日露戦争から生還してきた兵士たちが、金塊のありかをめぐって奮闘や争いを描いたギャグ&時代&バトル漫画が『ゴールデンカムイ』。これでもかというほどに魅力的な要素を詰め込んだ闇鍋的な面白さのある作品です。 アイヌ民族から金塊を奪った男・のっぺら坊の噂を聞き、その所在を探すべく主人公たちが動き出したなかで出会ったのが、尾形百之助です。同じく金塊を狙う陸軍第七師団と対峙する場面で初登場を果たします。 この記事では常に冷静で、掴み所のない尾形百之助をご紹介。また、下のボタンのアプリから読むことができます!
尾形百之助は誕生日や年齢は明らかにされていませんが、日露戦争で最強の軍団と名を馳せた第七師団長を務めた花沢幸次郎とその妾であった浅草芸者との間に生まれた息子です。
その後、実の父に異母弟となる実子ができたため、妾の母と尾形は捨てられたも同然に。そして母の故郷である茨城へと戻り、主に祖父母に育てられました。そのため、出身は浅草の置屋ともいえますが、茨城県出身となっています。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2016-08-19
作品では高身長のイケメンとして描かれ、父も所属していた第七師団へと入隊しました。銃の腕が立つことからスナイパーとして評価されています。
妾の子供として育った環境からか、あまり深く人と交わらないため孤高の凄腕スナイパー、山猫スナイパーなどと呼ばれています。山猫とは隠語で芸者を指し、入隊した第七師団でも団長と妾の子供だと知る者もいることから密かに呼ばれていたのかもしれません。
また、臨機応変に陣営を変えることから「コウモリ野郎」とも呼ばれています。
基本的に無表情で腹のなかが探りにくい性格の持ち主で、同じくつかみどころのない鶴見という人物からも「敵に回すと非常に厄介」とささやかれるほど。
アニメでの声優は津田健次郎が務めています。
狙撃の腕が抜群によく、冷静でかっこいい所が尾形百之助の魅力といえるでしょう。
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- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2015-01-19
ストーリーでは金塊をめぐってアイヌの人を巻き込みながら、緊迫した対峙が繰り返されていきます。主人公は杉元という男とアイヌの娘アシリパ。熊に襲われたところたまたま出会った2人の前に、尾形はたびたび現れます。
1巻のエピソードで杉元と戦った尾形はアシリパの罠で銃を奪われ、接近戦に敗北。右腕を折られた挙げ句、杉元の投げた銃の尻が命中して大怪我を負い、真冬の川へと転落したのでした。第七師団によって引き上げられて一命をとりとめたものの、5巻まで顔を出すことはありませんでした。
ファン待望の再登場を遂げた際には、顔に傷痕が残るもののツーブロックのオールバックヘアの髪型に変化。読者を驚かせました。最初の登場では丸坊主でしたが、セクシーな長髪になった外見の変化によってさらにファンを増やしたのではないでしょうか。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2019-03-19
長髪になった尾形は顔の傷痕もあり、女性が放っておかないようなダンディな風貌になっています。無表情でクールなところもかっこいいキャラとして描かれています。
しかしそうかと思うと、暇つぶしに蝶々を追いかけるシーンでは瞳孔が縦長になり、猫のような目をするというおちゃめな面も。ちょっと不気味で、でもなんだか和んでしまう人気のシーンです。
また、基本的には無表情で、笑顔も恐怖さえ覚える不敵な笑みが多い人物ですが、時折見せる柔らかい笑顔のギャップにキュンときてしまうこともあります。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
尾形は杉元たちと対立したことはあるものの、ひとまずの協力関係を結ぶことになりました。そのなかでアシリパは、男たちに嬉しそうに料理を振舞います。
