『IT』は、原作小説を読むべき。あらすじ、登場人物も解説【ネタバレ注意】

更新:2021.11.20

1990年、2017年、2019年に映画化されて話題となったホラー映画『IT“それ”が見えたら、終わり』。その原作は、ホラー小説を得意とするスティーヴンキングの小説『IT』です。小さな村を舞台に、7人の子供達に迫るピエロ・ペニーワイズの恐怖を描いた本作は、多くの人を怯えさせました。 今回はそんな小説『IT』のあらすじと魅力、2019年に公開された新作映画の見どころなども合わせてご紹介します。

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小説『IT』が面白い!タイトルの意味も解説【あらすじ】

 

1990年、そして2017年に映画が公開され話題となった『IT“それ”が見えたら、終わり』。原作小説はスティーヴンキングによる『IT』です。

デリーという町に暮らすビル、ベバリー、ベン、リッチー、マイク、エディ、スタンリーの7人の子供達は、それぞれ問題を抱えていました。弟を亡くし親からも冷たくされているビル、父親から虐待を受けているベバリー、人種差別を受ける黒人のマイク……そんな居場所のない子供達が集まり作ったのが、ルーザーズ・クラブ。

ルーザーズ・クラブの子供達はそこで交流をし、絆を深めていっていました。しかし、そんな子供達の前に現れたのは、奇怪なピエロ、ペニーワイズでした。

ペニーワイズのことを知らなかった子供達はそのピエロのことを「それ(IT)」と呼びました。やがて「IT」は子供達にどん底の恐怖を与えていくことになるのです……。

 

著者
スティーヴン キング
出版日

原作である小説『IT』は、文庫本で4巻にもなる長編作品です。2017年に公開された映画では、原作の前半が映像化されました。そして、2019年11月には『IT THE END』が公開されます。

2017年版の続編という扱いで、前作に登場した子供達に加え、大人になった子供達も登場し、より原作に近い形になっているようです。ぜひ映画と合わせて原作小説もチェックしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに映画作品についてもっと知りたいという方はこちらの公式サイトからご覧ください。

映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』オフィシャルサイト
 

作者・スティーヴンキングとは?

 

『IT』の原作者はスティーヴンキングは、様々なホラー小説を発表していることで知られている小説家です。

モダン・ホラーの第一人者とも言われており、怨霊や怪物の恐怖を描く従来のホラーとは一線を画した作品が魅力。日常の中に潜む恐怖や、小さな村など閉鎖的で独特な空間で起こる恐怖などを巧みに描き出します。

ホラーが有名な作家ではありますが、映画『ショーシャンクの空に』の原作『刑務所のリタ・ヘイワース』や『グリーンマイル』などヒューマンドラマやファンタジーなども描いています。

 

著者
スティーヴン キング
出版日

 

映像化された作品も数多くあり、たとえば1980年の『シャイニング』や1986年の『スタンド・バイ・ミー』、1990年の『ミザリー』などは、見たことはなくてもタイトルは聞いたことがあるという方も多いかもしれません。

扱う題材自体は時代を超えた普遍的なものが多いですが、それを現代的な仕掛けとストーリーテリングで仕上げ、読むものに新鮮な魅力を感じさせます。

ホラーが好きな方はもちろんですが、苦手な方もホラーではない作品もある作家なので、これを機会にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:登場人物を紹介!大人たちが全員ヤバい?

 

本作には、ペニーワイズと対決することになる子供達が登場します。すでにご紹介した通り、この子供達はルーザーズ・クラブの子供達。彼らはデリーという町に住んでいるのですが、そこに住む大人達はペニーワイズと同じくらいヤバい存在ばかりです。ここでは子供達とともに、子供達を取り巻くヤバい大人達をご紹介します。

まず、ビル・デンブロウ。ビルにはジョージという弟がいましたが、ある雨の日、ジョージは排水溝に落ちて行方不明になってしまいました。その日は、ビルが風邪を引いていて弟と一緒に遊んであげられなかった日。このことがビルに深い闇を落とすことになります。

しかし彼を苦しめるのはそれだけではなく、両親もまた彼を追い詰めてきます。父と母は、ジョージを失った悲しみからビルのことをないがしろにするようになるのです。いくら悲しみが深いとはいえ同じ息子だというのに、これほど辛い環境はないでしょう。

