私生活を綴ったエッセイおすすめ6選!いつ読んでも面白い作家たちの日常

更新:2019.12.5

こんなに面白い小説を書く人は、いったいどんな生活を送っているのだろう?こう思ったことはありませんか。そんな好奇心を満たしてくれるのがエッセイの醍醐味。作家の日常生活や素顔、価値観を知ることで、他の作品をまた違った角度から楽しめるようになるでしょう。この記事では、作家が私生活を綴ったおすすめのエッセイを紹介していきます。

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読まないと損!さくらももこの絶対笑えるおすすめエッセイ『もものかんづめ』

 

国民的アニメ「ちびまる子ちゃん」の原作者として有名なさくらももこのエッセイです。

それぞれのエピソードが面白いのはもちろん、まる子が唇の端を上げて嫌味を吐くがごとく、物事の本質を突いた痛烈な皮肉が見え隠れしていて、思わずニヤリとしてしまうでしょう。

著者
さくら ももこ
出版日
2001-03-16

 

1991年に刊行された、さくらももこの初めてのエッセイ。自身の少女時代を描いた「ちびまる子ちゃん」がアニメ化され、人気絶頂となった時期に書かれたこともあり、約200万部のミリオンセラーとなりました。

本作で書かれているのは、1980年代前半の高校時代から、漫画家としてデビューし、20代なかばで結婚するまで。16歳で水虫になってしまった話や、怪しげな健康食品売り場でのアルバイト経験、無駄な買い物話などが豊かな語彙力で記されています。

また、おなじみの家族にまつわるエピソードもたくさん。友蔵のモデルとなった実の祖父は、アニメのキャラクターとはまったく異なっていたなど、興味深く読むことができるでしょう。

小学生が読んでも大人が読んでも楽しめる、愉快な一冊。読んで損はありません。

大人の贅沢で憂鬱な生活を描いたエッセイ『泣く大人』

 

『泣かない子供』の刊行から5年。泣かない子供から泣く大人へと成長した江國香織のエッセイです。

身の回りで起きた日常を「雨が世界を冷やす夜」「男友達の部屋」「ほしいもののこと」「日ざしの匂いの、仄暗い場所」の4部構成で描いています。

著者
江國 香織
出版日

 

2001年に刊行された江國香織のエッセイです。東京出身の彼女は、エッセイストで俳人の江國滋を父にもち、文化的に非常に豊かな環境で育ちました。少女のような繊細な感性に、しなやかな強さが備わっていることが、文章の隅々から伝わってくるでしょう。

作中では、大人は本質的に泣く生き物だと定義されていますが、実際に泣いている大人が登場するわけではありません。朝から2時間も風呂にこもって小説を読み、家族や友人との時間を過ごし、深夜に書店めぐりに精を出します。あらゆるものを五感で感じとり、優しく世界を見つめ、幸福について考える日々を綴っているのです。大人が読んで楽しめる、珠玉の一冊だといえるでしょう。

2度の離婚・再婚をした高橋源一郎が書く『私生活』

 

本作のもとになる連載をしているわずか5年の間に、2度の離婚と2度の結婚をした髙橋源一郎。「死ぬかと思った」と感想を漏らしています。

自堕落でスキャンダラスな香りがしますが、雑多な日常を綴った文章から感じられるのは、あふれんばかりの知性と好奇心です。

著者
高橋 源一郎
出版日
2004-02-05

 

2004年に刊行された高橋源一郎のエッセイです。1999年から2003年まで「月刊PLAYBOY」に連載されていました。

連載開始年に、3人目の妻と離婚し、年内に4人目の妻と再婚。その2年後に離婚、さらに2年後に再婚……ダメな男の典型のような経歴に驚いてしまいます。しかしタイトルや帯に反して作中で語られるのは、純文学や漫画についての論考、さらには音楽やワイン、旅、映画、競馬についてなど何気ない私生活です。

