「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう……自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。
今更だけれどもGWが終わった。平成も終わった。
令和婚のご報告も一通り済んだように思う今日この頃。
SNSをのぞいていると、「10連休もいらない」といったような声が多いように感じる。
月給でもらっている人がそういうことをいうのは贅沢だと思いつつ、遠出の予定がなかった自分は「連休に体がなまってもあれだしな」などと思い、結果的に副業と飲み会をしこたま入れてしまい、慣れないことばかりした反動か、深酒の後遺症かはわからないが、なんだか体の調子がおかしい。
忙しいとはいえ位置情報の安定した毎日が戻って来てホッとしている。
とても、疲れた。
- 著者
- 梶本 修身
- 出版日
- 2016-04-15
めったに健康系の本とか「すべての〜」系の本は買わないのだけれど、思わず手にとってしまった1冊。
作者と編集者には悪いが、「最新科学!」「すべてウソ!」みたいな帯と表紙がすでに手に取る者を疲れさせる。しかし、その時の自分は疲れすぎて、早急に解決してくれる何かが欲しかった。
さらに作者には悪いが、いざ読もうと思ってパラパラすると、カタカナの羅列がいっぱい出て来て、文系の自分としては酸っぱいものが込み上げて来る。「良薬は口に苦し」と、小学校のころ覚えて以来あまり使ったことのないことわざを思い浮かべてページをめくる。
「はじめに」を読み始めると「適度な運動も焼肉もお酒も温泉も疲労回復にはまったく根拠がない」みたいなことが書かれていて、なんだか涙が出そうになる。
GWで仕事以外に入れた予定が、バク転教室と一人焼肉とスーパー銭湯と飲み会×4だったからである。もうなんだか疲れることしかしてこなかったじゃん、自分。自業自得もここに極まれりだ。
まあ、バク転教室はその後4日間くらいは筋肉痛に悩まされたので、「適度」な運動とは呼べないかもしれない。それにしても3アウト、どっちにしろバッターチェンジだ。
さらに気の滅入るようなチェックリストが続く。ビジネス書でよくある、10項目のうち当てはまるものが◯個以上あるならアウト!みたいなやつだ。なんでも本書は条件が厳しく、1つでも当てはまると「脳疲労が蓄積している可能性がある」らしい。
最初の項目に目を通す。
□ものごとはきりのいいところまでやらないと気が済まない
よく、「片付けがうまくいかない人」と「ダイエットが長続きしない人」チェックリストで、読者に「えっ、意外」って思わせるためにあるやつではないか。
レッドカード、退場である。
嫌いなスポーツの例えばっかり使っている時点で、疲れているのだ、きっと。
さて、そんなこんなで「疲れてるんだわ、私」を認識させられる「はじめに」が終わると、お待ちかねスーパー理系タイムである。申し訳程度の解説はついているものの、海外小説の登場人物以上に覚えにくい、人体の用語と化学物質名のオンパレードである。
寝る前とかに読めばよかった、少なくともファミレスで注文したメニューを待つ空腹でイライラしてへとへとな今読むもんではなかったと思いながら、指を懸命にめくり続ける。思考の輪郭がぼやぼやしてきて146ページに入ったところで急に章のタイトルが優しくなる。
第5章「ゆらぎ」のある生活で脳疲労を軽減する
である。なんか急に無◯良品みたいだな…とツッコミを入れつつ、飛びかけていた意識が戻ってくる。
森が快適なのはマイナスイオンの作用ではない
そりゃそうだと思いつつ読んでいくと、わかりやすく「森林浴でなぜ人が癒されるのか」ということが紐解かれていく。「さあ、科学の力でマイナスイオンをコテンパンに論破してくれ」とワクワクしてくる。
しかし、期待からは外れて、「うーん、まあ、ないよね、存在自体が曖昧だもん。なんなら和製英語だもん」という柔らかめなパンチしか飛んでこない。
では、なぜ森林浴で人は疲れが軽減するのか?
それは、木漏れ陽や風の不規則な動き「ゆらぎ」のリズムが「心地よさ」を感じさせるのだという。
「不規則な規則性」を持つ現象を、「ゆらぎ」と呼びます。「カオス」という言い方をする場合もあります。
「ゆらぎ」=「カオス」、さらっとおっしゃいますが、文系人間からするとちょっとびっくりする。
この「ゆらぎ」の紹介を皮切りにこの本は初心者にぐんと優しい本になる。
冒頭の「適度な運動」「焼肉」「お酒」「温泉」でなぜ疲れが取れないのかを教えてくれる。
急に体温が上がったり、血流が上がると人間疲れるらしい。確かに上記の4つの共通点ってそこだわ、と納得できる。
そして、答え合わせのように、疲れへの対処方がでてきたところで、ふと気づかされる。
この本の構成そのものが確かに「ゆらぎ」だ、と。
不規則な規則性にまんまと取り込まれる本である。
- 著者
- 吉田 たかよし
- 出版日
- 2013-05-17
「ゆらぎ」という概念にすっぽり包み込まれたところで、さらに「ゆらぎ」に関する新書を一冊ご紹介させていただきたい。
あんだけ「理系な話題なんかいやだわ」みたいなことを言っておいてなんだが、科学界における「ゆらぎ」をとてもわかりやすく書いている良書である。なんとかアンリミテッドで2019年5月16日現在無料なので、ぜひちょっとのぞいてみてほしい。
「人の体は実は25時間周期なんだだけど、この太陽の周期とのずれがゆらぎなんだよ」とか割と面白い人体の不思議が紹介されていてすいすい読めてしまう。特にこの本の良さが伝わる一節があるのでご紹介したい。
人間の瞳孔もまた、心の状態によって不規則に大きくなったり小さくなったりする=ゆらぐ、らしいのだが、そこからの論の飛躍の仕方が素敵だ。
だから、瞳孔が大きい人は異性に好かれやすく、恋愛では有利です。少女漫画のヒロインの目が大きく描かれるのは、この作用を狙ったものです。好きな異性をじっと見つめることを「ラブラブ光線」と言うことがありますが、実はこの効果を陰で支えているのも瞳孔の大きさなのです。
「ラブラブ光線」という言葉に、心がゆらぐ。
困シェルジュ
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