本を読んで何かを学びたいと思っても、まずどれを読めばよいのか迷ってしまうことはありませんか?そんな方のために、各分野のプロの方に「これだけは読んでおけ」という【必読本】を選定していただきました。今回のテーマは、苦手意識をもっている方も多いであろう「プレゼン」です。
はじめまして、株式会社 固 -KATAMARI-代表、プレゼンテーションクリエイターで書家の前田鎌利です。東京学芸大学を卒業後、株式会社光通信へ入社し、1日に100件を超える飛び込み営業を経験したことから私のプレゼンの道がスタートしました。
その後、J-PHONEに転職。その後Vodafoneにて経営戦略に携わり、コンサルティングファームとやりとりをしながら、プレゼン資料を多数作成するようになりました。2006年よりSoftbankにて営業、営業企画、営業推進、マーケティング、人事・研修、グループ会社役員、新規事業開発など多岐にわたって従事し、2010年に孫正義社長(現会長)から、ソフトバンクアカデミアという後継者育成機関の第1期生に選出され、事業提案などを行います。孫さんの資料作成にも参画し、プレゼン能力を磨いてきました。自分自身でも、これまで学んできたプレゼン術をはじめ、会議術やリーダーの意思決定などをまとめて書籍化しています。
今回は、そんな私からプレゼン術を学ぶために読んでおきたい「必読本」を紹介します。
皆さんは「プレゼン」にどんなイメージを抱いていますか?「資料作成」や、「人前で話す」などを思い浮かべる人が多いかもしれません。
私が考えるプレゼンは、「限られた時間の中で自分の伝えたいことを伝える」こと。ダラダラと説明するのではなく、必要な情報を絞って、イメージしやすく・わかりやすく伝えることが重要です。
話す技術は、あくまでプレゼンに必要な能力のひとつ。話し方だけ鍛えても、いいプレゼンにはなりません。パワーポイントでの資料作りも同じです。プレゼンの成功は、相手に伝わるだけでなく、「プレゼンの内容が決裁されて実際に動く」こと。つまり、プレゼンだけで「相手を納得して動かす」ことが求められるのです。
これを念頭に置いて、私が考えるプレゼンの成功に欠かせない3つの要素はこちらです。
これら3つの要素がなぜ重要なのかと、それぞれの力をつけるための必読本をご紹介します。
プレゼンをする前に「相手がどんなタイプで、どういったプレゼンを好むのか」を知っておかなければ、相手を動かすことはできません。プレゼンの成功は「プレゼンの内容が決裁されて実際に動く」こと。限られた時間で相手を動かすには、相手を知ってアプローチ方法を考える必要があります。
そんな時は、行動心理を知る本が役立ちます。今回ご紹介した本以外にも、相手を知るために心理学の本を読むのもよいですし、たとえば経営者にプレゼンをするならば、経営者が著した本を読むのもおすすめです。
- 著者
- ジョン・C・マクスウェル
- 出版日
- 2010-12-16
どんなコミュニケーションをとれば、どう動いてくれるのか、という行動真理を知れる本です。相手のタイプによって、どのようにアプローチを変えればいいのかがわかるはずです。
考えること、集めること、選ぶことの3つは、プレゼンのなかで最も時間がかかる事前準備です。プレゼンを成功させるためには、資料作成の時間をうまく短縮しながら、精度を高めることが重要。これからご紹介する本をうまく活用してみてください。
いいプレゼンには、提案内容に「核」があります。これがないと、ただダラダラと長いだけで身のないプレゼンになりかねません。ではどうすれば「核」がつくれるのか。それには、「何が課題か」「どこが原因なのか」をまず突き詰めて考えることが必要です。
ただ考え方にもコツがあります。効果的なのは、まずは課題を直感でジャッジし(右脳)、その後ロジカルな目線を取り入れて補完する(左脳)というプロセスを踏むことです。たとえば、AかBかの選択で「Aです」という決断をするのは直感。そこから「なぜAなのか」という理由をロジカルに補完していくという順番です。
