日本でもっとも一般的な家族形態となっている核家族。その在り方や問題点、少子化との関係などをわかりやすく解説していきます。おすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
核家族とは、「婚姻によって結びついた夫婦とその血縁者たちが作る集団(いわゆる家族)」のなかでも、基礎に位置付けられる形態です。
具体的には、
上記いずれかの形態を指します。あらゆる家族は必ず上記の組み合わせを含むため、すべての家族形態の「核」になるという意味で、核家族と名づけられました。
核家族の対義語となるのは、祖父母や叔父叔母、甥姪などと同居する「拡大家族」です。近年増加している「二世帯・三世代住宅」なども含まれます。
そのほかにも、子どものうちひとりが婚姻した後も親と同居する「直系家族」、親夫婦が複数の子ども夫婦と同居する「合同家族」なども、核家族と対になる形態だといえるでしょう。
日本では2000年頃まで、高度経済成長期に核家族化が進展したといわれてきました。しかし近年の検証により、大正時代にはすでに世帯の過半数が核家族化していたことが明らかになっています。
たとえば1920(大正9)年に実施された最初の国勢調査を参照すると、当時すでに核家族の割合は54%に達していたそう。つまり日本における核家族化は、明治期にはじまり、その後大正、昭和の高度経済成長期を経てさらに拡大したといえるでしょう。
では、なぜ近代になってから核家族化が進展したのでしょうか。そのカギとなるのが、日本が置かれていた状況と、産業の近代化にともなう都市部への人口集中です。
江戸時代後期、日本では江戸など一部の都市部を除いた多くの農村部で「直系家族」が一般的でした。
また、当時の日本の人口は約3000万人。幕末まで外国との交易を制限していた日本は、国内で自給自足をする必要があり、人口が停滞していたのです。
しかし開国とその後の明治維新を経て、人口は増加に転じます。すると親と同居する必要のない子どもたちが増え、彼らが実家を離れて自分の家を作り、核家族を形成する事例が増えるようになりました。
さらに産業の近代化にともない都市部が拡大すると、並行して移住する人々が増加。地方から上京した人が都市部で核家族を形成していきます。
近代化にともなう産業構造の転換は大正時代にはじまり、その後の高度経済成長期に大々的に進展。このような変化を通じて、日本では核家族がもっとも一般的な家族形態となったのです。
上記の変化を通じて、核家族が日本の世帯で占める割合は上昇を続け、1975(昭和50)年には64%に達しています。
ただし厚生労働省が発表している「平成30年 国民生活基礎調査の概況」によれば、2018年6月7日時点の日本の世帯総数は5099万1000世帯、そのうち核家族の世帯数は3080万4000世帯で、その割合は約60%とやや減少しているようです。
ただこれは、「家族」には含まれないひとり暮らしの「単身(単独)世帯」が増加したことが関係していて、家族形態のなかで核家族が占める割合は増加しています。つまり明治から現在に至るまで、日本の家族形態は核家族化が進展しているといえるでしょう。
ちなみに「平成30年 国民生活基礎調査の概況」によると、核家族に分類される世帯数は
でした。
さて、現代日本で大きな問題となっている「少子化問題」も、核家族と密接に関連しているといわれています。
「平成30年 国民生活基礎調査の概況」によると、「児童が3人以上いる世帯」の数は、1986(昭和61)年は287万7000世帯だったのに対し、2018(平成30)年は159万9000世帯と大きく減少しています。
「児童が2人いる世帯」でも同様で、1986年は838万1000世帯だったのに対し、2018年は455万1000世帯でした。
このことから、1世帯当たりの子どもの数が減少し続けていることがわかるでしょう。そして、子どもの数の減少は、核家族の抱える問題とも密接に関係しているといわれているのです。次項で説明していきます。
一般的に、核家族は家族のなかで大人が占める割合が低くなりやすいため、収入や家事育児の面で負担が増えやすいといわれています。
高度経済成長期が終わった後、パートタイム労働を中心に既婚女性の雇用者が増加しました。その後もバブル崩壊など景気の悪化が続くなか、いわゆる「共働き世帯」が増加したため、子どもを育てるゆとりがなくなってしまったのではないかと指摘されています。
また両親と同居していないことや、核家族同士では近所付き合いが深まりにくいことなども、出産や育児を困難にする要因となっているといわれています。
もちろん、核家族化の進展だけが少子化の原因ではありませんが、核家族化の進展と少子化に一定の相関関係があることは間違いないでしょう。
また、核家族が抱える問題点は少子化だけではありません。核家族化の進展と並行して、「夫は外で仕事をし、妻は家で家事や育児を担う」という「性別役割分業」が成立したといわれています。この考え方は、女性の社会進出が進んだといわれる現代でも根強く残っていて、男女間の格差を生み出す原因になっていると批判する声があるのです。
明治以降進展を続けてきた核家族化は、良くも悪くも日本社会に大きな影響を与えています。その結果生じた問題を解決するために、さまざまな提言がされています。
- 著者
- 筒井 淳也
- 出版日
- 2016-06-16
本文で述べたように、日本で核家族化が進展したのはここ150年間のことに過ぎません。現在のように核家族が一般的になるまでは、さまざまな家族の形態が存在しました。
本作は、世界各地の時代ごとの家族の変遷を示しつつ、社会の変化によってどのように価値観が変化してきたのかわかりやすくまとめています。一般的だと思われていた核家族が歴史的にはそうではないこと、さらには結婚前の恋愛も社会に大きな影響を受けてきたことがわかるでしょう。
そのほかにも、家族にまつわるさまざまな問題点について、刺激的な指摘がされています。家族の形について、新しい考え方を教えてくれる作品。すでに結婚している人だけでなく、これから結婚を考えている人にも読んでもらいたい一冊です。
- 著者
- 朝日新聞取材班
- 出版日
- 2019-04-19
本作は、「朝日新聞」と「Yahoo!ニュース」の共同企画を書籍化したものです。
社会の変化にともない、家族形態の多様化が叫ばれるようになってきています。しかし依然として日本人の間には、近代を通じて作り上げてきた「普通の家族」のイメージが強固に残り続けているのも事実です。
本作では丁寧な取材を通じて、「普通の家族」から外れてしまった人たちの状況を明らかにしていきます。彼らひとりひとりの生き方は、「家族とは何なのか」と根源的な問いを投げかけてくるよう。「ポスト核家族」が議論される現在に、家族の在り方を考えるヒントをくれるでしょう。