みている人をあっと驚かせるマジシャン。テレビや道端でのパフォーマンス、マジックショーなどで一度は見たことがあるでしょう。その不思議さから、タネが気になって虜になってしまうものですが、それはプロのマジシャンが披露するからこそ。しかし、そもそも「プロ」と呼ばれるマジシャンは、どのように収入を得て、仕事にしているのでしょうか。 この記事では、「マジシャンってどんな仕事なの?」「マジシャンになるためにはどうすればよいの?」といった、仕事としての「マジシャン」の実態をご紹介します。
マジシャンとは、マジック(奇術)を披露する人のことで、奇術師や手品師と呼ばれることもあります。
日本では、Mr.マリックやマギー審司などがTVを中心としたさまざまなメディアや舞台で活躍しています。メディア以外にも道端やホテル、児童館やお年寄り向けの施設、マジックバーなど、マジシャンの活動の場はさまざま。人の集まる場所を中心に、多くの場所で活躍しています。
「マジシャン」と呼ばれるために特別な資格があるわけではないのですが、一般的にはマジックを披露して収入を得ることによって「プロ」と呼ばれるようになります。
ただマジックをたくさん覚えればいいということではなく、客層に合わせて演目を組んだり、トークで観客の気持ちをぐっと引きつけたりする能力が必要です。そういった意味では、演技力や技術力はもちろん、企画力やプレゼンテーション能力も求められる仕事といえるでしょう。
また、テレビに出演したり大きなステージに立てるのは、ほんの一握りのマジシャンのみ。ショーに出演するためには、地道な人脈づくりや自分を売り込む営業力も必要です。
芸能事務所などに所属して仕事を受けるという手段もありますが、タレントや歌手などと比べても、マジシャンを扱っている大手芸能事務所は多くないのが現状。仕事を見つけるための道は、少々険しいといえるかもしれません。
意外と知られていませんが、マジックに関するコンテストもいくつか開催されています。活躍できるマジシャンになるには、コンテストで入賞して知名度をあげるのも手段のひとつです。
実際、プロマジシャンであるMr.マリックさんは大会で優勝したことをきっかけに、マジシャンとしての知名度をあげていきます。特に3年に一度開催されるマジシャンのオリンピック「FISMマジック世界大会」は注目度の高い大会です。
この大会に日本代表として出場できれば、日本国内での知名度もある程度は確保することができるでしょう。
プロ並みのマジックを身につけたとしても、仕事をもらって稼げるようにならなければプロとはいえません。マジシャンとして仕事をもらうためには、どうすればよいのでしょうか。
マジックショーへの出演は単発の仕事であることが多いため、派遣会社に登録して仕事をもらうマジシャンも多くいます。コネクションが強くない方でも、派遣登録をすることで仕事をもらうチャンスがあります。派遣先で実績を積むことで、ゆくゆくは独立して自分のペースで働けるようにもなるかもしれません。
マジシャンとして登録できる派遣会社は複数あります。
各サイトに派遣の依頼例が掲載されているので、自分の得意とするマジックを披露できるシーンがあるかどうか確認してから登録するのがよさそうです。また顧客向けに料金やコースなども記載されています。マジシャンとしてどれくらいの収入を得られるかの参考になるはずです。
いきなり人気のマジシャンになることは難しいでしょう。しかし経験を積み、少しずつ収入をあげるには派遣会社への登録は必須といえそうです。
マジックショーのスタッフや芸能事務所、イベントを運営している企業などに顔を覚えてもらうことで、仕事の機会を得られる場合があります。一度仕事をもらえれば、その実績や口コミで次の仕事につながる可能性も高くなるでしょう。
駆け出しのマジシャンにとっては、まずは地道に営業活動をし、信頼と実績を積み上げていくことが大切です。
近年、気軽にマジックを楽しむ場としてマジックバーの人気が高まっています。また、定期的にマジックのイベントを開催しているレストランなどもあります。そういった店舗に勤務することで、定期的にマジシャンとしての収入を稼ぐことが可能です。
マジックバーのある場所はさまざまですが、銀座や新宿、赤坂などに集中している傾向があります。その近辺では会食や接待などで利用するお客さんが多いでしょうから、稼働日数などが多く、たくさんの経験を積めるかもしれません。
もしお客様に気に入ってもらえれば、ステージやイベントに呼んでもらえるチャンスもあるかもしれません。一緒に勤務するマジシャンとのコネクションが、次の仕事につながる場合もあります。
