「サムライ8」は打ち切り?岸本斉史の挑戦作の狙いや語録も紹介!

更新:2021.11.28

『NARUTO -ナルト-』の作者・岸本斉史の『サムライ8 八丸伝』の1年足らずの打ち切りが決定。リスク覚悟で描いた本作には、どんな意図があったのでしょうか?新作漫画に込めた大ヒット漫画家の狙いに迫ります!

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「サムライ8」が打ち切り決定で賛否両論!【あらすじ】

『サムライ8 八丸伝』(以下「サムライ8」)は「侍」が活躍する風変わりなSF漫画です。『NARUTO -ナルト-』(以下「NARUTO」)作者の新作として2019年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていましたが、1年足らずで連載終了となりました。

打ち切りについては、読者から賛否両論。

「つまらない」「わかりづらい」という声がある一方で、作中の台詞は「名言」として注目されました。 独特な言い回しがクセになるのか、その人気はネット上で「サムライ8語録」が作られるほど。 

また作画担当の大久保を惜しむ声も少なくありません。彼の絵は読者の間でもクオリティが高いと評判で、そのため今回の連載打ち切りには同情する流れもあるのです。  このように「サムライ8」は打ち切りになったものの、作品の影響力は大きかったのです。

まずはどんな作品なのか、あらすじを簡単にご紹介します。

主人公は八丸という虚弱体質の少年で、生命維持装置が無ければ生きていけません。そのために八丸はゲームに登場する「侍」に強く憧れていました。そんなある日、八丸の持つ「宝刀」を求めて敵が襲い掛かります。八丸は決死の覚悟の末に、武神に選ばれたサイボーグ・「侍」として覚醒します。 

自由な体を手に入れた八丸は、宇宙を救う「箱」と「鍵」を探すために旅立つのでした……。 

「サムライ8」を「NARUTO」に次ぐ名作に!作者・岸本斉史の野心的な挑戦

「サムライ8」の原作者は岸本斉史。大人気忍者バトル漫画「NARUTO」の作者として有名です。

映画鑑賞が趣味だという岸本。彼の作品の構図にも活かされています。特にアクションシーンは「一度頭の中で動画として思い描いたうえで、切り取り方を決めている」のだそう。

作画担当の大久保彰は岸本の元アシスタントでした。本作を担当するまでに『トトの剣』、『魔法使いムク』という読み切り作品を生み出しています。アシスタントとして10年以上、岸本のもとで画力を磨いていました。

岸本は「サムライ8」で様々な挑戦をしています。作画を大久保に任せたのもその1つです「NARUTO」を超える漫画を描く……岸本の熱い姿勢は、連載前の読者の期待をさらに高めていきました。

では、岸本は「サムライ8」でどんな挑戦をしたのでしょう?読者からの批判的な意見も交えながら、その裏に潜む岸本の意図をご紹介します!

 


岸本斉史については<岸本斉史の意外な6の事実!画力の高さがすごい!【おすすめ作品も紹介】の記事でも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

挑戦1・説明がくどい!理由は世界観にあった

「サムライ8」の説明台詞の多さはよく批判されています。「武士」と「侍」の違いなど用語説明が多く、さらにその難解さは読者離れの一因となりました。

そもそも、実はSF作品は少年誌では難しいもの。世界観の詳細な説明がどうしても必要になるからです。

しかし岸本は「NARUTO」読者ならあるいはと、賭けに出ました。「サムライ8」の世界観を、リスク覚悟で作り込んだのです。結果はともかく、大ヒット漫画家のこの姿勢は好感が持てるのではないでしょうか?

一方で、読者が少しでも読みやすいように工夫もされています。それが「侍」です。「侍」は少年誌らしい分かりやすい題材で、『銀魂』や『るろうに剣心』のように世界的にも愛されています。

岸本は「侍」という概念をSFに加えることで、「サムライ8」にバトルの迫力や熱い人情といったな魅力を与えようとしたのです。

著者
大久保 彰
出版日
2019-10-04

挑戦2・主人公がダサい理由はあえての設定

主人公・八丸の読者人気はいまいちでした。

八丸は体が弱く、ひょろひょろした眼鏡キャラです。この見た目が、読者が期待した主人公像から離れていたのかもしれません。

しかしここでも、岸本はあえて典型的な主人公を描くことを避けていました。岸本曰く、「キャラ位置をズラす」という試みです。つまり、見た目と性格のギャップを構築し、新鮮さを演出しようとしたのです。

