数多く発表されている新書のなかでは、世界史をテーマにしているものもたくさんあります。この記事では、高校生など現在進行形で学んでいる人はもちろん、大人の学び直しにもおすすめの世界史を学べるおすすめの新書をご紹介していきます。
1941年にドイツが独ソ不可侵条約を破ってソ連に侵攻してから、1945年まで続いた独ソ戦。両国に多大な被害をもたらしました。
第二次世界大戦における戦いのなかで大きな意味をもつこの戦いについて、数多くの書籍が発表されていますが、日本の理解は、ドイツの軍人たちの回想録をもとにしたものがほとんど。しかしこれらの叙述には少なからず間違いがあります。彼らは自分たちの間違いを認めたくないため、当時ドイツの決定権を担っていたヒトラーに責任を押し付けたのです。
本書は、これまでの独ソ戦の理解をあらためるために、中立の立場で事実を追い求めていきます。
- 著者
- 大木 毅
- 出版日
- 2019-07-20
2019年に刊行された大木毅の作品です。
本書では、歴史修正主義者によって阻まれてきた、独ソ戦の経過と結末に関する正しい理解が促されています。戦争がどのように進み、どのような作戦が実行されてきたのかはもちろん、ドイツの独裁者ヒトラーと、ソ連で政権を握っていたスターリンがどのような考えのもとで戦争をしたのも解説。
多くの人が第二次世界大戦の経過について知っているはずですが、歪曲されてきた事実を見返すことで、独ソ戦の本質を知ることができるでしょう。
どうしていま、独ソ戦なのか。2019年に発表されて以来ヒットをしている本書で歴史を振り返り、戦争についてあらためて考えてみてください。
フランス革命以前の「アンシャンレジーム」と呼ばれる国家体制では、国民は3つの身分に分かれていました。聖職者と貴族には免税や年金の支給が認められていた一方で、平民である第三身分への徴税負担は相当なものだったそうです。
やがて第三身分の不満が爆発し、フランス革命が発生。当時の国王だったルイ16世は国外へ逃亡しようとするものの失敗し、幽閉されるなど波乱の人生を送っています。一方で第三身分側は、王権の停止には成功したものの恐怖政治が展開したため、革命運動を継続。ナポレオンが登場し、変動の時代が続くのです。
本書は、まるで物語のようなフランス革命を、詳細な記述で振り返る作品です。
- 著者
- 安達 正勝
- 出版日
- 2008-09-01
2008年に刊行された安達正勝の作品です。現代日本で保障されている「国民主権」や「法の下の平等」などの理念は、フランス革命に由来するもの。18世紀に起こった革命で、世界の多くの国が近代国家へと成長を遂げました。
本書では、フランス革命を1789年のバスティーユ牢獄襲撃事件から、1799年のナポレオンのクーデターまでと位置付け、出来事ではなく人物を中心に語っています。歴史の授業で習う有名な人から無名な人まで、ひとりひとりのエピソードを読むだけでおおまかな流れを理解することができるでしょう。
ドラマチックで面白く、学生はもちろん、世界史を学び直したいと考えている大人の方にもおすすめです。
中世ヨーロッパで、長きにわたり繁栄を誇ったハプスブルク家。ルイ16世の王妃であるマリー・アントワネットや、スペインの黄金時代に皇帝だったフェリペ2世など、多くの偉人を輩出しています。
そんなハプスブルク家の歴史は、華やかな生活が垣間見える一方で、領土が親族以外に渡ることを恐れて近親婚をくり返したため、若くして亡くなったり、障害をもった子どもが産まれたりと、薄暗い一面があるのも事実です。
本書では、さまざまな逸話が残るハプスブルク家を、肖像画や宮廷画をもとに読み解いていきます。
- 著者
- 中野 京子
- 出版日
- 2008-08-12
2008年に刊行された中野京子の作品です。
