過去の殺人事件が複雑に絡み、泥沼の愛憎劇が展開される漫画『私たちはどうかしている』。累計発行部数400万部を突破した話題のミステリー作品ですが2020年7月にドラマ化されました。こちらでは原作漫画のあらすじを、セリフや注目場面を交えて全巻ご紹介。ドラマではどのシーンが登場するのか注目しながらご覧ください。
『私たちはどうかしている』は講談社より刊行されている、安藤なつみによる漫画作品。和菓子職人の主人公と老舗和菓子屋の御曹司、幼い頃に起こった殺人事件の関係者という因縁浅からぬ2人が大人になって再会したことから泥沼の愛憎劇がくり広げられていきます。
本作の見所は、過去の因縁と周囲の思惑に翻弄される主人公たちの恋模様。物理的にも精神的にも様々な壁が、2人の前に立ちはだかります。そして、物語の重要なカギとなる事件の謎も忘れてはいけません。波乱な恋を見守りながら、謎解きの要素を楽しむことができます。
昼ドラもかくやという泥沼劇が展開される本作ですが、2020年7月より日本テレビ水曜ドラマ枠でドラマ化されました。主要キャストは浜辺美波と横浜流星。放送前から注目を集めていました。
演出家は犯人考察で視聴者が盛り上がったのも記憶に新しい、日本テレビのドラマ「あなたの番です」を担当した、小室直子らが担当。脚本は恋愛ドラマを得意とする衛藤凛が務めました。恋もミステリーも期待が高まるドラマ放送を楽しむため、こちらの記事では作品の見所解説、原作全巻のあらすじやドラマでも見てほしいシーンなどを紹介していきます。
まず物語の中心となる、2人の登場人物をご紹介いたしましょう。
主人公の花岡七桜(なお)。和菓子職人をしている女性です。和菓子職人になったのは亡くなった母の影響ですが、和菓子バカと評されるほどの和菓子愛の持ち主。まっすぐな性格で、逆境に負けない芯の強さを持っています。過去のトラウマから赤色が苦手になってしまいました。
ドラマで七桜を演じるのは浜辺美波。2000年8月29日生まれ、石川県の出身です。11歳で芸能界デビュー。4年後にはドラマ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」で本間芽衣子(めんま)役を演じ、注目を集めました。2020年公開予定の作品では、「思い、思われ、ふり、ふられ」山本朱里役や、「約束のネバーランド」エマ役を演じている、今注目の若手女優の1人です。
浜辺美波はインタビューで、「原作を読んで大きな衝撃を受けた」とコメント。「常に葛藤し、様々な人や物へたくさんの想いを重ねる七桜の気持ちを想像し、誰よりも理解してあげられるよう寄り添いたい」と意気込みを語っていました。
七桜の因縁の相手でもあり、恋の相手になるのが高岡椿。開業から400年になる老舗の和菓子屋「光月庵」の世継ぎとなる一人息子で、自身も和菓子職人をしています。家庭事情が複雑で、亡き父を尊敬しながらも、家族からの愛情を感じずに育ったため、常に孤独を抱えていました。クールで傍若無人ですが、お店に対しては熱い想いを秘めており、愛情表現はとても不器用という人物。
演じるのは、横浜流星。1996年9月16日生まれ、神奈川県横浜市出身です。高校生時代に俳優デビューし、2014年には「烈車戦隊トッキュージャー」ヒカリ/トッキュウ4号役で注目を集めました。4年後にはドラマ、映画化もされた「兄友」西野壮太役をはじめ、映画「虹色デイズ」、2020年にはドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う」などで主演。アクションにも定評がある若手イケメン俳優です。
椿は「亡き父を尊敬し、父の言葉を信じて光月庵を大切にし、店を立て直そうと奮闘するカッコいい男」と評した横浜流星。「そんな椿の情熱、孤独さや苦悩を繊細に演じられれば」と意気込みを語っていました。また、和菓子作りにも挑戦していたそう。魅力を伝えられればとコメントしています。
