スポーツメンタルコーチ鈴木颯人が教える、結果を出すメンタルをつくるための【必読本】

スポーツメンタルコーチ鈴木颯人が教える、結果を出すメンタルをつくるための【必読本】

更新:2021.11.21

本を読んで何かを学びたいと思っても、まずどれを読めばよいのか迷ってしまうことはありませんか?そんな方のために、各分野のプロの方に「これだけは読んでおけ」という【必読本】を選定していただきました。今回は、結果を出すメンタルをつくるための必読本です。 結果を出す、継続する、後回しにしない……わかってはいても、どれも簡単にはできないもの。メンタル維持に悩んでいる人はぜひ読んでみてください。

ブックカルテ リンク

はじめまして。一般社団法人「日本スポーツメンタルコーチ協会」の代表理事、スポーツメンタルコーチをしている鈴木颯人(すずきはやと)と申します。

この仕事に就いたきっかけは、私自身が野球のスポーツ推薦で強豪校に入学したものの、思うような結果が出ないまま引退したという苦い経験があったから。

「なぜ能力を発揮できなかったのか」その理由を明確にするために脳科学や心理学を学び、独自のノウハウを構築しました。そのノウハウを生かした「スポーツメンタルコーチング」を数々のトップアスリートに提供しています。

今回は、望む結果を出すためのメンタルをつくる必読本を紹介します。アスリートだけでなく、ビジネスマンにも役立つポイントが詰まっているので、ぜひ参考にしてみてください。

スポーツメンタルコーチとは?

スポーツメンタルコーチという仕事をしているため、メンタルに関する悩みをよく聞きます。「コーチ」と聞くと「教える」「鍛える」仕事だと思う人がいるのですが、それは「ティーチング」や「トレーニング」。決まった情報を伝えて終わりのケースが多いかと思います。

私が行っている「メンタルコーチング」は「メンタル面を導く」という意味であり、本人が無意識にもっている答えを、メンタルコーチが質問しながら引き出し、変化を起こす仕事です。そのため、悩みを深く聞き出すことが多いです。

目標設定は正確に

スポーツメンタルコーチを利用する方が持っている悩みは、大きく分けて2つあります。

ひとつは、目標に関すること

目標設定はできるけれど、具体的に落とし込めていない、目標が自分でコントロールできるものになっていない、他人から言われたことを自分の目標にしてしまっている、などの問題があります。

とある選手は、当初「シーズン中に60試合投げる」という目標をたてていました。しかし試合に出るか出ないかは、自分でコントロールできるものではありません。そこで目標を、「課題だったフォークボールを投げきる」に変更。この目標に向かって努力をした結果、フォークボールを操れるようになり、結果的に60試合投げられるようになっていたのです。

義務教育で目標の立て方を習っていないので仕方ないのですが、誤った目標をたてると、かえってしんどくなり、目標から遠ざかってしまう人がほとんど。うまくいかずに自信がなくなると、なおさら結果が出づらくなってしまうのです。

目標設定に関する必読本

著者
本田 直之
出版日
2007-06-29

本書でいう「レバレッジ」とは、少ない労力で多くの成果をあげるということ。「労力」「時間」「知識」「人脈」という4つのテーマに分けて、自己投資を効率化する方法を教えてくれています。

大切なのは、明確な目標を設定して、その目標に達するために自己投資の時間を確保する こと。結果に繋がらない行動はしないということです。

ビジネスシーンではもちろん、日常生活に生かす方法も教えてくれているので、どんな人でも手に取りやすいはず。努力をしているはずなのに成果があがらないと思っている人におすすめです。

結果にふさわしいメンタルをもとう

もうひとつの悩みが、緊張してしまう、自信が持てない、モチベーションが維持できないなどの精神面に関することです。

特にコーチングで改善に時間がかかるのは、ネガティブなままの人。そうならないために「金メダルノート」というのものを実践しています。小さなノートに1日1個、幸せだったことや感謝したことなどを書いてもらい、自分の頑張りを客観視できるようにすると、徐々に「自己効力感」が戻ってきます。

小さな目標(マイルストーン)を作って、達成し、前に進んでいると感じてもらうことが重要。結果よりも重要なのは、結果にふさわしいメンタルを先に手に入れることなのです。

