さまざまな場所で保健師にお世話になった経験のある方は多いのではないでしょうか。しかし、保健師はいったいどんな仕事をしているのか、知らない方も意外と多いものです。 ここでは保健師の仕事内容や、働き方など保健師という資格について詳しく紹介していきます。保健師を目指している方や保健師という進路を検討しているという方にどんな仕事なのか、イメージを持っていただけると嬉しいです。
まずは保健師という仕事についてご紹介します。
一言でいうと、人々が抱えている健康問題に向き合う仕事です。仕事の対象者は、地域住民。地域に住む乳幼児から高齢者、病気と付き合いながら社会生活を送っている人、はたまた健康な人まで、すべての住民が保健師の接する対象となるのです。
それでは、対象者ごとに分けて保健師の仕事内容をご紹介します。
◾️乳幼児
乳幼児に対する保健師の仕事は、乳幼児健診です。乳幼児健診で子どもの成長に関する悩みをご両親から受けたり、子どもに質問をして発達度の確認をしたりします。また、新生児期には地域によっては「赤ちゃん訪問」という仕事があり、自宅に家庭訪問をして悩みを聞いたり身体計測をすることもあります。
◾️高齢者
高齢者に対しては、生きがいつくりや介護予防教室をおこないます。ひとり暮らしでなかなか外に出られないという方に対しては家庭訪問をおこない、高齢者が孤立しない地域づくりをすることも保健師の役目となります。
◾️成人
成人に対しては、生活習慣病を予防するためのセミナーを開いたり、メンタルヘルス対策をして自殺を予防したりという仕事があります。また、妊婦さんに対しては妊娠、出産についての悩みを聞いたり、両親学級の案内をおこなったりもします。
このように、各対象に必要とすることを必要に応じて介入していくのが保健師の仕事です。
また、地域住民全体に対しても感染症の予防や健康格差問題への対策、自然災害が起こった際の公衆衛生の整備なども保健師が中心となって行います。
私たちが保健師と最も関わる機会があるのが、市区町村の役所となるのではないでしょうか。このほかにも、病院や福祉施設、訪問看護センターなどで医療と福祉と地域をつなげているのが保健師です。このように、保健師はさまざまなところで働くことができるのです。
また、学校や大学などの教育機関では生徒の健康管理業務や将来保健師になりたいと考える学生の育成をおこなっていますし、企業ではその企業で働く社員の健康管理も保健師がおこないます。
さらには起業も可能で、実際に自分の経験や特性を生かしてNPO法人などを立ち上げ国内外で活躍している方も多くいます。
医療や介護の職業の中で医療、福祉、学校、行政、企業など幅広く職場があるというのは保健師ならではです。
保健師の国家資格は、看護師国家試験合格後、指定の養成所で1年以上の学科を修了しなければ取得できません。そのため保健師の資格は、看護師のキャリアアップ資格と呼ばれることもあります。看護師免許に保健師の資格を合わせることで資格手当が増え、年収があがる場合があります。
では実際、保健師の年収事情はどうなっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
さまざまな場所で働ける保健師ですが、保健所や保健センターで働く行政保健師と、民間企業で働く産業保健師では年収が異なります。
◾️行政保健師の年収
「令和2年度(2020年度)北海道職員(保健師)採用選考募集要項」を例にみていきましょう。こちらの募集要項では、保健師の年収は下記のように記載されています。
行政保健師は公務員なので、月給・年収は「北海道職員の給与に関する条例」などに基づき支給されます。またこちらの年額は、期末・勤勉手当や寒冷地手当を含んだ額になります。
あくまでも目安ですが、経験年数ごとにきちんと支給額があがる安定した職が行政保健師といえそうです。
◾️産業保健師の年収
産業保健師の年収は、企業規模によって大きく異なります。中小企業の産業保健師であれば年収は300万500万円程度。大企業の産業保健師であれば500万〜600万円程度となります。
またこれは正社員の保健師の場合になります。正社員の産業保健師の求人は少なく、パートとなると時給は2000〜2200円ほど。月給に換算すると正社員とあまり変わらない額になりますが、パートの場合はボーナスがないので、出来るだけ正社員となる方が稼ぐことはできるでしょう。
安定した収入を狙うなら行政保健師がよいでしょう。しかし公務員である分、働き方にはある程度の制約がかかったり、裁量権を持って働けることは少ないかもしれません。
一方、産業保健師は就職する企業によって年収は異なりますが、業務内でチャレンジすることができる環境は多いでしょう。
どんな保健師になりたいのか、保健師としてどう働きたいかを明確に持つことで、やりがいある働き方が実現するはずです。
保健師として働かれている方は、どのように1日を過ごすのでしょうか。市区町村の保健所で働く場合を例に見ていきましょう。
◾️午前
出勤後、自分の1日のスケジュールの確認をします。朝礼が終わった後、午前中は地域住民の家庭訪問や乳幼児健診、セミナー関係に時間を使うことが多いです。
◾️午後
昼食休憩をはさみ、午後は保健所で地域住民の相談にのったり、電話などで家から出られない方の相談にのったり住民のサポートをします。
その後、記録物の作成など、事務作業をして終業となります。
働く施設にもよりますが、保健師は医療福祉職のなかでも定時で終業できる職場も多く、子育て中の女性や家庭のある女性がライフワークバランスを維持しながら働ける職場ともいえます。
