幸福とは呼べない幸せに、胸がギュッとなる【結城洋平】

更新:2019.9.5

たけのこと豚肉を細切りにして甘辛の餡で炒め、チャーハンの上にかけた肉絲炒飯(ルースーチャーハン)。渋谷のバスケットボールストリートの宇田川交番のすぐ後ろにある兆楽という中華料理屋の絶品チャーハン。爪 切男(つめ きりお)さんの“死にたい夜にかぎって”にも出てくる名店で、渋谷で仕事終わりが多い最近は必ずこのルースーチャーハンを食べる。書いてるそばから食べたくなってきた。

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「爪 切男(つめ きりお)さんと同じ回で、アフタートークの出演依頼が来ているけど、どうかな?」

マネージャーK氏(以降、K氏。)から話が来たのは夏の日差しがまだ強いカンカン照りの日だったと思う。役者の先輩である善雄善雄(よしおぜんゆう)氏が主宰のザ・プレイボーイズという演劇ユニットが4年ぶりに下北沢で復活公演をやる。そのアフタートークへの出演依頼という、とても光栄なお誘いを頂いた。

しかし最初は「やだ!断ってほしい!」とK氏に伝えた。天狗になっている訳でもなく、善雄氏(以降、善雄氏。"よしお"でも"ぜんゆう"でも可。)のことが嫌いだからという訳でもない。むしろ善雄氏のことは物凄く、好きだ。しかし善雄氏の爪 切男さんへの好き度合いが物凄く大きいことを知っていたので、自分には一緒に出る資格が無いと思った。

爪 切男さんのことを教えてくれたのも善雄氏だった。

以前、自分の演劇ユニット結城企画で家族がテーマの作品を上演した際、アフタートークに主婦で作家のこだまさんに登壇して頂いた。自分の体験談を記したこだまさんの私小説『夫のちんぽが入らない』を読んで心を動かされた僕は、家族のカタチ、夫婦のカタチについてお話しさせて頂いた。作家活動を家族にも秘密にしているこだまさんなのに、人前に出て話して貰うというなんとも無謀なお願いを叶えてくれたこだまさんには感謝してもしきれない。

そのアフタートークの司会を善雄氏にお願いした。というのも僕が善雄氏に頼む前から、こだまさん達のファンでいくつも作品を読んでいると聞いたからだ。

2014年文学フリマで刊行された『なし水』はこだまさんを含む4人のメンバーで作られた同人誌で、その中のこだまさんの作品が、のちに加筆修正が加えられ『夫のちんぽが入らない』として書籍化されたそうだ。4人のメンバーは、こだまさん、たかさん、のりしろさん、あともう一人が爪切男さんだった。善雄氏から爪切男さんの作品『死にたい夜にかぎって』も滅茶滅茶面白いよ。とおススメして貰っていた。

恥ずかしながら『死にたい夜にかぎって』を未読だった僕は、せっかく依頼してくれたのに読まないで、出演を断るなんて失礼だと思い直し、早速アマゾンでポチッた。プライム会員の僕の手元にすぐに届いた『死にたい夜にかぎって』は、あっという間に満たされた朝を迎えた。ピュアで心の優しい部分をコッソリ見せてくれた爪さんのロマンチックでカラフルな文章は、僕にも優しくしてくれた。喋ってみたい! 爪さんと喋ってみたい! ただちにK氏に連絡をして、出演したい!と伝えた。

結城企画にこだまさんがアフタートークに出演してくれた際、爪切男さんも観劇に来て頂いていたので初対面ではないが言葉は交わしていなかった。当日どんなアフタートークになるのか、ザ・プレイボーイズは本当に復活するのか!?  楽しみで仕方がない。

※ザ・プレイボーイズ 復活公演「間男の間」会場:ステージカフェ 下北沢亭 9月6日(金)19:30公演の回にアフタートーク出演。

著者
爪 切男
出版日
2018-01-26

日刊SPA!にて連載されていた「タクシー×ハンター」を改題して、内容を大幅に加筆修正された爪切男さんのデビュー作品「死にたい夜にかぎって」(現在も“働きアリに花束を”に名前を変え、連載中。めちゃめちゃ面白い)

どんなに不幸なことが起こっても、不幸の中の幸福を見つけるスペシャリストの爪さん。幸福とは呼べない幸せを見つけるエピソードは切なくて、胸がギュッとなる。ギュッとなった胸はピュアな爪さんの優しさで包みこんでもらいました。

作中に出てくる今は無くなってしまった渋谷の純喫茶のナポリタン。是非食べてみたかった。店員の南さんにも会ってみたかった。

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