はじめまして、山中志歩です。 三重県の山奥で生まれ育ち、今は大都市、東京でたくさんの人に埋もれながら、演劇をやっています。 最近の出演作では、月刊「根本宗子」『紛れもなく、私が真ん中の日』で、誕生日なのにどん底に落ちる金持ちの子ども役をやったり、彩の国さいたま芸術劇場でノゾエ征爾さんが演出をされた舞台ではお年寄り600人と一緒にお芝居をしました。7月には平田オリザさん作演出で、大学で猿の実験をしている言語学者の役をやります。 有難いことに、いろいろな演出家のもと、いろいろなお芝居をやらせてもらっています。 読書に関しては、お芝居の勉強のために戯曲を読んだり、小説を読んだりしています。皆さんにオススメしたい本、最近読んだ本などをご紹介出来ればと思っています。よろしくお願い致します!
本棚の前で、考えました。
どの本にも思い入れがあります。
誕生日に頂いた本、ボロボロになるまで読み込んだ本、つまらなくて途中で読まなくなった本、友達に借りたまま返してない本。
どの本をホンシェルジュで紹介しようか、悩みました。
その本の思い出ごと全部、皆さんに紹介したい……。
私は演劇をやっているので、一番はじめは演劇の本にしようと思いました。
戯曲にしようか、演劇の人が書いた小説にしようか考えていたのですが、
「女優」が書いた本はどうだろう?と思いました。
劇作家や脚本家の書いた台詞を話している女優さんたち。
普段何を考えて、どういう生活を送っているのか。
たくさん憧れの女優さんはいますが、今回はこの人の本を紹介したいと思います。
青柳いづみさんという女優を初めて見たとき、衝撃を受けました。
6年前、ひめゆり学徒隊の漫画『cocoon』をマームとジプシーが舞台化し、青柳さんが主人公・サンを演じていました。ぽつりぽつりと話す言葉に真実があり、本物のひめゆりの子を連れてきたんじゃないかと思うくらい佇まいが自然でした。
本当にすごかった。
あれから青柳さんの出ている舞台を何度か観ました。盲目の少女になったり、大人の妖艶な女性になったり、人を殺したり、妊婦になったりして、ポケモンでいうメタモンのような(これは失礼かしら)不思議で魅力的な存在感があります。作品の世界に連れてってくれます。
青柳さんは一体何者だろう? 青柳さんと共演したことのある俳優さんに根掘り葉掘り聞き回ったこともあります。今思えば、かなりヤバイ奴だけれど、ヤバイ奴と思われてもいいから、青柳いづみという存在について、知りたかったです。
そして、この間『いづみさん』という本が発売されました。漫画と文章が載っている一冊。漫画は『cocoon』を描いた今日マチ子さんで、文章は青柳いづみさんです。
- 著者
- ["今日 マチ子", "青柳 いづみ"]
- 出版日
- 2019-05-14
『いづみさん』は、ページ上部分に今日マチ子さんの漫画、下部分は青柳さんのエッセイのような文章が載っています。
この本を読めば青柳いづみさんについて何か分かるだろうというのは、浅はかな考えだと思いました。
読めば読むほど、青柳さんは誰なのか、わたしとは一体なんなのか、世界とはどういうものなのか、分からなくなります。
子どもの頃、夕暮れの空を見ながら、「わたしたちはなぜ生まれて、なぜ死ぬのか」人知れず泣いたことがあります。きっと私だけじゃなく、誰しも経験したのではないでしょうか。
ずっと忘れていたけど、その気持ちを『いづみさん』を通して思い出しました。
わたしたちは想像することができます。本を読むことで、演劇や映画を観ることで、自分じゃない誰かのことを想像し続けることができます。わたしたちは宇宙にだって行けるし、海だって泳げるし、空だって飛べます。