ガチ文系でも数学の世界に潜りこめる5冊。

更新:2015.8.20

むかしは好きだったけど、文理選択で文系選択してからは数学との縁は切れたまま。就職活動の時に、一般常識問題でふたたび顔を合わせて顔面蒼白。それからまた距離を置いちゃったけど、でもやっぱり数学に魅力を感じていて……。数年ぶりに、何度目かのトライ。そしたら今度は面白いじゃないの! と夢中になってしまいました。そんなガチ文系を虜にした数学本をご紹介します。

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始めの一歩!

やっぱり入門する際にどの門を選ぶかは重要です。なるべく低い敷居の門を探していたとき、多くの数学好きと多くの数学克服者からオススメされたのが本書でした。
 

著者
矢野 健太郎
出版日

著者の矢野健太郎さんは数学者で、とにかく多くの数学本を手がけています。数学者の本は「分かりやすい」と言われているものでも、ズブの素人にはなかなか理解できないことがあります。しかし、著者が執筆経験豊富だからでしょうか。非常に読みやすい文章が特徴です。

本書は、前半で数字(数学)という概念が生まれるまでの過程を知ることが出来ます。動物は数が認識できるのか、未開人はどうやって数を把握したのか、数え方と指の数の関係は……、各章どれも驚きと納得の連続です。
後半は、ピタゴラスやアルキメデスなどの有名な人物が発見した法則などの紹介があります。数式や図形が増えてきて一瞬躊躇しますが、文章を追っていけばそれだけで読み進めることができます。

ちょっとずつ散りばめられた数学に関する挿話も魅力です。
数学が苦手な方でも、飽きずに最後までたどり着けるのではないでしょうか。

数学は孤独な学問じゃない

著者
結城 浩
出版日
2007-06-27

次に紹介する本『数学ガール』は、入門書にしては難易度が高いです。それでもオススメしたいのは、数学を楽しむという行為自体を分かりやすく体感できるから。

本書は、高校生の「僕」と先輩ミルカ、後輩テトラの男女3人組が仲良く(?)数学の問題を教えあっていくストーリーを軸に実際の数学の問題に挑戦させられます。

先にも言った通り前半はなんとなく分かるのですが、後半になると読み進めていくだけでは数学素人には容易に問題を解くことは出来なくなってきます。私も友人に教えてもらってなんとかかんとか読み進めることが出来ました。それで良いのだと思います。教えあうことが大事なのです。本書でも、ミルカが「僕」に教えてくれて、「僕」がテトラに教えるのですから。

数学は、一人で成すものではないのです。「過去の数学者たちの積み重ね」なんです。
そういった助け合い、知の共有、知の伝達が大切だということも教えてくれます。

そうそう、エピグラフに小林秀雄の言葉を持ってくるあたり、文系にも刺さる仕掛けが施されているのですね。

数学者は哲学者にもなる。

著者
岡 潔
出版日
2006-10-12

続いてオススメする本は『春宵十話』なのですが、まず、著者の岡潔とはどんな人なのか。

1901年大阪府生まれ、京都大学卒。数学者としての生涯研究テーマは多変数複素函数論。彼はその難題「三大問題」に解決を与えたことが有名らしいのですが、その問題の概要を見ただけでまったく分かりませんでしたので詳しくは割愛します。とにかく世界的にすごい数学者なのです。

本書は、偉大な日本の数学者である岡潔が元々は新聞連載していた10話をまとめたものです。実際は、岡自身が書いたものではなく、編集者が氏の話しを書き留めて文に綴ったものとのことで、そのためか学者の随筆に見られるやぼったい感じがなく、語りかける活き活きとした文章で読みやすくなっています。

この本は随筆ですので、数学が上達する部類の本ではありません。それでも取上げたのは、苦手な数学に挑戦する我々にとって大変励みになる本だからです。

「人の中心は情緒である。」という有名な一文で始まります。数学をやるのにも情緒が大切だと言います。とにかく心が大事だと節々で言い続けるのです。

数学って論理とか理屈がすべてだと思っていて自由が利かないと感じていましたが、著者の考えを読んでいくとそれだけではないことが分かってきます。数学も人が行うわけですから、情緒をしっかり教育しないとしっかりと学問に向き合えないのです。

読後、不思議と頑張って勉強しようと思ってしまう雰囲気があるはずです。この本のほかにも、岡潔と小林秀雄の対談本『人間の建設』も数学に挑戦する我々の息抜きとして読んでみると刺激になるはずです。

数学は小説より奇なり!

数学界の超難問「フェルマーの最終定理」に挑んだ波乱に満ちた数学者たちの人生を追うドキュメンタリーです。

著者
サイモン シン
出版日
2006-05-30

「フェルマーの最終定理」とは、17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーによって残された謎のメッセージ「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここではすることができない」を発端に、数々の数学者がその証明に人生をかけることになった命題のことです。

その謎が、本書の物語の中心に置かれている現代の数学者のワイルズによって解明されるまで実に360年(約3世紀)もの年月がかかったのです。
その360年間は、多くの数学者たちが挑戦しては敗れて、数学的な失敗を超越し人生をも狂わしてきた悲劇の歴史でもあるのです。

本書が優れているのは、歴史的数学の問題についての本であるにも関わらず、数学的な解釈を必ずしも強要せずに物語だけを追っていくだけで充分に楽しめてしまう構成がされているところです。それゆえ、数学が苦手な人でも、小説を読んでいる感覚で知らず知らずのうちに数学の魅力に取り付かれてしまうことでしょう。

前半で、ワイルズの証明の話が始まるのかと思って読んでいくと、いつのまにかピュタゴラスの話になっていきます。いつのまにか数学の歴史の話になる。この物語転換のグラデーションがすごくうまいです。しかも、そこで語られるピュタゴラスという人物が非常にぶっ飛んでいて一気に引き込まれてしまうのです。

そのあとにも「フェルマーの最終定理」にとり憑かれた人物たちが次々と出てきますが、どの人物も活き活きと驚くほどに人間味溢れているのです。一気に読めること間違いなしです。

きっと読み終わったあと、「もっと早くこの本に出会っていれば数学者になっていた」なんて思ってしまう人がたくさんいることでしょう。

「すうがく」だからって舐めちゃいけませんぜ。

最後に絵本で数学と触れ合いましょう。

あなどるなかれ、本書『はじめであうすうがくの絵本』は子供向けの絵本ではありますが、「さんすう」や「すうじ」とせずに「すうがく」となっている通り数学の基本に触れることが出来る優れた作品です。

これは私なりの解釈ですが算数は答え重視であり、数学は答えに行き着く過程を重視するものではないかと考えます。そう考えると、この絵本が「すうがく」なことが納得できるはずです。

仲間さがし、どうしてそれが仲間はずれなのかを考えて、理由を見つける。この「考える」というところが「すうがく」を学んでいく上で大切な行為だと教えられます。
また、他の本と同様に、教えあうことの大切さも学ぶことができるでしょう。

子供にいいなと思って買ってきて、大人も一緒に熱中しちゃう親子で楽しめる本でもあります。子供に助けを求められて、大人でもちゃんと答えられないなんてこともありそうです。

著者
安野 光雅
出版日
1982-11-20

お気づきの通り今回紹介した本は、純粋に数学が上達するタイプの参考書ではなく、数学の魅力がビシビシ伝わってくる著者や取上げられた数学者の熱い思いが込められたものです。

これらの数学関係の本を読んでいるとところどころに、文学に匹敵するような名文に出会うことができます。その言葉を胸に、もうしばらく数学の世界を彷徨いたいな、と思ってもらえると嬉しいです。

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