最終的にプレゼンをする際は、相手に理屈だけでなく感情でも納得してもらえるように、直感的なストーリーに立ち戻ると(右脳)、相手を動かすプレゼンになるんです。また、ロジカルな理由からつくり出すと、時間が膨大にかかり、いつになっても終わりません。
このプロセスをとると、比較的間違いが少なくなります。経験的に、経営者たちの決断を見ても、この方法をとっている人が多い傾向ですね。
下記でご紹介する『右脳思考』では、私が行っているプレゼン思考とアプローチがほぼ同じ。右脳と左脳を行き来する、キャッチボールのような考え方が重要だと書かれています。
- 著者
- 内田和成
- 出版日
- 2018-12-26
内田先生はボストン・コンサルティング・グループで日本代表やシニア・アドバイザーを務められた方。第一線を走ってきた人が、ロジカル(左脳)だけでなく直感(右脳)も使って考えていること、左脳で補完しながら直感を正当化していく重要性を伝えてくれています。この方法を活用すれば、プレゼンでも「何が課題か」「どこが原因なのか」がわかるようになるはずです。
この本は内田先生の思考3部作の3冊目の本。「考え方」を磨くには、このシリーズの他の2冊も全部読んでほしいです。
仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
2006年03月31日
- 著者
- 内田 和成
- 出版日
- 2010-01-29
プレゼンに説得力をつけるためには、材料集めも重要です。効率的な検索と、統計などの外部データの活用が成否を分けます。「集める」の工程は非常に時間がかかるので、本をうまく活用して時短してほしいです。
- 著者
- 光成 章
- 出版日
- 2019-06-19
説得力のあるプレゼンにするためには「エビデンス」が必要だとして、どんなデータが必要なのかなど、具体的な方法が書いてあります。著者の光成さんは、グローバル企業でリサーチをされてきた方なので、実践的なTipsが載っているのが特徴です。
どう検索すれば自分が欲しいデータに早く辿り着けるかなど、すぐに活かせるテクニックがたくさん紹介されています。
資料作成の際に活用するイメージ写真や画像も、プレゼンの理解度を高めるために非常に重要。どういった写真が効果的なのか、相手がイメージしやすくなるようなものを適切に選ぶ必要があります。
- 著者
- 前田 鎌利
- 出版日
- 2019-03-21
手前味噌で恐縮ですが、この本ではどういった写真を選べば説得力のスライドになるか、膨大にある写真のなかからどのようなルールで検索すれば早くできるか、などの具体的な事例を載せています。すぐに真似できるものなので、ぜひうまく活用していただきたいです。
ここまでの事前準備にプラスして、プレゼンの本番を迎える時に必要なのが、「見せる・話す」力です。それぞれのポイントをご紹介します。
・見せる
プレゼンの説得力を増す方法として数字が必要。数字をどう見せると効果的なのか、文字はどう配置すると見やすいのかなど、相手の目線も意識したうえで考える配慮が大切です。
また余計な情報をどう削ぎ落とすかなど、強調したいポイントをわかりやすくすることも重要になってきます。
・話す
プレゼンは限られた時間で伝えなければならないため、話し方も重要です。声の大きさは「小さく始め、重要なところで大きくして、最後にまた小さくする」など、テクニックやボディランゲージのコツがあります。
必要な部分でいかに注目を集められるかを意識して話すだけで、大きく結果が変わってくるので、あなどれないポイントです。せっかくのプレゼン当日に失敗しないよう、おすすめの本で学んでいきましょう。
- 著者
- 久保 憂希也
- 出版日
- 2012-12-12
プレゼンの際にどう数字を見せればよいのかという、基本を網羅している本です。つい定性情報に偏ってしまう人でも、数字を活用するコツを押さえれば説得力のあるプレゼンにできるという事例を豊富に紹介してくれているので、一読しておくことをおすすめします。