芯が強くまっすぐな七桜と、クールながら熱い想いを秘めた椿。主演の2人が原作のイメージも持ち合わせつつ演じていました。
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主に七桜と椿の関係を中心に進んでいく物語。しかし、多くの人物の思惑や過去の出来事に2人は翻弄され続けます。
こちらでは愛憎劇を演出していく、重要な登場人物をご紹介していきましょう。
まずは高月今日子。椿の母親で、光月庵を切り盛りする女将でもあります。光月庵にやってきた七桜を追い出そうといろいろ画策する人物ですが、なにやら秘密が多い様子。椿を跡取りにと考えているようですが、溺愛している風ではありません。どこか妖艶さの漂う美女です。
高月宗寿朗は光月庵の大旦那で、椿の祖父。亡くなった椿の父、高月樹の唯一の子どもである椿を跡取りにすることには反対しています。一見好々爺に見えますが店や和菓子のことに関しては頑固な一面があり、店のために椿の結婚相手を決めたのも彼です。
七桜にとっては今日子、椿にとっては宗寿朗が目下対立する相手ではありますが、光月庵に関わる人物は他にも。
城島裕介は光月庵の和菓子職人で、七桜に近づくそぶりを見せます。
長谷屋栞は椿の当初の結婚相手。椿に思いを寄せています。
七桜は光月庵で住み込みの和菓子職人をしていた母、大倉百合子が犯人とされた殺人事件の真相を探っていきますが、その中で協力者として登場するのが多喜川薫。髭を蓄えた一見怪しげな風貌ですが七桜のよき協力者で、百合子が作る菓子のファンだったのだとか。七桜への手紙を預かっていたという、かなり近しい人物でもあります。
女将や大旦那という明らかに怪しい人物の他にも、思惑が読めない人物が椿と七桜の関係を大きくかき乱していきます。一体誰が犯人なのか、各人の思惑は何なのか。それぞれの想いが物語を大きく左右していきます。
花岡七桜は5歳の頃、和菓子職人である母が住み込みで働くことになった光月庵にやってきます。そこには光月庵の跡取り息子である高岡椿がいました。跡取りと職人の娘、立場は違えど心を寄せ合う2人。椿は七桜を「さくら」と呼び、可愛がっていました。
しかし、椿の父の遺体が発見されたことで状況は一変。椿の証言により七桜の母は容疑者とされ、七桜も光月庵を去ることになります。それから15年、和菓子職人になった七桜は、和菓子の腕を競う場で思いがけず椿と再会。彼女のことを幼馴染の「さくら」だと気が付かない椿は、彼女に突然自身との結婚話を持ち掛けます。
母の無実を証明したいと考えていた七桜は、光月庵に潜り込むことを目的に、椿との契約結婚の話を受け入れます。光月庵に住み込むことになった彼女でしたが、結婚に反対する女将からの執拗な嫌がらせや、過酷な試練が待ち受けているのでした。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2017-04-13
どんなお話か掴めてきたところで、ドラマでも注目してほしいところを解説していきましょう。本作はラブミステリー。過去の事件が物語の根底にあり、それぞれの関係に深く絡んできます。大きな謎は、椿の父を殺害した犯人。表向きは七桜の母、百合子が犯人ということになっています。
事件の詳細を少し整理してみましょう。事件が起こったのは15年前。七桜と職人だった百合子は光月庵で暮らしていました。突然、樹の遺体が発見されます。父親の部屋から百合子が出てきたところを目撃していたという椿の証言により、百合子は容疑者として逮捕。無罪を主張していましたが、獄中で病死してしまいました。