特に印象的なのは、獲物を捕らえたときに獲物の脳みそを仲間に分け与えるアイヌの古い風習を実践した12巻でのシーン。罠にシマフクロウがかかった場面で、臓物や舌などを使ってチタタプと呼ばれる伝統的な料理を作り、杉元、尾形、白石を一列に並べて「クチ開けろ」と分け与えました。その光景はまるでひな鳥に餌付けをしているかのようです。
普段は孤高の人物で、人との交わりや交流を喜ばない尾形が、一列に並ばされてアシリパに素直に従い餌付けをされる様子は、これからの2人の関係性を物語っています。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
尾形も含め、本作の男性陣が危険なほどに仲よくなってしまったエピソードがあります。それは13巻掲載のラッコ鍋の回。
谷垣はアイヌの老人からラッコの肉をもらい、それを鍋にしようと調理を始めます。その場には尾形をはじめ、杉元や白石、キロランケもいたのですが、ラッコ肉独特の臭いが漂ってくると、なぜか妙な雰囲気に。男同士にも関わらず相手に色気を感じ、妙に熱っぽい視線を送りあうのです。
その欲求を解消するために相撲をとるかと思いきや、それを建前に相手に襲いかかる始末。奇妙でセクシーな展開が続きます……。
実は、アイヌにはラッコ肉にまつわる言い伝えがありました。それは、「ラッコの肉が煮える臭いは欲情を刺激する」というもので、5人の男はお互いに色気付いてしまったのでした。なんともいえない雰囲気はぜひ本編で確認してみてください。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
ギャグ展開にも体を張って登場する尾形ですが、やはり戦いの腕前は一級品で、特に同じく13巻からの展開が話題になりました。
北海道の登別温泉のシーンです。尾形は入浴中も常に用心深く銃を傍に置き、ひとときも離そうとはしません。一方、杉元は銃の扱いが雑で壊してしまったり、谷垣には目を離しているうちに銃を盗まれた過去があります。
温泉入浴中も銃を離さない尾形は、銃での失敗経験を持つ2人に対して、時に嫌味を言い放つのでした。
また、このエピソードの尾形のかっこよさはそれだけでなく、湯煙で大事な部分が隠された全裸の男たちの肉体美も必見です。男たちの曲部が巧妙に隠されているのも読者の笑いを誘います。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2018-09-19
15巻では、杉元と尾形が再び激しい火花を散らしました。
ある日、杉元が何者かに狙撃されてしまいます。その犯人こそ狙撃の名手、尾形。彼と同じくそれまで一緒に仲間として行動していたキロランケが合図を送ったという証言があり、2人が裏切りをしたことが明らかになりました。
キロランケはロシア皇帝を爆殺した手配犯であるとともに、金塊強奪の真相を探るべく、強奪犯のリーダーと見られるのっぺらぼうを追っています。実は金塊強奪犯の張本人であるのっぺらぼうは、アシリパの父である可能性が高く、キロランケと尾形は杉元を裏切ってアシリパを連れて樺太へと向かうのでした。
尾形が好きな食べ物は故郷の名物であり、母がいつも作ってくれたあんこう鍋です。ですが、これにも過去の忌まわしき歴史が刻まれてしまいました。
入隊した第七師団には実は父親を同じくする異母弟、花沢勇作も入隊しています。花沢は尾形を兄様と呼び、慕っています。しかし、尾形からすれば花沢は自分よりもいい環境で育った実子であり、あまり関わり合いになりたくはありません。
尾形のややひねくくれた性格は、こうした妾の子ゆえのコンプレックスであると思えます。しかし、その理由は、ずっと秘密にしてきた壮絶な過去ゆえのものであろうということが徐々に明かされます……。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
1つ目はあんこう鍋に殺鼠剤を入れて母親に食べさせ、毒殺したことです。