世界史に大きな影響を与えたハプスブルク家を、12の絵画をもとに読み解いていきます。絵画自体の解説とともに、描かれた背景や人物についてわかりやすく解説されているのが魅力的。ただ暗記をするのではなく、個人の人となりを知ることで、多角的に歴史を知ることができるでしょう。
紹介されているエピソードも、どれも興味深いもの。家系存続のために結婚をくり返す皇帝や、愛する夫を亡くして狂気に陥る妻、政治に興味がなく芸術品ばかりを集める変人など、一風変わった人物像を楽しむことができます。
世界史の事前知識がなくても大丈夫。文章も平易で読みやすいのでおすすめです。
中国の歴史書『三国志』。かつて中国の王朝が自らの正当性を示すためにまとめたものだといわれていますが、どうして日本で人気があるのでしょうか。
『三国志』には、正史と呼ばれる歴史書だけでなく、フィクションを織り交ぜて小説に仕立てた『三国志演義』というものがあります。さらにそれが劇になり、絵になり、また別の物語になり……とさまざまな媒体を経て受け継がれてきました。
本書では、日本の歴史は『三国志』とともに歩んできたとして、その変遷を解説していきます。
- 著者
- 箱崎 みどり
- 出版日
- 2019-08-21
2019年に刊行された箱崎みどりの作品です。箱崎は、ニッポン放送のアナウンサー。小学生の頃に『三国志』に魅せられ、大学の研究テーマにも『三国志』を選んだそうです。
本書の魅力は、とにかく愛にあふれた箱崎の文章が面白いということ。彼女がこれまでに出会った関連作品を紹介し、登場人物への想いを語り、何が面白いのかを丁寧に解説しています。また古代から現代までどのように読まれ、演じられてきたのかが、日本の『三国志』ブームにも触れながら紹介されているので、一連の流れを知ることができるでしょう。
文章はエッセイ風で読みやすいもの。『三国志』に興味のある方はもちろんですが、好きなものへの没頭の仕方の手本にもしたい一冊です。
16世紀から19世紀にかけてヨーロッパの植民地となった東南アジア。政治や経済、社会体制などで大きな発展を遂げました。その後第二次世界大戦時の日本の占領統治を経て、東南アジアの国々は独立を望むようになります。
独立後は民主化運動が盛んになり、経済発展を遂げ、2015年には「ASEAN経済共同体」が発足しました。
本書は、植民地時代から現代まで、東南アジアがどのような歴史を辿ってきたのか解説し、これからどんな未来を歩むのかを考察した作品です。
- 著者
- 岩崎 育夫
- 出版日
- 2017-01-18
2017年に刊行された岩崎育夫の作品です。
東南アジア各国の歴史を、土着時代、ヨーロッパの植民地、日本の統治、独立後の政治的混乱、ASEANの発足……とターニングポイントごとに整理しながらまんべんなく解説しています。東南アジアというとぼんやりとしたイメージしか湧かない方も多いかもしれませんが、国ごとの特徴を掴みながら、ヨーロッパとの関わりや日本史との繋がりを整理できるでしょう。
1967年に設立したASEANは、単一国家形成を目指すものではありません。本書でも「多様性の中の統一」をキーワードに、異なる民族、宗教、文化などがゆるやかに協調しているさまを感じることができます。
俯瞰で体系的に東南アジアについて学ぶことができる、入門書におすすめの一冊です。
「世界史」というと、学校の授業の影響からか、どうしても欧米の歴史と、それに付随する日本の動きをイメージする方が多いのではないでしょうか。
本書では、西洋史の観点で描かれた世界史を見直すために、アジア史の観点から世界を紐解いていきます。
- 著者
- 岡本 隆司
- 出版日
- 2018-07-06
2018年に刊行された岡本隆司の作品です。
作者は、遊牧民と農耕民が接触することで交易が生じ、文明が発展したと解説。そしてローマ帝国は、「オリエント」が発展したものだと主張しています。
見方を変えれば感じ方も変わるもの。各地域が相互に作用しあうことで発展した世界史は、まさに人類の歴史といってもよいでしょう。