椿は部屋から百合子が出てきた現場は目撃しましたが、犯行の瞬間は目撃していません。七桜は母の無罪を信じ、光月庵で事件の真相を探っていこうとするのですが、犯人の候補者が多いという、読者泣かせの展開が発生します。女将の今日子はもちろん、宗寿朗や職人たち、それぞれに確執があり、誰が犯人でも動機は説明できてしまいます。
原作を最新刊まで読めば、ある程度犯人は絞れます。しかし完結はしておらず、断定はできていません。ドラマは未完の状態での放送となったので、ドラマオリジナルの展開となりました。
多くの視聴者が考察に熱中した「あなたの番です」スタッフが参加していることもあり、謎解きにも力が入っていた今作。重要なシーンは原作を踏襲しつつオリジナルストーリーで回収しました。
事件の謎も気になりますが、忘れてはいけないのはラブ部分です。ラブミステリーなので、ドラマでももちろん恋愛部分にも力が入っていることでしょう。美男美女が演じるというだけで眼福と拝みたくなりますが、シチュエーション好きにたまらないのが、七桜と椿の関係です。
2人は幼馴染。出会った当初は跡取り息子と雇われ職人の娘という立場の差がありました。しかし事件が発生したことにより、被害者の息子と加害者の娘という関係にシフト。仲が良かった2人は悲しい別れを強いられてしまったのです。
幼馴染との淡い恋に悲しい別れ、突然の再会という、ロマンスが展開されるであろうと断言できる最高の舞台。しかも七桜は椿を快く思っておらず、椿も幼馴染の少女には複雑な思いを抱いている状況から、恋が始まるのです。
惹かれてはいけない相手に惹かれるという背徳感。それぞれ複雑な胸の内と葛藤しながらも、恋は静かに燃え上がっていきます。何かとしがらみが多く一筋縄ではいかない2人の恋、葛藤をどう演じていくのかも気になるところですが、恋がどのような結末を迎えるのか目が離せません。
過去の事件と人間関係が複雑にからみ合い、昼ドラ顔負けの泥沼愛憎劇が展開される本作。七桜と椿には、多くの試練が襲ってきます。気が休まる暇がない展開が続きますが、なかでも一服の清涼剤となるのが和菓子です。
光月庵は和菓子屋。七桜も椿も和菓子職人として菓子を作るシーンが登場します。最中などの身近なお菓子も登場しますが、必見は上生菓子。上生菓子とは口当たりがしっとりとした生菓子のうち、練り切りや羊羹、求肥といったものを指します。茶席などで使われることが多く、季節や場に応じた美しく細かい細工がなされているのが特徴です。
光月庵でも上生菓子を作ることが多く、出演する2人も上生菓子を作る練習をしていると、ドラマ公式のSNSで画像ともに公開されました。
ころんとした可愛らしいめじろと、淡い色が美しい桜。造形も可愛く美しいお菓子に視線が吸い寄せられます。和菓子好きはもちろん、興味が薄かった方にも、新たな魅力に気付くきっかけになるのではないでしょうか。
大まかにドラマでの必見ポイントを解説してきました。次の項目からは、ドラマを見る前に読んでみたくなる、原作各巻のあらすじをご紹介していきます。
花岡七桜は和菓子職人。母親が住み込みで働いていた店で殺人容疑を懸けられ、失意のまま亡くなったという過去を持っています。七桜は母親と同じ和菓子職人になり、小さな店で働いていました。ある日「七桜は殺人犯の娘だ」と中傷するメッセージが届いたことで、彼女は店を解雇されてしまいます。
店を辞める前、七桜は常連客から結婚式の引き出物として使用するお菓子の製作をかけ、ある店と対決をすることになります。光月庵は、かつて七桜と母が一緒に住み、濡れ衣を着せられた因縁の店でもありました。店は解雇されたものの、対決の場に立った七桜。そこで、幼馴染である椿と再会します。
しかし、椿は七桜がかつて一緒に遊んだ少女「さくら」だとは気が付いていませんでした。菓子対決で負けた彼女を引き留めた椿は、突然結婚話を持ち掛けます。家のために政略結婚をすることになっていた椿は、自身の力で店を立て直すために結婚を破棄しようと考えていたのです。
