5分でわかる労働三権と労働三法!公務員が認められない理由など簡単に解説!

更新:2021.11.20

日本国憲法には、「働く人の権利を保障し、そのために法律を定める」旨が記されています。この記事では、憲法で認められている「労働三権」や「労働三法」、そして公務員に例外規定があることなどをわかりやすく解説していきます。

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労働三権とは。労働基本権で保障されている権利

 

労働者が労働組合を作ったり、加入したりする権利である「団結権」、労働者が賃金など労働条件の改善を求めて使用者と交渉する権利である「団体交渉権」、要求を実現するためにストライキなどをおこなう権利である「団体行動権」の3つをまとめて、「労働三権」といいます。

「労働三権」は、労働者の待遇を保障するための重要な権利です。これらが保障されてはじめて、使用者より弱い立場になりがちな労働者の地位を守ることが可能になります。

労働について、日本国憲法は第27条と第28条で次のように述べています。

第27条では

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
児童は、これを酷使してはならない。

第28条では

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

とあります。

第27条に記されているように、私たち国民にとって、仕事を通じて自己実現を図ることは、義務であると同時に権利でもあります。そして国は、労働者の勤労条件について法律で基準を定めることが求められています。そのうえで第28条にて、「労働三権」が保障されているのです。

このように日本では、憲法によって労働に関する各種の権利が保障されています。この権利のことを「労働基本権」と呼び、「労働三権」は「労働基本権」に含まれる権利のなかでも、労働者の地位を守るうえで重要な役割を担っているといえるでしょう。

労働三権の具体的な内容をわかりやすく解説

 

では「労働三権」の内容について、より具体的に解説していきます。

まずは、労働者が労働組合を作ったり、加入したりする権利を保障した「団結権」です。

一般的に労働者と使用者では、雇用関係の影響で使用者の立場が強くなりがち。そのため個々の労働者が、使用者と対等の関係で交渉することは困難です。そこで労働者側は、対等に使用者と交渉するために労働組合を組織して団結する必要があります。

日本では憲法第28条で、労働者が労働組合を結成する権利を保障し、後述する「労働組合法」によってさまざまな権限を認めています。

労働組合が実際に使用者と交渉する際に重要になるのが、「団体交渉権」です。

労働組合が結成されても、使用者に交渉する意思がなければ実効性はありません。そのため「労働組合法」では、使用者が正当な理由なく労働組合との交渉を拒むことを「不当労働行為」として禁じています。そのうえで労働組合に、賃金や雇用関係について使用者と交渉すること、文書などで取り決めを交わすことを「団体交渉権」として保障しているのです。

最後は、要求を実現するためにストライキなどをおこなう権利である「団体行動権」です。

ここまで説明してきたように、日本の労働者には正当な形で使用者と交渉する権利がありますが、実際に交渉がおこなわれた結果、時として労働者側と使用者側とで主張が食い違うことがあります。その際に労働者側が要求を実現するための対抗手段として、集団で仕事を放棄するストライキなどをおこなう権利を保障したものです。

通常、労働者が仕事を放棄して損害が生じた場合、使用者は損害賠償請求や解雇をすることができます。ただ労働者側が交渉するための正当な行為は法的に保護されていて、損害賠償請求や解雇がされないようになっているのです。

このように「団体行動権」は、労働者側が要求を実現するために「争う」権利を認めているもの。「争議権」と呼ばれることもあります。

ただし、ストライキなどが実際におこなわれると、社会におよぼす影響も甚大です。そのため「団体行動権」の行使には一定の制限がかけられていて、特に公務員は「団体行動権」を行使することが禁じられています。

労働三法とは。具体的な内容をわかりやすく解説

 

労働者を守るために必要不可欠な「労働三権」を保障する法律を、「労働三法」といいます。「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」をまとめた名称で、労働者の権利を守るための法律のなかでも、もっとも重要なものとして位置付けられています。

まず「労働基準法」は、名前のとおり労働時間や休日など、労働条件に関する最低基準を定めたものです。

法定労働時間として「1日8時間、週40時間」以下を基準とし、これを超過する労働は労使間で「36協定」を結ぶ必要があること、さらに「時間外労働」や「休日労働」として残業代を支払う必要があるとしています。

次に「労働組合法」は、労働組合の行動を法的に認めつつ、その活動を妨害することを「不当労働行為」として禁じています。「労働三権」を保障するうえで、大きな役割を果たしている法律です。

そして「労働関係調整法」は、労使間の対立を未然に防ぐほか、対立が深刻になった際に解決するための手続きを定めた法律です。具体的には、国や地方公共団体が設置した労働委員会が必要に応じて「斡旋」「調停」「仲裁」「緊急調整」などの手段で労使間の公正な調整ができるようにしています。

労働三権が公務員に認められない理由とは

 

「労働三権」は憲法で保障された権利ですが、公務員には制約がかけられています。警察官、自衛隊員、消防職員、刑務所職員、海上保安庁職員は、三権すべてを行使することができません。またそれ以外の公務員も「団体行動権」を行使することは認められていないのです。

「労働三権」が公務員に認められないようになったきっかけは、戦後の混乱と、冷戦にあります。

もともと戦前の日本では、労働者の権利は保障されているとは言い難く、待遇は劣悪でした。敗戦後の1945年から1947年にかけて、GHQによる戦後改革の一環として「労働三法」がそれぞれ制定されます。

その一方で、戦後復興の過程で急速なインフレが発生。多くの人々が賃上げを要求し、1947年2月1日には全国的な規模の「ゼネラル・ストライキ」が実施されることになっていました。当時は公務員に「労働三権」の制約がかけられていなかったので、国鉄職員なども参加することになっていましたが、GHQのマッカーサーが中止を決定、ストライキは実施されなかったのです。

冷戦が深刻化し、アメリカは日本を「反共の防波堤」として資本主義陣営の一員に加えようと考えていた時期。大々的なストライキをきっかけに、日本で共産化が進むことを警戒していたといわれています。

その後マッカーサーは、芦田均内閣に公務員のストライキを禁止するよう指示。1948年に公布された「政令201号」によって、公務員のストライキが禁止されることになったのです。

労働三権や労働三法を、働き方改革を踏まえつつ解説した本

著者
向井 蘭
出版日
2019-03-14

 

2019年3月に刊行され、「働き方改革法」にも対応している作品です。

「労働三権」や、それを保障する「労働三法」などの労働法が、企業のどのような行為を認め、どのような行為を禁じているのかを、使用者側の視点に立って解説しています。専門用語がほとんど使われておらず、初心者でもわかりやすいのが魅力でしょう。

各種のハラスメント対策や同一労働同一賃金の原則など、さまざまなルールが改定されていますが、変化を理解することは、使用者側だけでなく権利を行使する労働者側にとっても大切なこと。基本的な事項から最新の動向まで、労働環境に関する必要な情報を幅広くおさえてくれている一冊です。

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