大人気の長期連載漫画『名探偵コナン』は、ミステリーでありながら、さまざまなキャラの恋愛模様も楽しめる作品です。作者・青山剛昌も「殺人ラブコメ」と称するほで、ラブコメをメインに楽しんでいる読者も多くいます。 今回は『名探偵コナン』の主要キャラクターの恋愛部分にフォーカスし、キュンとする名言とともにおすすめの恋愛シーン10選を発表します!
『名探偵コナン』は1994年に連載がはじまり、2020年4月現在でも続いている、ミステリーアクションロマンス漫画です。
主人公・江戸川コナンの目的は、小さくなってしまった身体をもとに戻して元どおりの生活を送ること。そして身体を小さくする薬を開発している国際犯罪組織「黒の組織」を壊滅させることです。
組織の手掛かりを掴むために、毛利探偵事務所を開業する毛利小五郎の娘で幼馴染みの蘭の家に転がり込み、舞い込む事件を解決していきます。
これがメインストーリーですが、ただこれだけではありません。本作は、複数の事件を平行して追っています。
ただ謎解きをするだけではない様々な展開が、読者を飽きさせずに楽しませる作品です。『名探偵コナン』という作品が長く愛されている理由の1つは、ここにあるといえます。
このラブコメ要素。江戸川コナン(工藤新一)と、幼馴染みの毛利蘭のカップルは両想いだというのに、ずいぶんと長い間告白もなしに読者をやきもきさせました。
この2人の現在・過去のエピソードは、ご存知のとおり定期的にストーリーに挟み込まれています。その他にもカップルがたくさん登場していますが、あなたは何組思い浮かべられますか?
服部平次と遠山和葉、高木渉と佐藤美和子、京極真と鈴木園子、白鳥任三郎と小林澄子、千葉和伸と三池苗子、大和敢助と上原由衣、赤井秀一と宮野明美……と、枚挙すればいとまがありません。
また、新一の両親である工藤優作・有希子、蘭の両親の毛利小五郎・妃英理、西の高校生探偵・服部平次の両親である服部平蔵・静華を思いついた方もいるでしょう。
ほかにも警視庁捜査一課の警部、目暮十三・みどりなど、長らく結婚生活を続けていながら、いずれも若い恋人たちのように、熱烈に互いを想い合う夫婦の姿が時折描かれているのも魅力です。
このようにさまざまな愛のかたちが、事件の合間に描かれているのが『名探偵コナン』です。
ここからは本作のたくさんのカップルの恋模様から10個のエピソードをピックアップし、名言とともに紹介していきます!
コナンの恋愛関係一覧を紹介した<漫画『名探偵コナン』恋愛関係一覧!>の記事もおすすめです。気になる方はあわせてご覧ください。
単行本22巻FILE.8「それゆけ園子」から始まる1シリーズは、黒子ではなく、ラブストーリーの主人公としての園子をはじめて描くエピソードです。
「彼氏探し」のために伊豆のビーチにやってきた園子と蘭、ついでにコナン。鈴木財閥の令嬢であるため、旅に利用するのはいつも鈴木グループ系列の高級ホテルですが、それではナンパもされにくいからと、今回はひなびた伊豆の旅館に宿泊します。
ところが、その旅館で事件が発生し、園子が狙われてしまうのです。
暴漢がナイフを振り下ろし、絶体絶命の園子。そこに差し出される1本の腕。その腕に刃が刺さり、おかげで彼女は傷を負いませんでした。
その傷をものともせず、腕の持ち主は彼女を守って暴漢と戦います。その人こそ、旅館の経営者の息子で、杯戸(はいど)高校空手部400戦無敗の「蹴撃の貴公子」こと、京極真だったのです。
暴漢を一撃で昏倒させた京極は、空手の試合会場で蘭を必死に応援していた園子を見て、一目惚れしたのだと言います。そして、園子の挑発的な服装を戒め、こう付け加えたのです。
「もちろん、あなたに好意を寄せる幾多の男の内の一人の戯れ言として、聞き流して頂いても構いませんが…」
(『名探偵コナン』22巻より引用)
身を挺して自分を守り、暴漢と戦った強い男のこの台詞に「ポワワーン」となってしまった園子。その後は浮気な言動を見せつつも、京極を1番に考える乙女となります。
しかし間もなく京極は、国内には敵なしと海外へ留学してしまい、園子は待ち続ける日々を過ごすことになるのです。京極真初登場にして、園子との出会いを描くエピソードでした。