憎き相手でもある椿の申し出に、悩む七桜。母の無実を証明するため、椿の提案を受け入れ、光月庵に乗り込むことを決意します。椿の結婚相手として光月庵にやってきた七桜でしたが、椿の母である女将の今日子は大反対。七桜を追い出そうと嫌がらせをはじめるのでした。
幼い2人を引き裂く凄惨な事件に、突然のプロポーズと序盤から急展開。見所は老舗和菓子屋という舞台設定ならではの昼ドラ的な愛憎劇の雰囲気です。とくに女将の嫌がらせは執拗で、読者も腹が立つほど。逆境にめげずに立ち向かっていく七桜の健気さが際立ちます。
椿の嫁として、そして和菓子職人として光月庵にやってきた椿。常連である白藤屋に届けたお菓子が赤く染まっているというトラブルが発生してしまいます。お客に失礼する人間を置いておけないと七桜を追い出そうとする女将でしたが、彼女は椿が出て行けと言うまでは出ていかないと啖呵を切るのでした。
そんな時、白藤屋から七桜が作った最中を20個届けてほしいと注文が入ります。七桜は椿から光月庵のあんの作り方をならうことに。しかし、厨房の権限は大旦那である椿の祖父宗寿朗が持っており、使用許可が下りません。大旦那は女将の不貞を疑っており、椿を実の孫と認めていなかったのです。
職人の富岡の弱みを握り、厨房を貸してもらった2人。無事に白藤屋の信頼を取り戻します。大旦那が椿を認めていないという事実に思わず言い返した七桜でしたが、大旦那の言葉に何も言い返すことができず、涙を流します。
大旦那から本当は愛し合ってないのでは、と疑いの目を向けられた2人は一緒の部屋で暮らすことに。布団に入った椿は、七桜に幼い頃一緒に過ごした少女「さくら」の話をします。自分のことを覚えていたことに彼女の胸は高鳴り椿を抱きしめたことから、2人はキスをし身体を重ねます。さくらが目の前に現れたら、問いかける彼女に、椿は永遠に消えてもらうと答えるのでした。
偽装結婚として始まったので、当然ながらプラトニックな関係だった七桜と椿。女将がきっかけのトラブルでしたが、2人にとっては精神的にも肉体的にも距離が縮まるきっかけになりました。椿が何かと七桜を妻扱いし甘め展開かと思いきや、最後には「消えてもらうよ。俺の前から永遠に」(『私たちはどうかしている』2巻より引用)という衝撃的なセリフが。2人の恋の難儀さを再確認させられます。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2017-06-13
少し距離が縮まったかに見えた2人でしたが、七桜は椿からさくらを憎む気持ちを聞いてしまいます。事件当日、母が椿の父と会っていたことを知らされた彼女は、自分の母が殺人犯とは信じられないと考えながらも、椿に自分がさくらであることを知られてはいけないと、あらためて決意するのでした。
一方、探偵に七桜を調べさせていた女将は彼女がかつて光月庵に住んでいた職人、百合子の娘であり、事件の関係者であることを突き止めます。母親がいないことをにおわせ、正体を明かさせようとする女将でしたが、その時店に七桜の母を名乗る人物・夕子が現れるのでした。
女性から協力者の存在を明かされた七桜は、その人に会いに行こうと決意します。しかし、椿からも行動を疑われ、部屋に閉じ込められてしまいました。何とかそこから脱出し、外に向かっていた七桜の頭上に、壺が落下。かばった椿は、怪我を追ってしまうのでした。
実は女将に不穏な動きがあり、自分を守るために部屋に閉じ込めていたことを知った彼女。大旦那も参加する10日後に開かれる茶会のため、椿と協力し菓子作りをすることに。そんな七桜の姿を見た椿は、「不妄語戒」という掛け軸の前に彼女を連れて行きます。そして自分の正直な気持ちを明かし、彼女にあらためて問いかけるのでした。
「不妄語戒」とは、嘘を言ってはいけないという戒めのこと。仏教における信者が守るべき五戒の一つです。人を信用することが難しい家庭で育った椿が、神仏の前で誓えるのかと言外ににおわせるほどの重い問い掛け。