- 著者
- 前田 鎌利
- 出版日
- 2015-07-31
- 著者
- 前田 鎌利
- 出版日
- 2016-02-19
社内・社外に向けてのプレゼンで「どう見せるか」は、上記の2冊で具体的なポイントを書いているので、参考にしていただけると嬉しいです。
- 著者
- 山口 周
- 出版日
- 2012-10-19
また、外資系の人には元マッキンゼーの山口さんの本がピッタリ。ロジカルなスライドの作り方と見せ方を網羅できるので、参考にしてみてください。
- 著者
- ["Kevin Carroll", "Bob Elliott"]
- 出版日
- 2015-01-26
プレゼンは、内容を理解してもらったうえで行動してもらわなくてはなりません。そのために意外と重要なのが、質疑応答です。話し方以上に、質疑応答でうまく答えられないとプレゼンは失敗に終わってしまうでしょう。
質問に答えられないとプレゼンの説得力が弱まるだけでなく、プレゼンした人への不信感や不安感が払拭できなくなります。そのため、プレゼンとして成り立たない状態に追い込まれてしまうのです。
この本は質疑応答でクロージングすることの重要性や注意すべきポイントなどを丁寧に解説してくれています。
Q:プレゼン自体が苦手な人へのアドバイスは?
A:30回の練習です。
人前で話すのは普段の会話とはまったく形式が違うため、練習と場数を踏むことでしか上達する方法がありません。「実は人前で話すのが苦手なんです……」という人に限って、3回くらいしか練習していないもの。本来は、自分で話す(3回)・他人に聞いてもらう(3回)・録画チェックをくり返し(3回)を3セットくらい繰り返してみてください。おおよそ30回くらいの練習が必要なものです。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどトップレベルの人でも、私たちが考えられないくらいの練習をしたからあんな魅力的なプレゼンができるようになっているのです。天才だからと片付けず、練習をして上達していきましょう。
また、待っていても人前で話せるチャンスはなかなか巡ってこないもの。もし70~80名などの大勢の前で話す機会があれば、迷わず取りにいくという姿勢が必要です。
Q:プレゼンのスキルを学ぶべきなのは、プレゼンの機会が多い経営者やマーケターでしょうか?
A:ビジネスパーソン、全員です。
基礎スキルとして、ビジネスパーソンがもっておくべき能力がプレゼンだと私は思っています。最初にお伝えした通り、「限られた時間しかない経営者に対して伝える時」も、「日常会話で自分の意見を伝える時」もプレゼンの一部だと思っています。
起業家であれば資金調達で銀行に交渉する、会社員がエンジニアに仕様を伝える、医者に症状を伝えるなど、どれも「限られた時間で自分が伝えたいことを伝える」プレゼンです。そう考えれば、正しい情報を的確かつ端的に伝えられるスキルは不可欠だと理解いただけるのではないでしょうか。
今後の時代を考えれば、伝えるスキルが高い人が勝つことは明白。仕事が会社ではなく個人に紐づき、皆が「誰と仕事したいか」を重視するようになってきています。また、海外の人と話す機会も増えるため、アイデンティティも含めて整理して話せるようになっていないと選ばれない個人になってしまう可能性もあります。
また、上司あるいは経営方針の変更によっても決裁ポイントが変わるため、自分のなかにどれだけ引き出しを増やせるかが、プレゼン能力の向上を左右します。読みやすいものからスタートし、定期的に自分に合うプレゼン術を学んでいっていただければ嬉しく思います。
プレゼンの本は本当にたくさんありますが、元をたどればほとんど同じ内容が書かれています。今回ご紹介した本以外でも、自分が読みやすい本=その時のあなたに必要な情報のはず。読みやすい本からでいいので、まずは読んで血肉にしていきましょう。
今回ご紹介したプレゼンの本を参考に、人を動かせるプレゼン術を身につけ、自分の思うキャリアを描いていってもらえれば嬉しいです。