心理学とは、「心」について学ぶ学問です。そうひとことで言っても、具体的にどういうことを学ぶのか想像がつかない方もいるかと思います。実は心理学は、さまざまな仕事に生かせるだけでなく、自分自身の心の健康を守ることにもつながる学問でもあります。 この記事では、心理学とはどんな学問なのか、どんなことに活かせるのかを分かりやすく解説します。進学先で心理学について学ぶことを考えている方や、心理学についての知識をいかした就職先を探している方など、心理学に少しでも興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
心理学とは、端的に言うと「人間の心のメカニズムを科学的に解明する学問」です。
普段生活する中で、「悲しい気持ちになって食事が喉を通らない」「ジョギングをすることでモヤモヤした気持ちが晴れた」などといった経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか?
これは一例ですが、こういった心と身体の関係を、科学的に研究していくのが心理学です。一見難しそうな学問と捉えられがちですが、私達の生活に密接した、最も身近な学問ともいえるでしょう。
心理学を学ぶことで、会社でのストレスや、人間関係の悩みなども解決できるかもしれません。
人間の心と体のメカニズムを知る「心理学」は、日常生活で人間関係の悩みを抱えている方にもおすすめです。自分の心理、相手の心理を科学的に知ることで、「こういうことだったのか!」という新しい発見がきっと訪れるはず。
他の学問と同様に、心理学にもさまざま種類があり、多くのアプローチ方法があります。もっともシンプルな分類方法としては「基礎心理学」「応用心理学」の2つに分けることができます。
基礎心理学とは、すべての人の心の普遍的な構造を研究する分野です。
対して応用心理学は、基礎心理学を踏まえたうえで、スポーツや産業、犯罪など、より実践的な分野への応用を進めていく分野です。
それぞれの分野にも詳細な分類があります。下記はその一例で、その分類は多岐にわたります。
鬱病や引きこもり、依存症など「心の病」が問題視される現代。学校や福祉・厚生施設などでのカウンセラーの需要は依然として高まっています。スクールカウンセラーや企業内カウンセラー、スポーツメンターなど、その種類はさまざま。人の内面について研究する心理学の知識は、カウンセラーの仕事には欠かせません。
カウンセラーの仕事には、情緒的に寄り添うことはもちろん、専門的な知識からのアドバイスが求められます。実際に就職するには、専門資格を取得するのが近道。心理学のプロフェッショナル「臨床心理士」のほか、2017年には「公認心理師」という国家資格も誕生しています。
カウンセラーの他にも、児童相談所や家庭裁判所職員といった福祉系公務員としての仕事もあります。心理相談員や児童指導員といった職種で、心理学は大いに役立ちます。また、心理学をもっと突き詰めて研究したい方には、研究職という道もあるでしょう。
カウンセラーや研究職に活かせることはもちろんですが、心理学はどんな仕事に就いても活かせるというのが大きな魅力です。
人間の心と体のメカニズムを知ることは、マーケティングや営業といった職種にも有利になります。また、部下の育成やマネジメントといった場面でも、心理学の知識は役立ちます。採用や広報といった人と接する職種でも有用でしょう。学生の場合は、就職活動の面接などでも活用できます。
それだけでなく、心理学を応用すれば、仕事上のコミュニケーション全般にも役立ちます。人間関係を円滑にすることで日々のストレスも軽減、リーダーシップ力がアップするなど、応用の仕方は無限大です。
心理学の知識を活かした仕事への就職を目指す方は、心理職の資格を取得することもよいでしょう。2020年8月現在、国家資格の他、大学・大学院・高等教育機関で取得できる資格、他に複数の民間資格があります。
心理職において初の国家資格が「公認心理士」です。2020年8月現在で約3万5000人ほどの合格者がおり、やはり国家資格というだけあって受験者は多いようです。医療・保健、教育、福祉、産業・労働、司法・犯罪などの分野において汎用できる資格でもあります。
2017年に誕生したばかりの資格なので、すでに臨床心理士の資格を取得している方や、現在すでに大学で心理学を学んでいるという方も受験資格が得られる経過措置という制度も導入されています。
心理職のなかでも認知度の高い「臨床心理士」の資格は、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて人の心の問題にアプローチする心理専門職の証となる資格です。2020年4月時点で約3万7000名が臨床心理士として認定されています。
臨床心理士の資格試験を受けるには受験資格が定められています。指定の大学院・専門職大学院を修了している、もしくは医師免許取得者で心理臨床経験が2年ある方でないと試験を受けることができません。
大学院では試験対策を個別におこなう場所は少ないですから、個人での勉強が大切となります。
「認定心理士」は心理学系学士号取得者に与えられる心理士資格です。試験や臨床実務訓練などは不要で、4年制大学で認定心理士認定に必要な単位を取得後、認定申請をおこなうことで取得することができます。
資格取得の難易度は高くないため、大学の心理学科に進学している人は取得を考えてもいいかもしれません。
「産業カウンセラー」の資格は、心理系の学部・学科を卒業していない方でも、通信の講座を受講することで受験資格を得ることのできる資格です。受講料は約30万円ほどかかりますが、今から大学や大学院には通えないという社会人の方にはこちらの資格がおすすめでしょう。
