元No.1キャバ嬢の主人公が、裏方に回って故郷のキャバクラ店を盛り立て、日本一を目指すキャバクラ経営コメディ漫画、『ヒマチの嬢王』。今までのキャバ嬢漫画とは異なる、ドロドロさの少ない、爽快感のある作品です。 この記事ではそんな本作の見所を最新展開までご紹介!スマホの漫画アプリでも無料で読めます!
主人公のアヤネは、とある理由で東京から鳥取の実家に戻ってきて、日がな一日ぐうたら過ごしているニート。しかし見かねた母親にけしかけられて実家のスナックを手伝ったところ、一晩で大繁盛させてしまうほどの商才がありました。
実はアヤネこそ、日本随一の歓楽街・歌舞伎町のトップキャバクラ店でNo.1に登り詰めた伝説のキャバ嬢。地元に戻ってきても、そのノウハウは十分活用できるものだったのです。
そんな彼女の活躍を目の当たりにしたのが、アヤネの中学時代の同級生ジュン。自身の経営するキャバクラ「バードレディ」にあやねを引き入れようと画策します。
アヤネは彼からの誘いを頑なに断ります。しかし、親友のユリナがキャバ嬢に興味を持ってしまったことから、彼女の付き添いとして裏方で働く、という条件で仕事を引き受けることに。
やるからにはNo.1を目指すのがアヤネ流。彼女は地元はおろか、日本全国でのNo.1キャバクラ店を目指して、日々研鑽して店舗を盛り上げていくことになります。
本作は実在する鳥取県米子市の小さな歓楽街、ヒマチこと朝日町が舞台。東京ではなく地方での水商売という設定や、主人公がキャバ嬢ではなくボーイであること、経営について学べるなど、ドロドロとした展開が少なく楽しめる作品です。
作中でも町おこしが描かれますが、実際に2019年2月から3月まで米子市では『ヒマチの嬢王』コラボが行われたこともあります。
キャバ嬢にスポットを当てた作品は世の中にいくつかありますが、『ヒマチの嬢王』はキャバ嬢ではなくキャバクラの経営自体に焦点を当てた、ある種の経営漫画です。
その経営を一手に担うのが主人公のアヤネ。歌舞伎町のNo.1=事実上の日本最高のキャバ嬢だっただけあって、水商売のいろはが身に染みついています。
そんな彼女の縦横無尽の活躍は、非常に痛快。あまりにも経営手腕が見事なため、序盤でいきなり店長になってしまうほどです。
また、彼女が作中で語る水商売の鉄則、経営哲学はお見事としか言いようがありません。かなり実用的な内容なので、キャバクラ以外にも応用できそうなのが興味深いです。
また、キャバクラが舞台なだけあって、女性キャラ=キャバ嬢の美しさと可愛さは折り紙付き。キャバクラ未体験の人でも、キャバクラがどんな場所なのか、どう楽しむものなのかが分かるかもしれません。
本作は読むとためになる情報がいくつも出てきます。その中で特に役立つ経営哲学を3つピックアップしました。
まず1つめは、情報の分析と活用です。これは第7、8話で、閑古鳥の鳴いていた「バードレディ」にお客さんを呼ぶ際にアヤネが実演して見せました。
- 著者
- 茅原 クレセ
- 出版日
- 2018-11-19
キャバクラはどの店舗でも、キャバ嬢が一度遊んでくれたお客さんにメールなどで連絡して、再び来てもらうのが普通です(これを「営業」と言います)。
アヤネの手法はそこから一歩進んだもの。お客さんの来店頻度でランク付けを行い、交換した連絡先を利用して、SNSなどから顧客の個人情報を徹底的に収集します。その情報を分析した上で、来店パターンに照らし合わせ、最適なタイミングで営業することで客足を増加させるのです。
ただ闇雲に営業するのではなく、相手の望むものを先回りするのがポイント。こうすることで効率的かつ着実な客足増が見込めるのです。
