近年、さまざまな分野で導入が進んでいるICT。通信技術を駆使することで、変革が起こっています。この記事では、ITやIoTとの違い、教育、医療・介護、農業などへの活用事例をわかりやすく解説。おすすめの関連本も紹介するので、チェックしてみてください。
ICTとは、「Information and Communication Technology」の頭文字をとった略称です。日本語では「情報通信技術」と訳されます。
ICTと似た意味をもつ言葉として、「IT(Information Technology:情報技術)」を思い浮かべる人も多いでしょう。
ITがコンピューターやアプリケーション、通信技術そのものを指す一方で、ICTは「Communication」という単語が含まれるように、その技術を活用した情報のやり取りを指すという違いがあります。
また「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」という言葉もよく耳にするようになりました。こちらは、さまざまな機器がインターネットに接続され、相互に情報を交換すること、またはその技術を指しています。
近年、さまざまな技術が進んだことで、新たなサービスの創造や業務の効率化が実現しています。ICTはその要として、あらゆる分野で注目を集めているのです。
では、ICTがどのように活用されているのか具体的な事例を紹介していきます。まずは教育分野です。
従来の学校教育は、教員から生徒へ、講義の形式でおこなわれることが一般的でした。教科書や黒板を用いた文字情報が中心です。しかしICTの推進によってパソコンやタブレット端末が導入され、授業の形態自体が大きく変わろうとしています。
文字だけでなく動画や画像を活用しやすくなり、生徒たちの興味関心を引き立てやすくなりました。また語学の授業では、端末を用いてネイティブの人と直接会話をする実践的な授業もできるようになっています。生徒から情報を発信することもできるため、双方向の授業展開がしやすくなったのも特徴です。
さらに授業以外でも、教員間の情報共有や教材準備など、さまざまな場所でICTが導入され、教員の負担軽減にも一定の成果を挙げているといえるでしょう。
これからは、生まれた時から情報端末が身近にある「デジタルネイティブ」の子どもたちが増えていきます。教育現場ではさらにICTの活用が広がりをみせていくと考えられています。
医療や介護の分野でも、ICTが活用されています。
たとえば総務省のHPで紹介されている「医療・介護・健康分野の情報化推進」によると、クラウドを活用した低コストの「地域医療情報連携ネットワーク(EHR)」を構築、医療機関同士で患者の情報を共有することで、複数の病院で連携した治療をおこなうことが目指されているようです。
同時に、それぞれの健康状態にあった治療を受けるため、「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」の利用促進が図られています。これは本人の同意を踏まえて、児童期から老年期までライフステージごとの健康情報を収集・蓄積するものです。蓄積されたデータベースにさまざまな事業者がアクセスできるようになることで、それぞれの状況に即した保健指導の実現が期待されています。
これ以外にも情報端末を活用し、大病院の専門医が応急処置をしたり、大病院への転送を判断したりする遠隔医療の取り組みも。これらは、高齢化にともなう通院難や、医師の偏在問題の解決案として注目が集まっています。
ICTを活用した省力化、情報共有の取り組みは、農業でも広がりをみせています。
現在日本では、ICTを活用した農業事業は「スマート農業」と呼ばれ、食料自給率の改善や農業技術を継承、次世代につなぐための手段として注目を集めています。
具体的には、ドローンなど自動操縦のロボットの導入が進展。北海道などではGPSを取り付けた自動走行トラクターが導入され、農業の大規模化・低コスト化が図られています。現在は人間が監視したうえでの運用しか認められていませんが、将来的には完全な無人化が実現するかもしれません。
ほかにも生育状況や気象データなどを集積・解析してビッグデータ化することや、収穫時期の予測や病害予防など、効率的な農業をおこなうために役立てようとする試みも始まっています。
さらに近年ではAIも活用することで、これまでは人間が判断していた分野も、機械が担えるようになっています。この動きがさらに拡大していけば、将来的には大幅な省力化が実現するでしょう。
日本では農業の衰退が長らく問題視され続けていますが、ICTはこうした状況を変える、大きなきっかけになるかもしれません。
- 著者
- ["野中 潤", "野中 潤"]
- 出版日
本文中でも紹介したとおり、現在教育現場ではさまざまな形でICTの導入が進められています。一方で、年配の教員を中心に、どのようにICTを取り入れるか戸惑っている人がいるのも事実です。
本作は、国語科の授業実践を紹介し、ICTを活用することでどのように授業の質を高めることができるのか、具体的な方法論を紹介しています。
作者が述べているとおり、ICT教育はICTを用いることが主眼ではなく、ICTを活かして生徒の学びを深めていくことが重要です。そのためにどうすればいいのか、本作の提案はこれから教職を目指す学生や、現場の教員たちにさまざまなヒントを与えてくれるでしょう。
- 著者
- ["茂木 俊輔", "日経BP総研イノベーションICTラボ", "三井住友ファイナンス&リース/イノベーションPT"]
- 出版日
タイトルに掲げられている「デジタルシフト」は、情報技術を活用して多くの情報を統合し、それまでよりも多くのデータを活用する変化のこと。
本作では、「三井住友ファイナンス&リース」が取り組んだデジタルシフトの過程に注目し、これを通じて先端技術活用の要点を紹介しています。
ICTを推進するために何をすべきか、うまくいったものもそうでないものも取り上げているのが特徴。小さな事例から導入し、修正を加えながら洗練化していく過程を知ることで、ICT化を進めるために必要なプロセスがイメージできるようになるでしょう。
ICTを使って何をするのか、目的意識をはっきりと持つ必要性を教えてくれる作品です。