ピンとくる、ひらめきの話【荒井沙織】

ピンとくる、ひらめきの話【荒井沙織】

更新:2021.2.4 作成:2019.10.1

“ピンとくる” のは気持ちがいい。それにひらめきには、何よりも自分を納得させる力があると思う。進むため、止まるため、そして創るために。だからひらめきが必要になった時、私はあの場所へ向かうのだ。

荒井沙織プロフィール画像
フリーアナウンサー、タレント
荒井沙織
広島県出身。2012年テレビ東京「釣りロマンを求めて」でデビュー。 釣り番組・旅番組・地域情報番組・経済番組でのリポーターやお天気キャスターの他、YouTuberや写真展出展など。 趣味は映画鑑賞、海外ドラマ鑑賞、読書、お散歩、カメラ。競馬を勉強中。
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写真を撮ること

私は写真を撮る。詳しい技術は持ち合わせていないが、相棒のカメラを手に街を歩き回り、その時々にふと、理由もなく ”いいな” と思うものをおさめていくのが好きなのだ。相棒は私に似てか、ちょっと癖のあるやつなので、「これを撮りたいのだけど、どんな設定がいいかしらね?」なんていう風に、相談と挑戦と、時おりの格闘を重ねながら撮っている。

東京駅のすぐ側・京橋の一等地に店を構えるギャラリーで開催される写真展に、作品を一枚出してみませんか?と声をかけてもらったのが2年半前。《それぞれの心に残る情景》をテーマに、26人の作品を展示した展覧会だった。私はそこに、悩みに悩んで撮り歩いた、最初の一枚を出展した。それが、私にとって初めての、作品として人に観てもらうために撮った写真だ。この出展がきっかけとなり、今でも年に何度か、このギャラリーで展示の機会をもらっている。

作品としての写真を撮るようになった頃、それまでの自分が如何に世界を流し見していたのか、正面からガツンと突き付けられたような気分になったのを思い出す。カメラを持って歩いていると、当たり前に視界を満たす景色の中にも、立ち止まるべき瞬間がたくさん在ることに気付くのだ。だから、今はこうしてシャッターを切ることで、これまでなんとなく見逃してきた部分の、新鮮な手触りを感じているのかもしれない。

ピンとくる!

そういうわけで、私は写真を撮っている。

作品を撮る時は大抵、どこか具体的な場所というより、その日に向かう大体の方向や、探したい要素だけを決めて出発する。あとは、”ピンとくる” 景色に出会うまでだ。出かける前には想像できないような、極めて小さな発見を撮り集めるのが好きなのだ。

(撮影: 荒井沙織)

写真には、言葉を添えることにしている。多くの場合、作品の隣に展示されるキャプションには、撮影地などの情報が記されるのだが、私は説明の代わりに、ここに自由な詩をつけるというスタイルをとっている。

撮った写真から思い起こされた世界を言葉にして、作品を完成させる。私の考えている比重は、写真が50パーセント。詩の部分で、もう半分の50パーセント。いわば仕上げとも言える、この詩をつけていく工程が一番好きなのだが、これもまた、自分なりに ”ピンとくる” 言葉を引き起こさなければならない。

著者
出版日
2018-04-28

ひらめきは、シャワーから

そうなると、”ピンとくるか、こないか” に全てが懸かってくる。

写真展の準備期間はいつも、納期までに ”ピンとくる” ものに出会い、作品として成立させることができるかどうか、やり場のない焦りを感じてしまう。どうやら性質として、自分でプレッシャーをかけてしまうものだから、夢の中でまで何かに追われている、なんてことも珍しくない。まぁこれは写真に限ったことではないけれど。

そんな私の、救いになっているものが2つある。

まずは、根気強く励ましてくれる母の言葉。情けないことに、毎回一度はパニック状態になるのだが、そんな時は「動き続けていたら大丈夫。今日は作品になるものが撮れなかったけど、その分、出会いに近づいているはず!」と思うことにしている。最初の写真展の時から変わらず、母にそう励まされてきたので、この心の持ち方はいよいよ身につき始めた。

もう一つは、お風呂の時間だ。中でもとりわけ、シャワーを浴びている時。

何かいい方向性が浮かばないかなぁ…。あと一言、いい言葉が見つかればなぁ…。こういった思考の行き詰まりが起きた時、シャワーを浴びていると突然に、ヒントを得られることがある。それこそ、煮詰まったものは全てシャワーが解決してくれると言ってもいい。

著者
早坂信哉
出版日
2018-11-23

そう言い切れるくらい、私はこれまで数えきれないほど、シャワーを浴びながら思考の突破口を見つけてきたのだ。皮膚に水が触れることで感覚が活性化されるのか、それともシャンプーすることが頭への刺激になっているのかはわからない。けれど、お風呂に入っている時間のひらめき率の高さたるや、ノートを前にペンを握り、うんうん唸っている時間と比べても圧倒的だ。

シャワーの水圧を受けながら、あるいは、浸かった湯船の水面で無意味に腕を泳がせたりしながら、行き詰まったまさにその地点や事柄の周辺に、ぐるりと思いを巡らせてみる。途中で、一点にズームしすぎて頭が真っ白になったら、ドローンに乗ったくらい高くて遠いところまで、一度思い切り離れて見下ろしてみる。こういう事を繰り返しながら、私なりに、写真と向き合っている。

あなたがもし何かひらめきを待っているのなら、思考を携えて、ひとまずシャワーを浴びてみてほしい。効果には個人差がありますが、ぜひとも一度、お試しあれ。

展示作品は、ただいまひらめきを詰め込んで制作中。

お近くまでお越しの際は、ぜひお気軽にお立ち寄りくださいね。

Island Gallery 三人写真展
『Three Photographers Emerge 2019』
http://islandgallery.jp/17618

2019年10月18日(金)〜27日(日)
11:00-19:00
入場無料。
※23日(水)は休廊。

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