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
高木刑事の後輩としてアニメ版に登場した千葉刑事も、やがて漫画に登場する人物となりました。さらには、小学生時代に端を発する恋のエピソードも。
単行本第71巻FILE.1「思い出のVHS」から始まるストーリーは、千葉刑事が小学6年生のころに、一緒に特撮ドラマをつくったある女の子との恋の話です。
とても可愛らしい「三池苗子」という名の女の子は、千葉刑事のことを好きな様子で、その気配を感じた千葉刑事も彼女にラブレターを出したのでした。
果たして返事はあったのですが、その内容は「学校の視聴覚室に私の気持ちを隠しておきます」というもの。彼らが小学校を卒業し13年が経つまで、その真相は誰にも明かされることはありませんでした。
警察官となった千葉刑事は、13年間一度もその女の子とは会ってすらいませんでしたが、唐突に彼女から「来週の同窓会に出られる?」と電話があります……。
さらには「返事のビデオ見た?」という質問。電話の時点ではまだ見ていない千葉刑事でしたが、仕事で立ち寄った母校・帝丹小学校で、視聴覚室倉庫に居合わせたコナンと少年探偵団の協力を得ます。
そのおかげでついに辿りつくことができた彼女の返事は、「私も好き」というもの。彼は勇んで同窓会に出席するのです。
ところが当の彼女は急用で欠席。さらにツイていないことに、とぼとぼと帰ろうとすると、駐車禁止を取り締まる女性警察官がちょうど千葉刑事の車のナンバーを撮影しているところでした。
彼は知るよしもないことですが、じつはこの女性警察官もその日は同窓会の予定がありました。しかし勤務のため行けなかったのです。「ホントにいいの?同窓会に行かなくて……」と心配する同僚に彼女が答えます。
「一番会いたかった人には会えましたから…」
(『名探偵コナン』71巻より引用)
この女性警察官こそ、杯戸暑から警視庁に転属した交通部の三池苗子巡査、すなわち千葉刑事に思いを寄せていた女の子でした。
13年の間ずっと千葉刑事を想い続け、行くことが叶わなかった同窓会のその日に、交通違反者と、それを取り締まる警察官というかたちで、ようやく再会を果たしたのでした。
しかし千葉刑事本人は「一緒に特撮ドラマをつくったあの女の子=三池巡査」という事実に気がついていません。この後も同じ警視庁に勤め、たびたび顔を合わせるものの気がつかないというニブさ……。
周囲の人たちや読者は、イライラ・やきもきさせられてしまうのですが、それもラブコメディの醍醐味でしょう。
バレンタイデーのちょうど1か月後には、ホワイトデーがやってきます。バレンタインデーに好きな人にチョコレートをプレゼントした人たちは、その返事を心待ちにしています。
近頃はその形式にとらわれず、イベントとして楽しむという人もいるかもしれません。しかしバレンタインデーといえば「チョコレートをプレゼントする=愛を告白する日」で、ホワイトデーは告白の返事をする日。
『名探偵コナン』に登場する女子たちは、それぞれ想う相手にチョコレートをプレゼントします。どんなお返しがもらえるかしらと、下校途中で蘭と園子が話すのを聞いた通りすがりの佐藤刑事は、「いいこと聞いちゃった」と喜びます。
「バレンタインデーにチョコレートをプレゼントすると、3月14日にお返しをもらえる」ということを、このときまで佐藤刑事は知らなかったようです。恋愛ごとに関する彼女の関心の薄さがうかがえる1シーンですね。
「いいこと」を聞いたその場で、車に同乗している高木刑事のほうを振り向いて手を出しますが、高木刑事は「僕、佐藤さんにバレンタインのチョコもらってませんけど……」と戸惑います。
じつは高木刑事は、佐藤刑事とかなりいい雰囲気だと思っており、バレンタインデーには期待していたようです。しかしそれらしいものをもらえずがっかり気分だった彼に、佐藤刑事はしれっと「あら、あげたじゃない!」とひと言。