ドラマでも再現してほしい本気の告白シーンですが、七桜の嘘に迫る場面でもあり緊迫感は最高潮。一層動悸が激しくなりそうです。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2017-09-13
七桜は「さくら」なのか。その問いかけに、七桜は違うと答えました。信じると言いながら椿は、彼女にキスをします。晴れて両想いとなった2人ですが、迫る茶会の準備に追われていました。ぶつかり合いながらも、2人は大旦那が納得するような菓子作りに没頭していくのでした。
そんな中で、七桜は椿がどんな幼少期を過ごしてきたのかを知ります。大旦那との確執、椿の菓子を頑なに食べない理由を知った七桜は衝撃を受けます。茶会の当日、菓子を完璧に用意した2人でしたが、参加者の中に菓子が食べられない、アレルギーがある子どもがいることが判明。大旦那の仕業だと椿は憤慨します。
お客への対応やトラブルに追われる中、七桜はついに過去の母を知る人物、多喜川薫と再会を果たします。多喜川は母の作るお菓子のファンで、昨年亡くなった自身の父親から手紙を託されたのだと語ります。
一方茶会は成功に終わったものの、大旦那はお菓子をその場で口にすることはありませんでした。しかし、持ち帰って仏壇の前で食べる姿を見た椿は涙を流します。再び肌を重ねた七桜と椿。椿の手を放すことができないことを、心の中で母に詫びるのでした。
表向きには両想いですが、彼女はまだ秘密を画した状態。母の知己である多喜川が登場したりと、事件の方も少しずつ動きが見えてきます。ドラマでぜひ見てみたいのは、告白したことで、デレ成分が表面化してきた椿の姿。城島に声をかけられた七桜に嫉妬する様子は必見です。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2017-12-13
茶会は成功し、椿との仲も深まった七桜でしたが、女将の嫌がらせに落ち込みます。そんな時、職人の城島が声をかけてきました。和菓子の話で盛り上がっているうちに、実家からわらび餅が送られてきた、と部屋に誘われます。城島は小さいけれどあったかい店を持つことを目標としていると七桜に語りました。そして、椿ではなく自分ではダメかと迫ります。
その時、椿が部屋に入ってきました。城島の突然の宣戦布告に怒りが抑えられない椿。次の日、城島が店を辞めると聞いた七桜は、椿に掛け合います。しかし冷たい態度の椿。
七桜は「城島のように小さいけれどもあたたかい店を持ちたい」という、自身の夢を伝えます。くだらない、と椿が一蹴したことで心の距離がまた離れてしまうのでした。
城島の心配をしていた七桜は、彼の過去や家庭事情を知ってしまいます。そのうえで彼の父が作ったというわらび餅を再現しようと奮闘しました。椿は城島の過去を知ったうえでわらび餅を店の催事で出すという計画を持ち掛けるのでした。
城島の過去が中心となっていますが、彼がなぜ七桜に迫ったのかも理由が明らかになっています。椿にとっては直接的なライバルの登場ともいえる状況で、七桜のために感情を乱している姿に思わずニヤニヤしてしまうでしょう。一方で2人の絆も感じ取ることができます。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2018-03-13
体調がすぐれなかった七桜は、自身が妊娠しているのではないかと疑います。嬉しいと感じる半面、椿の反応を想像すると気持ちが落ち込む彼女。幼い頃と変わらず、椿に気持ちが翻弄されている自分自身を知り、やはり椿が好きなのだとあらためて気付かされます。
