5分でわかる第一次インドシナ戦争!背景、結果、影響などをわかりやすく解説

更新:2019.10.28 作成:2019.10.28

「第二次世界大戦」が終結し、日本が撤退した後のベトナムで起こった「第一次インドシナ戦争」。一体どのような戦いだったのでしょうか。この記事では、戦争の背景、「ディエンビエンフーの戦い」、結果と影響などをわかりやすく解説していきます。

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「第一次インドシナ戦争」とは。参加国など概要を解説

 

第二次世界大戦後の1946年から1954年にかけて、ホー・チ・ミンが建国した東南アジア最初の社会主義国家「ベトナム民主共和国」と、ベトナムの旧宗主国であるフランスの戦いを「第一次インドシナ戦争」といいます。

ベトナム民主国側には、ラオスの反仏・非共産主義組織「ラーオ・イサラ」、ラオスの共産主義革命運動組織「パテート・ラーオ」が加わり、ソ連、中華人民共和国、ポーランド、東ドイツなどが支援しました。兵力は約58万。そのうち25万は志願兵で、旧日本軍からも600人ほどが参加したそうです。

一方のフランス側には、フランスの傀儡国家であるコーチシナ共和国、カンボジア王国、ラオス王国が加わり、アメリカが支援に回ります。兵力は約39万。内訳は、フランス軍19万、現地の民兵5万、ベトナム国軍15万です。

死者数は、ベトナム民主国側が30万人以上、フランス側が7万5000と膨大な数になりました。

 

「第一次インドシナ戦争」の背景は?日本軍の降伏とベトナムの独立宣言

 

現在のベトナム、ラオス、カンボジアが位置するインドシナ半島の東部地域は、1887年以来フランスの支配下にあり、日本では「フランス領インドシナ」と呼ばれていました。

1940年にフランス本国がドイツに占領され、翌1941年にヴィシー政権が成立すると、日本はフランス領インドシナ総督との間に協定を結び、進駐します。内政はフランスが続けることになっていましたが、1944年8月にドイツ軍からパリが解放されると、1945年3月に日本はフランス領インドシナ政府を解体。ベトナム帝国、カンボジア王国、ラオス王国がフランスから独立することになりました。

1945年8月15日、日本が連合国に無条件降伏をすると、ホー・チ・ミン、ヴォー・グエン・ザップ、ファム・ヴァン・ドンらが率いる「ベトミン」が蜂起。ベトナム帝国の皇帝だったバオ・ダイを退位させて、ハノイでベトナム民主共和国の独立を宣言します。

一方の連合国はベトナムを北緯16度で分け、北側には中国国民党軍、南側にはイギリス軍とフランス軍が進駐することを決めました。中国国民党軍は、1946年2月にフランスと中国が「重慶協定」を結ぶと撤退しました。3月、ベトナム南部の権益を守りたいフランスは、傀儡国家であるコーチシナ共和国を建国します。

その後、ベトナム民主共和国とフランスの間で独立をめぐる交渉がおこなわれます。フランスはインドシナ半島内の植民地を「インドシナ連邦」として再編成し、その枠内での自治を認めるかたちで決着をつけることを望んでいましたが、それはベトナム民主共和国側としては受け入れがたいものでした。

6月には、フランス本国のフォンテーヌブローで独立問題を話しあう会談が実施されますが、双方の主張は一致しません。

ベトナム民主共和国はフランスとの戦争を決意し、元日本軍将兵の義勇兵を教官としたクァンガイ陸軍中学を設立するなど、準備を開始。そして11月、ハイフォン港で密輸船の取り締まり時に銃撃事件が発生したことをきっかけに「第一次インドシナ戦争」が勃発することになるのです。

 

「第一次インドシナ戦争」でフランスの敗北を決定付け「ディエンビエンフーの戦い」とは

 

戦争が始まると、フランス軍はベトナム全土の重要拠点を制圧する平定作戦を開始。1947年2月までにハノイ、ハイフォン、サイゴン、フエ、ダナンといった主要都市を含むほぼ全土を制圧します。

それに対しベトナム民主共和国軍は、内陸の農村地帯や北部の山岳地帯に逃れ、ゲリラ戦術で対抗しました。

1947年10月、フランス軍は、北部の山岳地帯にあるベトナム民主共和国軍の拠点ランソンを攻撃する作戦を実行しますが、完敗。これをきっかけにベトナム民主共和国軍が反撃に出て、戦況は徐々にフランスの劣勢へと傾いていきました。

1950年になると、ソ連や、前年に建国されたばかりの中華人民共和国がベトナム民主共和国軍に対する支援を開始。一方でアメリカはフランス側を支援して、「第一次インドシナ戦争」は、独立戦争から東西両陣営による代理戦争へと変貌していきました。しかしその直後に「朝鮮戦争」が勃発したため、ソ連、中国、アメリカは本格的には参戦していません。