この試みにより、八丸は眼鏡の貧弱キャラかつ活発な言動の少年として誕生しました。

「サムライ8」では、このように見た目と性格にギャップがあるキャラクターが多く登場しています。「ベタ」ではない良さを持つキャラクターたちは、予想の斜め上の行動を取ってくることでしょう。他にも作者の狙いを探してみてはいかがでしょう。

挑戦3:作画・大久保彰の描写力を全面に信頼

岸本は以前から大久保の絵を世に出したいと考えていました。「サムライ8」の作画を彼に任せたのもそのためです。

大久保の絵は少年誌向けでセンスがよいと、岸本自ら負けを認めるほどその描画力を信頼しています。そして岸本の狙いどおり、連載が始まると大久保の絵は読者からも支持されました。

キャラクター造形も好評で、特に最終話のアン王女の描写はファンも納得。打ち切り作品ながら爪痕を残したと言えます。

その一方で、サイボーグの描写は気味悪がられたようです。作中では「鍵(キー)」という脊柱に似たメモリーユニットが飛び出たり、時に生々しい姿が描かれました。しかしそれは、読者全体が大久保のクオリティを認めたことに繋がります。

結果として、大久保彰は次回作を期待されるほど注目の的に。今後の活躍を願わずにはいられません。

著者
大久保 彰
出版日
2019-10-04

「サムライ8」語録も傑作。応用する人続出!

 

  • 「武士じゃねェ侍だ!浪人だがな」……「武士」「浪人」の部分を変えて自己紹介に使えます。
  • 「勇を失ったな 」……何かを失った時にぜひ。「you lose」とかけた言葉遊びとの考察もあります。
  • 「拙者、お前の中に勇を見た」……「サムライ8」では「義」や「勇」といった概念が重要視されています。誰かを褒める時に使えます。
  • 「もう…散体しろ!」……往生際の悪い相手に 「負けを認めろ」という意味合いで使います。
  • 「師匠がどう思おうが失望されたかどうかはオレが決める事にするよ」……開き直る時に使います。「サムライ8」語録のなかでも人気の名言です。

 

基本的に「サムライ8」の台詞は回りくどく、読者に指摘されることも多々あります。

しかし語録ができるほど、皆が関心を寄せ続けた漫画だといえるでしょう。

登場人物紹介

八丸……眼鏡をかけた「侍」に憧れる少年。虚弱体質だが活発な性格で、「侍」に変化後は父の仇を打つべく旅に出ます。

達磨……猫のような姿をした金剛夜叉流免許皆伝の侍。八丸の師匠です。50年以上もの間、宇宙を救うために「パンドラの箱」と「鍵」を探しています。

アン……八丸と同じ星で「姫」の修行をしていた少女。八丸が「侍」に変貌するきっかけである「ロッカーボール」の持ち主です。八丸とは「運命の侍と姫」の関係に当たります。

早太郎……ニャンと鳴く犬の姿をした機械生命体(ホルダー)。元々は小型犬サイズでしたが、八丸の侍化とともに大型化して復活しました。

浪人……上記名言の1つ「武士じゃねえ侍だ! 浪人だがな」と発言する人物。八丸に倒され(散体させられ)ました。 

「サムライ8」がつまらないかどうかは俺が決めることにするよ

「サムライ8」は、作者の狙いを知った上でぜひ読んで欲しい作品です。ここまでご紹介したとおり、この漫画には岸本の綿密な意図が込められています。

確かに、作品は打ち切りになりました。しかし、作者のリスク覚悟の連載は、彼の狙いどおりになった部分もあります。そのため、「サムライ8」はただのつまらない作品とは言い切れません。

読んでみれば温かなタッチや独特の世界観など、評判だけでは分からなかった魅力に出会える筈です。

著者
["大久保 彰", "岸本 斉史"]
出版日

「サムライ8」の魅力を紹介しましたが、この記事で分かることは岸本情熱の一端です。ぜひコミックスを読んで、大久保の洗練された絵と岸本の飽くなき挑戦をご覧ください!

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