5分でわかるGSOMIA!韓国が破棄したらどうなる?内容や影響を解説

更新:2019.9.9

長年揺れ続けている日韓関係。2019年には韓国からGSOMIAの破棄が通告され、大きなニュースになりました。この記事では、協定の内容や締結のメリット、破棄した際の影響、各国の反応などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、チェックしてみてください。

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GSOMIAとは。内容や期限など概要を解説

 

「General Security Of Military Information Agreement」の頭文字をとった略称「GSOMIA(ジーソミア)」。日本語では「軍事情報包括保護協定」といいます。

その名のとおり、軍事情報を互いに提供しあう際に、第三者へ情報が漏洩しないよう保護するための協定です。ここでいう軍事情報とは、兵器に関する技術だけでなく、暗号や戦術データ、共同作戦をおこなうための取り決めなど広範なもの。なかには諜報活動によって得られる情報も含まれます。だからこそGSOMIAを結ぶ国々は、同盟国やそれに値する緊密な関係をもっていることがほとんどです。

GSOMIAはもともと、アメリカが同盟国などと結ぶ二国間協定でした。2019年現在、アメリカは日本を含めた60ヶ国以上とGSOMIAを結んでいます。

日本は、2007年に初めてアメリカと締結したのを皮切りに、NATOやフランス、オーストラリア、イギリス、インド、イタリアと協定を結んでいます。2016年11月には、韓国ともGSOMIAを締結しました。

韓国とのGSOMIAの有効期限は、1年間。いずれか一方が申し出ない限り、自動的に更新されることになっています。もしも破棄する場合は、更新の3ヶ月前にその旨を通告することが定められていました。

そして2019年8月23日、韓国はGSOMIAの破棄を通告。日韓GSOMIAは2019年11月23日をもって効力を失うことになっています。

 

GSOMIA締結のメリットは?

 

先述したとおり、GSOMIAは秘密情報を含む高度な情報を互いに共有する協定です。これを結ぶメリットとして、情報共有による関係の緊密化や、仮想敵国に関する情報収集が円滑に進むことが挙げられます。

たとえば2019年7月15日付の韓国の新聞「中央日報」によると、日韓はGSOMIAを通じて2016年に1件、2017年に19件、2018年に2件の情報交流をしたそう。主に北朝鮮の核開発や弾道ミサイルに関する情報を交換し、韓国側にとっても有益であったという評価がくだされていたようです。

もともと日本は、北朝鮮に関する情報に関心を抱いていたので、当初は日本が積極的にGSOMIA締結に向けて働きかけていたようです。

一方の韓国は消極的でしたが、日韓双方の重要なパートナーであるアメリカが間に入り、締結される運びとなりました。

アメリカにとっても、自身の同盟国である日本と韓国が関係を緊密化することは、安全保障上大きなメリット。アメリカ国防省が、日韓GSOMIAの締結を歓迎する声明を発表しているほどです。

つまり日韓GSOMIAの破棄通告は、日韓関係だけでなく、米韓関係にも影響を与えているといえるのです。

 

GSOMIAを破棄したらどうなる?

 

日韓GSOMIAが破棄されれば、日本と韓国の間で北朝鮮に関する情報を直接やり取りすることは不可能になります。

ただ日本も韓国も、ともにアメリカとはGSOMIAを結んでいるため、アメリカを仲介することで情報を得ることはできるでしょう。もともと締結前はアメリカを介して情報を共有していたので、タイムラグは避けられないものの、日本にとって日韓GSOMIAが破棄されるデメリットは比較的少ないと考えられています。

しかし韓国にとっては、日本以上に軍事的な影響が生じるでしょう。

韓国は、脱北者などによる人的な情報収集能力には優れています。その一方で日本は、哨戒機や偵察衛星などによる情報収集能力に優れており、日韓GSOMIAはお互いの強みを活かした相互補完の枠組みとして活用されていました。これが破棄されると、韓国は日本の偵察衛星の情報を得ることができなくなってしまいます。

韓国は自国の偵察衛星を保有していないので、GSOMIA破棄にともなう情報の欠落は、日本のそれよりも大きなもの。さらに、韓国側から破棄の通告をしたことは、アメリカからも反感を買っているのです。米韓関係の悪化は、韓国の安全保障上、死活問題になりかねません。

また軍事的な問題以外にも、GSOMIAが破棄されることで国民感情に悪影響が生じると懸念されています。

 

韓国がGSOMIAを破棄するまでの経緯と、アメリカなど海外の反応

 

では、韓国がGSOMIAの破棄を通告するまでの経緯を振り返ってみます。

もともと日本と韓国は、いわゆる「従軍慰安婦問題」や「徴用工訴訟問題」など歴史認識をめぐる火種を抱えた状態が何年も続いていました。

この対立は、2017年の文在寅(ムン・ジェイン)政権誕生を境に、深刻化しています。2018年10月には、韓国の最高裁に該当する大法院が、新日鉄住金に対して元徴用工への損害賠償を命令。これは1965年に結ばれた「日韓請求権協定」に違反する判決であるとして、日本政府も反発を示しています。