なぜそのようなことをしたかというと、夫である花沢幸次郎への未練から、彼が好きだったあんこう鍋を毎日のように作る母が哀れになったからとのこと。「死ねば葬式くらいには顔を出すから、最期に会えるだろう」と考え殺害に至ったのです。
しかし当の花沢は第七師団在籍中に自刃で死んでしまいました。ところが、これも実は尾形の仕業。彼が父親の腹を切り、切腹に見せかけたという事実が本人の口から明らかになりました。
さらに彼の暗い過去はこれだけではありません。同じ戦場に立っていた優作をも後頭部を撃ち抜き殺害しているのです。
血のつながりのある3人の家族を殺害した過去を持つ尾形は、果たして冷酷極まりない残忍な人間なのでしょうか。彼は親殺しは巣立ちの通過儀礼という言葉も残しており、その真意がますます気になります。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2016-08-19
尾形百之助は『山猫は眠らない』という映画に登場するトーマス・ベケットがモデルといわれています。その映画の登場人物のモデルとなっているのが、実在のスナイパーであるカルロス・ハスコックです。
実在の人物であるカルロスも、映画で演じたトーマスも、尾形が5巻で谷垣を狙撃した場面で見せた「座って銃を左腕に置く姿勢」がお決まりの伊万里狙撃スタイルです。
彼らの共通点を探してみるのも面白いかもしれません。
アシリパには杉元が死んだと嘘をついていた尾形ですが、その嘘がバレたことで彼女に自分を殺させようとします。
挑発しながら彼女に銃口を向ける尾形と、弓を手にしたものの恐怖に身を固めているアシリパの元へ、杉元が大きな声をあげて止めに入ります。彼の怒号に驚いたアシリパは思わず弓を放ってしまい、その矢は尾形の右目を貫きました。
意図せず命中してしまったことに驚くアシリパですが、杉元は咄嗟に尾形に駆け寄ります。そして、倒れ込む尾形の髪をつかみ、目の周りにナイフを突き刺し、肉の塊を切り抜きます。アシリパは血が吹き飛ぶ壮絶な光景に崩れ落ちます。
杉元はトドメを刺したのかと思いきや、実は尾形の命を救おうとしていました。アシリパの矢には毒が塗られていたため、その毒を取り除こうとしていたのです。
あまりに壮絶なシーンであることから、尾形が死亡したと思った読者もいたはずです。
「この流れでは死なせねぇぞ」という杉本のセリフからは、アシリパを人殺しにはさせないという思いが感じられます。
クールな印象がある尾形ですが、実は敵や味方をころころと変えています。そのため、自分の考えだけで動く孤高のスナイパーともいえます。
その腹の内は誰にもわからず、俯瞰して展開を見ている読者にも目的が分かりかねる、本作もっとも謎の多い人物です。杉元からはコウモリ野郎と揶揄されるほど、所属する陣営を変えています。
最初のコウモリ癖は、所属していた第七師団から脱走したところまで遡ります。当時師団の実権を握っていた鶴見に造反しようとしたのです。この鶴見こそ、実は父である花沢幸次郎の殺害を指南した人物でした。
- 著者
- 野田 サトル
- 出版日
- 2019-03-19
鶴見は失った軍神の代わりとして妾の子である尾形を祭り上げようとしていましたが、彼はそれが気に食わず、離反に至ったのでした。脱走後には刺青人皮を巡って土方らと対峙したものの、その後取引を行って共闘を承諾させることもありました。
さらに、網走監獄ではキロランケと手を組み、ウイルクと杉元を狙撃。その一方で、夕張で鶴見の部下を奇襲して土方・杉元の旅の同行者となったときもあり、「明日の敵は今日の友」状態です。
また、アシリパがのっぺら坊の娘と知ってからは、彼女にも興味津々です。用心棒として尾形を雇った土方からも、「出自が複雑で目的もわからない奴だ」と怪しまれていました。
また、その部下である月島からは「自らの出世を目論む、本部の飼い猫」(『ゴールデンカムイ』14巻より引用)とも言われるほどです。
しかし、いずれも想像の域に過ぎず、誰にも腹の内を見せないのが尾形。今後どこに所属し、どう動いていくのか気になるところです。
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