『教場』木村拓哉でドラマ化の警察学校小説!シリーズの見所ネタバレ解説

更新:2021.12.11

警察官の教育機関である警察学校では、厳しい規律による生活環境で、半年にもわたる厳しい授業と訓練が行われます。常に監視下に置かれ、些細なミスでも罰則が課される環境では、様々な動機で集まった37名の生徒たちの思惑や葛藤が渦巻き、時には事件が起きることも。風間教官は、そんな生徒たちに謎めいた試練を与え続けます。はたして、彼の狙いは何なのでしょうか。 今回は、そんな本作の魅力をご紹介します。

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小説『教場』が木村拓哉主演でドラマ化!【あらすじ】

警察官を目指す者が、半年間の訓練を受ける教育機関・警察学校。希望を持って入学した41名の初任科第98期短期課程の生徒たちは、厳格な規律の中、厳しい訓練を受け、入学から1ヶ月後には4名の生徒が退校していました。

そんな中、突然の病気で休職した植松教官に代わり、50代の男性教官・風間が担当になります。物腰が柔らかくどこか天然に見える風間教官ですが、実は観察力に長けており、極限状態の生徒たちが抱える思惑や邪(よこしま)な企みを次々と見抜いていく人物だったのです。

「警察官の資質に欠ける学生を、早い段階ではじき出すための篩。それが警察学校だ。」
(『教場』より引用)

この文章を体現するかのように、警察官に適さない人材を退校させ、見込みのある人材を育てるために風間教官が生徒たちに課す謎めいた課題。さまざまな背景のある生徒たちは、どのように成長するのでしょうか。

著者
長岡 弘樹
出版日

本作は、小学館が発行する小説雑誌『STORY BOX』に2009年9月から2011年2月まで連載された『初任』を改稿した推理小説です。

「週刊文春ミステリーベスト10 2013年」で第1位、「このミステリーがすごい!2014年版」で第2位にランクインする程の人気を博しました。また、警察小説を書く作家の高村薫や横山秀夫、今野敏などからも高く評価されています。

作品の人気は高く、2016年に続編である『教場2』、2017年にスピンオフ作品『教場0:刑事指導官・風間公親』が発売されました。

2020年には木村拓哉主演でドラマ化も決定されており、メディアミックスの作品として益々注目を集めています。

作家・長岡弘樹とは

著者
長岡 弘樹
出版日

作者である長岡弘樹は、2003年に「真夏の車輪」で第25回小説推理新人賞を受賞してデビューを果たした推理作家です。

推理小説と警察小説をメインに執筆しており、初めて刊行された単行本『陽だまりの偽り』や39万部を超えるヒット作になった『傍聞き』、第17回大藪春彦賞にノミネートされた『波形の声』などが代表作として挙げられます。

どの作品も、緻密に張り巡らされた伏線となかなか見えてこない真相を描いた文章の中で、登場人物たちの人間模様に焦点を当てながらラストまで一気に読みたくなる物語ばかりです。ミステリーと人間ドラマが両立している作風が、作者の魅力であり「ミステリーの名手」と呼ばれる所以です。

小説「教場」の見所をネタバレ解説1:潜入不可能な警察学校を舞台とした異例の警察小説!

本作の舞台は、一般人が簡単には足を踏み入れることができない警察学校です。警察小説としては珍しい設定で、読者は生徒たちがどのような訓練を受けるのか、どのような環境で警察官として成長するのかなど、あまり知る機会のなかったことを知ることができます。

実際にどのような人材が警察官として求められているのかということが説明される場面では、読んでいて目から鱗が落ちるような衝撃を受けます。風間は警察官に憧れている人間よりも、あることを重要視しています。

「むしろ、警察官に文句があるから警察官になった」
(『教場』より引用)

そんな人間の方が警察官に向いていると発言するのです。彼の発言は一見不可解に見えますが、警察学校の実態と、登場人物たちが織り成す人間模様を知るにつれ、読者もいつの間にか彼の言葉に納得してしまうでしょう。

警察小説の新ジャンルと言われる本作。今まであまり描かれることのなかった世界を楽しむことができる作品です。

小説『教場』の見所をネタバレ解説2:怖いのに目が離せない!?特殊な教育環境の中で成長する登場人物たちに注目!