ある張り込み中に、一緒に現場にいた高木刑事に自分が食べていたポッキーの箱を差し出した、と言い張ります。それが2月14日のバレンタインデーだったと。
「食べかけのポッキーじゃないですか」との高木刑事の抗議に、佐藤刑事はさらにこう返します。
「高木君? チョコも事件と一緒で、大きいも小さいもないのよ?」
(『名探偵コナン』69巻より引用)
事件に大小はなく、事件は事件。1つひとつに真剣に取り組まなければなりません。同様に、チョコレートも大小なくすべてチョコレートである、という彼女なりの理論。
仕事中のおやつで、バレンタインデーという「恋のイベント」を代替されてしまった高木刑事の心中お察しします。
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
ある日園子は「京極さんに送る」と言って、自作の湯飲み茶碗を蘭に見せました。ずいぶんと大きなサイズの湯飲みで、でかでかと「園子」と文字が入っています。
空手の修行のために海外へ行った京極が自分のことを忘れないように、毎日使える湯飲みを陶芸教室で作り、大きく名を入れたという話です。
それを聞いた蘭はなぜか、事件捜査中に「おそらく被害者であろう傷心の若き未亡人」に言い寄られる新一の姿を想像してしまいました。
それは彼女の妄想にすぎないのですが、遠い土地で「手が離せない事件」の捜査に当たっている(はずの)新一に忘れられては困ります。心細くなった蘭は、園子と一緒に陶芸教室に行くことに。陶芸教室でやはり湯飲み茶碗をつくり、「なかなかスジがいい」とほめられた蘭。しかし、そこで事件に遭遇します。
陶芸教室を舞台とした事件は、乗り込んだ警視庁の目暮警部らと推理女王・園子(とコナン)の捜査により無事に解決しましたが、その3日後に毛利家に遊びに来た園子は、がっかりした顔を見せます。
というのも、名前入り湯飲みを送った京極から返事として手紙と写真が届いたのですが、サイズが大きいため花瓶と間違えたのか、花を生けた湯飲みを手にした京極の姿が写っているのでした。
一方、蘭の湯飲みは失敗してしまったため新一には送っておらず、机の上に置いたままに。
机に置いてあるポテチを持ってきてと蘭に頼まれ、部屋に入ったコナンが見た湯飲みの底には、この言葉が刻んでありました。
「ちゃんと待ってるからね」
(『名探偵コナン』31巻より引用)
誰もわざわざ見ないであろう場所に、そっと刻んだ言葉。事件となればどこへでも行ってしまい、周りのことが目に入らないほど集中してしまう新一を想う気持ちです。
蘭は彼のことをよくわかっていて、そのうえで「待っている」と伝えようとしたのです。ふだんは見えないところに刻まれた言葉は、きっと強い決意でもあったことでしょう。
警視庁捜査一課に配属された高木刑事は、先輩の佐藤刑事のことがとても気になっています。できれば振り向いてもらいたい。けれども、佐藤刑事の心にはある男性がとどまっていました。
彼の名は松田陣平。このエピソードの3年前に捜査一課に配属され、佐藤刑事とは対立しながらも気持ちを通わせていた人物です。もう少し長く一緒にいられれば新たな展開があったかもしれません。
しかし彼は、警察を逆恨みする犯人が仕組んだ爆破事件に巻き込まれて突然殉職してしまいます。
そして、3年前と同じ犯人らしき者から、爆弾を仕掛けたという犯行予告が届きます。同じ課の白鳥警部が爆発に巻き込まれ重傷。しかし、それは事件の序章に過ぎませんでした。
本命の爆弾は、東都タワーのエレベーターに仕掛けられていて、爆発すれば東京都民1、200万人に被害が出てしまいます……。
3年前と酷似した事件の捜査に当たる高木刑事。くしくも爆弾を解体するという3年前の松田刑事と同様の立場となります。
爆弾には液晶パネルが組み込まれていて、別の場所にも爆弾が仕掛けられていることが表示されています。これは、爆破3秒前に「別の場所」がどこかが明らかになる仕組みです。
つまり、爆弾を解体してしまうと、もう1つの爆破場所は表示されなくなってしまうのです。
3年前、爆弾を処理しようとした松田刑事は、「別の場所」を爆弾から読み取って佐藤刑事に伝え、自らは3秒後の爆発に巻き込まれて亡くなりました。今、高木刑事も3秒前の表示を読み取るつもりです。
