75歳でオタクに目覚めました。『メタモルフォーゼの縁側』は、生きるのが少し楽しくなる漫画

更新:2019.12.17 作成:2019.12.17

75歳の主人公・市野井雪は、意図せず出会ったBL漫画の魅力にのめり込み、人生が少し明るく変化していきます。 BL好きはもちろん、なにかしらの趣味を持つ人はきっと共感できる作品です。加えて、趣味が特にない人にこそ読んでほしい作品でもあります。自分も今すぐ、夢中になれるなにかを見つけたくなることでしょう。そんな本作の魅力をご紹介します。

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目次

『メタモルフォーゼの縁側』は「このマンガがすごい!2019 オンナ編」で第1位を受賞!まずはあらすじから

本作は、「このマンガがすごい!2019 オンナ編」で第1位に選ばれ、なんと「このマンガがすごい!2020 オンナ編」にもランクインしました。

本作は、主人公がBL漫画にハマっていくというストーリー。BLを自分の好きなことに置き換えれば、趣味のある人生の素晴らしさを感じ取れる作品となっています。幅広い読者に届く内容であることが評価されたのでしょう。

それではまず、本作のあらすじをご紹介します。

2年前に亡くした夫とよく通っていた喫茶店を久しぶりに訪れるも、すでに閉店。雪は時の経過に、もの寂しさを感じます。ふと向かい側の本屋に入り、目についた本を何気なく買って帰るのですが、家で開いてみるとそれはBL漫画でした。

『メタモルフォーゼの縁側』1巻

その漫画にときめきを覚えた雪は、続きを求めて再び本屋を訪れ、書店員である女子高生・うららとも知り合います。うららも密かにBLが好きであり、その共通の趣味をきっかけに2人は好きなことを語り合う関係となっていくのです。

こうして、75歳にして新たな楽しみを見つけた雪。彼女の人生がどう変わっていくのか、ほっこりとした画風で丁寧に描写されているのが本作品です。

魅力1・BLに目覚めた主人公はなんと75歳!

本作の1番の特徴は、主人公が高齢者であるということ。年を取ることに対してネガティブな感情を持っている人は、「年を取るのも悪くないな」というふうに価値観が変わるでしょう。

歩くのに疲れてしまったり、かぼちゃが硬くて切れなかったりと、75歳らしいリアルな描写が見られます。しかし身なりを小綺麗に保ち、立ち振る舞いも上品な雪は、可愛らしく、時にかっこいい人物としても描かれています。

著者
鶴谷 香央理
出版日
2018-05-08

そんな彼女は、偶然手に取ったBL漫画にハマっていきます。1巻を読み終えると続きが気になり、翌日には本屋に出向いていました。そして在庫の取り寄せまで行うのです。

高齢者にとって、そこまでするのは想像以上に労力のかかる行為のはず……彼女がどれほどBLにのめり込んだのかが読み取れます。

その後も、スピンオフ作品を買うため、朝から並んだ同人誌販売会で歩けなくなってしまったり、QRコードでダウンロードする特典のため、買い替えたスマートフォンの操作に苦戦したり。

年齢の壁をものともせず、好きなモノを追いかける雪。本人にとってはそれ以上に生き甲斐となるものに出会えたのです。

主人公のこのような姿を見ていると、趣味を見つけるのに、遅すぎるということはないのだなと思えてきます。年齢を理由に、「今さら始めるなんて……」と諦めてしまっている人は、この漫画を読んで考え直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

魅力2・58歳差のオタク友達ができた!好きなものを語り合える、それだけで楽しい

本作には、雪のほか、もう1人主人公のような役割の登場人物がいます。雪がBLを買った時に接客した、書店員の女子高生・うららです。

おばあちゃんと孫くらい年が離れていることに最初は迷いもある2人ですが、飲食店にて共通の趣味であるBLについて話すと打ち解けます。しだいに、雪がうららを家に招き、本を貸し借りしたり、漫画のイベントがあれば一緒に出向いたりする友達になっていきます。

2人はBLについてはとことん熱く語り合うほど仲良くなるものの、実はお互いのプライベートなことはあまり話しません。表情や言葉から、相手のその日の気分も、聞きたいけど聞けない過去も、想像し合う関係です。

好きなものが好き同士であるという以上に踏み込まないことで、お互いへの思いやりや尊敬をより一層感じます。その絶妙な距離感も、本作の味わいとなっており、こんな友達がいたらいいなあと思わされるのです。

内向的な性格のうららにとって、雪は初めてであり唯一BLを語り合える存在でした。この出会いがきっかけで、うららは「漫画を描きたい」という自分の気持ちに正直になっていくのです。

雪にとっては、彼女を応援するのもまた喜びです。今後の展開に期待できるポイントとなっています。

次のページでは、本作から学べる「楽しく生きるコツ」について紹介します。

著者
鶴谷 香央理
出版日
2018-05-08

魅力3・長生きの秘訣は好奇心?

人生100年と言われる時代、できれば雪のように楽しく長生きしたいと思うものです。

しかし、夢中になれるものがあるのは羨ましいけど、自分にはなかなか見つからないと思っている方もいるかもしれません。実は小さな心がけしだいで、意外な趣味と出会えるのです。

そんな方のためにも、雪の暮らしから学べる、好きなものに出会える秘訣を考察していきましょう。

雪が料理をするシーンは本作に頻繁に登場します。レシピ本を見て試行錯誤したり、「タラの芽」や「コシアブラ」といった季節を感じる食材を天ぷらにしたり。食卓を彩る食器や、柄の美しいはぎれまでも大切に保管して、ここぞという時に活用するという暮らし上手ぶり。

また、うららと初めて行ったファミレスで、隣のテーブルに運ばれてきた大きなパンケーキを見て同じものを頼んでみるシーンも。若者向けだから、と敬遠せずに手を伸ばしてみる姿は、BLを好きになった経緯と似ています。

『メタモルフォーゼの縁側』1巻

このように、雪は彩りある暮らしを楽しんだり、なんにでも興味を持って受け入れる性格の人物です。それが何歳になっても、心をときめかせるものに出会える秘訣なのではないでしょうか。

『メタモルフォーゼの縁側』から学べること

すでに夢中になれる趣味がある人には、非常に共感できる漫画です。そうでない人にも「新しい楽しみに出会うことは何歳になってもできる」と気付ける作品です。

「いつもと同じでいいや」ではなく、1日1日を丁寧に生きることで得られる充足感。雪を見ていると、そんなメッセージを受け取ることができます。

【おまけ】『メタモルフォーゼの縁側』タイトルの意味とは?

『メタモルフォーゼの縁側』というタイトルの意味が気になるという人も多いでしょう。実は、作者がある曲からインスピレーションを受けたのだとか。

その曲は、「けもの」というバンドの『めたもるセブン』。確かに、「そろそろ自分のこと/愛してみませんか」という最後の歌詞には、うららや雪の状況にも通ずる考え方を感じられます。

曲を聴いて、他にもこの作品と共通する点を探してみてはいかがでしょうか。

著者
鶴谷 香央理
出版日
2020-02-10

もっと作品のことを知りたいという方へ。KADOKAWAのメタモルフォーゼの縁側公式サイトでは、作品のPVが公開されています。ラッパーのライムスター 宇多丸や声優の梶裕貴の推薦コメントも見ることができます。

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