そんななか日本の経済産業省は、2019年7月1日、フッ化水素などの半導体材料の輸出について、「包括許可」から「個別許可」に切り替えると発表。さらに韓国を「ホワイト国」から除外する方針を示し、8月2日に実際に除外しました。

経済産業省は、ホームページ上の「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」にて、次のように述べています。

輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。

「大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案」に関する具体例が提示されていないため、明言はできませんが、背景には「従軍慰安婦問題」や「徴用工訴訟問題」などをめぐるこれまでの対立、さらに親北的な文在寅政権が、北朝鮮に日本からの輸入品を横流ししている疑惑があると推測されています。

実際にホワイト国除外措置は、韓国側では「徴用工問題に対する日本の報復」として受け止められました。その結果韓国国内では、反日感情が高まり、日本製品の不買運動などさまざまな運動が生じています。

そして8月22日、韓国大統領府は次の声明を発表したのです。

政府は韓日間GSOMIAを終了することを決定し、協定に基づき、延長の通告期限内に外交経路を通じて日本政府に通告する予定だ。

政府は、日本政府が8月2日、明確な根拠を提示せず、韓日間の信頼が損なわれ、安保上の問題が発生したという理由で「輸出貿易管理令の別表の第三国群」から韓国を除外したことで、両国間の安保協力環境に重大な変化を招いたと評価した。

このような状況で、政府は安保上、敏感な軍事情報交流を目的に締結した協定を継続することが、われわれの国益に合致しないと判断した。

ここでいう「輸出貿易管理令の別表の第三国群」とは、ホワイト国を指定したリストのこと。この声明に表れているとおり、韓国は「両国間の安保協力環境に重大な変化を招いた」とみなしているのです。そして日本とGSOMIAを結ぶことは「国益と合致しない」と判断し、翌23日にGSOMIAの破棄を通告しました。

各国の反応は次のとおりです。

まずGSOMIA締結の立役者となったアメリカは、韓国の脱退通告に批判的です。

8月22日、ポンペオ国務長官は記者会見にて「機密情報を共有する協定に関して行った韓国の決定に失望している」と発言。韓国の対応を批判しています。国防総省のイーストバーン報道官も「国防総省は、文政権が日本とGSOMIAの延長を行わなかったことに強い懸念と失望を表明する」と述べていて、この問題に対してアメリカが強い失望感を抱いていることがうかがえるでしょう。

韓国にとっても、米韓関係の悪化は望ましいものではありません。そのためか、アメリカが声明を発表した後の8月25日に、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は「韓国政府は今回の決定が、韓米同盟の弱体化ではなく、むしろ今よりさらに堅固な同盟関係となるよう努力する」と発言し、日韓GSOMIAの破棄は米韓関係に影響を及ぼさないという見解を示しています。

しかしその結果、意外なところから韓国を批判する国が現れました。日韓GSOMIAの主たる対象だった北朝鮮です。

9月2日、北朝鮮が運営する対韓国宣伝サイトの「ウリミンジョッキリ」は、GSOMIAの破棄そのものは「正義の反日闘争に立ち上がった南朝鮮の民心が抱いてきた当然の結果」と評価する一方で、文在寅政権がアメリカに対して卑屈に振舞っていると批判し、そのような行為は民心に逆らう行為だと述べています。

日韓関係が悪化する状況で、日本に圧力をかけるために韓国から破棄が通告された日韓GSOMIA。その影響は他国にも波及し、アメリカや北朝鮮からも文在寅政権への圧力が生じているのです。この状態が今後どのように打開されていくのか、注視する必要があるでしょう。

 

日本と韓国が対立する背景にあるものとは

著者
峯岸 博
出版日
2019-05-22

 

作者の峯岸博は、「日経新聞」の元ソウル支局長。現地での実体験と文在寅政権誕生後の最新情勢をふまえて、徴用工問題やレーダー照射問題など、日韓の溝を深める諸問題の根底にある、韓国の国内事情を分析しています。

良くも悪くも、日本と韓国では政治や歴史に対するスタンスが異なります。議論の大前提となる土台の相違点を知ることで、韓国側の論理を読み解くことができるでしょう。

いわゆる「嫌韓本」とは異なり、一方的な批判で終始するわけではありません。GSOMIAの破棄に関する問題を客観的に分析するためにも役立つでしょう。

 

GSOMIA破棄など、韓国と北朝鮮の関係を考える一冊

著者
李相哲
出版日
2018-10-05

 

2016年から2017年にかけて発生した「ろうそく革命」を経て誕生したて文在寅政権。政権交代をきっかけに、韓国国内では保守派勢力が後退し、左派勢力の伸展が著しいといわれています。

作者はこのような情勢を批判的に分析し、文在寅政権誕生後は北朝鮮の干渉の影響を受けているとしたうえで、このままだと韓国の体制転換につながりかねないと警鐘を鳴らしているのです。

作者の立場は保守派寄りではありますが、GSOMIAをはじめとする韓国との問題を考えるうえで、ひとつの意見として参考にする価値はあるでしょう。

 

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