しかし、高木刑事とともに爆弾の解体をしていたコナンの機転で、東都タワーの爆弾も、もう1つの爆弾も爆破を防ぐことができました。そして犯人を追い詰め、佐藤刑事は銃口を向けます。
いなくなってしまった人の思い出はきれいなまま封印されて、ずっと人の心に残り続ける……だからこそ、佐藤刑事は二度と誰も失くしたくありません。
このとき、怒りと悲しみのままに発砲しようとした彼女を止めたのは、高木刑事でした。
「そんなんじゃ、松田刑事に怒られちゃいますよ」と言う高木刑事に、「忘れさせてよ」と涙する佐藤刑事。ここで高木刑事は、この言葉を口にします。
「それが大切な思い出なら忘れちゃダメです…
人は死んだら、人の思い出の中にしか生きられないんですから…」
(『名探偵コナン』37巻より引用)
思い出のなかの人に、生きている自分はきっと敵わない。そんな自信のなさを抱えながらも「忘れちゃダメです」と高木刑事は言いました。これは彼の懐の深さがわかる言葉ではないでしょうか。
自分が想いを寄せている人が、記憶に強くある人を自ら「忘れさせて」と言っているのです。忘れてもらったほうが彼にとっては都合がいいはずです。
それを「忘れちゃダメ」と言うのは、「忘れようとしなければ忘れられない存在」ごと佐藤刑事を受け入れたい、という高木刑事の気概の表れだといえます。頼りなさげに見える彼の、真の強さが明らかになるエピソードでした。
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
西の高校生探偵・服部平次と遠山和葉は、父親同士が大阪府警の本部長と刑事部長で幼馴染み。当人同士も幼馴染みです。
平次と和葉はお互いに好意を持っているのですが、お互いの気持ちを知らず、また意地っ張りな部分があるため、素直な気持ちを伝えることができずにいます。いわゆる「両片想い」の関係です。
ある一件を境に和葉は蘭ととても仲よくなり、お互いの恋の境遇も知っていて、共感し合っています。だからこそ、お互いの恋の応援にも熱が入ります。
和葉はその負けず嫌いな性格から、平次への告白のタイミングを逃しがちでした。単行本第28巻FILE.6「人魚の呪い?」から始まる「そして人魚はいなくなった」シリーズで、小五郎らと美國島へ行ったときも告白には踏み切れませんでした。
島で事件に出くわし、小五郎やコナンとともに捜査を始めようとする平次。ふだんは後ろ前に被っている野球帽を正面にかぶり直しました。
この様子について和葉は「平次は帽子をかぶり直したらスイッチオン!」と蘭に説明します。推理スイッチが入ったということです。そう聞いて感心しながら平次を見る蘭に、和葉は少し心配げに言いました。
「でもホレたらアカンよ…蘭ちゃん相手やとアタシかなわへんし…」
(『名探偵コナン』28巻より引用)
気が強く活発な性格の彼女にしては、ずいぶんと気弱な台詞です。しかし、これが恋する少女の素直な心情。そういった一面を見せた和葉がとても愛おしく感じたらしく、蘭はすぐさま彼女を「かわいー!」と言ってハグしています。
蘭と同じ気持ちになった読者は少なくないのではないでしょうか。気丈な少女が見せる意外な一面は、大変魅力的ですね。
『名探偵コナン』の世界で恋をしているのは、少年少女だけではない……ということは、本作のファンのみなさんなら、すでにおわかりのことでしょう。
工藤家のおとなりさん・阿笠博士も、50歳を過ぎてなお独り身ではありますが、恋を知らなかったわけではありません。
探しものの途中で見つけた、古い葉書から博士の初恋の思い出話は始まります。
阿笠博士が小学6年生のとき、葉書をくれたのは阿笠博士と同じ小学校に通っていた下級生の女の子。しばらく一緒に登校していましたが、ある日ぷっつりと女の子は現れなくなります。
彼女は、どうやら引っ越してしまったようでした。お別れの挨拶の代わりに阿笠邸の郵便受けに入っていたのが、その古い葉書だったのです。受け取ってから40年が経っていました。
「バイバイはイヤだからまた会おうね!
