公務員は、その職場環境や給与面の安定性から人気の高い職業です。ただ、一概に公務員と言ってもその職種は様々です。今回ご紹介する「一般行政職」は、そのなかでも採用数が多く、多種多様な職務に従事することのできる職種。この記事では、公務員の一般行政職の仕事や年収、採用試験の内容について解説します。難易度が高いと言われている公務員試験に関しては、おすすめの勉強法や問題集も紹介するので参考にしてみてください。
公務員のなかでも「一般行政職」とは、大臣や裁判官などの専門職ではなく、行政に関わる一般事務に携わる公務員のこと。国や自治体の行政・福祉を円滑に進めるため、国民に情報提供をしたり、住民の相談や指導をしたりするのが仕事です。
公務員は大きく分けて、政府機関に勤務する「国家公務員」と、地方自治体の職員として働く「地方公務員」の2つに分類されます。国家公務員の一般行政職の場合、厚生労働省の健康局や社会・援護局、老健局などに配属されます。地方公務員の場合は、民生主管部、保健衛生、福祉などの部署に配属されることが多いようです。
社会福祉の行政全般に関わる仕事なので、国民生活を送る上で欠かせない仕事といえるでしょう。「国や地方をもっと良くしたい」という思いがある人に適しています。
公務員といえば、やはり安定性の面で魅力があります。民間企業の場合、リーマンショックや新型コロナウイルスなどの影響を受けると倒産や給料カットなどのリスクが伴います。一方で公務員は、「国家公務員法」や「地方公務員法」によって国に保証された職業です。よって倒産や給料カットなどのリスクはほとんどありません。
民間企業にはない手当が多いことも公務員の魅力です。下記では、国が定めた「公務員の諸手当の概要」をもとに、公務員の手当の一部をご紹介します。
国家公務員の一般行政職を例にあげると、土日祝日が休みで、勤務時間は7時間45分が正規の勤務基準です。それを超過すると、超過勤務手当が支払われます。民間企業の中にはサービス残業として残業代が支払われないことがありますが、公務員の場合はそういった心配はありません。
特地勤務手当
国家公務員は、勤務地によって手当が支給されることがあります。離島などの著しく生活の不便な場所や北海道・東北地方などの寒冷地に異動することなった場合、手当が支給されます。民間企業の場合、企業によってアパートなどを借りた場合の家賃補助はあるかもしれませんが、公務員のような手当が支給されることはあまりありません。
そのほかにも単身赴任手当や特殊勤務手当、期末手当など、場合によってもらえる手当が充実しています。さらに地方公務員の場合、勤務する自治体によって独身手当などの特殊な手当が残っている場合もあるようです。
女性の場合、産休明けの職場復帰のことが気になる方も多いと思います。民間企業の場合、まだ産休や育休が取りにくい環境であるというニュースを耳にしたこともあるかもしれません。しかし公務員の場合は、国が産休・育休を取るよう啓蒙していることもあり、休暇を取りやすい環境です。昨今では公務員男性の育児休暇取得も推奨しているため、男性でも育休を取得する方が増えているようです。
公務員(一般行政職)の年収は、国家公務員と地方公務員によって異なります。下記は、平均給与✕12+ボーナス額で算出した数字になります。
国家公務員の場合、7,283,496円(平均年齢43.4歳)
地方公務員の場合、6,418,830円(平均年齢42.2歳)
ただし、配属の部署や地域によってこの金額にはかなり幅があります。とはいえ、この数字から考えるに、公務員の給与水準はかなり高いといえるでしょう。
また、国家公務員は地方公務員より平均年収が高いですが、全国規模で異動する可能性があります。全国ではなく地元で公務員として働きたい方は、地方公務員を目指すことをおすすめします。
国家公務員の一般行政職の場合、国会に提出する法律案の作成や政策立案に関わることができます。自らが作成に関わった法律案が可決されると、誇りを持つことができるかもしれません。 全国民に関わるスケールの大きな仕事なので、そういった面にやりがいを見出す方も多いでしょう。
地方公務員の一般行政職は、地域密着型の仕事が多いので、住民から直接要望を聞くことがあります。住民の生の声を聞きながらその地域に貢献できるということは、地方公務員ならではのやりがいといえるでしょう。
また、これはどちらにも共通することですが、公務員の仕事は民間企業とは異なり、自社の利益や売上を上げることを目的とはしていません。世の中のため、国民のために尽力できるというのは、公務員の仕事の大きな特徴であり、やりがいです。世の中を少しでもよい方向に変えたい、という想いを持っている方には、最適な職業となり得るでしょう。
国家公務員の一般行政職は、国家公務員か地方公務員かによって必要な試験が異なります。試験は共通する部分が多いため、両方を併願する方が多いようです。
国家公務員の場合、国家公務員採用一般職試験に合格し、面談後に内定を受ける必要があります。この一般職試験には、「大卒程度試験」と「高卒者試験」の2種類があります。大卒程度試験の場合、「教養試験」「専門試験」の2種類の受験が必要です。
地方公務員の場合は、地方公務員試験に合格する必要があります。所属する地方自治体によって、年齢制限や採用方法、試験の呼び方が変わってくるので注意が必要です。基本的には「上級(大卒程度)」「中級(短大卒程度)」「初級(高卒程度)」の3種類に分けられます。
下記では、それぞれの試験の対策に適した問題集をご紹介します。同時におすすめの勉強法も解説するので、参考にしてみてください。
本書では、平成20年度から令和元年度の国家公務員一般職の教養試験の過去問を掲載。全500問もの問題が収録されていて、教養試験に出るポイントもわかりやすく解説されています。