七桜は自身の身体の変化を抱えながら、わらび餅作りを続けていきました。そして、城島の父が作ったわらび餅を再現することに成功します。催事に向け搬入を待つだけでしたが、翌日わらび餅がすべて床にばらまかれてしまいました。怒りがこみ上げる七桜。しかし、女将を欺く秘策で危機を回避します。
催事は無事に終了し、七桜と椿は結婚式の準備に取り掛かることになりました。母を演じてくれた夕子のもとに出向き、結婚の許しを得ます。妊娠していることを夕子に知られた七桜は、椿には知らせないでほしいと懇願。自分が本当の母親だったら、絶対に幸せを望んでいるという言葉に励まされ、椿にすべてを打ち明けることを決意します。
そんな時、母が使っていた部屋にやってきた彼女は、押入れの奥に隠し扉があるのを発見します。そこには御菓子作りに使う桜の型、母子手帳やへその緒、母から七桜への手紙がありました。手紙を読み、度肝を抜く事実を知った彼女は、椿の前から姿を消すことを決意します。
前巻から続いた城島編がひと段落し、七桜と椿は新たな問題に直面します。女将の嫌がらせにめげない彼女ですが、明確にやり返したぞという姿が見られて爽快な気分。さらに椿の本気プロポーズと見所が満載。ぜひ本気トーンのプロポーズはドラマでも見てみたいところです。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2018-06-13
母が残した手紙に記された衝撃的な事実を知り、椿の前から姿を消さなければならないと考えた七桜。しかし、椿への想いを消すこともできず、生活のこともあり、なかなか覚悟を決めることができません。悩む中、彼女はふと多喜川のことを思い出し、相談することにしました。
できれば住み込みで働ける場所を紹介してほしいとお願いする七桜。了承した多喜川は、今すぐ行動した方がよいと促しますが、迷います。あの家を出て後悔をしないのか、問いかけられた彼女は自分の気持ちと、亡き母が置かれた状況を考え、思い悩むのでした。
後悔しないため、光月庵を離れる前に事件の真相を探ることを決めた七桜。一方、女将は大旦那が書いた遺言書を奪おうと画策します。光月庵で茶会が行われた日、大旦那がいないことに気が付いた七桜が探していたところ、普段は閉ざされたその部屋に、女将が立っていました。その光景を見た瞬間、事件現場に女将がいたことを思い出したのです。
女将ともみ合うさなか、自分がかつて光月庵にいた職人の娘、さくらであることを告白した七桜。その言葉を、椿も聞いていました。あらためて自分がさくらであることを椿に告げた彼女。2人は女将が放った火が迫る中、秘密をさらけ出してからも変わらぬ愛の証に口づけを交わすのでした。
ついにやってきた女将との直接対決。椿にも七桜の秘密がバレてしまいます。第1部が終了したというような状態ですが、事件も恋の問題もまだまだ解決していません。女将の思惑は、亡くなった椿の父は何を考ていたのか。2人の仲を引き裂くように、謎が横たわります。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
- 2018-09-13
光月庵が火事になり、大旦那は意識が戻らないまま眠り続け、助けに向かった椿も10日間生死の境をさまよいました。目が覚めた時には七桜の姿はなく、それから椿は仕事をこなしながらも、彼女の姿を探し回る日々を送っていました。
そんな時元婚約者だった栞が勘当され、光月庵に住み込みで働くことになります。3年の月日がたち、栞が看板娘として評判になった頃、七桜は東京での修行を終え、金沢に戻ってきていました。偶然会った七桜の雰囲気が変わっていたことに、栞は驚きます。
七桜は「花かすみ」という自分の店を、3か月前に出したばかりでした。お客の奪い合いとか気にならないのか、と尋ねる栞に七桜は
「店の名前にあぐらをかいてお客様を甘く見てる。そんな店に負ける気しないから」
(『私たちはどうかしている』8巻より引用)
