5分でわかるブレグジット!背景と目的、経緯、今後の影響をわかりやすく解説

更新:2020.2.4

2020年1月31日、ついにイギリスがEUから離脱しました。しかしその道のりは紆余曲折で、課題もまだまだ残っています。この記事では、ブレグジットの意味、EUを離脱した背景と目的、国民投票の結果、これまでの経緯とこれからの影響をわかりやすく解説。さらに理解を深める関連本も紹介するので、あわせてチェックしてみてください。

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ブレグジットとは。意味や国民投票の結果など、概要を簡単に解説

 

「ブレグジット(Brexit)」とは、「イギリス(Britain)」もしくは「イギリスの(British)」と、「離脱(Exit)」を組み合わせた造語です。具体的には、イギリスのEU離脱を指す言葉として用いられています。

もともとイギリスは、1973年にEUの前身であるECに加盟してから、組織の中心国として存在感を示してきました。しかし、2011年頃から続いている「シリア内戦」などの影響もあり、国内に移民が増加。国民の不満が高まり、離脱が主張されるようになります。

2016年6月23日、EU離脱の是非について、国民投票を実施。離脱を支持する票が51.9%と過半数をわずかに上回り、2017年3月に正式に離脱を表明しました。

その後は、離脱に向けた具体的な交渉を開始。しかし、イギリス国内にも離脱反対の声があること、さらには離脱後のEUとの関係をめぐって議論が混迷したことなどから、離脱は3回延期されています。

2019年7月にボリス・ジョンソンが首相に就任すると、動きが加速。2020年1月31日、ついにイギリスはEUから離脱しました。

2020年12月31日までは「移行期間」が設けられていて、この間イギリスは、EUの政策決定には関与できないものの、関税や人の移動などはEUの法律が適用されます。この移行期間中に、イギリスはEUをはじめ諸外国と、今後の関係について交渉し、合意を目指すのです。

ブレグジット、イギリスがEUを離脱した背景と目的

 

イギリスは19世紀に「光栄ある孤立」と呼ばれる外交方針をとったように、伝統的にヨーロッパ大陸から一定の距離をとる傾向がありました。1999年に単一通貨のユーロが導入されてからも、自国通貨としてポンドを使用し続けたほどです。

ただこれらの傾向はあったものの、近年まではイギリス国内でも、EUから完全に離脱することを望む声は少数でした。

この状況が変わるきっかけとなったのが、移民・難民問題です。

もともとイギリスは、EU加盟国のなかでも経済的に豊かな国のひとつです。EUは加盟国間で移動の自由が保障されているため、経済的に豊かではない地域から、多くの移民が流入するようになりました。

さらに2011年以来続いている「シリア内戦」の影響で、EUに流入する難民も増加しています。EUは難民を保護するため、人口や経済力にもとづき受け入れ人数を分担する「割当制」をとっていて、イギリスも少なくない数の難民を受け入れてきました。それに加えて、EU間は移動の自由があるため、EUの他の国で受け入れた難民が、イギリスに流入するようになったのです。2012年から2016年までで、その数はおよそ2倍になりました。

するとイギリス国内では、イギリスらしさが失われる、仕事が奪われるなどの反発が発生。これが、2016年の国民投票で離脱派が上回った背景だといわれています。

また、難民問題でも明らかになったように、EUに加盟している限り、加盟国全体で足並みをそろえる必要があります。イギリスの利益に沿わない政策に参加しなければならないこともあり、これに対しても国益を損なっていると批判が生じていました。

イギリスは、ブレグジットを通じて「テイク・バック・コントロール」、つまり自国の権限を取り戻し、自分たちの意に沿わないことから抜け出そうとしたのです。

ブレグジットはなぜ揉めた?これまでの経緯をまとめて解説

 

