外出をしなくなったことで、普段メイクを5分で済ませる程ずぼらな私は、益々身だしなみへの興味が薄れていっています。 体毛が伸び続け、見られているという緊張感が抜け落ち……。 先日、腕毛が伸びすぎて、チクチクすらしなくなったので「あ、これはなんかいかん」と思い、綺麗に剃りました。 そして、次の日は5分以上使ってしっかりメイク。 あぁ、誰かに見せたかったな綺麗な私。 皆様はいかがお過ごしでしょうか。
自粛生活も、想像していたよりもあっという間に過ぎて行き、1カ月以上経過していることに、少し驚きを感じております。
自分の見た目への関心は、日に日に薄れていきますが、
その反面、大切に思うようになったことがあります。
今回はそんな、今だからこそ大切に思うことが盛り込まれた作品を、ご紹介いたします。
- 著者
- 原田マハ
- 出版日
- 2013-06-07
小説を読んで泣く、という経験をしたことがなかった私に、とうとうその時が来た。
あまり馴染みがない職業、「スピーチライター」の物語。
OLの二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼馴染み・厚志の結婚式に出席していた。
そこで聞いた眠気を誘う祝辞により、スープに顔をダイブ。
メイクは落ちるわ、笑い者だわ、最悪な気分なこと葉の目を覚まさせたのは、スープではなく、
伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。
彼女の言葉に感動したこと葉は、早速弟子入りをはたし、なんと、「政権交代」を掲げた選挙の際の、野党のスピーチライターに抜擢される。
言葉の力を信じて突き進み、よりよい方向に世の中を変えようと奮起する姿に、胸が熱くなる小説だ。
なんと言っても、この作品の要は「言葉」。
言葉の持つ力の偉大さにあらためて気付かされた。
人前で話す、「スピーチ」に焦点を当てたこの作品は、ニュースのアナウンサーやコメンテーター、政治家の発言1つ1つへの関心を深めてくれた。
話し方や、言葉の選び方で、伝わり方ががらりと変わる「言葉」。
私も、あの人にいじられるのは許せるけど、あの人にいじられるのは許せない。という経験を何度もしている。
同じ言葉でも、笑いになるはずの言葉が、話し方によって人を不快にさせるのだ。
言葉っていうのは、魔物だ。人を傷つけも、励ましもする。(中略)この魔物をどう操るか。それは、話す人次第なのだ。
そう。まさに、「魔物」だ。
今やSNSが発達し、誰でも全世界に発信ができる世の中で、「炎上」や「バズる」なんて言葉が生まれている。
1つの投稿で人生が変わる人もいるほど、「言葉の力」は思っているより身近で、強いのだ。
先が見えない今だからこそ、「よい魔物」を発することが重要になっていると思う。
そして、この作品の底で流れ続けているテーマが「家族」だ。
こと葉と厚志の両家族は、血は繋がっていないが、親戚同様に家族ぐるみの付き合いを続けている。
こと葉の「もうひとりのお父さん」が、厚志の父親であり、衆議院議員だった、「今川のおじさん」こと、今川篤郎だ。
今川のおじさんは病気で亡くなってしまったが、誠実に、懸命に生きた彼が残した言葉達と、時には言葉ではなく、行動で包み込む彼の背中を見続けてきたこと葉たち家族。
その背中を追い続けること葉たちから広がっていく家族の輪は、羨ましいと思うほど、深いのだ。
東京に住む私は、茨城にいる家族に今は会えない。
家族への思いが募る今だからこそ、この作品の「家族」というテーマが進むにつれ、涙が止まらなくなった。
あらためて、家族の存在の大きさを感じ、いかに家族の存在が原動力になっているのかを思い出させてくれたのだ。
気恥ずかしいが、今は、「自分の言葉」で、家族に思いを伝えるタイミングなのかもしれない。
私は、この作品の「言葉の力」によって、勇気をもらった。
先が見えず、悶々とする毎日だが、いくらでも「言葉」で素敵な毎日にできる。
明るい未来が絶対に来ると信じさせてくれる、胸アツな作品だ。
とにかく、「今」読んでいただきたい。
マジで、興奮します。マジで。
あまり関係ないですが、私は、こと葉の奮闘する姿に感化され、「何かしなければ!」と、体幹を鍛えるピラティスを始めました。
実は元気に腕毛は伸び始めているので、体の内側くらいは緊張感を持って過ごしたいと思います。
来月は、少しでも明るい未来になっているといいな。
皆様、お元気でお過ごしください。