 

著者
スティーヴン キング
出版日
1994-12-10

 

マイク・ハンロンは、黒人の少年。人種を理由にいじめにあっていましたが、それは子供からだけではなく、大人たちからも。火事で家族を失った少年なのですが、親戚も町の大人もみんな彼に冷たく当たるのです。

そしてもっとも不快感の強い大人が、ベバリー・マシューの父親。ベバリーはクラブの中で唯一の女の子ですが、彼女は父親から性的虐待を受けていたのです。その様子は、理解の範疇を超えており、読むものの気力まで奪ってきます。

そんなデリーの大人達は全体的にどこか不気味な存在として描かれます。たとえば、マイクやベンという少年がいじめられているのを目撃しても、さっさと立ち去ってしまうシーンも。一般的に「大人」と呼べる人々とは到底思えない振る舞いばかりなのです。

ただ、それが本作全体を包む重要な要素にもなっていると言えます。大人達は子供達にとって救いに導く存在にはならず、むしろ恐怖の対象。その恐ろしさを代表するのが、「IT」だともいえるのです。

 

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:恐怖をえぐり出す最恐のホラー小説!

本作の魅力の1つ目は、ペニーワイズが演出する恐怖です。

ホラー小説なので怖いのは当たり前と言えば当たり前なのですが、ペニーワイズの恐怖は、ただ不気味なお化けや怪物が襲ってくるというわけではなく、じわじわと人を中から壊していくような怖さになっています。

テレビなどで映画の予告編を見たことがある方は多いと思いますが、予告を見た方はあの不気味なピエロの印象が強く残っていることもあるかもしれません。

実際、ペニーワイズは奇怪なピエロの姿をしてはいるのですが、本当の恐怖は、ITが子供達の恐怖に合わせて姿を変えるところにあります。子供たちが本当に怖いと思っているものに姿を変えるのです。

たとえば、弟のジョージを亡くしたことに責任と恐怖を感じているビルの前にはジョージの姿で現れ、父親から虐待を受けているベバリーには大量の血しぶきを見せ……といった具合です。

ひょっとしたら本人達も自覚していないであろう恐怖をえぐり出し、眼前につきつけられる、IT。恐怖だけでなく、絶望も感じさせる「最恐のホラー小説」ともよべるであろう、ゆえんです。

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:青春物語としてもおもしろい!?

3度に渡り映像化された本作ですが、原作でしか読めないシーンというものが存在します。それは、ある過激なシーン。

時代に合わせたり社会への影響を考えたりされた結果だと思われますが、そのあたりは原作を読んで頂ければ誰しもが納得するものです。

それくらい過激なシーンなのですが、ただショッキングなものという訳ではなく、ストーリーとして意味のあるものになっています。

どんなものが描かれているかは実際に確認して頂きたいのですが、そのシーンで描かれているのは、子供達が大人へと成長していく通過儀礼であるとも考えられています。

ペニーワイズとの対決を通し大人へとなっていく子供達。本作は、子供達の成長物語、青春物語としても読むことができるのです。

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:本当に怖いのはやっぱり……!?

著者
スティーヴン キング
出版日
1994-12-10

 

本作では、さまざまな差別が描かれていることも特徴です。

黒人のマイクは、黒人であるがためにいじめを受けていました。つまり人種差別です。ユダヤ教徒であるスタンリーもまた、宗教を理由にいじめられるシーンがあります。また、ユダヤ教徒として「割礼」の儀式を受けなければならないという話も登場します。

物語の舞台が90年代ということもあり、人種差別や宗教差別が現代よりもさらに根強く残っていたということはあるでしょう。しかし、今でもこういった問題が残っている地域も多々あるようです。

さらにベバリーが父親から性的虐待を受けていることも性差別を思わせるなど、さまざまな問題が描かれているのです。

もちろんメインの話ではないので社会風刺というわけでないのかもしれません。ただ、ペニーワイズが人間の内側の恐怖をえぐり出す存在であるとしたら、こういった差別は外側からくる恐怖ともいえるのかもしれません。ありきたりな言い方ですが、本当に怖いのは人間、ということも感じられる作品です。

 