ダイレクトマーケティングをしている人には特に応用できる学びがあるのではないでしょうか。
続いては認知度の向上です。作中で言う認知度とは、キャバクラ店「バードレディ」をいかに宣伝するかと言い換えてもよいでしょう。
アヤネはある時、店に来ていた顔見知りの酒屋店主が窮地に立たされていることを知ります。新酒でチャレンジをするために、人気の絵師にラベルを頼んでいたのですが連絡がつかなくなったというのです。
それを聞いたアヤネは、店の宣伝を兼ねて人気キャバ嬢の写真をラベルにするコラボを提案しました。しかもただ宣伝するだけでなく、大胆な秘策も盛り込むのです。
それは新酒を「バードレディ」に持ち込むと、60分無料で、さらにラベルのキャバ嬢の指名料なし、というものでした。格安新酒のコラボで店の認知度を上げて、この特典で来店を促すのがアヤネの狙いです。
この施策は無料特典で一時的に損失を出すもの。しかし認知度が上がって客層が増えれば、長い目で見て利益に繋がります。いわば「損して得取れ」の精神です。
客商売でお客さんは必須。固定客を得るために目先の利益は追わず、長期的な施策をうつという手法は非常にためになるのではないでしょうか。
アヤネは元歌舞伎町No.1キャバ嬢です。「バードレディ」の経営も上り調子ですが、決してそれに浮かれません。常に向上心を持って、新しいことに取り組んでいきます。
そんな彼女のもとに、新酒コラボの成功を見た地元商店街の店主達が、一斉に押し寄せるという事件が起きました。手を貸してほしいと口々に言う彼らを、アヤネは一喝します。自分でやろうとしない者に成功はないと。
「資金があるなら、金を出す。
もしくはひたすら考え抜いて、知恵を出す。
そのどちらもなければ動いて動いて、汗を出す…」
(『ヒマチの嬢王』2巻より引用)
アヤネは自発的に行動することを「出す」と表現しました。これはぜひ胸に刻んでおきたい名言ではないでしょうか。ただ頭で考えたり、口にするだけでなく、形に残るものに努力をアウトプットする=出す、と表現しています。
試行錯誤を繰り返し、前進しようとする意識こそ、成長に必要な要素。働くすべての人にとってハッとするような学びが得られる内容ではないでしょうか。
アヤネが店長となってから、「バードレディ」の売り上げは伸びていきましたが、一事が万事順調だったわけではありません。
ライバル店「サンライズ」と店舗の支配権をかけたイベント「ヒマチの嬢王決定戦」を行ったり、水商売にいい顔をしない米子市の地域推進部の介入があったり、さまざまな障害を乗り越えてきました。
- 著者
- 茅原 クレセ
- 出版日
- 2019-11-12
そんなある日、アヤネの歌舞伎町時代の裏方・津島が店を訪ねてきます。彼は新店舗を任されることになったこと、そこへアヤネをキャバ嬢として迎えたいことを申し出てきたのです。
3巻までは「バードレディ」を舞台とした話が主軸でした。4巻収録の話では一転して、アヤネの過去に焦点が当たります。主人公ながら謎の多い人物だったアヤネ。彼女が今ヒマチにいる理由は、下積みから現役時代にありました。
その過去で重要となるのは、先輩キャバ嬢・華咲(はなさき)サクラ。アヤネ、そしてサクラの立場や内面の変化は、夜の街特有のシリアスさのある展開。これまでコメディタッチだった展開とはひと味違ったドロドロさが楽しめます。
アヤネはなぜ歌舞伎町No.1を投げ捨てて故郷に戻ったのか?
津島との因縁がそれを明かしてくれます。
いかがでしたか? 本作は普段は知ることのできない、夜の街の裏事情やキャバクラの運営など、興味深い話をたっぷり楽しむことができます。