たとえばイチロー選手で考えてみましょう。日米通算4000本安打を達成したから継続するメンタルをもっているのではなく、継続するメンタルがあったからこそ4000本安打を達成しました。結果が出てからメンタルがついてきたわけではなく、結果にふさわしいメンタルをもっていたからこそ生まれた、必然的な結果なんです。

結果にふさわしいメンタルをもつための必読本

著者
鈴木颯人
出版日
2019-03-20

自分を認められないと自己否定に入ってしまい、いつまでも結果が出ない状態から抜け出せなくなってしまいます。アスリートにも弱気な人はいますが、無理やり強くならなくても大丈夫。これも「強気になったほうがいい」という思い込みです。弱気の自分を受け入れれば、自分がすべきことが明確になって結果が出るようになる、アスリートの金言を集めた本です。

著者
中澤 佑二
出版日
2014-04-04

中澤選手自身が「下手くそ」だったと語る無名の状態から、サッカー日本代表の主将になり、そして36歳まで現役でプレーし続けられた理由に迫った本です。壁の乗り越え方に悩んでいる人にぜひ読んでほしいですね。

すべては“思い込み”を壊すことから始まる

緊張してしまう、自信が持てない、モチベーションが維持できない状態というのは、過去の記憶や経験の積み重ねで“思い込みのフタ”があるため、能力を発揮できなくなっている状態です。

まずは誤った思い込みをしていることに気付き、壊して、手放す必要があります。そのために会話のなかで問いかけをしながら誤った思い込みを壊していきます。

たとえば「自信は10点満点中どれくらい?」と質問をして、低い点数が出てくれば自信がないとわかりますよね。その後、

「どうして自信がない?」→「試合で結果が残せていないから」↙
「どうして結果が残せない?」→「緊張しちゃうから」↙
「どうして緊張しちゃう?」→「結果が出ないと怒られるから」

このように問いかけをしていくと、何が邪魔をしているのかが明確になります。

過去の記憶や経験の積み重ねで、価値観が思い込みに変わってしまい、能力を発揮できなくなっていることがほとんど。次のステップで、「こんな気づきがあったけど、今後どうなっていくと思う?」と問いかけると、すでに本人のなかに答えが出ている場合が多いのです。

モチベーションの維持に関しても、「モチベーションが下がる」という思い込みがあるせいで低下している場合がほとんど。自分で自分にフタをしているだけなので、その思い込みを払拭していきます。

過去にいい結果を出してきた経験がある人ほど自分に求める基準が厳しくなるため、調子が良かった時が嘘のように一気にダメになるもの。ある一定の水準を下回るとにわかにチャレンジをしなくなり、成長が止まります。これも「ダメな自分を受け入れたくない」という思い込みなんです。

思い込みを心理学的マネジメントで手放す必読本

ここまで説明してきた思い込みを、心理学的マネジメントによって手放すことができれば、自然と結果がついてきます。ご紹介する本は、アスリートだけでなくビジネスマンもすぐに使えるポイントがたくさんあるので、ぜひ活用してみてください。

著者
岩出 雅之
出版日
2018-03-01

帝京大学のラグビー部を「全国大学ラグビー選手権」9連覇に導いた、岩出雅之監督。大学の部活は選手が毎年入れ替わるため、結果を出し続けるのが特に難しいといわれています。

選手が刷新しているのに結果が出ている、つまり仕組みがしっかりと作りあげられているということ。しかも個人ではなくチーム競技でできるのは、本当にすごいと思います。

この本では、実践者として理論に裏付けされた結果を示してくれています。世の中で売られているメンタル系の本は、ノウハウはたくさん載っていても、実践して裏付けされた結果がないことがほとんど。管理職の方にも役立つ情報が多いのではないでしょうか。

著者
キャロル・S・ドゥエック
出版日
2016-01-15

岩出監督の本のなかでも参考書籍として出てきたもの。これを読んで個人的に感じたのは、日本に「叱責する」マネジメントが多いのは、敗戦後に這い上がってきた=成功したという経験が続いてしまっているだけなのではないかということ。生まれつき成功マインドを持っていなくても、アプローチ次第で変えていけると教えてくれています。

