5分でわかる北方領土問題の歴史!日本とロシアの立場などをわかりやすく解説

更新:2019.6.27

報道でたびたび話題になる北方領土問題。返還に向けた具体的な提言はあるものの、第二次世界大戦が終結した後からロシアが実効支配しています。この記事では、問題が発生するまでの歴史、日本とロシア両政府の立場、解決法などをわかりやすく解説。あわせておすすめの関連本も紹介していきます。

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北方領土の概要を簡単に解説!住民はいる?旅行はできる?

 

北海道の北東沖にある択捉島(えとろふとう)、国後島(くなしりとう)、色丹島(しこたんとう)、歯舞群島(はばまいぐんとう)を「北方領土」といいます。

日本政府は日本固有の領土であると主張していますが、2019年現在、この地域はロシアが実効支配を続けており、領土問題の係争地となっているのです。

ロシアの支配が始まったのは、第二次世界大戦後。日本が「ポツダム宣言」の受諾を表明した後、北方領土はロシアの前身であるソ連に不法占拠されました。戦前から現地で暮らしていた日本人は強制的に退去させられ、今日に至っているのです。

日本政府は、ロシアの支配を不当なものとして、北方領土返還のための交渉を続けています。交渉が成立するまでは、両政府間で定めた「ビザ無し交流」を除き、旅行などで訪れる行為を自粛するよう要請しているのです。

北方領土問題が発生するまでの歴史をわかりやすく解説

 

日本の国境は、江戸時代末期から明治時代の初期にかけて、「国際法」にもとづき定められてきました。日本は島国なので、国境は海上にあります。

1854年には、ロシアと「日露和親条約」を締結し、北方領土の4島のうち最北に位置する択捉島と、およそ40km北にある得撫島(うるっぷとう)の間を国境としています。

その後1875年には「樺太・千島交換条約」を締結し、択捉島以北の島々を日本の領土とする代わりに、「日露和親条約」の時に保留されていた樺太の権益は放棄することが決められました。

こうして国境が定まり、北方領土は日本の領土として、日本人が暮らしていました。「北方領土問題対策協会」によると、1945年8月の時点では、1万7000人以上の日本人が暮らしていたそうです。

しかし第二次世界大戦で日本が敗戦すると、ポツダム宣言に調印するまでの間、北方領土はソ連軍に占領されます。さらに1946年にGHQが日本の行政権を停止すると、ソ連は北方領土の自国領への編入を宣言。1947年7月以降、北方領土に暮らしていた日本人は強制引揚によって退去させられてしまいます。代わりにロシア人の入植が進みました。

1951年、第二次世界大戦の講和条約である「サンフランシスコ平和条約」が締結。日本の領土は本州、北海道、四国、九州とその周辺の島々に限定されました。この時日本は、南樺太と千島列島の領有権を放棄しています。

ここで問題となるのが、「千島列島」に対する認識です。千島列島は国後島、択捉島、得撫島、幌筵島、占守島などで構成される島々のこと。得撫島以北を北千島、択捉島以南を南千島といいます。日本やアメリカの見解は、「得撫島以北の千島列島」を放棄するというもの。択捉島以南の南千島は含まれていないとしています。

しかしソ連は、「北方領土4島を含む千島列島」と認識。さらに当時ソ連は東西冷戦の真っただ中で、「サンフランシスコ平和条約」に調印していません。解釈に食い違いがあるまま今日に至り、北方領土の実効支配を継続しているのです。

その後北方領土について言及されたのは、1956年におこなわれた「日ソ共同宣言」の時。この宣言で日本とソ連の国交が回復したほか、両国は平和条約を締結するための交渉をし、条約締結後にソ連は歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことが宣言されました。

ソ連が崩壊した後、北方領土に関する交渉はロシアに引き継がれます。1991年には日本とロシアの間の領土問題と公式に認定。平和条約締結に向けた取り組みが進められるものの、交渉は成立しません。しだいにロシアの主張は変化していって、領土問題は存在しないと述べるようになりました。2016年には、1万6000人を超えるロシア人が北方領土に住んでいることがわかっています。

北方領土問題に対する日本政府の立場、ロシア政府の立場

 

北方領土に対する日本政府の立場について、外務省のホームページには次のように記載されています。

(1)北方領土は、ロシアによる不法占拠が続いていますが、日本固有の領土であり、この点については例えば米国政府も一貫して日本の立場を支持しています。政府は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本的方針に基づいて、ロシア政府との間で強い意思をもって交渉を行っています。
 