科目は、文章理解(現代文・英文)・判断推理・数的推理・資料解釈・時事・自然科学(物理・化学・生物)・人文科学(日本史・世界史・地理・思想)・社会科学(法律・経済・政治)です。
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教養試験の場合は、数的推理の攻略が合格の鍵になります。中学・高校レベルの数学の問題をマスターしておけば問題ないでしょう。数学の問題に慣れるまでは、繰り返し解いてコツをつかみましょう。
人文科学(日本史・世界史・地理・思想)と社会科学(法律・経済・政治)については、高校レベルの導入程度の知識があれば十分です。高校で習っていない・受験科目でなかったので勉強していないという場合は、公務員試験用のポイントをまとめた参考書で補えば十分です。
平成25年度から令和元年度の国家公務員一般職の専門試験の過去問題集です。一般行政職に必要な、行政職専門科目の択一式500問を収録。自分のレベルをチェックしたり、傾向と対策を考えたりするのに必須の一冊です。
専門科目は政治学 ・行政学・憲法・行政法・民法・ミクロ経済学・マクロ経済学・財政学・経済事情・経営学・国際関係・社会学・心理学・英語(基礎、一般)となっています。
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国家公務員の専門科目の試験は、かなり難易度が高いと言われているのが現状。ただ、大学で法学系・政治学系・経済学系のいずれかの学部に所属している場合、大学の講義を活用すれば効率的に試験勉強ができます。なぜなら、講義の中で公務員試験の出題傾向を話している可能性があるからです。
大学の学部レベルの定期テストと専門書の練習問題を解くことができれば、試験は攻略できるでしょう。あとは過去問を繰り返し解いて解き方のパターンをマスターすれば高得点を狙えます。
平成5年度から令和元年度の地方上級の教養試験の過去問が載っています。教養試験の科目は政治・経済・社会・日本史・世界史・地理・思想・文学・芸術・国語・数学など、多岐にわたります。
受験する地方公共団体によって科目の名称や配点などが異なる場合がありますが、必要な試験対策はあまり変わりません。
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地方公務員上級と国家公務員一般職の教養試験の出題形式はほとんど同じです。国家公務員一般職と同様に、繰り返し過去問を解いてコツをマスターしましょう。国家公務員一般職の教養試験の過去問も練習用として解くことをおすすめします。
日程的には、国家公務員一般職の試験が先におこなわれています。よって、国家公務員一般職の受験を経て、地方公務員上級の試験を受ける人が多いようです。
なお、東京都(都庁)と特別区(東京23区)の公務員受験を考えている場合、若干試験対策が異なってきます。別途過去問が販売されているので、チェックしてみてください。
本書には、平成9年度から令和元年度の地方上級の専門試験の過去問が載っています。専門試験の科目は政治学・行政学・社会政策・社会学・国際関係・憲法・行政法・民法・刑法・労働法などです。
なお、こちらも受験する地方公共団体によって科目の名称や配点などが異なる場合があります。
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教養試験と同じく、地方公務員上級と国家公務員一般職の試験の出題形式はほとんど同じ。国家公務員一般職の専門試験の過去問も練習用として使うことができます。繰り返し過去問を解いて、コツをマスターしましょう。
自治体ごとに配点や傾向が異なるので、受験する地域が決まっている場合は、その地域ごとの特性などを調べて対策するのがおすすめです。
こちらは、地方公務員中級(短大卒程度)の採用試験の過去問題集。教養試験問題と専門試験問題、どちらも網羅した内容です。試験の出題傾向に沿って豊富な演習問題を掲載していて、効率的に実力をつけることができます。
採用試験の日程や採用までのルート、細かい試験概要などの情報も網羅。公務員試験に興味がある方は、力試しも兼ねて一読する価値のある内容です。
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公務員の一般行政職と言えば大卒程度という印象を受ける人がいるかもしれませんが、高卒でも公務員の一般行政職に就くことができます。本書は、高卒で公務員の一般行政職を考えている方で、仕事内容や試験問題が気になる人に推薦したい一冊。公務員試験の試験区分や職種、試験問題の攻略法が紹介されています。
公務員試験といえば、高卒大卒関係なく出題科目が多いのが特徴。手こずる方が多い理由の一つです。本書では、効果的に勉強するための攻略法も紹介されています。
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なお、高卒レベルの公務員の試験問題は全て高校レベルです。大卒レベルの国家公務員一般職と地方上級・中級・市役所とは異なり、政治学・法学・経済学などの専門試験はありません。
この本の他に過去問を購入する場合、国家公務員の場合はタイトルに「高卒」と入っているもの、地方公務員の場合はタイトルが「地方初級」となっているものをそれぞれ探してみてください。
今回は公務員のなかでも、「一般行政職」について紹介しました。
試験に合格するためのコツとしては、繰り返し過去問を解くことをおすすめします。難関の大学入試とは異なり、奇をてらう問題はほとんどないのが現状。過去問を繰り返し解いていると、出題パターンが同じであることに気付くと思います。
公務員に興味を持ったら、過去問を繰り返し解いたり、大学の講座や説明会に出たりして情報収集をしてみましょう!