5分でわかるワシントン条約!加盟国、目的、日本の取り組みなどを簡単に解説

更新:2019.11.5

絶滅のおそれがある動植物を保護するために作成された「ワシントン条約」。密漁や乱獲による個体数の減少に歯止めをかけることはできるのでしょうか。この記事では、条約が締結された経緯や目的、内容、日本の取り組みなどをわかりやすく解説していきます。

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「ワシントン条約」とは。加盟国など概要を簡単に解説

 

正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といい、英語表記の頭文字をとって「CITES(サイテス)」とも呼ばれる「ワシントン条約」。

作成されたきっかけは、1972年に開催された「国連人間環境会議」です。ここでの提言を受け、翌1973年にワシントンで国際会議が開かれ、3月3日に採択、7月1日に発効されました。会議が開かれた都市の名前から「ワシントン条約」といわれています。

それぞれの動植物は絶滅の恐れのある度合いによって「附属書Ⅰ」「附属書Ⅱ」「附属書Ⅲ」に分類されていて、数字が少ないほど絶滅の危機が高いもの。輸出入などの取引に厳しい規制がかけられているのです。

発効当初、「ワシントン条約」に署名した国は80ヶ国でした。その後順調に増加し、2019年現在は182の国とEUが条約に締結しています。締約国は2年か3年に1回開催される「締約国会議」に参加し、条約の運営や保護動植物の指定、その解除について審議をおこないます。

日本は1980年に締約国となりました。経済産業省が主体となって輸出入の制限以外の法律の整備や、税関での密輸対策、国内における取引の監視などさまざまな取り組みを続けています。

 

「ワシントン条約」が締結された経緯と目的

 

では1972年に開催された「国連人間環境会議」における提言と、その背景について解説していきます。

動植物は、食用以外にも、薬やアクセサリーの原材料、観賞用のペットなど、さまざまな用途に用いられています。多くの動植物が乱獲、密漁され、個体数の減少が大きな問題になっていました。「国連人間環境会議」では、野生動植物を絶滅から守るために、過剰な取引を規制する必要性が指摘されます。これを受けて、1973年に「ワシントン条約」が採択されたのです。

外務省のホームページでは、本条約の目的について次のように記されています。

ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)は、野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかることを目的とする。

また「ワシントン条約」の序文には、

  • 美しくかつ多様な形態を有する野生動植物が、現在および将来の世代のために保護されなければならない地球の自然体系のかけがえのない一部であること
  • 野生動植物の価値が、芸術上、科学上、文化上、レクリエーション上および経済上の見地から絶えず増大するものであること
  • 国民および国家が、それぞれの国における野生動植物の最良の保護者であり、最良の保護者でなければならないこと
  • 野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることのないようこれらの種を保護するために国際協力が重要であること

という4点を認識し、適当な措置を緊急にとる必要があるとして条約を締約したことが記されています。

ここにもあるとおり、「ワシントン条約」は野生動植物を保護するだけでなく、適正な利用を続けていくことも念頭に置いています。持続可能な利用の目途がついた動植物は、締約国会議を開催して規制のレベルを引き下げたり、規制から除外することもあるようです。

 

「ワシントン条約」の主な内容を紹介。附属書とは?

 

「ワシントン条約」は、絶滅のおそれがあり保護が必要だと考えられる野生動植物を「附属書Ⅰ」「附属書Ⅱ」「附属書Ⅲ」の3つに分類し、それぞれ危機の度合いに応じて取引や利用を規制しています。

経済産業省のホームページでは、次のように定義していました。

  • 「附属書Ⅰ」:絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの
  • 「附属書Ⅱ」:現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの
  • 「附属書Ⅲ」:締約国が自国内の保護のため、他の締約国・地域の協力を必要とするもの

「附属書Ⅰ」は絶滅のおそれがあるため、もっとも厳しい規制対象です。商業利用は禁じられ、学術研究のための取引も、輸出・輸入ともに許可書を発行しなければ認められません。ジャイアントパンダやウミガメ、オランウータンなど約1000種が指定されています。