ブレグジットが実現するまでには紆余曲折がありました。

2016年の国民投票後、イギリスの首相に就任したテリーザ・メイは、EUからの離脱交渉に着手。しかしここで問題となったのが、離脱後のイギリスとEUの経済関係です。

EU加盟国間では、移動の自由だけでなく、関税を撤廃する「関税同盟」を結成するなど、市場を統合する取り組みを進めて、「単一市場」を形成しています。EUから離脱することは、この単一市場から離脱することでもあります。これがさまざまな問題を生み出し、ブレグジットをめぐる議論を混乱させることになりました。

代表的なものが、「北アイルランド国境問題」です。現時点ではイギリス領北アイルランドとアイルランドは、人とモノの自由な移動が保障されています。しかしイギリスがEUから離脱した場合、どのように国境を管理するのか議論が生じたのです。

仮に国境を復活させた場合、北アイルランドの経済は縮小してしまうと予測されています。そのため、北アイルランドや、北アイルランドと同じようにEUとの分断を問題視するスコットランドでは、「EUの一部となる」ことを目指してイギリスからの独立を求める方向性を示唆しました。ブレグジットが、連合王国の分裂を招く可能性があるのです。

その一方で、人とモノの移動を保証すると、そもそもEUから離脱した意味がなくなってしまいます。

ブレグジットをめぐる議論は混迷し、メイ首相が提案した離脱案はイギリス議会で3回も否決され、首相の退陣に繋がりました。

イギリスの分裂につながるリスクをはらんでいるため、イギリス国内でもブレグジットに対する意見はまとまっておらず、離脱が決まってからもさまざまな課題が残っている状態です。

ブレグジット、イギリスのEU離脱が世界に与える影響は?

 

ではブレグジットが成立し、イギリスがEUから離脱すると、世界にどのような影響が生じるのでしょうか。先述したとおり、2020年12月31日までは「移行期間」です。この間にイギリスは、離脱後の在り方を定めなくてはなりません。

ここで懸念されているのが、「合意なき離脱」です。仮に離脱後の貿易協定が決まらなかった場合、イギリスとEU間の取引は税関手続きなどが復活。すると物価の高騰やモノ不足など、双方の経済活動に大きな支障が生じるかもしれません。

またEU以外の国や地域にも影響があります。

たとえば日本は、EUと「EPA(経済連携協定)」を結んでいます。これまではイギリスとの貿易にも適用されていて、2020年12月31日までの移行期間中も、イギリスとやり取りする輸出入品に、日本とEUのEPAに準じた税率が適用される予定です。

しかし2021年1月1日以降は、日本とEUのEPAはイギリスには適用されません。仮に現状よりも条件が悪くなったら、イギリスに展開する日本企業が撤退する可能性も考えられるでしょう。

日本政府は、なるべく現行の水準を維持するようイギリスに働きかけています。どのような関係が構築されるのか、これからの動向に注目が集まっています。

イギリスの歴史を紐解いて経済を解説

著者
池上 彰
出版日
2019-11-28

 

イギリスの正式な国号は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。この名前からもわかるように、もともと異なる4つの王国が連合して成立した国家です。そのため、ひと口にイギリスといっても、その実態は多種多様です。

実はブレグジットに関しても、地域や年代によって結果が大きく異なっていました。本作は、歴史的な背景を踏まえながら、イギリスがどのような国なのか、それがブレグジットにどのような影響を与えているのかを解説していきます。

社会人の学び直しにも最適な一冊。ブレグジットをきっかけにイギリスという国に興味をもった方は、ぜひ読んでみてください。

ブレグジットをレジェンド経済学者たちはどう考えるか?

著者
リンダ ユー
出版日
2019-04-18

 

アダム・スミスやケインズ、マルクス、フリードマン……誰もが名前くらいは聞いたことがある、12人の経済学者たち。もしも彼らが生きていたら、ブレグジットをどう評価するでしょうか。

彼らが主張していた思想には、現代の課題を解決するヒントがあるとして、ブレグジットをはじめ、トランプ大統領の貿易方針、中国経済の行方などを検証していきます。

同じ事象を分析しても、アプローチする理論が異なれば、新しい側面が見えてくるもの。名だたる経済学者の業績も同時に知ることができるので、経済学の入門書としてもおすすめです。

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