くのものが変化しています。
とはいえ、子どもができる仕組みなど、人間の本能由来、原始的な部分の事柄は、変わることはありません。子作りや性的な事は昔からあるもので、だからこそ今も人類が存在しているともいえます。しかし、やることは同じでも、表現や趣味趣向、常識はその時代によって異なるもの。なかでも、戦が亡くなり、様々な文化が花開いた江戸時代の性風俗をまとめたのが『浮世艶草子』になります。
- 著者
- ["八月 薫", "篁 千夏"]
- 出版日
- 2007-05-24
欧米文化の流入により、処女性が重視されるようになりましたが、それ以前の日本の性事情はかなり奔放。本作は、様々な立場の人や状況下で、江戸の性事情はどんなものだったのかを描く短編集です。お姫様から村娘まで、艶っぽい描写にドキリとしつつ、当時の性事情に触れ、知識が増えていくのを感じます。
例えば、御姫様のお輿入れの時のこと。庶民の性事情はかなり奔放ですが、やはり高貴な姫ともなると、処女性が重視されるもの。しかし、彼女たちの仕事は世継ぎを産むことなので、性知識を仕入れておかなければなりません。そこで世話係のばあや等が姫様に性技を仕込んでいくのですが、行動は性的なのに、どこか体育会系でコミカル。熱心なばあやの励ましに、つい笑ってしまいます。
お江戸風俗コラムなども充実しており、江戸時代の性事情についての知識が確実に増えていくのを感じます。江戸時代が性に開放的だったせいか、それぞれの物語が、明るいところが本作のポイント。女性でも抵抗なく手に取っていただけるはずです。歴史好きもそうでない人も、現代と比較しながら楽しんでください。
人間にとって、睡眠は必要不可欠なものです。身体を休める効果がある睡眠ですが、様々な事情により、眠れなくなってしまう人も少なくありません。不眠は睡眠環境を整えることで改善されますが、自分自身では何が原因なのか、よくわからないもの。眠れないというプレッシャーに、より不眠がひどくなってしまうこともあります。
犬や猫と一緒に眠ると、よく眠れたりするものですが、大人になると自分の子どもや恋人、伴侶がいないと、誰かと一緒に眠る機会はありません。人肌のぬくもりは、安心感を与えてくれるもの。そんな、不眠に悩む女性に添い寝をしてくれる男性を派遣する、添い寝屋「ストライプ」を利用する女性と、添い寝をする男性たちの人間ドラマを描いたのが『シマシマ』です。
- 著者
- 山崎 紗也夏
- 出版日
- 2008-07-23
箒木汐は、夫の不倫と離婚が原因で、不眠となってしまいました。アロマエステ店のオーナーをしていますが、それだけでは店とマンションのローンの支払いがとても不安。副業として、公にはできないとある事業を始めていました。それは、添い寝屋。眠れない女性に、男性を一晩派遣する、というものです。
元夫の弟、大学生のガイや、料理が得意でメンバーのまとめ役のラン、オシャレが大好きなリンダや無口なマシュなど、添い寝をしてくれる男子はイケメンばかり。ドキドキして眠れないのでは、と思いきや、お客の女性たちは、最後には心地よい眠りに落ちていく、その手腕がとても見事です。誰もが抱える不安や寂しさ、眠れない一要因になる何かをすくい上げて、包み込んでくれる添い寝屋たちに、身をゆだねたくなります。
こんなお店があるなら利用したい、と思う女性は多いでしょう。心地よい眠りをもたらしてくれるイケメン男子、風俗的ではあるものの、そこに強い性の匂いは感じられません。お客たちの事情に加え、汐の恋の行方も気になるところ。読めば心地よい眠りを求めたくなる、癒し効果もある作品です。
遊ぶなら奔放で後腐れが無いタイプ、付き合うならば堅実なタイプ、などという話もあります。性に奔放な人は性欲を満たす方が先で、心のつながりを求めていないというイメージが付きがち。しかし、実は一途だったり、優しかったりと、その内面は、じっくりと付き合っていかなければ、わからないことが多いのです。