またこの頃、フランス国内では、肉体と精神ともに深いダメージを負って帰還する兵士たちの姿が国民に大きな衝撃を与え、本国軍徴収兵の海外派遣を禁じる法律が制定されます。そのためインドシナ半島で戦うフランス軍は、フランス人の志願兵だけでは足りず、現地人やセネガル、モロッコ、アルジェリアなどアフリカ植民地出身者、ドイツやイタリアなどの外国人で構成されました。

ベトナム民主共和国軍が反撃を進めるなか、フランス軍の陣地は次々に壊滅。主要拠点間の連絡も分断されます。さらに1951年になると、ベトナム民主共和国軍が総攻撃を開始。1952年2月には要衝ホアビンを占領し、ハノイを包囲しました。1953年には戦線がラオスにも拡大します。

これに対し、フランスのアンリ・ナヴァール遠征軍司令官は、ラオス国境の近くにあり、旧日本軍の設営した飛行場があるディエンビエンフーに空挺降下をして占領。ベトナム民主共和国軍の主力部隊を誘い出して、撃滅する作戦を計画しました。1953年11月20日に占領に成功、要塞を構築してベトナム民主共和国軍の攻撃に備えます。

1954年3月13日、ついにベトナム民主共和国軍の攻撃が開始。ソ連や中国から大量の武器援助を受けていたその火力はフランス側の想定をはるかに上回り、56日間におよぶ包囲戦のすえ、フランス軍は敗れることになりました。

この「ディエンビエンフーの戦い」におけるフランスの敗北は、「第一次インドシナ戦争」の勝敗を決定づけるものだったといわれています。

 

「第一次インドシナ戦争」の結果と影響。アメリカ介入で「ベトナム戦争」へ

 

「ディエンビエンフーの戦い」が続くなか、スイスのジュネーヴでは戦争の終結に向けて、フランス、アメリカ、イギリス、ベトナム国、カンボジア、ラオス、ベトナム民主共和国、ソ連、中国の代表が参加する和平会談がおこなわれました。

当初、交渉は難航しましたが、「ディエンビエンフーの戦い」におけるフランスの敗北が明らかになると、新たに首相に就任したピエール・マンデス=フランスが1ヶ月以内の和平実現を公約。これによって交渉は進展し、7月21日に「ジュネーヴ協定」が締結されました。

その結果、ベトナム、カンボジア、ラオスの独立が承認されます。またベトナムを一時北緯17度線で南北に分断し、1956年7月にあらためて南北統一選挙をおこなって統一を図ることが決められました。

さらに「ジュネーヴ協定」にもとづいて、フランス軍はインドシナ半島から撤退。ベトナム民主共和国軍も北ベトナムに撤退します。

しかしアメリカは協定に参加せず、南ベトナムでゴ・ディン・ジエムを初代大統領とするベトナム共和国を成立。ベトナム共和国はアメリカの意向に沿って、「東南アジアにおける反共の防波堤」となるべく、ベトナム民主共和国との統一をめぐる協議を拒否し、南北統一選挙は実現しなかったのです。

これによって南北の対立は激化。ゴ・ディン・ジエムが南ベトナムで共産主義者や反政府運動家、新興宗教組織らを弾圧したこともあいまって、治安は乱れていきました。

1960年12月には、南ベトナムで「ベトコン」と呼ばれる南ベトナム解放民族戦線が結成。南北ベトナムの対立は、アメリカとソ連を巻き込み、東西冷戦下最長最悪の「ベトナム戦争」へと突入することになるのです。

「ベトナム戦争」の全体像を知れる一冊

著者
松岡 完
出版日
2001-07-01

 

「第二次インドシナ戦争」ともいわれる「ベトナム戦争」。アメリカによる枯葉剤の散布や、世界的に広がった反戦運動のイメージを想起する人が多いのではないでしょうか。しかし「ベトナム戦争」を理解するうえでは、「第一次インドシナ戦争」について学ぶことも欠かせません。

本書では、北ベトナム、南ベトナム、中国、ソ連、カンボジア、フランスなどさまざまな視点から、インドシナ半島で起こった悲劇について解き明かそうと試みています。広い視野をもって冷静な著述をしているのが特徴です。

また1979年からは、中国との間に「第三次インドシナ戦争」とも呼ばれる「中越戦争」が起こったことも忘れてはいけません。ベトナムは20世紀に入ってから、フランス、アメリカ、中国という大国と戦い、独立を守ってきたのです。その強さの理由を垣間見れる一冊だといえるでしょう。

「第一次インドシナ戦争」を含む、東南アジアの500年史

著者
岩崎 育夫
出版日
2017-01-18

 

2015年に「ASEAN経済共同体(AEC)」が発足し、6億人を超える人口を擁する巨大マーケットとなった東南アジア。日本人にとって、決して遠い存在ではありません。本書は、そんな東南アジアの500年にわたる歴史を解説した作品です。

もちろん3度の「インドシナ戦争」についても記述。東南アジアと一口で語れないほど多様な姿をもつそれぞれの国の過去、現在、そして未来を語っていきます。