熊本県芦北町が舞台の本作。ひょんなことから「ていぼう部」に入部した主人公は、部活を通じて釣りの楽しさや奥深さを知っていきます。釣りが好きな人はもちろん、そうでない人も楽しめる、海の魅力がいっぱいに詰まった作品です。アニメ化も決定している本作の魅力や舞台をご紹介していきましょう。
高校入学を控え、父の故郷・熊本に引っ越してきた鶴木陽渚(つるぎひな)。偶然出会った高校の先輩・黒岩悠希(くろいわゆうき)に、強引に「ていぼう部」に入部させられてしまいます。
ていぼう部は釣りをしたり、釣った魚を食べたり、海を満喫する部活。生き物が苦手な彼女は、初めこそていぼう部の活動に抵抗を感じていましたが、次第に釣りの魅力に引き込まれていきます。
エサを触るのも嫌がっていたのに、気づけば自分から魚釣りに出かけてしまうほど。陽渚の高校生活は、どうなってくのでしょうか。
釣りの魅力がたくさん描かれる、女子高生たちの青春釣り物語です。
- 著者
- 小坂泰之
- 出版日
- 2017-10-20
アニメ化が発表され、キャストや放送時期などの続報が待たれる本作。舞台となる熊本県芦北町の美しい海の風景や、釣りを楽しむ登場人物たちの元気な姿など、見応えのあるアニメーションが期待されます。
本作の魅力は、何といっても精細な釣りの描写。釣りの道具や魚が詳細に描かれているのはもちろん、釣りを楽しむ登場人物たちの姿も活き活きとしています。広い砂浜や雄大な海が描かれた見開きの大きな画面からは、まるで磯の香りが漂ってくるようです。
この美しい熊本の海を舞台に、ていぼう部の4人の女子高生が釣りを楽しみます。主人公が初心者のため、釣りに詳しくない人でも、読みながら釣りの楽しさを知ることができるのも魅力の一つ。
また、「釣ったら食べる」がモットーのていぼう部は、釣った魚を自分たちで調理して美味しくいただきます。自分で釣った魚は美味しさもひとしお。新鮮な魚を口にして感激する陽渚の笑顔を見たら、読者も釣りに出かけたくなってしまうことでしょう。
高校入学を間近に控えたある日、陽渚は自宅近くを散策に出かけます。陽渚の自宅は芦北町計石の周辺地域らしく、彼女の散歩中にも芦北漁協と思われる場所が登場します。
そして、道中で出会ったのがていぼう部部長の黒岩。陽渚は手先の器用さを見込まれ、黒岩の強引な勧誘でていぼう部に入部することに。
- 著者
- 小坂泰之
- 出版日
- 2017-10-20
もともと生き物が苦手な陽渚は、ていぼう部に気が乗らず、入部を断ろうとしていました。しかし、幼馴染の帆高夏海(ほだかなつみ)や2年生の先輩部員・大野真(おおのまこと)も加わり、彼女たちに教わりながら釣りをやってみると、意外にも楽しいと感じるように。
初めてのアジゴ釣りで、最初はエサのにおいにも抵抗を感じていた陽渚。しかし、魚に竿を引っ張られる感触や、釣れた瞬間の感動を体験し、どんどんアジゴ釣りに夢中になっていきます。気が付けば嫌がっていたエサにも素手で触ってしまうほど。
いつの間にか陽渚と一緒に、読者も「釣りって楽しいかも!」という気持ちになってしまうことでしょう。こうして彼女のていぼう部ライフが始まるのです。
ある休日、陽渚の自宅の倉庫から祖父が使っていたという釣り道具が見つかります。両親からのリクエストもあり、陽渚は一人で釣りに出かけることに。
たこひげやでエサも仕入れ、自信たっぷりに釣りに臨んだ陽渚。しかし、始めてみると何故か全く釣れません。途中で合流した夏海に教えてもらい、初めて針の大きさや竿の種類が不適切であったことがわかります。
- 著者
- 小坂 泰之
- 出版日
- 2018-03-19
適当に道具を選んでいた陽渚は、反省とともに釣りの奥深さを知るのでした。
初心者らしく失敗しながらも、楽しもうとする姿が微笑ましく感じられます。そして失敗に落ち込むことなく、いつかは自分が夏海に釣りを教えられるようになろうと目標を持つ陽渚。
その前向きな笑顔からは、彼女がどんどん釣りを好きになっている様子が実感できるでしょう。
今回登場する「たこひげや」は、実在する釣具店「てんぐや」がモデル。実は作者はてんぐやの常連で、店内にもサインが飾ってあるそうです。
川の中のブロックの隙間に見え隠れするテナガエビの姿。陽渚はエビ釣りを一見簡単そうだと思いますが、いざ釣り始めるとなかなか思うようには釣れません。 エビとの駆け引きは意外にもスリリング。獲物の姿が見えているだけに、逃げられてしまうと悔しさが込み上げてきます。
- 著者
- 小坂泰之
- 出版日
- 2018-11-20
陽渚の負けず嫌いな一面が発揮され、テナガエビ釣りは白熱。いつもの海での魚釣りとは一味違った楽しさを知ることができるエピソードです。
第3巻は梅雨から夏にかけてのエピソードを収録。海に出られない梅雨の時期は、川でのテナガエビ釣りや、着衣水泳の訓練などをおこなっています。
テナガエビ釣りの舞台になっているのは佐敷川という川のようです。佐敷川は他にもスズキなどが釣れるスポットとして知られています。
今回の釣りの舞台は鶴木山港の堤防。徐々に釣りに慣れてきた陽渚は、のべ竿とウキという新しい道具を教えてもらいます。 小さな魚でも力強い手応えを感じられるのべ竿に、大興奮。アジゴだけでなく、ベラやメジナ、フグなどを次々と釣り上げていきます。
日も暮れそうなころ、黒岩の手引きで糸を長くしてみると、釣れたのは大きなアジ。自身で釣り上げたアジが夕日に照らされて輝く姿……そんなアジを感慨深く見つめる陽渚の笑顔は、達成感に満ちています。
- 著者
- 小坂泰之
- 出版日
- 2019-04-19
初期には、黒岩がタコを締めているのを見ただけで失神していた陽渚。しかし、少しずつ自分の手で魚を締められるようになり、下ごしらえにも挑戦していきます。釣りに積極的になり、自分からキス釣りを提案するところからも、彼女の釣り人としての成長が感じられるでしょう。
しかし、キス釣りに出かけた亀ヶ浜海水浴場(この浜辺は鶴ヶ浜海水浴場がモデルになっています)で、陽渚は一匹も釣れないまま。
ていぼう部の仲間たちは、彼女の成長を見守るため、あえて口出しをしません。1人だけ釣れず、落ち込む陽渚に黒岩はアドバイスをするのですが……。
陽渚の成長とともに、読者も釣りの面白さを知ることができ、新たな世界を発見する楽しさに溢れた本作。ていぼう部の次なる活動にワクワクが止まらず、一気に読み進めてしまうことでしょう。
はたして、陽渚は無事にキスを釣り上げることができるのでしょうか?続刊の展開も気になります。