AVに出演する女優や男優は、やはり性行為を見せるという職業柄か、性に奔放であると思われがち。男女の関係も、遊びが重視で気持ちはそこに無いのでは、と勘ぐってしまいます。そんなイメージを覆してくれるのが『AV女優とAV男優が同居する話。』という、インパクトあるタイトルが目を引く1冊。職業としてAVに出演している男女の、同居生活が描かれます。
- 著者
- 時計
- 出版日
柊梓は、AVを専門に出演する女優。ある日洗濯機の故障が原因で大家と大喧嘩、アパートを出ていかなければなりません。行く先もなく、お金もない梓に、所属事務所が部屋を紹介してくれました。ルームシェアする相手は、館石大地、梓同様AVに出演する、男優でした。
最初はぎこちなかった梓と大地の同居生活ですが、料理をきっかけに少しずつ距離が縮まっていきます。その過程が、よもやこの2人がAVに出演しているとは思うまい、というほどピュア。少しずつ、確実に距離を縮めていく姿には初々しささえ感じられ、ついニヤリとしてしまいます。
仕事柄、純愛だけにはならない部分はあるものの、タイトルから想像するような、淫靡さもしくはコミカルな要素はあまりありません。1人の人間として、当たり前に生きる姿がそこにあります。他にも、兄と妹の微妙な関係の話や、自意識と恋心のはざまで揺れる女子高生など、表題作のほかに恋の話を3編収録。ピュアな恋に胸キュンしてください。
日本には東京や大阪、京都、名古屋、福岡といった大都市が存在します。人が多く集まるのは大きな都市ですが、都市ばかりに人が集まるわけではありません。地方都市をはじめ、人が住み集まるところには必ず歓楽街や風俗店が存在するものです。見知らぬ街にある風俗店、その中にはどんな女性がいるのか、気になったことはありませんか。
『匿名の彼女たち』は、日本全国の様々な風俗店と、そこで働く女性たちを描いた作品です。日本全国風俗図鑑が掲載されているなど、その内容はかなりノンフィクション。はっきりと明記されていないので、風俗嬢たちとのやり取りすべてが実際に会ったことかどうかはわかりませんが、本作に登場する女の子たちは等身大で、そこに妙なリアルさを感じます。
- 著者
- 五十嵐 健三
- 出版日
中堅商社に勤務する山下貴大32歳の趣味は、風俗通い。自分の住む街だけでなく、出張先でも風俗店に通うことを生きがいとしていました。全国各地の歓楽街、小さな風俗店に赴き、そこで出会った風俗嬢とコトにおよんでいきます。
性描写はありますが、実録系で風俗嬢の容姿や性技の評価が淡々とつづられているせいか、卑猥な印象は受けません。風俗嬢たちとの会話も描かれていますが、あっけらかんとしていたり、重い事情を抱えていたりと、人それぞれ。風俗嬢たちの悩みや仕事上の苦労などを見ると同情したり、自分だったらどうだろうと、つい想像してしまいます。
風俗店とは隠された場所です。しかるべき年齢の人にしか開かれぬ場だからこそ、見えないものがたくさんあるのでしょう。客観的に風俗店と、そこで働く女性を描いているせいか、性描写ではなく人間がそこで働いている、という生々しさを感じます。今日もどこかで、風俗で働いている人がいる、そんな当たり前の事に、改めて気付かされる作品です。
とりあえず風俗店に行く、という勇気があれば捨てることはできる童貞。本作も、童貞を捨てに風俗に行った青年が主人公の物語です。しかし、脱童貞で性の喜びを知り、世界が変わった、というわけではありません。本作は実話を基にした、純愛物語なのです。
- 著者
- ["@遼太郎", "山口 かつみ"]
- 出版日