受講には6カ月コースと10カ月コースの2種類がありますが、その分しっかりと産業カウンセラーとしての知識を身につけることができます。
カウンセラーとして活躍したい方や、企業の管理職や人事部で働いていて活かせる資格を取得したいと考えている方におすすめの資格でしょう。
心理カウンセラーの資格のなかでも、公認心理士と臨床心理士は特に難易度が高いと言われています。難しいと言われている理由としては、指定大学院・専門大学院を修了するのが受験資格とされているからです。
しかしなかには大学院を修了しなくても取得できる試験も複数あります。公認心理士や臨床心理士と比べると活動できる場所や知識の幅は狭くなりますが、取得することで仕事に活かせることは間違いありません。
- 著者
- ["譲, 新川田", "コンデックス情報研究所"]
- 出版日
心理カウンセラーの仕事について興味を持った方におすすめなのがこちらの書籍。必要な適性、活躍のフィールド、職場の実際について詳しく書かれており、カウンセラーの仕事を具体的に知ることができます。
また、カウンセリング関連の資格を取得できる大学や、取得までのルートも解説。心理学の基礎や用語解説も掲載されていて、長く活用できる本です。
現役のカウンセラーへのインタビューも掲載されているため、実際に現場で働くときのイメージもしやすいでしょう。知っておきたい心理学の基礎を知るのに最適な1冊です。
- 著者
- 櫻井 勝彦
- 出版日
職場や日常生活などですぐに使える、実践型の心理術をわかりやすく解説した本書。図解による説明で、文字が多すぎず読みやすいのも魅力です。
「相手の本音を聞き出す質問の技術 」「相手との距離を縮める簡単心理テクニック 」「上手に断る心理術 イエス・バット法」など、すぐに使ってみたい!と思うような心理術が満載です。
さらに「ドキドキ・イライラに効く自律訓練法 」「 他人と差をつけよう! 誰でもできる速読法 」「落ち込みから早く回復する方法」など、自分自身の悩み解決やモチベーションアップにつながる内容も。
少しずつ実践してみることで、自分に自信が持てるようになり、毎日が少し上向きになりそう。「お守り」として手元においておきたくなる本です。
- 著者
- ゆうき ゆう
- 出版日
人前で話すことが怖い、上手な断り方がわからない……。そんな対人関係の悩みと解消法を、漫画で解説した本です。心理学系サイトの運営やマンガ原作も手掛ける著者は、メンタルクリニックの院長でもあります。
マンガのストーリーは、カップ麺メーカーで働く主人公が、異動先で人間関係に悩みを抱えるところから始まります。息抜きとして参加した料理教室でユウと知り合い、心理学を学ぶことに。教わった心理学の知識をもとに、異動先の個性豊かな人々と関係性を築いていく……というものです。
一見とっつきにくい心理学の用語や解説も、漫画にすることでライトになり、楽しんで読み進められるのが魅力。心理学の入門としてもおすすめです。
同じ著者の「マンガで分かる心療内科」というシリーズも人気があります。ギャグ要素も多くかなり面白いので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。
- 著者
- 齊藤勇
- 出版日
恋をして、恋愛指南書やテクニック本を読んだことがある方も居るのではないでしょうか?
人間の心と体を読み解く心理学は、恋愛にも活かすことができます。行動心理学から派生した「恋愛心理学」というジャンルもあるほどです。
男女のコミュニケーションのクセや特徴を知ることで、よりお互いのことがわかり、円滑な関係を築くことができます。人が人を好きになるメカニズムを知れば、意中の相手を振り向かせることもできるかもしれません。
嫉妬・浮気・結婚・失恋・倦怠期・束縛……。ひとの恋愛関係・感情を心理学で読み解いた本書。「恋愛感情とは何なのか?」という命題から、「別れた人を忘れられない心理」「男女の友情は成り立つのか」など、身近な恋愛の疑問を心理学的視点から紐解いていきます。
2部では人の恋愛感情を辞典化しているのが面白い特徴。あざとい/男ウケ/かまってちゃん/ロールキャベツ男子など、恋愛に関するさまざまなキーワードをわかりやすく解説しています。読み終わる頃には、相手の気持ちが今よりわかるようになっているはずです。
- 著者
- 鈴木 裕介
- 出版日
仕事全般や恋愛などの対人関係にも活かせる心理学ですが、自分自身の心理を解き明かすことで、自らの心のケアをおこなうこともできます。
日々を過ごす中で、心が疲れてしまった方、生きづらさを抱えている方には、心理学を応用したメンタルセルフケアがおすすめです。
「他人の顔色を伺ってばかりで自分の考えが言えない」「周囲の期待に応えるのに必死で、自分がどうしたいかわからない」「自分のことがキライ」そんな生きづらさを抱えている方は少なくないのではないでしょうか。私もその1人です。
そんな生きづらさを「ちょっとラクにする」方法が解説されているのが本書。ゲーム好きの心療内科医である著者が、生きづらさからの脱却法をRPGの攻略法になぞらえて紹介しています。日本一ポップで読みやすいメンタルヘルス本といっても過言ではないでしょう。
自らのキャラ特性を理解し、現実世界というクエストの中で経験を積めば、「ハードモードな人生」から抜け出せるはず。楽しみながら心を軽くしてくれる良書です。
心理学とは、心の仕組みを理論的に解明する学問です。さまざまなアプローチがあり、仕事だけでなく日常生活にも活かしやすい点がその大きな魅力。仕事や人間関係、恋愛など、応用方法は無限大です。まずは、身近に活用できるところから学んでみてはいかがでしょうか。
より専門的に心理学を学びたい方は、心理学の学べる大学に進学することもよいでしょう。