そのため、女性の資格取得者が圧倒的に多く、厚生労働省が2016年に調べたデータによると保健師として就業する方のほぼ9割が女性という結果が出ています。このことからも女性が働きやすい職であるということが分かります。
保健師とは保健師助産師看護師法総則第二条において、下記のように規定されています。
厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者
保健師は国家資格となるため、国家試験を受けて合格しなければ資格を取得することができません。また保健師の国家試験の受験資格を得るには、まず看護師の資格を取得しなければなりません。
看護師の資格を取得してから、保健師の資格を取得する方法はいくつかあります。
◾️第1ルート
1つ目は、先に看護師養成校に通って看護師資格を取得したのち、保健師養成校に編入して保健師国家試験の受験資格を経るというルートです。保健師養成校は看護師資格を取得している場合1年間の在学でカリキュラムを修了することも可能です。免除となる科目もあります。
◾️第2ルート
2つ目は、保健師の教育プログラムのある大学へ入学し、そこで看護師と保健師両方のカリキュラムを修了することです。看護師国家試験の方が保健師国家試験よりも先にあるため、看護師国家試験を受験していれば看護師資格取得見込み者として現段階で資格を持っていなくても保健師の国家試験を受けることができます。
実は文部科学省からの通達によって、2015年度に多くの大学で保健師カリキュラムが選択制や選抜制に切り替わっています。そのため保健師コースを選択する学生が減り、保健師国家試験の受験者が大幅に減少しています。ですので、保健師の数は年々減少傾向にあり、資格取得後に働き口がたくさんあるということがポイントです。
保健師の国家試験は毎年2月の中旬におこなわれ3月中旬に合否が発表されます。
試験科目は公衆衛生看護学、疫学、保健統計学および保健医療福祉行政論で、全体の60%程度を正答できれば合格となります。「程度」としているの年の問題の難易度によって合格基準が上がる年もあるためです。ですがおよそ60%で推移しているのが現状です。
また合格率についてですが、保健師国家試験の合格率にはばらつきがみられます。例年およそ80%から90%台で推移しているのです。
・第106回:91.5%
・第105回:81%
・第104回:81%
保健師国家試験の合格者の状況を見てみると、学校在学中に国家試験を受けた人の合格率は95%を超えているのに対し、既卒者の合格率は40~50%台となっています。
このことから学校卒業前に受ける国家試験が1番合格するチャンスがありそうです。なるべく卒業時の試験で合格できるような対策をしていくことがおすすめです。
卒業時に1回で保健師国家試験に合格できるように、備えておきたい知識や必要な本をここからご紹介していきます。
- 著者
- 全国保健師教育機関協議会
- 出版日
保健師の仕事内容から資格の取得方法まで、すべてがまとまっています。保健師の資格を取りたいけれど保健師のイメージがつかめない、どうすれば保健師になれるのか知りたいという人が手元に持っていてほしい1冊となります。
なかには実際に保健師として働く方へインタビューをした内容も入っており、どんな仕事をしているのか、どんな働き方ができるのかが分かりやすくなっています。
指定養成学校リスト、問い合わせ先リストも本の中に入っているので、本を読んですぐに学校見学の申し込みなどの行動に移しやすいところがポイントです。
- 著者
- 全国保健師長会岡山県支部
- 出版日
岡山県で保健師として働いている人たちを描いた物語です。全国保健師長会の岡山支部が出版していることから、余計な脚色などがなく、より忠実に岡山県で働く保健師が描かれています。
保健師と出会う場が保健所などの施設の場合が多いことから、保健師は施設から出ないというイメージを持ちやすいのですが、本来は地域に根差した職業であるということがよくわかる本です。
実は保健師の働き方を知ることのできるフィクション作品は少なく、特に地域に着目している本も少ないです。
そのため、保健師が地域でどのように活躍しているのかを具体的に知ることができます。地域で保健師をしたいと考えている人には読んでいただきたい1冊です。地域での保健師の在り方に悩んでいる、現役の保健師の人にもぜひ読んでいただきたいです。
- 著者
- 医療情報科学研究所
- 出版日
保健師がどんな勉強をするのか知りたい、あるいは保健師の勉強を先取りしておきたいという人におすすめしたいのがこちらの1冊です。
とある通販サイトでは保健師絡みの本の売れ筋ランキング1位を獲得している商品です。出版社は医療や介護に強い会社で、歴史もあります。その強みを生かして作られた問題集なのです。毎年その年の国家試験に合わせて出版されているのですが、毎年人気ランキング上位に入ってくる1冊です。
過去問+最新国試+予想問題を収録、イラストや図表も多いので法律系など文章だけではなかなか理解しにくいものもわかりやすいです。他の本とリンクさせながらも使えるのもポイントです。
保健師の先輩たちも活用してきた1冊。どんな勉強をするべきなのかを知りたいという方におすすめです。合格率の高い卒業時の国家試験で何としてでも受かっておきたいため、先にこのテキストで保健師の勉強の予習をするのもよいでしょう。
ライフワークバランスに合わせて働きやすいといわれる職業。しかし保健師国家試験受験者の減少にともない、保健師の数が今後減少してくることが懸念されています。保健師の働き方を知り、興味のある方はこちらでご紹介した本を活用して保健師の道へのスタートダッシュを切ってみてはいかがでしょうか。