仕事を愛する女性におくりたい5冊

更新:2021.12.6

毎日の通勤電車、効きすぎる冷房、一日に何杯も淹れるコーヒーと数え切れないため息。日々、いきどおりを感じたり、落ち込んだり。それでも誰かに喜んでもらえたとき、笑顔に触れたとき、今まで知らなかった自分に出会えたとき、達成感に救われたとき、思う。「だから仕事がすき」 そんな仕事を愛する女性たちだからこそ、共感したり、じんわり心に響く言葉が見つかるかもしれません。きっと納得できるなにかが見つかるかもしれない。そんな人生のあかるい光になるような5冊を選びました。

ブックカルテ リンク

あたたかくて強い言葉の力に包まれて考える

著者
志村 ふくみ
出版日
2010-01-21

この本は、人間国宝であり、染色家・随筆家である著者の言葉が綴られた一冊です。人生の流れのなかで磨き上げられた著者の言葉の清冽で凛とした輝きが、読者の心のなかに潤いをもたらしてくれるよう。

著者は30歳を過ぎてから本格的に染色の道へと踏み込みました。離婚に、子育て。決して平坦ではなかった日々を自分の手で美しい色に染め上げる女の強さに、心の芯を奮わせられます。

「線の向こうに去ってゆくいとしいものがあっても、それをしなくては、新しい色はやってこない」

仕事でも、日々の生活のなかでも、踏み出さなければいけないときがあります。著者の言葉は優しいけれど大きな力強さであなたを抱きしめ、背中を押してくれることと思います。
 

異国の地でつきすすむ女性の強さと美しさに触れて

著者
向田麻衣
出版日
2014-07-30

Lalitpur(ラリトプール)というネパール産のオーガニックスキンケアブランドの会社を経営する著者。Coffret Project(コフレ・プロジェクト)という化粧のワークショップで、女性の自尊心を育むプロジェクトも行っています。

著者は15歳のとき、ネパールと運命的な出会いを果たし、今の仕事への道がスタートしました。ネパールの人々や文化の中で仕事をするというのはもちろん容易いことではありません。著者の苦悩が本の中からも伝わってきます。当たり前が当たり前ではないということ。だけど、著者はネパールを愛しています。

女性は“美しくなる”ことで高揚し、心が豊かになる生き物。実際、忙しい日常のなかでも、きちんとメイクをし、好きなお洋服に袖を通せばきりりとした気持ちになって、一日のはじまりを実感できるから不思議です。


「物事を正しく見ることは難しい。 それでも、相手の文脈にできる限り寄り添いたいと思う。それらの文脈にはいつもその国の人々の祈りの対象が含まれる。そこに心を砕かずして何ができるだろう。」

世界を旅するなかで、空を見上げ、自分を見つめ、彼女は考えます。会社を背負い、自分の道を進むひたむきな姿に、仕事をするおなじ女性として刺激されずにはいられません。
 

おいしいものはいつでも心に寄り添ってくれる

著者
高山 なおみ
出版日

著者であり、料理家の高山なおみさんが、まだ料理家になる前の、料理と本が大好きな女の子だったときのエピソード。羽ばたく前の、不安で、頼りなくて、だけど努力を積み重ねていたあの頃のお話です。

高山さんがアルバイトをしていた喫茶店に行ってみたくて仕方ありません。美味しくてあたたかい紅茶やコーヒーの香りに包まれながら、ボウルをかき混ぜ、卵を割り、粉をふるって季節の果物や木の実を使ったケーキを作る毎日。高山さんの身体にレシピが刻み込まれていきます。

休憩時間にはストーブにあたりながら本棚の童話集を読みふけったり、お店のマスター夫婦ととりとめのない、でもあたたかな会話を交わしながら、料理家高山なおみが少しずつ形づくられていきます。

お父さんが入院したり、自信を失って落ち込んだり、そんなときでもいつも美味しい食べ物に助けられ、誰かの笑顔や言葉に励まされる。その姿は『耳をすませば』の雫ちゃんのようで、真っ直ぐ夢を追う著者の文章は、まるでとろりとして滋味にあふれたあたたかなスープのようです。
 

スーパーウーマンの残した宝石のような言葉たち

著者
高野 てるみ
出版日
2012-02-03

歳を重ねるごとに“たしなみ”について考えることが増えました。自由奔放で、破天荒な少女はとっても魅力的だけど、もう、自分は少女ではなくなってしまったのです。けれどそれはネガティヴなことなんかではなくて、むしろなんて素敵なことなのでしょうか。

エレガントな美的感覚は、生まれ持ったものではなく、たしなみで身につけることのできるものです。自分のありたい女性の姿を想像して、日々の触れるコップの持ち方、言葉遣い、読む本…あらゆることが美しい女性を作り上げることに気がつきました。

ココ・シャネルは美意識がずば抜けて高く、そして自分の魅力をわかっている女性だったと思います。女性たちの自立の大切さをファッションを通じて諭し、まったく新しい形のエレガントを作り上げました。そんな女性の語る言葉はやはり力強く、女性進出の活発になった現代に生きる私たちの胸にも鮮烈に刺さります。

「20歳の顔は自然から授かったもの。30歳の顔は自分の生き様。だけど50歳の顔にはあなたの価値がにじみ出る」

鏡に自分の顔を映して、見つめなおしてみたくなる言葉です。

しみじみ感じる女友だちとわたしのくらし

著者
益田 ミリ
出版日
2012-04-12

ある日思い立って田舎で暮らし始めた翻訳家の早川さん。週末になると、経理部ひとすじ14年のマユミちゃんと旅行代理店勤務の せっちゃんが訪ねてくるようになりました。

畑をもって自給自足なんていう力の入ったスローライフとはまたちょっと違う、もっとお気軽でいい加減な田舎暮らしは登場人物3人の心をほんのちょっとずつ変えていきます。
山の中でみんなですするカップラーメンの美味しそうなこと!

カヌーを乗り回してふざけあううちに、いろんなしがらみや悩みも遠く離れていって、いつの間にかすっきりおだやかな気持ちになれるのです。大げさかもしれないけれど、本来の自分を取り戻す、とはこんな感じかもしれません。

こんな暮らしもいいよね。と、素直に頷け、肩の力も抜けていくゆるゆる漫画です。
 

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