本作では、様々な事情を抱えた生徒たちが警察学校に集まっています。元小学校教師の宮坂定や婚約者を殺した犯人を捜す楠本しのぶ、白バイ警官に憧れる鳥羽暢照など

彼らは過酷な訓練はもちろん、厳しい規則と、僅かなミスでも連帯責任で罰則を受けさせられる環境にいるのです。そんな過酷な環境下では脱落する者や、精神的に追い詰められる者、他人をスケープゴートにする者などが現れてしまいます。

そんな登場人物たちは、警察官という「清廉で潔白された人物」というイメージからは程遠く、狭い環境に閉じ込められた人間の生々しい憎悪を感じます。

そんな状況下で、彼らは風間教官から理由の分からない課題を与えられます。

元小学校教員の宮坂は、日常生活の中で気づいたことを毎日報告するように指示されたり、蜂に刺されたことにより、蜂にトラウマを抱く由良は、1人でスズメバチの巣を除去するように言われたりするのです。

警察官になるのには無関係のように思われる課題ばかりですが、そこには生徒たちにとって本当に必要な訓練が与えられていたのだと、後から判明します。

鋭い目線で生徒たちの本質を見抜く風間による教育で、生徒たちは目を見張るような成長を遂げ、読者を惹きつけます。身近にも起こりうる人間関係の複雑さや、生徒たちの人としての成長は、警察小説でありながら真新しい物語を感じられるでしょう。

小説「教場」の見所をネタバレ解説3:伏線をあなたは見破れる?ミステリー要素も面白い!

本作は、警察小説に必要不可欠な「ミステリー要素」もしっかり楽しめる作品です。シリーズ1作目である『教場』は、1話完結型の6つの短編から成り立っていますが、どの話にも思わぬ伏線や真相が潜んでいるのです。

元インテリアコーディネーターの楠本しのぶと、誰かから送られる脅迫状に悩まされる岸川沙織との、友人というには歪な関係を描いた「牢問」。白バイ警官を目指す鳥羽暢照と、親友の稲辺隆の間でのある誤解から起きてしまう事件を描いた「蟻穴」。

生徒たちの複雑な人間関係が引き起こす様々な事件がありますが、どの事件の真相も必ず風間教官が見抜いてしまいます。しかし彼は事件を解決するのではなく、起きた事件ですら、見込みがある生徒を育てるための課題に変えてしまうのです。

風間教官の手にかかれば、ミステリー感溢れる事件すらも、生徒たちの成長の糧となり、解決されるのです。風間教官はどんな目的で、どのように生徒たちと関わっていくのでしょうか。本作は、学園ものとしても評価の高い作品ですので、ぜひ風間と生徒の関わり方にも注目してみてください。

小説『教場』の見所をネタバレ解説4:ラストまで目が離せない!その結末とは……

著者
長岡 弘樹
出版日

第98期短期課程の生徒たちが卒業し、新たに第100期短期課程として入校する40名の生徒を迎える入校式の場面で物語は終わります。

第98期短期課程の生徒が入校した時の様子は本作で描かれていませんが、希望に溢れる第100期短期課程の生徒の様子を見て、現実を知る前の彼らもこのような表情を見せていたのかと読者は考えてしまいます。

そして第100期短期課程の生徒はどのような物語を紡ぎだし、どのような成長をするのか……98期の成長を見届けた後には、彼らの未来を想像せずにはいられません。

本作は、ミステリー作品として楽しむことも、警察学校の現実を知ることもできる新しい「警察小説」です。警察小説がニガテ、学園ものが好きな方、そんな方々も楽しめる作品といえるでしょう。

口コミサイトなどには、「警察官の現実を知った」「狂気も交じっていて背筋が寒くなるのに伏線が鮮やかに回収されているため、読み終えた後には爽快感がある」「読みやすく分かりやすい文章だった」などの感想が多く寄せられる作品でもあります。


警察官を養成するための学校を舞台に繰り広げられる、人間の心の闇が引き起こす恐ろしい事件と心の成長が描かれる小説『教場』。恐怖と読後の清々しさが同居する不思議な物語を味わってみて下さい。

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