アジア各国に支部のあるAN通信。そこはネットニュース会社を隠れ蓑に、各国企業を探る産業スパイ組織でした。主人公らは末端の諜報員として、次世代エネルギー開発を巡る陰謀を探っていきます。 本作は藤原竜也、竹内涼真の主演で同名映画とドラマが2021年公開です。そんな注目作の魅力をお伝えしていきます。
表の顔と裏の顔、2つの顔を巧みに使い分け、世界を股にかけて社会の暗部と戦うクールなスパイアクションものです。
古くはイギリスの「007」シリーズ、「ミッション:インポッシブル」シリーズ、最近であれば『キングスマン』など、スパイを題材とした海外作品は少なくありません。
『太陽は動かない』も、こうしたスパイアクション映画に勝るとも劣らない、極上のエンターテインメント小説です。弱小ネットニュースサイトの海外調査員を隠れ蓑にする主人公が、各国の産業スパイと命懸けの諜報戦をくり広げるというストーリーで、二転三転する展開が魅力的です。
しかし実写化は難しいともいわれていた作品でもありました。
キャラたちによる性的表現や暴力表現があるとともに、劇中序盤の山場である大規模爆弾テロなど、作品の肝となる部分の映像化が容易でないという理由からです。またアジアが中心とはいえ、数ヶ国の海外ロケが必須だったことも、邦画の規模では難題でした。
そんな映像化不可能とまでいわれていた本作ですが、2018年に映画化が発表。公開日は2021年3月5日です。(新型コロナウイルスの影響で2020年5月15日から公開が延期)
この記事では映画の内容にも触れながら、原作小説ならではの魅力をご紹介していきます。
まずは本作の面白さを理解していただく上で、おおまかにあらすじをご紹介しましょう。発表されてる映画の主要キャストについては、人物名の後に()書きで併記致します。
主人公の鷹野一彦(藤原竜也)は後輩の田岡亮一(竹内涼真)とともに、アジア各国を巡る「AN通信」の取材記者でした。
AN通信は海外のローカルニュースやリゾート地の情報を収集し、ネットで配信する小さなニュース会社……というのは建前。本当の姿は、裏社会の暗部を探り、企業へ敵対者の情報を売買する秘密諜報組織でした。
鷹野も田岡も取材記者というのは表の顔で、実際は諜報員――すなわち産業スパイだったのです。
2人はベトナムで新しく開発計画が発表された油田について調査していたところ、中国政府が密かに計画の妨害を進めていたことを突き止めます。妨害は非人道的手段で行われることから、鷹野は中国政府の思惑を阻止しようとするのですが……。
一連の事件と平行して、鷹野は中国の出方に違和感を覚えていました。妨害計画こそあったものの、本来なら新油田の開発はベトナムに先んじて中国主導で行われるのが自然なはず。
鷹野はそこから、中国国営のエネルギー企業「CNOX」と、香港トラスト銀行の頭取アンディ・黄(翁華栄)がもくろむ、おそるべき陰謀に関わることになり……。
主役2人のほかに、同じく産業スパイで鷹野のライバルであるデイビッド・キム(ピョン・ヨハン)、経歴から狙いまですべてが謎の美女AYAKO(ハン・ヒョジュ)、など一筋縄ではいかない存在も登場。彼らと競い合い、時に共同戦線を張りながら、やがて巨大な陰謀を明かす中枢へと切り込んでいくのです。
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- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2014-08-05
映画『太陽は動かない』の見所は、息もつかせぬ激しいアクション。原作でくり広げられる、派手なアクションシーン、スペクタクル展開は、実写化で数倍の迫力を見せてくれるはずです。
映画のアクション面が期待できるのは、1月に公開された予告編でも確認できます。まるで『ミッション・インポッシブル』のような閉所でのスタント、銃撃戦、カーアクションの数々がうかがえます。
また原作小説はシリアスさとクールさが一つの売りでしたが、映画ではちょっとした息抜きとしてコメディ要素が加えられているよう。スパイ映画ファンだけでなく、広くおすすめできるエンターテイメントに仕上がっています。
映画『太陽は動かない』オフィシャルサイト - ワーナー・ブラザース
映画『太陽は動かない』【予告1】2021年3月5日(金)公開
このあとからいよいよ、原作小説の魅力についてご紹介していきます!