マジシャンの一般的な平均月収は10万〜15万円と言われています。年収にすれば120万〜180万円ほどですので、決して高いとはいえません。
しかし、マジシャンの給料体系は、月々決まった額をもらうサラリーマンとは異なります。月給ではなく、仕事をした分だけ報酬をもらうという流れが一般的といわれています。個人で仕事を受ける場合も、事務所や派遣会社から仕事を受ける場合も、基本的には同様でしょう。
報酬は、ステージやショーの規模にもよりますが、1回の出演で数万円程度になることが多いようです。ただマジシャンとしての知名度や人気によって、この報酬は大きく異なってきます。TVなどのメディアに出るほどの人気が出れば、一度の出演で数十万円、数百万円という単位で稼ぐことも夢ではありません。
とはいえ、安定的な年収や収入は見込めない世界だと考えるのが妥当です。新人マジシャンの中には、副業やアルバイトをして生計を立てている人も多くいます。マジシャンの仕事のみで食べていくには、相当な覚悟や実力、努力が必要といえるでしょう。
一概にマジックといっても、コインやトランプを使うものや、鳩やシルクを使うものなど、種類は多岐にわたります。コインやロープのマジックはテーブルの上でできますが、ハトやシルクを使うマジックはある程度の広さの舞台が必要です。
実はマジックは、テーブルや舞台など、披露する場の規模によって分類されています。主な3つの分類について、下記で解説します。
机の上でできる小規模なマジックを「クロースアップマジック」、または「テーブルマジック」と呼びます。例としては、コインやトランプ、ロープなどのマジックがあげられます。
こういったマジックの道具は、お店にキットが売り出されているものが多いため、入門編として人気があります。気軽に始めらるうえ、家庭内などでも披露することが可能です。一方で派手さには欠けるため、仕事にするにはかなり腕をあげる必要があります。
大人数を相手に、舞台の上でおこなわれるマジックを「ステージマジック」と呼びます。
ハトを出現させるものや人体を切断するものなど、テレビなどで一度は見たことがあるかもしれません。派手な演出が多く、特に大規模なものは「イリュージョン」とも呼ばれます。
ハトや人体切断機などのマジック道具は、なかなか手に入りづらいものです。専門店や小道具の制作会社を探して入手する必要があります。また、練習にもある程度の広さが必要なため、初心者にはハードルが高いという面があります。
サロンマジックとは、クロースアップマジックとステージマジックの中間の規模のマジックです。
比較的近い距離で、華やかな演出のマジックを楽しめるジャンルともいえるでしょう。コインやロープのほか、ステッキやリングを使ったマジックが代表的です。サロンマジックは観客参加型のものも多く、児童館や介護施設などでよく披露されています。
では、マジックを身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは3つの方法をご紹介します。
すでにプロとして活動しているマジシャンに弟子入りすることができれば、第一線で通用する技を習得することができます。最前線で活躍している人のマジックを直接学んでいくうちに、助手としてマジックショーの舞台に立てる可能性もあります。
まずは、マジックバーやマジックサークルなど、マジシャンと直接関われる場に顔を出してみるのが近道かもしれません。
マジック教室でプロのマジシャンから教わる
プロのマジシャンに弟子入りすることが難しければ、マジシャンが講師していたり、運営していたりするマジックスクールに通うという方法もあります。
マジックスクールでは、初心者コースからプロ養成コースまで、さまざまなコースがあります。自分に合ったコースを選んで通うことで、自分自身の目標を最短で達成することができるでしょう。通うのが難しい場合は、オンラインで受講できるスクールも活用してみてください。
マジシャンに弟子入りしたり、マジック教室に通ったりするには、ある程度のお金や時間が必要です。それが難しいという方は、独学でマジックを学ぶことも可能です。もちろん実際にプロの技を見るのが一番ですが、書籍やDVD、インターネット動画などを見ながらマジックの練習をすることもできます。
マジックで使う道具も、専門店やインターネット通販などで買うことができます。手始めに簡単なマジックを習得してみたい方、自分にマジシャンの適性があるか試してみたいという方は、まずは独学で初めてみることをおすすめします。
タレントや歌手と同じように、マジシャンになるために定められた必須資格というものはありません。では、プロのマジシャンになるにはどういった条件が必要なのでしょうか。