著者
鈴木 颯人
出版日
2018-01-22

私の本でも、思い込みでガチガチになってしまっている状態をどのように変えていったのか、具体的な方法をご紹介しています。ビジネスマンの皆さんも、目標がわからなくなった、自信がない、モチベーションを維持できないなどのお悩みを抱えているはず。ここ一番!というときに結果が出せるようなノウハウを結集しています。

たとえば卓球の森薗美咲選手。石川佳純選手と同期の選手です。

森薗選手は、2014年、リオデジャネイロオリンピックに参加することを目標にしていました。すると、その年に世界ランクを日本で5番目の25位まで上げ、2つのワールドツアーで準優勝、日本卓球リーグプレーオフではチームを優勝に導いたのです。

しかし同年、平野美宇選手や伊藤美誠選手などの若手も台頭し、オリンピックに出場するこてはできませんでした。当初彼女は、この結果に戸惑い、落ち込んでいました。

「若手がたくさん出てくる中で、自分は若手ではなくなってきていて、そういう中で結果を出さないと、自分の存在や卓球をやっている意味がないように思ったから。カウンセリングを受けながら、私は自分のためというよりも、まわりのことを気にしながら卓球をやっていたことに気づいた」(『一流をめざすメンタル術』より引用)

スポーツメンタルコーチングを受けたことで、自分の思い込みを壊し、その結果彼女は「自分の意思で」卓球に取り組むようになりました。

「いま思うのは将来のことです。海外でも子どもを産んで活躍している人がたくさんいます。たやすいことじゃないのはわかるけど、私は将来的にそういうプレイヤーに憧れている。もっと日本の卓球界が変わってほしい。結婚して、子どもを産んでも卓球をやりたいと思えば、やるべきだと思う。子育てと両立させるのは不可能じゃない」(『一流をめざすメンタル術』より引用)

“ゾーン”に入るためのヒントはマインドフルネス

アスリートは集中が極まった瞬間を、「ゾーンに入る」と言いますよね。ゾーンに入る方法として有名なのが、「フロー理論」。難易度と自分のスキルとの釣り合いがとれていると、ゾーンに入れるというものです。難しく考えすぎると実際よりも難易度が高いと思い込んでしまうため、ゾーンに入れません。簡単だと思えるかどうかが重要になってきます。

たとえば野球の打率で考えると、「3割もヒットを打つ」のは難しく感じますが、「7割もミスできる」と考えると簡単に感じてゾーンに入りやすくなるのです。

マインドフルネスも同じです。いかに雑念を取り除けるかどうか。うまくできる人は、雑念に「囚われた」ことを認識してすぐに手放すことができるサイクルを実践しています。マインドフルネスな状態を自分で作り出せれば、結果が変わってくるのです。

“ゾーン”に入るためのマインドを鍛えてくれる必読本

著者
["チャディー・メン・タン", "ダニエル・ゴールマン(序文)"]
出版日
2016-05-17

たびたび話題になるマインドフルネス。世界的な成功企業であるGoogleで生まれた「SIY:サーチ・インサイド・ユアセルフ」という研修プログラム開発者がマインドフルネスの実践法を語ってくれている本です。

著者
井上 雄彦
出版日
2001-05-23

『バガボンド』は、コーチングをしているアスリートにも実際に読んでもらっています。天下無双の剣士になりたいと思っている武蔵が、最強の剣士4人を前にしても構えず、すべてを見切って戦うシーンがおすすめ。五感を研ぎ澄ます瞬間、考えているようで考えていない状態、つまりマインドフルネスな状態を感じられると思います。

反対に、勝ちたい気持ちがあふれて殺気が出た瞬間に、ゾーンから抜けてしまうこともうまく表現されています。剣はなくてもいい、刀を使わずに勝つのが天下無双だという言葉は、まさにマインドフルネスを極めた人のひと言でしょう。

『バカボンド』10巻

弱いメンタルでもOK!

思い込みを壊すこと、ネガティブから脱出して自己効力感をアップすること、マインドフルネスでゾーンに入ることは、アスリートはもちろんですがビジネスマンにとっても重要なエッセンスが含まれています。

メンタルを強くする必要はありません。弱いメンタルでもOK、等身大の自分を受け入れた後に、自分がするべきことが見えてきて、結果に繋がり強くなるのです。

自分が望む結果を常に出せるよう、人生のヒントにしていただけると嬉しいです。

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