ここからは、原作小説の魅力について説明していきましょう。
スパイをフィーチャーした作品の華といえば知略と謀略。単なるアクションだけでなく、陰謀が複雑に絡み合ったミステリアスな展開が醍醐味といえるでしょう。
本作では、ベトナムで入院していた日本人が何者かに謀殺されたことから、それを追っていた鷹野らはデイビッド・キムの関与と、中国政府の影に気がつきます。
油田のエネルギー利権が、なんとサッカー日韓戦の行われているスタジアムの爆弾テロにまで発展するという驚愕の展開で、原作小説では手に汗握る序盤の見所となっています。
さらに面白いのは鷹野と田岡、2人にはAN通信によって小型爆弾が体内に埋め込まれているところです。この爆弾は一定時間ごとに連絡しなければ、24時間で爆発する仕組み。これには裏切り防止や捕らえられた際の証拠隠滅の意味があります。
どんな困難な作戦中でも、2人は常に小型爆弾を意識しなければなりません。これがよいアクセントとなり、全編にわたって緊張感を与えています。
さらにこの後、物語には敵味方が入り乱れ、次から次へと新しい出来事が連鎖的に起こっていきます。めくるめく展開と主役2人の体内にある危険因子によって、読後まで残るような高揚感を感じられるでしょう。
本作はエンタメ作品ではありますが、国家間の緊張や利権関係などは現実のそれをきっちりと反映しています。
超大国アメリカと、大躍進を見せる中国。両者に挟まれつつ、最善の道を探って生き残ろうとする日本。韓国、ベトナムといった国、あるいはウイグルなどのアジア諸国・地域は、大国間の綱引きにほんろうされます。
このあたりはまさに現実を反映した設定といえるでしょう。特に世界情勢に詳しい方であれば、なおのこと楽しめるかもしれません。
さらにそこへ新油田、水上太陽光発電(メガソーラー)、宇宙太陽光発電など、新旧のエネルギー利権が密接に関わってきます。エネルギー産業で他国よりも先んじようとする各国と企業体の動きは非常にリアルです。
このように、本作は娯楽色の強い作品でありながら、根本の設定が硬派なのも魅力となっています。
その結末や、いかに?ぜひ原作小説でその魅力をご確認ください。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2014-08-05
最後に、本作の作者についてもご紹介しましょう。
吉田修一は1968年9月14日生まれ、51歳の男性小説家です。法政大学経営学部を卒業後、1997年に文學界新人賞を受賞してデビューしました。
代表作は殺人事件を機に逃避行する男女を描いたサスペンス『悪人』、未解決殺人事件を巡るミステリー小説『怒り』など。
吉田修一はエンタメ性の高い大衆小説から、純文学まで手がける作家です。さまざまなジャンルの作品を発表していますが、作風で共通しているのは徹底したリアリティです。どの作品にもフィクションとは思えない凄みがあり、事前のリサーチの深さを感じさせられます。
また、『太陽は動かない』は「産業スパイ・鷹野一彦シリーズ」として続編も発表されています。鷹野の過去がわかる『森は知っている』、新たな大事件となる『ウォーターゲーム』など他作品もおすすめです。
もし『太陽は動かない』で彼に興味が出たら、こちらの記事もご覧ください。
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- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2017-08-04
いかがでしたか? 本作はアクションあり、サスペンスありのエンタメ作品です。原作小説には映画、ドラマにはない魅力があるので、ぜひ一度読んでみてください。