と、強く言い放つのでした。
自身が正式に光月庵を継ぐ権利があると知り、母の残したお菓子を光月庵で売ることを新たな目標に掲げた七桜。五月雨亭主催の宴の席に出す御菓子を決める選考会は、彼女にとって大変な好機でした。選考会当日、五月雨亭の庭にいた彼女は、椿と3年ぶりに再会を果たします。
新章は激しい火事の後、栞の淡い恋と強い決意から始まります。椿の思惑により、恋心が打ち砕かれた栞ですが、元婚約者でも政略結婚だったという事実もあり、ノーマークだった読者も多いのではないでしょうか。彼女の椿への恋心は、実は相当に重いものだったのだということが明かされます。七桜は復讐に走っていますが、恋の行方はどうなってしまうのでしょうか。
光月庵の火事が起こってから6か月後、七桜はこじんまりとした和菓子屋「和沙」で働いていました。夫婦とパート従業員は1人だけ、近所の常連客の多いあたたかい店で、彼女は安心して働いていました。しかしそこに、警察が尋ねてきます。火事を調査していた警察は、大旦那の部屋に入っていく七桜を見たという証言から、彼女を疑っていました。
ここにはいられない、と飛び出した七桜。吹雪の中怪我をし、意識が朦朧とする中で助けてくれたのは、多喜川でした。女将が光月庵に居続ける限り、母は汚され続ける。そう考えた七桜は、母の夢を自分の夢とし、多喜川に力を貸してほしいとお願いします。
そして月日が流れ、修行を終え自分の店を持った七桜。椿と再会しますが、彼は七桜に気が付いていない様子。椿の眼は悪いのではないかと考えますが、自分には関係ないことだと計画を進めていきます。そんな中、女将の根回しがなければ選ばれていたという花かすみ。どうしても気になった椿は、店を訊ねます。
そこに居たのは七桜でした。何も言わずに消えたことを責める椿に、七桜は自分がさくらであること、母親を犯人にした人のことは好きにならないと淡々と告げます。そして、光月庵は自分のものであると宣戦布告をするのでした。
8巻では椿サイドの話が中心となっていましたが、9巻は七桜が歩んでいた空白の時間が語られています。女将の嫌がらせがどれだけかと頭を抱えると同時に、七桜の決意を複雑な気持ちで見守ることになるでしょう。椿のほうが未練たらたらと思いきや、七桜も動揺する場面があるなど、気持ちの揺れ動きを見ることができます。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
温泉街の御菓子フェアを2人で担当することになった七桜と椿。宿の計らいで、一緒に宿泊することになります。互いに一定の距離があった2人でしたが、御菓子のことになると話は別。互いに意見を出し合い、どんどん話が盛り上がっていきます。3年前のあの頃に戻ったような空気に、七桜の気も少し緩むのでした。
火事の影響で椿の眼が不自由になったことに触れる七桜。しかし椿は、自分の光月庵を存続させるため、御菓子を作り続けなければならないこと。店が終わることは、自分にとっては視力を失うことと同じだと告げます。七桜はそんな椿の姿に、自分の恋心をあらためて自覚し、復讐とは違った新たな決意をするのでした。
一方、椿と七桜の距離が再び近づくことを恐れた栞は、自身が妊娠しているという嘘をついてしまいます。女将は喜び、勘当していた実家とも和解へ向かっていくものの、栞の気持ちは晴れず、罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、椿に自分の気持ちをぶつけていきます。
椿を光月庵から解放すると決意した七桜は、協力者である多喜川とともに、新たな手を打とうと動き出します。そんな中、彼女に店を乗っ取られると感じた女将が、再び不穏な動きを見せ始めるのでした。