(2)北方領土問題の解決に当たって、我が国としては、
1)北方領土の日本への帰属が確認されるのであれば、実際の返還の時期及び態様については、柔軟に対応する
2)北方領土に現在居住しているロシア人住民については、その人権、利益及び希望は、北方領土返還後も十分尊重していくこととしています。

このように、日本政府は一貫して「日本固有の領土」と主張。ロシアの不法占拠をやめさせて、平和条約を締結するための交渉を続けると表明しています。

その一方でロシア政府は、「北方領土は、第二次世界大戦の戦勝国であるソ連が正当に獲得した領土である」「日本はサンフランシスコ平和条約にて千島列島の領有権を放棄しており、北方領土は千島列島に含まれる」という立場を示しています。

ロシア政府が強硬な姿勢をとり続ける背景には、北方領土が軍事的な要衝であることが挙げられるでしょう。ロシアは北方領土があるオホーツク海に、弾道ミサイルを搭載した潜水艦を多数展開しています。それは、オホーツク海の出入り口を監視下に置けているから。仮に日本に北方領土を返還すると、アメリカ海軍を自由に出入りさせてしまうことに なるのです。

プーチン大統領は2018年に、「平和条約締結後に何が起きるのか。その回答が得られない限り、重要な決定は難しい」と述べています。日本と安全保障条約を結んでいるアメリカが、北方領土に基地を建設する可能性を懸念しているのでしょう。このように北方領土は、軍事的にも重要な意味をもっているのです。

北方領土問題の解決法は?四島返還や二島譲渡

 

第二次世界大戦後から長らく続いている北方領土問題。解決のために挙げられている選択肢を紹介します。

日本政府がくり返し主張しているのが、「四島返還論」です。名前のとおり、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島すべての返還を要求しています。これ以外の方針をとると、日本が領有権を放棄したと受け取られかねません。

その一方で「四島返還論」を主張するだけでは、交渉が進まないのも事実。そこで1956年の「日ソ共同宣言」にもとづいて、平和条約の締結後に色丹島と歯舞群島から返還の実現を目指す「二島返還論」というものがあります。

そのなかでもいくつか方法があり、色丹島と歯舞群島の返還を実現させた後に択捉島と国後島については交渉を継続する「二島先行返還論」、色丹島と歯舞群島の返還で決着を図る「二島返還論」、二島返還に加えて択捉島と国後島への経済的な進出を目指す「二島返還+α論」などが述べられています。

ロシア政府も「二島返還論」に近い主張として「二島譲渡論」を提唱。これは北方領土を日本に「返還」するのではなく、ロシア領である色丹島と歯舞群島を「善意によって譲渡する」ことで決着を図ろうとするものです。

このほか「三島返還論」「面積二等分案」「共同統治案」など多様な提案がされていて、北方領土問題解決のための可能性が模索されています。

国際関係をリアルに描いた歴史小説

著者
数多久遠
出版日
2018-12-10

 

2016年におこなわれた日露首脳会談で解決するはずだった北方領土問題。しかし交渉はうまくいくことはありませんでした……。

本書は、事実をもとに取材を重ねて記されたフィクションの歴史小説です。実際にあった交渉を題材に、北朝鮮のミサイル問題やアメリカ大統領選を交えつつ、その舞台裏を描いています。

作者の数多久遠は、元幹部自衛官で、軍事評論家でもある人物。北方領土の地政学的な位置づけを記しながら、国際情勢を分析し、交渉の過程を再現しています。フィクションということを忘れてしまうほど、臨場感たっぷり。日露関係に興味がある人におすすめの一冊です。

北方領土問題解決の道を探る

著者
名越 健郎
出版日
2016-11-01

 

その正当性はさておき、ロシアが北方領土を実効支配してから70年以上が経過しています。しかし、この間にロシアの人々が現地でどのように暮らしてきたのかは、ほとんど語られることはありません。

本書は、ロシア側の資料を翻訳することで、北方領土に移住をしたロシア人の生活を浮き彫りにしています。具体的な数字を用いながらわかりやすく記しているのが特徴です。

調査によると、北方領土では経済面や治安面でさまざまな問題が生じているそう。問題点を知ることが、もしかしたらロシアが日本と協力するメリットにも繋がるかもしれません。

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