29歳の遼太郎は、何かにチャレンジする前に理由をつけて諦めてしまう、自己完結型の性格。ある日、自分を変えようと一念発起、脱童貞しようとデリヘル嬢を呼ぶことにしました。しかし、緊張がピークに達した遼太郎は、過呼吸を起こして倒れてしまいます。情けない姿を見せ、迷惑をかけたにもかかわらず、優しく介抱してくれたデリヘル嬢、かよさんに、遼太郎は恋をしてしまいます。
何事にも後ろ向き、人生を諦めていた遼太郎でしたが、かよさんが男にだまされて借金を背負い、その返済のために風俗で働いていることを知り、一念発起。何とか彼女を助けようと奮闘します。震えながらもかよさんを助けようとする姿は、過呼吸で倒れた遼太郎と同一人物とは思えません。一生懸命な姿に、声援を送ってしまいます。
本作は大型掲示板に掲載された実話をコミカライズした作品。こんなことが本当に起こるのか、と思うと同時に、どうやっても叶わなさそうな恋の行方がどうなるのか、好奇心を押さえることができません。読者は遼太郎を応援する掲示板の住人の気分を味わいながら、恋の行方を見守っていくことになります。小説よりも奇なり、と確実に言える実話ラブストーリー、気弱な童貞男子の奮闘を応援しましょう。
SM女王経験があるという、六反りょう作の4コマギャグ漫画。地味なOLまどかが、アフター5のSM女王を目指すお話です。作中にはSMトリビアなどが散りばめられ、SM女王経験者ならではの笑いどころをわきまえています。
主人公、葛西まどかは普段は非常に地味なOLで、会社ではその根暗っぷりに陰口を言われるほどでした。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があったのです。それは、アフター5のSM女王を目指す新人女王様だということ。いじめられっ子だった彼女は、ずっと女王様になって仕返しすることを夢見ていたのです。そんな彼女の夢への第一歩、女王様見習い生活が今スタートします。
- 著者
- 六反 りょう
- 出版日
本作は風俗漫画ですが、内容はエロよりもギャグに特化しています。舞台となるのは、まどかが新人として働き始めたSMクラブ。そこには個性的な先輩女王様たちや、自らもM男である社長、森田など、濃い面々が揃っており、SMクラブならではの濃厚なギャグが展開されていきます。
特に面白いのは、作中にたびたび挿入される「SMトリビア」。作者のSM女王経験を活かした内容は秀逸で、感心するものから笑いを誘うものまで実に様々。
「SMトリビア1、M男だからといってすぐになついてくれるわけではありません」(『アフター5の女王たち』より引用。)
「SMトリビア5、手なずけているM男でも満足しないと女王様を挑発することがあります」(『アフター5の女王たち』より引用。)
など、これ以外にも多種多様なSMネタが登場し、笑いを誘います。
SMという行為に対し、抵抗がある方もきっといらっしゃるでしょう。しかしこの漫画には、性的な意味でのSM描写はほとんど無く、背徳感なども一切ありません。言ってみれば一種の職業漫画なのです。その職種ならではのあるあるネタや笑いどころを提供し、知らなかった世界のことを教えてくれる、そんな漫画作品です。
4コマ漫画ですし、お試し版もたっぷりと用意されていますので、風俗漫画だからと敬遠せず気軽に読んで欲しい作品。男性、女性どちらの方でも楽しめる内容だと思います。是非ご一読を。
今回ご紹介した作品はどれも、「エロ」よりもむしろ、「人」を描いているものが多くを占めています。本来、「風俗」という言葉は衣食住、習慣などの広い意味で使われる言葉です。低俗であろうとなんだろうと、そういった人間本来の習慣や文化を描くこと、それこそが本当の風俗漫画と言えるのではないでしょうか。エロはあくまで風俗の一側面であるとご理解頂き、視野を広げて頂けたのなら幸いです。