復讐ありきだった七桜でしたが、光月庵を自分のものにする意味合いが変わってきました。気持ちはない素振りは見せつつも、椿の言動に振り回されている姿にはやくくっついて、と願わずにはいられません。後半ではいよいよ光月庵がなぜこうなってしまったのか、核心に触れる展開が待っています。様々な謎に答えが出るのでしょうか。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
遺言状を奪い取るため、病院から大旦那を連れ出した女将。意識を取り戻した大旦那は、七桜に、さくらなのかと尋ねます。自分がさくらであると告げる彼女でしたが、大旦那は突然苦しみだし、倒れてしまうのでした。
無事に意識を取り戻した大旦那は、なぜここまでこじれてしまったのか、七桜に過去の話をします。光月庵では今も昔も、店のために結婚をすることが決まっており、息子に恋人がいることを知りながら、女将を嫁として迎えたのでした。結婚してからも会っていた、樹と七桜の母、百合子。その関係も、大旦那は知っていたのです。
七桜の正体を知った大旦那は、誰を後継ぎにするかを考え、12月31日大晦日の除夜祭の日に、2人に菓子を作ってくるように告げます。より美味しく、魂を振るわせるような菓子を作ることができたほうに、店を譲ると告げました。
光月庵を継ぐため、店を閉めて御菓子作りに没頭する七桜。迷走する彼女にアドバイスをすると同時に、自身の気持ちを告げたのは多喜川でした。彼の想いに触れた七桜は、除夜祭の前日に椿を呼び出し、あるお願いをするのでした。
なぜ女将が光月庵にこれほどまでに固執するのか、その謎の一端が明かされます。嫌がらせや妨害という言葉が可愛く感じるほど、いろいろなことを画策してきた女将。悲しい過去の一端を知ると、単純に嫌な人とも言えず、複雑な気持ちになります。後継ぎ問題も気になりますが、恋も予想外の展開に。七桜の気持ちがどちらへ向かうのでしょうか。
私たちはどうかしている(11) (BE LOVE KC)
2020年12月13日
光月庵の正式な跡取りとして選ばれたのは、七桜でした。彼女だけでなく椿にも言葉を残し、大旦那は亡くなります。葬式が済み、跡取りとなった七桜を前に、椿は絶対に店を潰さないでほしいとお願いし、その場を立ち去るのでした。
跡取りとして戻ってきた彼女でしたが、椿を追い出した形になってしまったため、光月庵の従業員たちからは受け入れられません。そんな彼女に女将は近づきますが、逆に殺人事件のことで証言をするように迫られます。女将は突然、行くところもないのに追い出された椿は可哀そうと言いながら姿を消し、七桜の心をざわつかせます。
まだ店に馴染めない中、栞の姉である長谷由香莉が七桜を訊ねてきます。由香莉は七桜に、武六会へ参加してほしいと告げます。加賀の伝統を守る6つの名店のみが買いに出ることを許されており、光月庵の正式な跡取りとなった七桜には参加の資格があります。
会に参加した彼女は、参加者から1か月後の新春奉納の儀に使用する菓子を作るように言われます。それは光月庵に代々伝わってきた道具で作る、特別な御菓子でした。光月庵に戻り、道具を探す七桜でしたがそれらしきものは見当たりません。そこに女将の痕跡を見つけ、女将が隠したのかと調べてみますが、すでに女将の姿は光月庵から消えていたのでした。
念願の跡取りになったものの、七桜には新たな難題が降り注ぎます。女将が大人しくなったと思いきや、それ以上に厄介そうな人物が出てきたりと前途は多難。多喜川や椿を巡る問題も浮上し、事件が解決したはずなのにまだ謎が残ります。
- 著者
- 安藤 なつみ
- 出版日
謎と試練がこれでもかと襲い掛かってくるラブミステリー。ドラマ化を前に物語の詳細や抑えておきたい重要ポイントも掴めたのではないでしょうか。とはいえ細かい伏線や気持ちの揺れ動き、謎解きも恋物語も楽しむならば、原作を手に取っていただくのが1番。ドラマをより一層楽しむためにも、ぜひ原作をお手に取って愛憎劇に浸ってください。