帝国学園の生徒会を中心に描かれた学園ラブコメディ漫画『紳士同盟クロス』。生徒会に、バイトに、恋愛に、と充実した生活を送る主人公の物語……と聞くとありきたりに思われるかもしれませんが、連載が開始された2004年としては珍しいBL、百合描写が話題になった異色作。 この記事では、そんな名作のあらすじと合わせてキャラクターの魅力をご紹介します。ネタバレも含みますので、ご注意ください。作品の結末が気になる方は、無料で読めるスマホアプリも利用してみてください。
主人公・乙宮灰音(おとみやはいね)は、元ヤンキーの高校1年生。自分がヤンキーを辞めるきっかけとなった想い人・東宮閑雅(とうぐうしずまさ)に近づくため、資産家だけが入学できる学園「帝国学園」に通っています。
帝国学園で生徒は「金」「銀」「銅」のランクに分けられ、「皇帝」と呼ばれる閑雅は学園唯一の「金」のランク保持者です。「銅」の生徒にとって皇帝は天上の人であり、「銅」の灰音は閑雅と会うのを夢見ていました。
ある日、閑雅が何者かに攫われる事件が発生し、灰音は閑雅を助けに行きます。この事件をきっかけに、灰音は皇帝の恋人であり、学園ただ1つの特別な枠である「プラチナ」になり、生徒会にメンバー入りしたのですが……。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2005-02-15
閑雅の恋人になれたことを喜ぶ灰音ですが、それは形だけ。人間不振な性格の閑雅は思った以上に手強く、様々な面で灰音を突き放そうとしてきます。
どんなに冷たくあしらわれても、なおも閑雅を真っ直ぐに思い続ける灰音。そんな灰音の想いに、閑雅の心も動かされます。しかし、ある事件を機に、閑雅の秘密を知ることになります……。
本作は、2004年から4年もの間にわたり『りぼん』で連載され、コミックスは全11巻が刊行されました。
帝国学園を舞台にしたラブコメや、それぞれ闇を抱えたキャラクター、さらに当時の少女漫画では珍しいBL、百合描写が話題となり、同作者のシリーズのなかでも高い人気を誇っています。
2004年12月には、本作の1話がドラマCD化され、まおら役に作者本人が出演しました。特徴的な学園を舞台に、一筋縄ではいかない灰音の恋愛はどう展開していくのでしょうか。
本作はマンガアプリで読むことができます。下のボタンから簡単にインストールできるので、ぜひ利用してみてください。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2013-06-18
作者の種村有菜は、「りぼん」の看板作家として知られる女性漫画家です。
1996年に、読み切り作品『2番目の恋のかたち』で漫画家としてデビュー。1998年から2年にわたり連載した『神風怪盗ジャンヌ』は500万部を超える大ヒット作となり、1999年にはテレビアニメ化しました。
2002年には、『満月を探して(フルムーンをさがして)』が原作と並行する形でアニメ化。2012年にりぼんから離籍し、2019年にはスマートフォンゲーム『アイドリッシュセブン』のキャラクターデザインを担当しています。
大きな目の人物画とトーンを惜しげなくあしらった作風が特徴で、その画風が当時の少女漫画界に大きな影響を与えました。画力においても定評があり、人物の柔らかで繊細な雰囲気や、物の質感を感じさせる丁寧な描写は、目を奪われるものがあります。
種村有菜のおすすめ作品を紹介した<種村有菜の少女漫画おすすめ5選!懐かしくて乙女心にずっきゅんする作品!>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
本作の主人公・乙宮灰音は、1月21日生まれのO型。元ヤンキーの高校1年生で、生徒会では用心棒兼庶務の担当です。
単純で脳天気なところがあるものの、優しくて真っ直ぐな性格の持ち主で、人の気持ちを敏感に感じとることができます。一方で恋心には鈍く、義理の弟・草芽(くさめ)の気持ちにはまったく気づいていません。
小学校4年の頃までは「香宮」という名家で育ちましたが、香宮家が不況になった際、現在の乙宮家に5000万で養女に出されました……。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2015-06-18
乙宮家で居場所のなさを感じた灰音は、中学時代にヤンキーの道へ。養女に出されたことは今でもトラウマで、金銭で物事を解決することに過敏に反応しています。