10年後のこの日、お日様が沈む前に思い出のあの場所で…
会えなかったらそのまた10年後…
おばあちゃんになっても待ってるから、もしもヒマだったら会いに来てね…」
(『名探偵コナン』40巻より引用)
葉書にはこのように書かれ、「ヒント」として暗号が添えられていました。くしくも葉書を見つけたのは「この日」とされている当日。もしかしたら、今日も「あの場所」で待っているかもしれません。コナンと少年探偵団があちらこちらに手掛かりを求めながら暗号を解きます。
ついに「あの場所」を探し当て、夕暮れのイチョウ並木に辿りついてみると、そこには美しい女性の姿が……。
話しかけてみるものの、阿笠博士も彼女があの女の子なのか判断がつきません。女性から「銀杏はお嫌い?」と話しかけられますが、明確には答えられないまま彼女が去るのを見送ることになります。
しかし、女性を乗せた車が走り去ろうとする間際、阿笠博士は車に向かって声を掛けました。
「今でもイチョウは大好きですよー!!!」
(『名探偵コナン』40巻より引用)
すれ違いそうだった2人ですが、40年ぶりの再会は成功したのです。かつての女の子は、有名デザイナーのフサエ・キャンベル・木之下として活躍していました。淡い思い出が、再び色を取り戻した瞬間にこちらまで胸がときめきます。
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
平次と和葉は意地っ張り同士のカップルですが、大人になっても意地っ張りが治らないままのカップルもいます。
蘭の両親である、毛利小五郎・妃英理夫妻です。2人は離婚まではしていないものの、現在は別居中。英理は「毛利」ではなく旧姓の「妃」を名乗って弁護士をしています。
本項で紹介するのは単行本第27巻FILE.1「身から出た錆」から始まる、小五郎が殺人事件の容疑者にされてしまったエピソードです。
酔っ払った小五郎が、なぜか殺害された被害者のホテルの部屋で眠っていたことから容疑者となり、その容疑を晴らすために、英理とコナンが捜査に乗り出すのです。
無敗の弁護士・英理の視点は鋭く、証拠をつぎつぎと見つけ、真犯人を追いつめることで、ついには小五郎の容疑は晴れます。こうなると意地っ張りとはいえ、さすがに小五郎も英理に礼を言わなければなりません。
しどろもどろになりながら、礼のような詫びのようなことで濁しますが、ぽつりと本音を言うのです。
「そろそろ戻ってきてくれねーか…
限界なんだよ…」
(『名探偵コナン』27巻より引用)
小五郎の名台詞として、たびたび取り上げられる台詞です。
しかし、英理はこれをスルー。MDで音楽を聴いていて、名台詞を聞き逃した……というのは嘘でした。じつは持っていたMDプレイヤーで名台詞を録音していたのです。
小五郎を軽くあしらって自室に戻ったのち、小五郎の言葉を繰り返し聞く英理。本当はこの言葉を待っていたのでしょう。
けれども、お互いが意地っ張りなうえに、10年以上もこじれた仲です。かんたんに戻ることはできず、英理も笑顔ながらにこのようにつぶやき、何度も小五郎の声を聞くのでした。
「まだまだ…
こんなんじゃ許してあげないんだから…」
(『名探偵コナン』27巻より引用)
嫌い合っているわけではないのに一緒にいられない、そんな相思相愛もあると教えてくれる名シーンですね。
いつもは頼りない小五郎のかっこいい名シーンを集めた<漫画『名探偵コナン』毛利小五郎の名言がかっこいいエピソードランキング!>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
ふとしたことから、麻薬の売人が持つ手帳を拾ったコナンと少年探偵団一行。書いてあるアルファベットと数字の組み合わせにより、麻薬取引の日時と場所を解読したところ、今日が取引の当日で、場所は大阪の戎橋(えびすばし)であることがわかりました。
途中から電話を介して暗号解読に参加していた平次が実際に戎橋に足を運ぶと、怪しげな人物が3人います。
3人をよく観察した末怪しげながら2人は無関係の人物とわかりましたが、最後に残った1人はチャラチャラとうさんくさい外見の男性。しかも和葉と親しげに話しています。
