さまざまな環境問題があるなかで、環境の保全と社会の発展を両立させるための取り組みが続けられています。そして、世界共通の目標として「SDGs」というものが掲げられました。この記事では、持続可能な社会をつくるための具体的な目標や、企業、自治体、政府の取り組みなどをわかりやすく解説していきます。
地球には、温暖化をはじめさまざまな環境問題が発生しています。このような地球規模の問題に取り組むためには、国を超え、世界全体で問題を共有し、解決のために協力する姿勢が不可欠です。その一方で、環境保全のために社会の発展が妨げられてしまうのも問題。
このような状況を背景に、環境保全と社会の発展を両立させる「持続可能な社会」を目指すことが、世界各国の共通目標として掲げられるようになりました。
「持続可能な社会」を実現するための、具体的な指標として提唱されたのがSDGs (Sustainable Development Goals)です。
日本語では「持続可能な開発目標」と訳され、口頭では略称を用いて「エスディージーズ」と発音されます。
2015年9月の国連総会で採択され、各国が2016年から2030年の間に達成するべき目標が盛り込まれています。ただし、地球温暖化防止のための具体的な義務を課した「パリ協定」などとは異なり、義務やルールは設定されていません。
SDGsが掲げる目標はぜんぶで17種。対象は多種多様で、貧困や飢餓対策、エネルギー政策、ジェンダー平等などがあります。また、目標を達成するためのより具体的な基準として、169のターゲットも設定されました。
現在、日本をはじめとする国連加盟各国は、SDGsを達成するために、政府だけでなく企業や自治体などさまざまな単位で取り組みを進めています。2019年9月には、安倍総理大臣が国連でスピーチをし、これまでの状況を振り返りつつ中長期戦略を改定、進化した日本の「SDGsモデル」を示すと述べました。
上述したとおり、SDGsは持続可能な社会を実現するために17の目標=goalsを設定しています。具体的に紹介しましょう。
これらの目標は、環境保全だけにとどまらず、個人の在り方や国際協調など、先進国・発展途上国を問わない普遍的な内容です。
17の目標を達成するために、SDGsはそれぞれのgoalsにターゲットを設定しています。たとえば「貧困をなくす」という目標のターゲットはぜんぶで7つ。
「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる」のように具体的な数値をあげているものや、「貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する」のように指針となっているものなどがあります。
では、SDGsを達成するために、日本でどのような取り組みがされているのか紹介していきます。
2019年6月、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が、SDGs達成ランキングを発表しました。それによると、日本の達成度合いは162ヶ国中、15位。
「質の高い教育をみんなに」という目標を達成している一方で、「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」などの分野は課題が多いと指摘されました。
現状の課題に取り組むため、日本では官民それぞれで取り組みが進められています。
2015年9月の国連総会でSDGsが採択された後、2016年5月に内閣の全閣僚が構成員となる「SDGs推進本部」が設置。その後「SDGs推進本部」とNGOや有識者などで構成される「SDGs推進円卓会議」の会合を経て、12月には「SDGs実施指針」が決定されました。
他方、企業にとってSDGsは、環境保全だけでなく、大きなビジネスチャンスとしても捉えられているようです。目標を達成するための取り組みが新製品やサービスの開発につながり、新規市場の開拓や雇用創出に繋がる可能性があるためです。
また外務省のウェブサイト内にある「JAPAN SDGs Action Platform」では、さまざまな企業の取り組みが紹介されています。
日本フードエコロジーセンターは、「食品ロスに新たな価値を」という企業理念のもと、食品廃棄物を有効活用してリキッド発酵飼料を開発。新たなビジネスモデルを実現したとして、2018年12月に第2回「ジャパンSDGsアワード」最優秀賞に選ばれました。
さらに企業だけでなく、自治体単位でも取り組みがおこなわれています。2019年6月、大阪府は「海洋プラスチックごみ問題から考えるSDGsシンポジウム」を開催。SDGs先進都市となるべく、啓発活動を実施しています。
日本だけでなく、世界各地で政府や自治体、企業などがSDGs達成のためにさまざまな取り組みを進めています。
SDGsの17個目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」に示されるように、「持続可能な社会」を実現するためには、特定の国や個人だけでなく、地球規模で協力していくことが必要。SDGsを通じて世界規模で目標が共有されたことで、国境を越えて協力する機運が高まりました。
ただSDGsは、目標を提示するだけで、そのため具体的に何をすべきか明記されているわけではありません。これはつまり、目標達成のために何をすべきか、ひとりひとりに委ねられているということです。
SDGsの取り組みが広がることで、世界中の人がより身近に環境保全を意識して、自分にできることからアクションを起こすようになるかもしれません。
- 著者
- Think the Earth
- 出版日
- 2018-05-08
本書は、漫画やイラストを多用して、SDGsの掲げる17の目標についてわかりやすく解説したもの。また実際におこなわれた34の事例を紹介し、具体例を通じてSDGsを達成するために何ができるのかを教えてくれています。
SDGsを達成するためには「自分なら何ができるか」と考える姿勢が大切。本書はそのためのさまざまなヒントを与えてくれるでしょう。
- 著者
- ["村上 芽", "渡辺珠子"]
- 出版日
- 2019-06-15
本書は、企業の観点からSDGsを取り上げ、ビジネスとSDGsの結びつきを解説した作品です。
作者の村上芽と渡辺珠子は、これまでに何度もSDGsについてセミナーを開催している人物。その経験を踏まえて、特に質問が多かったことがより詳しくまとめられています。
もちろんSDGsそのものの概要も、ポイントを押さえて教えてくれているので、SDGsの全体像を把握したい人にもおすすめです。