ヤンキーだった中学時代は「浜のシンデレラ」と呼ばれ、学園でもその強さは健在。前歯の2本の差し歯が取れるのが嫌で、差し歯が取れると自我を失い暴走状態になります。
そんな彼女には子供のころ、父親が誕生日にプレゼントしてくれた思い出の絵本がありました。タイトルは「忘れられない魔女の歌」。
この絵本の作者・閑雅とパーティーで出会ったのをきっかけに、彼に恋心を抱くように。後のヤンキー時代に閑雅と再会し、彼の存在がヤンキーを辞めるきっかけになりました。
大好きな絵本の作者であり、自分をヤンキーの道から救ってくれた閑雅を想い続けていましたが、ある事件で閑雅に双子の兄がいることや、絵本の本当の作者が高成という人物であると知り、2人の間で気持ちが揺れます。
自らも深い闇を抱えながら、誰にでも明るく接し、真っ直ぐに向き合おうとする灰音の強く優しい姿に、勇気づけられた読者も多いでしょう。
物語の終盤では高成と閑雅を救うため、東宮家の試練に自ら挑みます。そんななかで灰音は高成と閑雅のどちらを選ぶのでしょうか。
東宮高成は、10月17日生まれのA型で、閑雅の双子の兄。東宮閑雅の影武者で、帝国学園で生徒会長を務めています。
学園唯一の「金」ランク保持者の彼は、学園内で最高権力を持っており、堂々とした振る舞いと威厳から、女子生徒だけでなく男子生徒からも大人気。
高校から閑雅の代わりに学園に通うようになり、事情を知らない周囲からは「閑雅がクールになった」と思われています。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2015-06-18
閑雅とは幼少期仲が良かったものの、7歳の時に祖父から出された試練で、閑雅に見捨てられ崖下へ転落。戸籍上で「東宮高成」は死亡扱いになり、高成は閑雅の影武者にされます。
この事件で閑雅に深い憎悪を抱くようになり、同時に心も閉ざして人間不信に陥るように。
学園でも使用人の十夜(とうや)以外は信用していない様子ですが、根は弟思いであり、捨て猫のような切ない目線に弱いという人情味も持っています。
灰音のことは、閑雅が好きな人であるという理由から嫌悪しており、たびたび冷たい態度を取って「閑雅」が嫌いになるよう仕向けていました。
しかし、灰音の真っ直ぐな想いに徐々に惹かれていき、自身が昔描いた絵本を覚えていてくれた彼女を好きになります。
性格も丸くなっていき、生徒会のメンバーの前でも本来の性格を出すように。最初はクールな俺様キャラだった高成が、物語の後半では明るい笑顔をたくさん見せるところに、思わずギャップ萌えを感じてしまうキャラです。
高成の双子の弟・東宮閑雅は、10月17日生まれのA型で、東宮家の次期当主。白血病のため激しい運動ができず、高校からは高成を「閑雅」として学園に登校させています。
ヤンキー時代の灰音と雪の日に出会い、灰音をヤンキーの道から身を引かせるきっかけを作りました。
7歳の時、試練で高成に勝つためにわざと崖際に石を置き、石を取ろうとして落ちかけた高成を見捨てます。結果として試練には合格しますが、高成からは自分を見捨てたことで嫌われることに。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2015-09-18
高成のことを「人形」や「影」と呼び、傲慢な態度で接していますが、根は優しくて兄思いな性格です。心の底では兄を見捨てたことをずっと後悔しており、高成に「自分を許さないでほしい」と思っています。
怪我を負ってしまい、高成に治療のために手を伸ばすよう言われたときには、素直に手を出すなど弟らしい一面も見せており、その時にもらったハンカチを大事に持っている場面も。
灰音をとても大切に想っており、学園祭の舞踏会で一緒に踊るため、自ら学園に登校してきたこともあります。彼女に見せる王子様スマイルと、高成に見せる黒い笑顔のギャップがたまりません。
物語の終盤で、灰音への愛を高成と競い合う場面は必見です。灰音と一緒に、2人の兄弟それぞれの魅力に惹かれながら読んでみてください。
天宮潮(あまみやうしお)は、2月27日生まれのA型。灰音の親友で、生徒会では書紀担当です。普段はクールビューティーな態度ですが、笑うと可愛いところがあります。
頭脳明晰かつ容姿端麗で、男子生徒からは「紫陽花の君」と呼ばれ圧倒的支持を得ています。しかし本人は男嫌いを自認しており、灰音の気を引くために保健室で複数の男子生徒と逢瀬を繰り返していた時も、キスだけはしていませんでした。