和葉がほかの男性と話しているだけでも気を揉むというのに、戎橋は「ひっかけ橋」だとか「ナンパ橋」などとも呼ばれることがあるナンパの名所です。平次は気が気ではありません。
しかもよく見ると、チャラ男のジャケットの懐には不自然なふくらみが……。拳銃を潜ませていると看破した平次が駆け寄るより先に、チャラ男の仲間らしき人相の悪い男が数人、和葉を取り囲みました。
仲間らしき男らに「すまんなぁ」と声を掛けるチャラ男に、駆け寄った平次が彼の首を締め上げ、怒鳴ったのがこの台詞です。
「オレの和葉に何さらしとんじゃ!」
(『名探偵コナン』83巻より引用)
当初は「ただの幼馴染み」と認識していた彼女。いつしか「なんとしても守らなければならない相手」となり、とうとう「オレの和葉」という言葉としてはっきりと平次の口から出たのです。
これは、それまでの2人の関係性にやきもきしていたファンからすると待望の瞬間でした。
しかし本当のところは、チャラ男は昔、和葉宅の近所に住んでいた薬学部出身の薬丸さん。現在は麻薬取締官として勤めていて、売人のフリをして取引現場を押さえるという捜査の最中だったのです。
仲間の人相の悪い人たちもみな麻薬取締官で、和葉が長いこと話し込むと捜査の邪魔になるので「剥がし」に来たというオチ。大切な人のことを思うあまりついムキになってしまう平次でした。
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
知る人も多い原作初期の名シリーズ「命懸けの復活」シリーズ、最大の見せ場シーンから。たびたび蘭の心に浮上する「コナン=新一」説。コナン本人としてはずっと隠し通したいけれど、今度こそは隠しきれないかもしれない……そう考えた彼のセリフにご注目です。
帝丹高校の学園祭で蘭のクラスが演じる演劇を見るため、小五郎や和葉と一緒にコナンも客席に座りますが、その目前で毒物による殺人事件が起きてしまうのです。
工藤新一を名乗って平次が現れますが、正体はすぐにバレてしまいます。しかし、同じときに「本物」の新一が現れ、事件を解決へと導きます。
じつは彼は、灰原哀が研究を続けていた、APTX(アポトキシン)4869の解毒剤を試したのです。
これは『名探偵コナン』が始まって以来、初となる試みです。風邪の症状を帯びている状態で酒を飲むと、一時的に幼児化が解けることを知った灰原による試作品によって、コナンは新一に「復活」しました。
しかし、解毒剤の効果は一時的なものでしかないのです。
新一が戻ってきたことを喜ぶ蘭。この機会にと彼は夜景がきれいな展望レストランに彼女を誘います。長く待ち続けた蘭にとっては念願の……そして待望の瞬間が待ち受けているに違いありません。
しかし、新一が「肝心のこと」を言おうとする矢先、レストランで事件が発生。事件となるとじっとしていられない新一の性格を知っている蘭が「行ってきなさい」とうながすと、彼は駆けていきます。「すぐに戻る!」と言い残して。
けれども、彼は戻ってきませんでした。事件はなんとか解決したものの、解毒剤の効果が切れてしまったのです。コナンの姿に戻ってしまった新一は、それでも蘭のもとに息を切らせて戻ります。
「どうしても行かなければならない用事ができた」と告げると、蘭は「また置いてけぼりか……」と顔をくもらせました。
会いたくて待ち続けた人にやっと会えたのに、すぐにいなくなってしまう寂しさと、本当はそばにいるのに「ここにいる」と言えない心苦しさ。2つの切なさが交錯します。
ここでコナン=新一が蘭に対して、本心を「伝言」のかたちで告げたのがこちらです。自分の気持ちなのに、人から聞いた話として伝えなければならない彼の切なさがよく表れたひと言ですね。
「新一兄ちゃん言ってたよ…
いつか…いつか必ず絶対に…死んでも戻ってくるから…
それまで蘭に待っててほしいんだ…って」
(『名探偵コナン』26巻より引用)
『名探偵コナン』の映画は、1997年から毎年春に公開されています。原作やテレビアニメシリーズだと実現しにくいことも、起こる可能性があるのが映画の見所です。映画版コナンのファンだという方も多くいるでしょう。