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:原作の結末は!? ラストに生き残ったのは…

 

2017年版の映画と原作の違いの一番大きなところは、映画は全編を通して子供の物語として描かれているところです。原作では、子供時代と大人時代が入り混じりながら描かれています。子供時代の物語を集中して見ることができる映画のほうは、そのぶん恐怖も一貫して終始ハラハラすることができるでしょう。

 

著者
スティーヴン キング
出版日
1994-12-10

 

一方、原作では大人時代と子供時代が入り混じることで、ホラーだけではないミステリー感を覚えることもできます。ITとの対決を経て、子供達は生き残る者とそうでない者に分かれてしまうことになります。2017年版の映画を知っている方は、すでに誰が死んでしまうかはご存知でしょう。

誰が生き残るのか、それはぜひ本編を手に取って頂きたいところですが、原作には、映像化していない衝撃のラストも待ち受けています。これは映像化しなかったのではなく、内容的に映像化できなかったというのが正しいでしょう。現に、映画ではそれに代わるシーンが描かれています。

これだけ読者を驚かす内容なのですが、もちろんただ衝撃的なだけではなく、物語を通して重要な意味を持つシーンでもあります。そんな衝撃を味わうためにもぜひ原作をチェックしてみてください。

 

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:2017年の映画版と原作の違いを解説!

小説『IT』の面白さをネタバレ解説!:2017年の映画版と原作の違いを解説!
出典:https://amzn.to/33k0VRu

2017年版の映画は、大人時代と子供時代が入り混じりながら描かれる原作とは異なり、子供時代にスポットを当てた作品となっていましたが、2019年版では大人が登場することになっています。

2017年版でもストーリー自体は原作にかなり近いものではありましたが、原作では子供達によるかなり過激なシーンがあり、映画が公開される時代も含めて映像化ができないものもあります。

ですので、原作と映画に違いが出てくるのはしょうがないことではあったのですが、そういった意味で映像化できないのでは? と思われていたのが「チュードの儀式」。原作に登場するペニーワイズを倒すための儀式です。

この儀式というのがかなりグロテスク。映像化は難しいのではないかと多くの人が考えていました。実際、文で読むだけでも圧倒されます。しかし、2019年版ではなんとこの「チュードの儀式」が映像化されるのだそうです。2019年版の映画の見所については以下で考察いたします。

2019年映画化『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ではどんなところが見所になる?原作小説を比較して解説!

2019年公開となる『IT THE END』。2017年版の映画は、原作が大人時代と子供時代が交錯して描かれるのに対し、終始子供達の物語となるなどの変更はありましたが、基本的なストーリーは原作に近いものでした。

それは、2019年版でも同じで、大人になった子供達が登場するなどより原作に近いものを感じ取れるような作品となっています。たとえば、物語の最初に、前作から27年が経ち再びペニーワイズの出現を悟ったマイクがルーザーズ・クラブのメンバーを呼び戻すあたりなどは、とても原作に近い始まりです。

また、これまで映像化不可だった「チュードの儀式」が映像化されることでも話題になっています。なかなか衝撃的なものだということはすでにご紹介しましたが、俳優がどういうふうに演じるのかも注目ポイント。脚本家がこの儀式をとても重要なものとしており、俳優とともにどう仕上げたかが気になります。

もちろん前作に引き続き、ペニーワイズを演じるビル・スカルスガルドの怪演も気になるところです。

前作よりもさらに原作に近い『IT』の世界観を楽しめそうな『IT THE END』。しかし、それでも原作の衝撃さゆえに映像化できない部分はまだあるでしょう。

もちろん原作を読まずとも映画を楽しむことはできますが、原作と映画とを比べることでより楽しめる部分もあるので、ぜひ原作も合わせて読んでみてください。映像化されたからこその衝撃、映像化できないほどの原作ならではの衝撃、両方を感じることができるでしょう。

いかがでしたか? ホラーは興味あるけど映画を観る勇気がないという方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。そんな時は、まず原作を手に取ってみてはいかがでしょうか。小説なら、自分のペースで、怖くなったら途中で休憩を入れるなんてこともできるでしょう。もちろん文字だからこその恐怖もありますが……怖いからこそ覗いてみたいという方は、ぜひこれを機会に手を取ってみてください。

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