本当のことを言いたいけれど言えないからその周辺のことを書く……という暗示が作者らしく、ヘビーな離婚と再婚劇は日常のなかに紛れ込んで、ふとした瞬間に浮かび上がってはまた消えていきます。

ポストモダン文学を代表する、自由で尖った作品を数多く手掛けてきた彼の頭のなかを覗いてみてください。

歌人・穂村弘の情けなさすぎる独身時代を描いたエッセイ『世界音痴』

 

世界から隔てられた者、世界音痴。普通の人が当たり前にしていることができず、世界から置き去りにされていきます。

あんぱんや寿司、恋愛など、ごく身近な物事を、自分自身への葛藤と交えて綴ります。

著者
穂村 弘
出版日
2009-10-06

 

2002年に刊行された、現代短歌を代表する歌人、穂村弘の初めてのエッセイです。

当時39歳で独身の会社員だった穂村。総務課長へ出世しますが、ダメ人間っぷりは変わりません。夜中にベッドの上で菓子パンを食べ、かつての恋人をインターネットで検索し、寿司屋での注文は無視され、自己啓発本でなれない自分を目指す……ちなみに親と同居です。

不器用で、少し痛くて、でも純粋な作者。読み進めるにつれて、些細なことで感情を揺さぶられすぎるその繊細さがあるからこそ、作品を生み出し続けられるのかもしれないと妙な納得感を得てしまいます。それぞれのエピソードの結びに添えられた短歌はやはり秀逸。面白いのに悲哀を感じる、すべての世界音痴への優しさにあふれた一冊です。

ピース・又吉の感性と妄想が、東京の風景と混ざりあうエッセイ『東京百景』

 

阿佐ヶ谷、池尻大橋、高尾山、羽田空港、東京タワー、ルミネtheよしもと……。

東京にある100の地名や名所、施設をタイトルにして、その土地にまつわる作者の思いを綴った作品です。

著者
又吉 直樹
出版日
2013-08-26

 

2013年に刊行された、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹のエッセイです。

芸人を目指して18歳で大阪から上京した又吉。100の物語を書き終えた時には、32歳になっていました。その間に彼が見た東京の風景が、時に空想的に、時に文学的に、時にユーモラスに語られていきます。

芸人として成功する前の野望と苦悩、失恋した女性への妄想、拗らせた自意識と劣等感。放たれる圧倒的な個性が東京の風景と混ざりあい、もの悲しいけれどどこか懐かしく、読んでいるとあたたかい気持ちになれるでしょう。

又吉のもつ独特の視点を疑似体験することができる一冊。小説『火花』や『劇場』に通じるエピソードも入っていて興味深いです。

大人の新婚生活を綴ったおすすめエッセイ『東京の夫婦』

 

福岡出身の51歳の作者が再婚したのは、茨城出身で31歳の一般女性でした。

地方から出てきた人が東京で出会い、夫婦になる……東京では、出会うはずのない2人が出会い、家族になります。生まれ故郷ではない場所での生活を綴ったエッセイです。

著者
松尾スズキ
出版日
2017-08-10

 

2017年に刊行された松尾スズキのエッセイです。俳優、脚本家、映画監督としてマルチな才能を発揮する作者。女性ファッション誌での連載を頼まれた際、おしゃれな街の代名詞として有名な代官山に住んでいたため、彼女との生活を書こうと思ったそうです。

箱入り娘だった妻の話をメインに、元妻や過去の同棲相手、親の介護の話など、かなり赤裸々に綴っている印象を受けるでしょう。再婚に踏み切った理由、子どもはもたないと決めた理由、いずれひとりになる妻への思いなど1歩踏み込んだ内容も語られます。

そんな文章から感じられるのは、愛する人を想う松尾の圧倒的な優しさです。夫婦や家族についても、あらためて思いを巡らせることができるでしょう。

エッセイを読むと、作家たちがごく当たり前の日常のなかでいかに鋭いアンテナを張り巡らせているのかを実感できます。好きな小説家がいたら、その人のエッセイを手に取ってみると新たな発見があるでしょう。

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