映画『名探偵コナン』シリーズの名物といえば爆破シーンですが、もう1つ忘れてはいけないものがあります。それは、やはり恋愛要素です。
恋愛要素なくして『名探偵コナン』は成り立ちません。映画版も原作同様に、ミステリー要素よりも恋愛要素が前面に押し出されている作品が数多くあります。
なかでも第7作「迷宮の十字路」は平次と和葉、新一と蘭の2組が並行して描かれます。本物の新一がはじめて登場した映画でもあります。
キャッチコピーは「私たち、やっと逢えたんだね……」。長らく会えなかった2人が、時を経てようやく会えるまでの物語です。
平次が幼いころに出会った初恋の人。「あの少女はいったい誰だったのだろうか?」という謎を抱えたまま、彼は京都の街を走り、事件の謎を解いていきます。
京都の街並みを歌詞に入れた丸竹夷(まるたけえびす)というわらべ唄をうたいながら、手まりをついていた遠い日の少女。じつはそれはおめかしをした和葉だったということが、エピローグでわかります。
そこで平次が内心で、こうつぶやくのです……。
「やっと逢えたっちゅーわけか」
(映画『名探偵コナン 迷宮の十字路』より引用)
一方、作中で平次のピンチに現れた新一と蘭は思いがけず出会います。しかし、擬似的に風邪を引いた状態をつくり出す薬によって、ほんの少しの間だけ新一の姿に戻っていた彼は、間もなく薬の効果が切れてしまうという瀬戸際に。
いくつか言葉を交わしたものの、蘭は時計型麻酔銃で眠らされてしまいます。目が覚めたときには新一の姿はなく、蘭は幻を見たのだと思うのでした。
しかし、ストーリーの最後の最後に、あることをきっかけに、新一と会ったのは幻ではなく本当だったのだと確信します。そこでやはり内心で「やっと逢えたね……」とつぶやくのでした。
この台詞を受けて、映画用にアレンジされた主題歌「Time after time~花舞う街で~」の、イントロのピアノの音が静かに入ってくる瞬間は、映画シリーズ屈指の名シーンでしょう。
また、エンドロール後の蘭の台詞も、観客を一層切なくさせました。
「私は人を待つのってキライじゃないよ。
長く待てば待つほど、会えたときに嬉しいじゃない?」
(映画『名探偵コナン 迷宮の十字路』より引用)
こうして蘭は、新一が本当に帰ってくる日を健気に待ち続けるのです。
2020年4月現在、今年の映画は公開延期が発表されました。公開時期は未定と、コナンファンからは悲しみの声が広がりました。公開日の続報を待ちましょう。
そんな劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』ですが、本作の中心人物は、謎に包まれた「赤井ファミリー」。
赤井家の長男であり、黒ずくめの組織に潜入操作をしている現FBI捜査官の赤井秀一。赤井家の次男であり、プロ棋士の羽田秀吉。彼らの妹にあたり、新一や蘭と同じ帝丹高校に通っている世良真純。そしてコナンと同じように小さい身体の母親・メアリー。
そんな彼らが活躍するのが世界最大のスポーツの祭典「WSG-ワールド・スポーツ・ゲームス-」です。東京に人が集まる中、どんな事件が勃発するのでしょうか……?
すでに予告動画も公開されており、劇場版への期待が高まります。
また、ここ数年ではカップルたちの進展も見られる劇場版。今回はどのカップルが進展するのでしょうか。そちらについても注目したいところです。キャストや詳細について知りたい方は、劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』公式サイトもどうぞ!
- 著者
- 青山 剛昌
- 出版日
- 2019-12-18
漫画『名探偵コナン』の恋愛要素に注目して、名シーンをチョイスしました。本作のファンのみなさんには、いずれも馴染みのあるシーンかもしれません。本稿で挙げたシーンを未見のみなさんには、ぜひとご一読いただきたいエピソードの数々。未読の方も既読の方も、作中の恋愛模様に注目しながら読み返してみると、『名探偵コナン』の味わいも一層深くなるでしょう。