「附属書Ⅱ」と「附属書Ⅲ」については、指定された動植物が生息している国が許可書を発行すれば、商業取引も含めた利用が認められます。ただし「附属書Ⅱ」に指定された動植物の許可書は、手続きの際に締結国会議での採択も必要であるなど、「附属書Ⅲ」より厳密です。

「附属書Ⅱ」にはクマやライオン、オウム、サンゴ、サボテンなど約3万5000種、「附属書Ⅲ」には各国がそれぞれ定めた種が指定されています。

なお規制されるのは生きている動植物だけでなく、はく製や毛皮、象牙、標本など動植物を用いた加工品も含まれるので注意が必要です。

 

「ワシントン条約」にもとづく日本の取り組みは?象牙や化粧品など、輸出や輸入が制限されているもの

 

日本では経済産業省が中心となって、さまざまな取り組みを進めています。1989年から2000年にかけて常設委員会で運営に携わったほか、1992年に開催された締約国会議ではホスト国に選ばれるなど、主要国として存在感を示してきました。

一方で、日本国内で年間500件以上の違法な取引が摘発されているのも事実です。

では2019年現在、「ワシントン条約」にもとづき、日本への持ち込みが禁止されている動植物の一例を紹介しましょう。

生きている動植物

テナガザル、チンパンジー、キツネザル、スローロリス、ミカドボウシインコ、コンゴウインコ、パフィオペディルム属のラン、アジアアロワナ、マダガスカルホシガメ

加工された動植物

毛皮・敷物:トラ、ヒョウ、ジャガー、チーター、ラクダ
象牙製品:アメリカワニ、シャムワニ、アフリカクチナガワニ、クロカイマン、インドニシキヘビ、オーストリッチ
はく製・標本:オジロワシ、ハヤブサ、ウミガメ
アクセサリー:トラ・ヒョウの爪、サイの角
その他:漢方薬(虎骨、麝香、木香を含むもの)

日本は規制に取り組む一方で、実は「附属書Ⅰ」に分類されるナガスクジラやマッコウクジラ、「付属書Ⅱ」に分類されるジンベイザメなど、いくつかの動物に「留保」をつけている状態です。このうちクジラについては、「持続可能な利用」ができるだけの個体数があるためと主張しています。

そのほか日本では、ワシントン条約で規制されている象牙製品が一般市場で流通しています。これについては、自然死した個体から集められたもののみ用いており、その売り上げから保全のための資金をねん出していると主張。

しかし市場の存在自体が密猟を誘発させていると考えられるため、2019年に開催された締約国会議で、日本市場の完全閉鎖が提案されました。最終的に閉鎖は見送られたものの、今後の日本の取り組みに世界から注目が集まっています。

 

象牙をめぐる負の連鎖を考える

著者
三浦 英之
出版日
2019-05-08

 

1940年代に500万頭いたアフリカゾウは、2010年代には50万頭まで減少してしまったそう。その要因として、本書の作者は密猟の横行を挙げています。

本書は、アフリカの密漁に密着したノンフィクション作品です。密猟された象牙製品は日本や中国の市場に流れ込んでいると指摘。また精力的な取材を通じて、密猟品がテロリストの資金源になっていることも明らかにしています。

作中では、「ワシントン条約」の締約国会議における日本と中国の行動も記述。印鑑など古くから象牙文化が根付いている日本ですが、その伝統は守るべきものなのか、事実を知ってからあらためて検討する必要があるでしょう。

 

「ワシントン条約」をきっかけに保護と利用のバランスを考える

著者
赤嶺 淳
出版日
2010-05-10

 

先述したとおり、「ワシントン条約」はただ単に野生動植物を保護するだけでなく、適正な利用を続けていくことも念頭に置いています。本書が取り上げるナマコをめぐる動きは、保護と利用をどのように両立すべきか読者に投げかけてくれるでしょう。

ナマコは絶滅危惧種として議論されるようになっている一方で、経済圏も成立していて多くの人がナマコで生計をたてているほか、各地で多様な食文化も形成されています。

本書の作者は積極的なフィールドワークを通じて人々の活動を描き、それぞれの立場の利害を調整した社会的合意を形成する必要性を提言。文化を守りながらも、地球の資源を守ることの難しさと大切さを実感できる一冊です。