マジシャンの仕事は、いかなる状況でもお客様を楽しませることが第一。「誰かに喜んでもらいたい」というサービス精神が強い方にはぴったりの仕事です。「どうすれば楽しんでもらえるか」を常に考え、努力を惜しまない気持ちが大切です。
大きなステージや少人数の会場、マジックバーなど、マジックを披露する場はさまざま。さらに会場によって客層も異なるため、その場に合わせてマジックの演出を工夫する「演出力」の高さも必要です。また、マジシャンにはトーク力が欠かせません。初対面の人を相手にすることが多いことから、人を惹きつける「トーク力」を磨く必要があります。
マジックの技を磨くだけでなく、日ごろからトークや演出などにもこだわりを持っておくと、マジシャンとしての価値を高めることができるでしょう。
マジシャンの仕事は、見ている相手がいないと成立しないうえ、常に一発勝負で失敗が許されない世界でもあります。緊張のあまり失敗を繰り返すなど、お客さまを満足させることができなかった場合は、最悪仕事を失ってしまうことも。
よって、もともと人前に出ることが好きな方や、緊張に強いという方には向いている職業といえます。人前が苦手な方や緊張しやすい方は、普段からマジックやトークを人に見てもらうことをおすすめします。努力を重ねて自信を付けていくことで、緊張せず本番を成功させられるようになるはずです。
- 著者
- 中里正紀
- 出版日
家にあるトランプやハンカチ、コインなどを使って簡単なマジックを習得したい方におすすめの本が『めちゃウケ!かんたん面白マジック』です。
身近にあるものを使って実践できるので、特別な道具を準備する必要がありません。また、写真やイラストを豊富に使ってるので、マジックの手順が視覚的にわかりやすいのも特徴。マジックを披露する際のセリフまで紹介してくれているので、トークの練習にもなります。
「演技時は、観客の顔をきちんと見よう」「マジシャンのキャラクターを設定して演出を工夫しよう」など、実践的なアドバイスも。最終章では、いくつかのマジックを組み合わせたマジックショーのプログラムも掲載しています。この一冊があれば、人前でマジックショーを披露することができるようになりますよ。
- 著者
- Mr.マリック
- 出版日
テレビでも活躍する有名マジシャン、Mr.マリックが監修をつとめる『Mr.マリックの超魔術入門超百科 (これマジ?ひみつの超百科)』。イラストや漫画調の解説が多いので、読み物としても楽しめる一冊です。
Mr.マリックのキャッチコピーである「ハンドパワー」をはじめ、念力や透視などのマジックを紹介しています。「予言封筒」や「勝手にほどける結び目」「動きだす卵」など、簡単に実践できるのに、見ている人がびっくりするようなマジックがたくさん。
また、記載されているQRコードを読み取ると、マジックのYouTube動画を見ることができます。本を読むだけでは伝わりづらい解説も、動画と併用することでわかりやすいよう工夫されています。初心者や子供も楽しく学べる内容なので、最初の一冊としてもぴったりです。
- 著者
- []
- 出版日
マジシャンに必要な演技力を磨きたい方におすすめなのが『テレビでやってた人気マジックのタネぜんぶバラします メンタリズムスペシャル 裏モノJAPAN別冊 』です。
マジックには、技を磨くだけでなく魅せ方や演出力が求められます。そのためには、マジックのタネでもある「メンタリズム」を学ぶことが大切。観客の意識をメンタリズムで操作することで、簡単なタネでも観客を驚かせることができるのです。この本では、マジックを魅力的に見せるための心理や演出を重点的に学ぶことができます。
初心者から上級者までレベル分けされているので、その時の自分に合ったレベルのマジックを習得できるのもポイントです。ただ、「マジックについての知識がまったく無い人には少し難しい」というレビューもあるので、ある程度の基礎知識をつけてから読むのがおすすめです。
マジシャンという仕事は華やかなので、憧れる方も多い職業です。しかし技やトーク、演技力を磨くためには練習は不可欠。さらに仕事を得るためには営業活動も必要など、実は地道な努力が必要な仕事でもあります。ただ、マジックを成功させたときのお客様からのリアクションは大きなやりがいになります。喜んでくれる顔を間近で見られるため、達成感も大きいでしょう。
マジックは簡単にできるものも多いため、初心者でも気軽に楽しめるのが魅力。マジシャンの仕事に興味を持ったら、まずは簡単なマジックを習得することから初めてみてはいかがでしょうか。