灰音が閑雅を好きなのが気に入らず、彼女が生徒会に入会した時は、父親に頼んで寄付金を払い生徒会に入会しています。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2005-12-15
両親とは不仲の関係。実は父親の愛人の娘であり、本妻が子どもができない体のため跡継ぎとして迎えられました。そして後に潮自身も子どもができない身体であることが判明します。
周囲から冷遇され、命をも狙われてきたために、心を閉ざして生きてきた潮。しかし警察から逃げてきたヤンキー時代の灰音と出会って親友になり、徐々に心を開いていきました。
灰音に対してヤンデレな愛を向けていましたが、その想いが恋愛ではないことに気付き、後に保険医の成宮千里(なりみやせんり)を好きになっていきます。
生徒会に入ってからは、灰音以外の人物とも打ち解けるようになり、まおらとはじゃれ合ったりする仲に。千里の前では潮のポーカーフェイスが崩れまくりで、彼へのツンデレっぷりに見ているこっちがにやけてしまいます。
自分の抱えている過去や、灰音とそれ以外の人物への矛盾した気持ちに悩んでいる姿は、本作のターゲット層である少女のみならず幅広い世代に刺さるものがあるといえるでしょう。
まおらは、8月8日生まれのAB型。エキセントリックな性格の「男の娘」で、生徒会では企画と会計を担当しています。
頭脳明晰かつ成績優秀で、生徒会ではブレーン的存在。腹黒いところがありますが根は優しく、自分の気に入った人物や好きな友達のためなら助力を惜しまないタイプです。
本名は一ノ宮由貴(いちのみやよしたか)ですが、普段は本名ではなく「まおら」と名乗り、女装姿で学園に登校しています。
親がデザイナーとヘアメイクアーティストであるためか、手先が器用でメイクが得意。容姿端麗で男女どちらの姿でも魅力があり、女子生徒から圧倒的な支持を得ています。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2006-09-15
女装を始めた理由は、幼少の頃に辻宮真栗(つじみやまぐり)に告白され、それを親に報告したら「男の子同士では結婚は無理」と言われたため。
まおら(由貴)は、当時見ていた少女変身アニメを真似て「まおら」を名乗り、真栗に再度告白しますがあっさり振られ、それ以降犬猿の仲になります。
学園では、ある理由から「郵便屋さん」として働いており、その事実を隠していました。作中で正体がバレた際、灰音に告白して閑雅(高成)をリコールし、自分が次の皇帝になると宣言して皇帝選挙を開催します。
皇帝選挙は閑雅(高成)が勝利しますが、選挙後もまおらは生徒会に残ることに。このリコール事件の後、真栗に告白され、晴れて真栗と恋人同士になりました。
「まおら」としての明るくコミカルなキャラと、「由貴」としての男性らしいクールなキャラの二面性が魅力的なキャラクター。真栗とのケンカップルな絡みが面白く、随所で彼に対する扱いがひどいのに笑ってしまいます。
本作のマスコットキャラクター・オコリマクリ君との微笑ましい関係にも注目です。
辻宮真栗は、11月3日生まれのA型。ヤクザの家の出身で、生徒会では副会長です。
ゲイであることをほぼカミングアウトしており、高校に入ってがらりとイメージが変わった閑雅(高成)に夢中になっています。
嫉妬深く素直でない性格ですが、普段は犬猿の仲である灰音が落ち込んだ時に慰めるなど、本来は優しい性格です。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2006-05-15
幼少期に、木登りから落ちてしまったまおら(由貴)を受け止めて頭に5針縫う怪我を負った過去があり、その後傷跡が目立たないように金髪にして頭に包帯を巻き、現在の容姿となりました。
まおらに苦手意識があるものの、内心では気にかけている様子。閑雅(高成)を諦めてからは郵便屋さんに恋するようになりますが、まおらと郵便屋さんが同一人物であると知り、再び彼への気持ちと向き合います。
閑雅を「しーずん」と呼んだり、好きな食べ物が甘い物やバナナだったりなど、可愛いところが多いキャラ。
一見恋多い人物に見えますが、心の底ではまおらを想い続けており、リコール事件後に彼に告白します。その告白シーンは、作中でも屈指の名シーンです。ぜひ、その結末を見届けてください。
登場人物のひとりひとりが魅力的で、テンポよく展開していく本作。学園ラブコメや、強くて真っ直ぐなヒロインが好きな人におすすめしたい作品です。スマホアプリでも無料で読めるので興味を持っていただけた方はご覧ください。